川崎市様

自治体向け資産マネジメントシステムで市有資産を適正化

川崎市は、財政健全化の取り組みの一つとして、保有する各種施設のあり方を中長期的に見直す『資産マネジメント』に注力している。TISは川崎市と協力し、公有財産管理機能と資産マネジメント機能を高度に連携させる、全国でも前例のない資産マネジメントシステムの開発を実現した。

団体名 川崎市 財政局資産管理部 資産運用課
業務内容 公有財産(建物・土地など)の管理
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課題

自治体に求められる資産マネジメント

神奈川県川崎市は、人口約145万人の政令指定都市のひとつだ。最近では、待機児童ゼロや学校給食の充実を掲げるなど、子育て支援を通じた次世代育成の施策でも、全国から注目を集めている。
川崎市は近年「資産マネジメント」の取り組みを推進している。今、多くの地方自治体にとって、財政再建は危急の課題。保有する施設や土地のコンパクト化・複合化などによる歳出削減が求められており、川崎市もその例外ではなかった。
川崎市財政局資産管理部の嶋直隆氏は、同市における資産マネジメントの必要性について、「市民館や図書館など施設の約7割は、10年後に築30年を越えることになります。川崎市は少子高齢化・人口減の進展が全国平均より遅いとはいえ、中長期的に見て、将来の公共施設のあり方を早めに考えていく必要がありました」と語る。また、「本格的な資産マネジメントを進めるには、市が保有する施設の情報を一元管理し、広く可視化・共有、さらに分析データを抽出する仕組みが必要でした」と振り返る。

施設情報を一元管理する情報基盤が必要に

これまで、川崎市が保有する建物・土地などの情報は、庁内LANの「公有財産管理システム」で管理を行っていた。同システム上に設けられた“公有財産台帳”には、市が保有するすべての資産の情報が登録され、従来から行ってきた公有財産管理業務に活用。このシステムは2009年にTISが受託し構築したものだ。
しかし、資産マネジメントに欠かせない、施設ごとの維持管理コストや劣化情報、利用率などについては、それぞれの所管部署が台帳で管理しており、散在した状態。まずは、必要な情報を1カ所に集める必要があった。
さらに、「従来のシステムは、あくまで公有財産管理を目的としたもの。登録した施設情報を分析し、将来の計画を立てるためのデータを抽出する機能が不足していました」と、財政局資産管理部の吉田純二氏は振り返る。こうして川崎市は2011年より、資産マネジメントの仕組みづくりに向けて、本格検討を開始した。

選択

パッケージ製品では目的を満たせず

当初川崎市では、他の自治体の前例にならい、資産マネジメント機能に特化したパッケージ製品の導入を検討していた。しかし、それには幾つかの課題があったという。 「既存システムとは別に、資産マネジメント専用のシステムを立てた場合、施設名称・所在地・築年数などの基本的な情報を双方のシステムで個別に入力することになります。変更のたびに二重の入力作業が必要になるなど、メンテナンスが煩雑で、情報の確度も低下する恐れがありました」(吉田氏)。
加えて、当時のファシリティマネジメントパッケージ製品の多くは、施設の建設時のメンテナンス計画の進捗をチェックすることに主眼が置かれ、川崎市が想定していた使い方には合致していなかった。 「実際の建物は、海の近くなら塩害で傷みますし、幹線道路沿いは排気ガスの影響で老朽化が早く進む傾向があるなど、メンテナンス計画どおりにはいきません。実際の施設の状態を逐次チェックして情報を更新し、工事の優先順位を変えていくといった用途には向いていないと判断しました」(嶋氏)。

市の公有財産管理システムに精通したTISに依頼

そこで川崎市は、パッケージ製品ではなく、公有財産管理機能と資産マネジメントの機能を兼ね備えた、独自システムを導入する方向へと舵を切る。しかし、この選択には不安な要素もあったという。「他の地方自治体では、公有財産管理のシステムと、資産マネジメントのシステムを個別に運用する例はあったものの、両者を高度に連携させて、ひとつの統合システムとして運用する試みは聞いたことがありませんでした」(嶋氏)。
川崎市は、この新たなシステムの構築にあたり、既存システムの開発を担当したTISに打診する。「前例がないだけに、川崎市が仕様を固めて開発を依頼するのではなく、SIerとともにシステムを作り上げていく必要があると感じました。そこで、川崎市の公有財産管理システムを熟知したTISに開発を依頼することにしました」(嶋氏)。

導入

目的意識を共有して開発に臨む

こうして2011年7月、川崎市の資産マネジメントシステムの開発プロジェクトがスタートした。TISとしても初の試みとなる公共向け資産マネジメントシステムだけに、要件定義には慎重を期し、通常のプロジェクトに比べかなり長い期間を割り当てたという。
2週間に一度ミーティングを開き、川崎市とTISの担当者が直接顔を合わせて課題を洗い出す。そして、その解決策を次回のミーティングで持ち寄り、さらに深い検討を行うという協力体制により、要件を一から積み上げていった。
また、その後の設計レビューからコードレビューに至るまで、常に川崎市とTISが密に意見交換を行いながら、プロジェクトは進んだ。「TISには、システムの『管理者の立場』と『ユーザーの立場』の、双方の視点に立った意見を数多く出していただき、それがシステムの使い勝手の向上に結びつきました」(嶋氏)。
そして2012年4月、当初の予定どおりに第一期のシステムが稼働を開始した。「これで建物の現地調査から、情報登録、施設の将来推計に至るまで、川崎市に必要な業務フローを遂行するための基盤ができあがりました。そして、本システムを実際の業務で使用しつつ、機能面で過不足がないかを洗い出していきました」(嶋氏)。

