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マツモト産業株式会社様

SAP ERPをAWSクラウド環境へ移行し“トラブルゼロ”の安定稼働を達成

自動車メーカー等へ向け、“溶接”に特化した産業機器や金属材料を提供するマツモト産業株式会社(以下、マツモト産業)は、2010年導入のSAP ERPが、5年サイクルのサーバ更新時期を迎えた。オンプレミスからAWSへの移行を提案したTISは、プロジェクト全般の計画立案・進捗管理から基盤構築までを担い、移行後のトラブルゼロを達成した。

本社 大阪市西区靱本町1-12-6
創業 1919年(設立1948年)
資本金 7億6,800万円(2015年10月末現在)
代表取締役社長 吉田充孝
事業内容 産業機械、金属材料、メカトロ機器 等
URL
マツモト産業株式会社様

課題

メーカー商社としての業務を支えるSAP ERP

1919年(大正8年)創業のマツモト産業は、金属の溶接や切断に特化した産業機器・金属材料などを強みとし、国内を代表する自動車メーカーや電機メーカーのモノづくりを支え続けている。同社は、溶接用の産業機器や金属材料を調達・供給する商社であるとともに、自らが高精度なレーザー溶接機やロボットシステムの研究開発を手がける、メーカーとしての顔を併せ持つ。
マツモト産業は2010年、オフコンの基幹業務システムをSAP ERPへ刷新した。今回のAWSクラウド環境移行プロジェクトのオーナーである、同社監査役の粟木原政治氏は、こう振り返る。「従来のオフコンは販売と会計が別系統だったため、帳票を打ち出して数字に不一致がないかを確認する手間が必要でした。SAP ERPによる統合で、販売情報を投入した時点で会計情報が生成されるようになり、業務効率は大きく改善されました」。このSAP ERPは、同社の社員の大半、300名以上が通常業務に使用している。営業担当は受発注、事務担当は売上・仕入れ、また、経理部門は会計業務にと、多くの部門の基幹業務を担ってきた。

5年サイクルのインフラ見直しが大きな負担に

SAP ERPの導入から約2年が経過した2012年頃より、同社の情報企画システム課は、SAP ERPの次期サーバのあり方について検討を開始した。
今回のクラウド移行の計画・実行を主導した同課の磯本隆広氏はこう説明する。「一般的に、サーバのメーカー保守は5年で終了しますが、当社サーバも2015年には保守終了を迎えます。そのため、インフラ更新の計画を早めに立てる必要がありました」。
検討に着手した2012年当時、ERPをオンプレミスからクラウドへ移行する企業が徐々に現れはじめ、IT業界の話題となっていた。磯本氏は、“サーバ機の保守期限”という概念自体が存在しないクラウドに強い関心を示す。「オンプレミスの場合、サーバ機の選定から調達、設定、設置後のメンテナンスまでを、情報企画システム課の限られた人数で対応するのは非常に困難です。しかもサーバを刷新しても、1、2年後にはすぐに次の移行計画を立て始める必要があり、息をつく間もありませんでした。他にも、クラウドはリソースを柔軟に拡張できることに加え、BCP対策としての適性も高いことに優位性を感じました」(磯本氏)。
磯本氏は、2013年からIT業界のセミナーに何度も足を運び、SAP ERPのクラウド移行の現状について情報を収集。「2年にわたって情報を精査した結果、クラウド型ERPは決して一過性のブームではなく、近い将来、主流になると確信しました」。そして情報企画システム課は、オンプレミスの継続、クラウドへの移行という2つの選択肢を残し、移行計画の立案に着手する。「あと2、3年後であれば、迷わずクラウドだったでしょうが、まだ導入例が少なく技術的な不安がないとは言い切れない。次の5年も、オンプレミスを継続する可能性も捨てきれませんでした」(磯本氏)。

選択

経験値に基づく緻密なクラウド移行計画

こうして2014年半ば、情報企画システム課は、SAP ERPの導入実績をもつ複数のベンダーに対し、移行プロジェクトの提案を依頼した。「サーバ主体のベンダーにはオンプレミス型、SIベンダーにはクラウド型を指定し、それぞれの得意領域を活かした提案をお願いしました」(粟木原氏)。このとき、SIベンダーの一社として提案に参加したのが、TISであった。
「それまでTISとの取引はなかったものの、別の案件で知り合ったTISの担当者から、SAP ERPの情報を継続して提供してもらっていました。その方がERPに関するスキルが非常に高いこと、そして、セミナーなどの情報収集で“SAP ERPに強い”ベンダーとしてTISに目星を付けていたことから、提案への参加を呼びかけました」(磯本氏)。そしてTISは、過去に手がけた案件で得た、クラウド移行の技術や手順を集大成したソリューション「TISクラウドインテグレーションサービス for AWS」をベースとして、AWS(Amazon Web Services)上へ移行する計画を提出する。
各社の提案が出そろい、情報企画システム課は比較検討に着手。「まず費用面では、5年間に限るとクラウドとオンプレミスはほぼ同程度。しかし、10年で比べると、次回のサーバ機の更新がない分、クラウドがコスト抑制および情報企画システム課の業務負荷軽減の両面で大きく有利になる。この時点で、クラウドを推す声が社内で優勢となりました」(粟木原氏)。
クラウド型の提案を行ったSIベンダーは、TISを含む多くが、AWSを基盤とする移行プランであった。「実際に経験のあるベンダーが推奨していることからも、AWSの信頼性が伺えました。そのなかでTISの提案は、過去の事例に基づく導入シミュレーションなど、経験を活かした緻密な計画が印象的でしたね」(磯本氏)。

