グローバルSCM基盤の取引データ変換ツールを集約 信頼性を高め、コストを削減

  • TIS株式会社のEDI事業は2020年4月1日を期して株式会社インテックへ会社分割(吸収分割)により承継しました。
  • 掲載内容は取材当時の社名、製品名で記載されています。

パナソニック株式会社では、グループ全体のSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)を支える世界最大規模のグローバルIT基盤(GITP Global IT Platform)を構築し、販売力強化と業務効率化を図っています。その運用保守を手がけるTISは、取引データを変換する「トランスレータ」を集約することで、システムの信頼性向上と運用コスト削減を実現しました。

課題

日本を代表する総合エレクトロニクスメーカー・パナソニックは、「生産・販売・サービス活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与する」という経営理念のもと、人々の暮らしを取り巻く製品やサービスを提供することで、より豊かな暮らしや社会の発展に貢献してきました。その事業領域は、部品から家庭用電子機器、電化製品、FA機器、情報通信機器、および住宅関連機器と広い範囲にわたります。
「ものづくり」をコアビジネスに掲げる同社にとって、部品調達から製品の製造、物流、そして販売に至るまで、各フェーズで発生する膨大な取引情報を緊密に連携させることは不可欠です。そのために同社が2000年に構築したのが、グローバルIT基盤(GITP Global IT Platform)。これは、それまで各事業部で個別に構築していたシステムを整理・統合し、近年の海外事業の拡大にも対応可能な世界共通の情報システム基盤であり、販売力強化や業務効率化、コスト最適化を目指すものでした。
GITPは、グループ全体のSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)を支える重要な全社EDI基盤システムとして、グループ内外の2,500システムをグローバルにつなぎ、商取引に直結するデータを24時間ノンストップで伝送しています。
「システム上でやりとりされる情報は当社にとって血流であり、その流れが数時間ストップしただけで量販店への出荷や工場への部品供給も停止するなど、ビジネスに深刻な影響を及ぼしかねません。GITPは、社会インフラと同等以上のサービスレベルが要求されるミッション・クリティカルなシステムです」とGITPの重要性について語るのは、パナソニックグループの情報システムを統括するコーポレート情報システム社(CISC)インフラソリューションBU情報基盤グループeビジネス推進チームチームリーダー伊藤二郎氏です。
しかし、こうしたビジネスの基幹システムであるGITPにもコスト最適化は求められます。そこで、システムの信頼性を維持しつつ、運用コスト削減につながると期待されたのが、社外からのデータと自社フォーマットを相互変換するデータ変換ツール、トランスレータの刷新でした。

図表1 GITPシステムの概要

提案

機能面、サポート面でお客さまのニーズに対応できるツールを提案

パナソニックグループのGITP上で、あらゆる情報がスムーズに流れるためには、取引先など社外のデータを、自社内で使用するフォーマットと相互に変換する必要があります。同社の取引先は国内外、流通や販売など多分野多業種にわたることから、これまでは業界ごとの独自フォーマットなどに対応する、複数のデータ変換ツール(トランスレータ)を導入してきました。トランスレータを使用する際には、マップと呼ばれる変換定義を作成する必要があり、トランスレータが複数あればマップ数も増加、保守も煩雑になります。また、これまで使用していたトランスレータのうち、他社製品はライセンス保守費用が高額である上、サポートに関する問い合わせも時間がかかるのが大きな問題となっていました。そのような中、CISCインフラソリューションBU情報基盤グループeビジネス推進チーム主任システムエンジニアの國澤華子氏は、トランスレータを刷新する必要性を感じていたといいます。「トランスレータを運用するコストが増大しており、製品ごとのマップ作成など、運用ノウハウを維持するのも大きな負担でした。何よりメーカーからの迅速なサポートを得られないことは、GITPの信頼性を確保する上で大きな問題となっていました」
一方、TISでは以前から、パナソニックグループのIT基盤を担うCISCに対してEDI運用保守サービスを提供。常駐してシステム保守開発を手がけるチームと、EDI専門の技術支援を担当するチームが一体となって、GITPの構築および運用保守を支援してきました。パナソニックは、2000年に株式会社データ・アプリケーション(DAL)のEDIサーバ「ACMS/UX」を導入するのに合わせて、同じDAL製品で親和性の高い「AnyTran」を導入。以来、「AnyTran」はGITPにおける複数のトランスレータの1つとして使用されていました。
こうした中で、TISは日ごろの運用保守業務を通じて、パナソニックがトランスレータの集約・刷新を考えており、「AnyTran」についても現場での使用を踏まえた改善要望を持っていることを知りました。そこでTISでは、「AnyTran」の開発元であるDALに働きかけ、パナソニックからの改善要望を盛り込んだ新バージョン開発について検討を依頼した上で、CISCに対して、新バージョンの「AnyTran」によるトランスレータの集約を提案したのです。その結果、TISが推奨するDALはサポートも迅速に対応できること、TIS自身が「AnyTran」ユーザーであると同時に販売も手がけてきた豊富なノウハウを有していること、TISがパナソニックにおいて長年の保守開発実績を持つことなどを評価し、パナソニックはDAL・TISとともに、既存の複数のトランスレータを「AnyTran」に集約するべく、動き始めることとしました。