施設の長寿命化を目的として情報管理を強化

その後、約半年間の業務利用のなかで、川崎市における資産マネジメントで求められる情報および機能の傾向が明らかになっていった。「資産マネジメントは、大きく『施設の長寿命化』『資産保有の最適化』『保有財産の有効活用』の3つの取り組みから成り立っています。当初は他都市と同様に、施設の重複やムダをなくす『資産保有の最適化』を優先と考えていましたが、実際に情報を収集・評価してみると、市民一人あたりの施設面積数などは他の政令指定都市と比べ、さほど多くない。川崎市の場合は、既存施設の長寿命化を図ることが、最も財政面での効果が期待できるという認識に至りました」(吉田氏)。
そこで、川崎市とTISは2013年より、施設の詳細な劣化情報や修繕・更新履歴を登録できるよう、システムの改修に着手し、開発は2014年3月に完了した。

効果

資産マネジメントと施設の維持運営を効率化

現在、資産マネジメントシステムでは、川崎市が保有する全施設のうち、学校施設と市営住宅等を除いた約450の施設に関する詳細情報が管理されている。施設名称・所在地などの基本的な情報については、設計時の計画どおり、公有財産管理システムから自動的に情報取得を行う、高度連携が実現された。
施設の劣化情報の登録手順については、まず現地調査で、屋根・外壁・空調設備などの部位ごとに目視を行い、○×式のチェックシートへ記入。その後、庁舎のPCからシステムに情報の登録を行う。
本システムは、既に次年度の修繕計画を立てるなどの用途に活用されており、資産マネジメントの取り組みは着実に実を結んでいる。「たとえば、半年以内に修繕が必要な施設、空調のリプレイスが必要な施設、といった条件を指定すれば、該当する施設を素早く抽出することもできます」(吉田氏)。
また、「先日、資産マネジメントの取り組みを市民に紹介する冊子を作成しましたが、掲載する対象施設の一覧も瞬時に引き出せました。以前は、各部署が管理する台帳を見る必要があったので、格段の進歩ですね」(吉田氏)。

川崎市ならではの機能も実装

本システムには川崎市ならではのユニークな機能も実装されている。川崎市の「統合GISシステム」との連携により、施設情報を地図上にマッピングして表示できる機能もそのひとつ。たとえば施設の統廃合や複合化をシミュレーションする際、「半径500mにどんな施設があるのか」「増床の可能性は」といった確認を地図上で行うことが可能だ。
他にも、川崎市の要望で搭載された機能として、ユーザー自身が自由に施設情報の項目を追加・削除できる機能がある。「施設の劣化情報を管理する項目数は数千にも及び、しばしば項目の変更が必要となります。市販のパッケージ製品では、ここまでの自由度はありませんね」(吉田氏)。
今後は、同システムの機能や利用法を高度化していくことで、同市の資産マネジメントの取り組みをさらに加速させていきたいと抱負を語る。 「施設の外観や、ひび割れの状況など、撮影した写真をシステムに登録できないか、TISと検討を行っているところです。また、将来的に財務会計システムとの連携が可能になれば、システム運用がさらに効率化できると考えています」(吉田氏)。
こうしたシステムの成長を考えていくうえでも、川崎市がTISに寄せる期待は大きい。 「TISには、開発パートナーとして率直で忌憚のないアドバイスをいただき、さらに信頼が深まりました。今後も、効果的な資産マネジメントの推進に向けたアイデアをいただければと思います」(嶋氏)。

資産マネジメントシステム

お客さまの声

左から
川崎市 財政局 資産管理部 資産運用課
戦略推進担当係 担当係長 嶋 直隆氏
担当係長 吉田 純二氏

自治体向けシステムとしては全国に前例がない、公有財産管理と資産マネジメントの統合というチャレンジでしたが、TISの協力により目的を達成できました。設計フェーズが終わる直前に、データの管理方法を大幅に変える仕様変更が発生してしまったのですが、TISの迅速な対応で、予定どおりにカットオーバーを迎えることができ、感謝いたします。
今後もさらにシステムを成長させていきながら、川崎市の資産マネジメントの取り組みを高度化・効率化させていきたいと考えています。

TIS担当者から

TIS株式会社
公共・宇宙事業本部
公共ソリューション推進部主査
柴田 英一

川崎市様が推進する「資産・債務改革」の重要施策のひとつである本案件に参加できたことを光栄に思います。今後も、管理可能な情報の拡大、分析支援の機能など、自治体様の資産マネジメント業務の実情に即したシステムへと機能強化を図っていきます。
他の自治体様でも、施設の老朽化や生産年齢人口の減少といった社会情勢の変化に伴い、資産マネジメントの考え方が注目されており、TISのソリューションが課題解決のお役に立てればと考えています。

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更新日時:2016年10月6日 16時54分

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