TISにプロジェクト全体のコントロールを託す

最終的に、ITパートナーとしてTISを選択した理由について粟木原氏はこう語る。「今回のインフラ部分の刷新とは別に、SAP ERPのアプリケーション部分のマイグレーション作業については、既に他のSIベンダー2社が分担して行うことが決まっていました。結果としてマルチベンダー体制となるため、全社が協調した動きが必要。また、SAP ERPと連携するEDIや帳票管理など周辺システムを同時にAWSへ移行することとなり、トータルの移行計画の立案が必須であったため、TISにプロジェクト全体を統括するPMOとしての役割をお願いできないか打診しました。これを快諾いただけたことが、TISへの発注の決め手となりました」(粟木原氏)。
こうしてTISは、AWS上のインフラ構築に加えて、プロジェクト全体の計画作成と進捗管理を担うこととなった。「我々だけでは、動作検証ひとつとっても、“ここを抑えればいい”という勘所が分かりません。経験豊富なTISに全幅の信頼を置き、プロジェクトのマネジメントを託すことにしました」(磯本氏)。

* PMO:Project Management Office

導入

マルチベンダー体制を的確にマネジメント

2014年12月、移行プロジェクトのスタートを前に、情報企画システム課は目標を次のように定めた。「まず、基幹業務のシステムであることから、切り替え期間を最小に抑え、業務に影響を及ぼさないこと。次に、従来の環境ではSAP ERPのパフォーマンスが十分に発揮できていなかったため、基盤刷新を機に高速化を図ることも重要な目標としました」。
プロジェクト開始とともにベンダー3社は作業計画・移行準備に着手し、TISはAWSの基盤構築に取り組んだ。コスト抑制のために、可能な限りAWSの標準機能を利用し、サーバのバックアップや監視などを行う仕組みづくりが進められた。なお、既存の周辺システムが置かれたデータセンターとAWS間は、TISの助言により、プライベート接続を可能にする「AWS Direct Connect」を導入。「今後、ERP以外の周辺システムをAWSへ移行していく構想もあり、パブリッククラウドであるAWSにプライベート接続を組み合わせることで、安全性・信頼性を強化する狙いです」(磯本氏)。
TISによるプロジェクト全体の進捗管理は、隔週で開催される定例会を中心として行われた。ベンダー3社とマツモト産業が、その時点で明らかになった技術的な課題を持ち寄り、どの会社がどの部分について対処するか、作業分担が行われた。「TISのコントロールは見事の一言でした。SAP ERPのアプリケーションの部分の課題であれば、それをどちらのベンダーが作業するのかをその場で明確に判断。速やかに対策を行うことで、スケジュールの遅れをすぐにカバーできました。閉じたオフコンの世界とはまったく異なるクラウド基盤で、しかも初のマルチベンダー体制だっただけに、TISの存在は心強かったですね」(磯本氏)。

経験に基づきリスクを事前にシミュレーション

プロジェクトを進めるなかでは、TISが有するSAPアプリケーション移行についての技術的な知見が、トラブル回避に役立った。「過去の同様のケースでは、技術上どんな問題が発生したか、またそれを防ぐにはSAPノートと呼ばれる修正パッチのどれを適用しておくべきかなど。こうした適切な事前対策の情報を、プロジェクトに関わる全社が共有できたことが、リスク回避につながりました」。(磯本氏)。
当初、情報企画システム課は、過去に実践したオフコンのサーバ刷新を基準に、ゴールデンウィークにSAP ERPを5日停止して本番移行を行う計画としていた。「しかし、2015年3月に本社を自社ビルへ移転したこと、そして決算時期も重なったことから、情報企画システム課のメンバーは身動きができない状況。そこでTISに相談したところ、“2日あれば本番移行可能”と回答があり、本番移行は8月のお盆休みにスライドさせ、その分、入念に検証テストを行うことにしました。わずか2日で、オンプレミスのサーバの最新データを反映し、クラウドへ切り替える技術力はすごいな、と感心しました」(磯本氏)。
そして、TISの策定したプランに基づき、3月と7月の計2回、本番移行リハーサルが実施された。現場の切り替え作業・アプリケーションテストを取り仕切った情報企画システム課の小米良亮氏は、「1回目は、移行手順を実践して所要時間を確認。そして2回目は、24時間体制で本番と同様に移行リハーサルを実施しました。本番切り替えではミスが許されないだけに、万全の準備で臨みました」と語る。