図表2 TISのEDI運用保守サービス

解決

バージョンアップに合わせた機能強化で信頼性向上

SCMを活用した最近の「ものづくり」の現場では、市場の急激な変化に備えるべく、小売店などと情報共有して需要予測を行い、共同で在庫削減と売上拡大を目指すといった業務連携が盛んに進められています。受発注は小口化・多頻度化する傾向にあり、トランスレータが取り扱うデータ量も年を追うごとに増加、システムにかかる負荷も増大しつつあります。
そのためGITPで使用するトランスレータを「AnyTran」で集約するに当たっては、サーバ内部で「AnyTran」の変換プロセスを必要に応じて複数常駐させ、変換処理の多重化を可能にすると同時に起動時間を短縮できる機能(オーバーヘッドの改善)や、変換作業終了後に確実にメモリを解放して、サーバに負荷をかけない変換プロセスの再起動機能など、パフォーマンス向上や資源(サーバ物理メモリ)の有効活用を目的とした機能が追加されることとなりました。
これらの機能追加はDALのもとで開発が進められましたが、その際、TISの常駐チームがパナソニックから入手した要望をEDI専門チームに的確に伝え、緊密な連携を図ることで、短期間での機能追加が実現しました。さらに、こうした豊富な機能が盛り込まれた「AnyTran」の新バージョンに対し、パナソニックのシステム環境において、TISも参加した詳細な動作検証が実施されました。膨大なデータの変換処理を行うとともに、他システムへの影響やサーバのCPU使用率チェックなど、安定稼働に向けたさまざまな検証が行われました。その結果、機能が大幅に強化され、パフォーマンスも大きく向上した「AnyTran」の新バージョンが完成、導入されました。
國澤氏はこうした取り組みに対して、「当初はトランスレータを自社開発することも検討しましたが、TISやDALの協力のもと、膨大なデータ変換を実施しても安定稼働する、最適なトランスレータを導入することができました」と評価しています。

効果

進化するグローバルSCM基盤には、万全な運用保守がさらに重要に

複数あるトランスレータのうちサポート切れとなる製品を対象に、バージョンアップした「AnyTran」への移行を実施する集約作業は、2008年2月から9月にかけて進められました。移行・集約の結果、これまで必要だったライセンス保守費用が不要となり、マップの維持管理の負担も軽減されるなど、運用面での改善が実現。またデータ変換処理についても安定した稼働環境が確保され、社外取引先とのスピーディな取引が可能となっています。他のトランスレータについても順次「AnyTran」に集約していく予定であり、さらなる運用コスト削減が見込まれています。
なおパナソニックは2009年に、グローバルインターネットEDI(RosettaNet)の規格にも対応した「ACMS B2B」をGITPに導入し、海外取引先とのスムーズなデータ連携が図れる環境を構築しました。「ACMS B2B」は「AnyTran」と同じDALの製品で、流通業界において導入が進むインターネットEDIの新規格「流通BMS(Business Message Standards)」にも対応しており、パナソニックにおける流通BMSの早期導入にも役立つものと期待されています。
伊藤氏はこうした業界の流れも踏まえて、「トランスレータの集約により運用コストが削減され、GITPの信頼性も高めることができました。販売力強化に向けて流通BMSへの対応も急がれる中、新たな仕組みに柔軟に対応するためにも、安定したIT基盤の整備は必須。運用保守の果たす役割もますます大きくなると考えています」と語ります。
TISでは、これからも常駐して保守開発を手がけるチームと、EDI専門チームの緊密な連携のもと、トランスレータの集約によるGITPの運用改善や運用コスト削減に取り組むとともに、システムの信頼性向上や業務効率化につながる運用保守サービスを推進することで、より豊かな暮らしや社会の発展に向けて新たな製品を生み出していくパナソニックのグローバル・ビジネスに貢献していきたいと考えています。

お客さまの声

TISのEDI運用保守サービスの果たす役割は大きい

パナソニック株式会社 コーポレート情報システム社
インフラソリューションBU 情報基盤グループ eビジネス推進チーム チームリーダー
伊藤 二郎氏

世の中に広く貢献する製品をタイムリーに提供することを至上命題とする当社にとって、業務効率化やコスト削減は永遠の課題。TISとDALのタッグによる強力なサポート体制のもと、トランスレータを集約して運用コスト削減を図れたメリットは大きいですね。EDIの世界では業界動向をいち早く察知して対応することが重要であり、グローバルSCMの基盤であるGITPが有効に機能するためにも万全な運用保守は不可欠です。GITPの運用保守をはじめ、これからも当社のビジネスに貢献するTISの先進的な提案に期待しています。

変化対応力を高め、信頼性を確保できました

パナソニック株式会社 コーポレート情報システム社
インフラソリューションBU 情報基盤グループ eビジネス推進チーム
主任システムエンジニア
國澤 華子氏

TISは、GITP構築の早い段階から参加し構築や運用保守を手がけるなど、当社のシステムを熟知しており、EDIに関するノウハウや実績も豊富。トランスレータの刷新に際してもTISが推薦した製品ということで、開発元のDALとの連携も申し分なく、安心して任せることができました。万全なサポート体制のもとでGITPの信頼性を確保しつつ、「AnyTran」への集約によりマップ作成の省力化が図れ、運用コストの削減にも貢献。ビジネスへの変化対応力も高めることができました。

担当者から

削減に直結するTISのEDI運用保守サービス

「AnyTran」への集約に際して、検証作業も含めてお客さまからのご協力を仰ぎつつ、開発元のDALと連携することで大幅な機能強化を実現し、今後のデータ量の増加に対してもパフォーマンスを確保できるトランスレータを導入することができました。
TISのEDI運用保守サービスは、個別対応のテクニカルサポートからヘルプデスクサービス、システム監視や障害対応、メーカー保守に合わせたサポートなど多岐にわたるとともに、規模やご要望に応じてTISセンターへのアウトソーシング、お客様センターEDIシステムへの常駐/リモートサービスを選択でき、運用コストの最適化が図れるという柔軟性を持っています。EDIデータの伝送エラーからの復帰といった、業務に踏み込んだ運用保守にも対応。特に今回のような大規模なIT基盤の運用保守に際しては、常駐チームとEDI専門チームが緊密に連携し、先進システム導入と運用保守を組み合わせた先進的サポート体制も提供できます。

  • 会社名、商品名、サービス名は各社の商標またはサービスマークです。

Client Profile パナソニック株式会社様

会社名

パナソニック株式会社

創業

1918年3月7日

設立

1935年12月15日

事業内容

生産・販売・サービスなどを含めた総合エレクトロニクス事業

URLhttp://panasonic.co.jp
  • TIS株式会社のEDI事業は2020年4月1日を期して株式会社インテックへ会社分割(吸収分割)により承継しました。
  • 掲載内容は取材当時の社名、製品名で記載されています。

公開日 2020年04月01日

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