効果

トラブルゼロの本番稼働を達成

こうして2015年8月13日・14日の両日、ベンダー3社と情報企画システム課により、本番移行が実施された。小米良氏は当日を振り返る。「事前にリハーサルを経験したことで、自信をもって本番を迎えられました。それでも、実際に予定時間内に切り替えが成功した瞬間は、本当にホッとしましたね」。
お盆休みが明け、朝から各現場でAWS上のSAP ERPを利用した通常業務がスタートした。「過去の経験上、不具合についての苦情や問い合わせの電話が殺到することも覚悟していましたが、意外なことに、まったく電話がかかって来ない。これほど、トラブルがなくスムーズに本番移行を迎えられたのは、初めての経験でした」(小米良氏)。
入力画面と機能については、従来のSAP ERPと変わりないが、操作時のレスポンスは大きく改善されたという。「現場の社員からも、速くなったことに驚く声がありました。AWSの基盤自体が高速ということもあるでしょうが、仮想マシンのスペックの選定やチューニングなど、TISのさじ加減が絶妙だったのだと思います」(小米良氏)。なお、稼働後は、現場から帳票出力に関する問合せが数件あった程度で、システム領域はノートラブルで約2カ月間、安定稼働を続けているという。

AWSの標準機能でBCP対策も強化

クラウド環境へ移行したメリットを、粟木原氏はこう語る。「当初見込んだとおり、5年ごとに物理的なハードウェアを入れ替える手間、日常業務としてのメンテナンスが不要になったのは大きいですね。以前は、サーバにパッチをあてる作業も我々が行っており、メンテナンスフリーになったおかげで作業負荷は大幅に減りました」。
また、従来のオンプレミスに比べ、障害対策・BCP対策の点でも強化が図れたことは大きな成果だという。「以前はテープを利用してサーバをバックアップしていましたが、万一の際、本当にテープから復元できるのかを不安に感じていました。AWSはバックアップ領域のデータを、離れた場所にある3カ所以上のデータセンターに自動的にコピーする機能を備えているため、信頼性がより高まりました」(磯本氏)。現在は障害が起きた際、瞬時に別サーバへ切り替える、ホットスタンバイの仕組みの早期導入も検討されている。
今回のプロジェクトの成功を踏まえ、マツモト産業はEDIや帳票関連のシステムに続き、その他のSAP ERPの周辺システムについてもAWS移行を進めていく方針を決定。粟木原氏は最後にこう締め括る。「今回の経験で、当社のIT計画は“クラウドファースト”が基本路線であると、社内での共通認識ができました。クラウド化により生まれた我々の余力は、本来の業務である、ITを活用した戦略の立案に注いでいきます。今後も海外事業の展開やBCP対策の強化など、クラウトの持つメリットを大いに活用していきたいですね」。

AWSの標準機能でBCP対策も強化

お客さまの声

左から
マツモト産業株式会社
監査役 粟木原政治 氏
管理部 情報企画システム課 次長 磯本隆広 氏
管理部 情報企画システム課 主任 小米良亮 氏

TISは非常に多くの分野で専門的なソリューションを持っており、どんな相談を投げかけても的確に応えてもらえる安心感がありますね。他の一般企業がどのようにIT化に取り組んでいるかを踏まえた、適切なアドバイスも非常に参考になります。現在、ERPに続くテーマとして、内部統制、危機管理の強化に取り組んでいますが、TISの経験を活かし、ぜひ当社に足りない点をどんどん提案いただければと思います。

TIS担当者から

TIS株式会社
ITソリューションサービス本部
ビジネスシステムコンサルティング事業部
エンタープライズリソースマネジメント第3部 主査
鳥居甲子夫

お客様、協業ベンダーのみなさんが同じ目的意識を持ち、マルチベンダー体制のプロジェクトを円滑に進められたことに感謝いたします。特に、お客様ご自身に、終盤の稼働検証を念入りに行っていただいたおかげで、移行後のノートラブルを達成することができました。カットオーバー後の打ち上げでは、お客様、協業ベンダーと楽しい時間を過ごすことができ、満足度の高い、記憶に残るプロジェクトになりました。

  • TIS、TISロゴはTIS株式会社の商標または登録商標です。
  • その他の会社名、商品名、サービス名は各社の商標またはサービスマークです。

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更新日時:2023年10月4日 23時18分