Webシステム担当者のための入門ガイド～クラウドの基本編～

更新日：2025年6月13日

こんにちは！
企業の情報システム部門に配属され、クラウドを活用したWebシステムを担当するようになったものの、「クラウドが何かよくわからない…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、クラウドについて基本的な情報を解説します。

クラウドの概要理解にぜひお役立てください！

※こちらの記事ではWebシステムについても解説しています。あわせてご覧ください。
★コラム：「Webシステム担当者のための入門ガイド～Webシステムの基本編～」

1. クラウドとは？

1-1. クラウドの概要

「クラウド」という言葉を聞いたことはありますか？
正式には「クラウドコンピューティング」と言い、インターネットを通じてサーバーやデータの保存場所、業務で使用するソフトウェアなどのITリソースを、必要な時に必要な分だけ利用できるサービスを指します。

コンピューターを利用するには、データを保存するためのサーバーやストレージが必要です。

「クラウド」では、これらのサーバーやストレージ、ソフトウェアなどをクラウド事業者が一括管理し、必要な環境の準備・運用を行ったうえで、企業に貸し出す仕組みになっています。

■クラウドのイメージ図

これにより、企業はシステム構築に必要なサーバーやデータベースなどの環境を、インターネットを通じて簡単に利用できます。使用した時間やリソースの分だけ料金を支払う仕組みのため、コストの最適化も可能です。さらに、管理や運用はクラウド事業者が対応するため、開発者はシステムの設計・開発業務に専念できます。

ちなみに、クラウドに対する概念として「オンプレミス」があります。以前は、自社でサーバーやストレージを購入し、社内やデータセンターに設置して運用する「オンプレミス」が一般的でした。しかし近年では、クラウドサービスの機能・性能・信頼性が大幅に向上したことにより、業務の効率化やコスト削減、柔軟な働き方の実現を目的に、オンプレミスからクラウドへの移行を検討する企業が増えています。

2. クラウド版Webシステムの利点は？オンプレミスとの違いは？

クラウドとオンプレミスの基本的な仕組みを理解したところで、クラウドを活用してWebシステムを構築するメリットを、オンプレミスとの違いを踏まえながら見ていきましょう。

このように、クラウドとオンプレミスでは、環境構築の仕方、運用の負担、コスト面で大きな違いがあります。そして、クラウドを活用することで、オンプレミスの課題を解決し、より開発作業に集中しやすい環境を整えることができます。

3. クラウドの利用形態にはどんなものがある？

3-1. パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド

クラウドには、大きく分けてパブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドの3つの利用形態があります。

※プライベートクラウドは、リソースの管理者によって、さらに種類が分類されます。厳密に意識することは少ないかもしれませんが、知っておくと理解が深まります。
・オンプレミス型：自社で管理するデータセンターを利用し、自社もしくは特定の企業専用のクラウド環境として運用する形態。
・ホステッド型：他社（クラウド事業者）が管理するデータセンターを利用し、自社もしくは特定企業専用のクラウド環境として運用する形態。

上述の通り、それぞれの特徴が異なるため、用途や目的に応じた選択が重要です。

総務省が公表している「令和5年版 情報通信白書」では以下のように記載されています。

このように、新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及したことにより、「出社せずにシステムを安定運用したい」というニーズが高まり、同時にパブリッククラウドの導入コストのメリットや運用の効率性が広く認知されるようになりました。その結果、パブリッククラウドサービス市場は拡大し、現在ではビジネスに欠かせない存在となっています。

しかし、オンプレミス環境で運用しているシステムをいきなりパブリッククラウドへ全面移行するのは難しいケースもあります。その場合は、ハイブリッドクラウドを活用し、段階的にパブリッククラウドへの移行を進めるのがおすすめです。

クラウド移行の詳しい内容については、以下の記事をご覧ください。

★コラム：「システムのクラウド移行とは？メリットやリスク、失敗しないポイントを解説」

近年、パブリッククラウドでは「サーバレス」や「マネージドサービス」といった技術が大きく発展しています。従来のパブリッククラウド環境では、サーバー調達や管理の手間を省くことができるものの、OSのアップデートやスケーリング、バックアップ設定などの運用管理は利用者側で行う必要がありました。しかし、サーバレス技術を活用すると、サーバーを意識することなく、必要なタイミングで自動的にOSやスケーリング設定が適用され、即座に利用できます。これにより、複雑な設定や運用管理の負担が大幅に軽減されます。また、マネージドサービスを導入することで、データベースのバックアップやアプリケーション管理などの専門的な作業もクラウド事業者が代行するため、さらに運用負担を軽減できます。このような技術の活用により、企業はインフラ管理の手間を削減し、システム全体を高品質かつ迅速に構築できるようになりました。

なお、TISの「デジタル基盤オファリングサービス」では、サーバレス技術をはじめとするクラウドの強みを積極的に活用し、お客様が安心して利用できる高品質なシステム環境を提供しております。

★TISデジタルオファリングサービスの詳細はこちら

3-2. 代表的なパブリッククラウド

同白書には、パブリッククラウド市場で高いシェア率を誇る3つのクラウドサービスと、についても書かれています。↓

※GCPはGoogle Cloudの旧名称

さらに、「令和6年版 情報通信白書」によると、AWS、Azure、Google Cloudの3社で世界のパブリッククラウド市場の約7割を占めていることが明らかになっています。

■世界のパブリッククラウド市場のシェア率

出典：総務省「令和6年版 情報通信白書 | クラウドサービス」を基に作成

では、それぞれの特徴を見ていきましょう。

各クラウドには、それぞれのサービス特有の特徴があるため、目的に応じて適切なクラウドを選定しましょう。

また、クラウドサービスを活用する際には、システムをより効果的に設計、運用していくためのフレームワークを理解しておくことが重要です。例えば、AWSの「Well Architected Framework」では、セキュリティ対策、コスト最適化、システムの信頼性向上などの設計指針が明確に示されており、クラウドを活用する際の参考になります。

参考：Amazon Web Services, Inc.「AWS Well-Architected – 安全で効率的なクラウドアプリケーション」

4. クラウドのサービス形態には何がある？

クラウドには、AWS、Azure、Google Cloudなどの「サービス提供者の違い」の他に、IaaS（Infrastructure as a Service）、PaaS（Platform as a Service）、SaaS（Software as a Service）という３つのサービス形態があります。それぞれ、利用者と事業者の責任範囲が異なるため、用途に応じて選択することが重要です。ここでは、各サービス形態について紹介します。

■オンプレミスと各サービス形態の図

このように、システムの要件や運用体制に応じて、IaaS、PaaS、SaaSを使い分けることが重要です。
なお、ここで紹介した形態以外にも、DaaS（Desktop as a Service）やFaaS（Function as a Service）など、さまざまなサービス形態があります。

5. まとめ

いかがでしたか？
クラウドは「インターネットを通じてITリソースを利用するサービス」であり、年々オンプレミスからの移行が加速しています。
しかし、クラウドを活用したWebシステムを一から開発するのは、大きな負担に感じるかもしれません。

ちなみに…
TISでは「デジタル基盤オファリングサービス」を通じて、クラウド導入を支援しています。本サービスはAWSとTISの自社データセンターを活用し最適な基盤環境を提供します。
TISの強みである決済領域の自社ブランド”PAYCIERGE（ペイシェルジュ）”で培った安心・安全なインフラ基盤を活用して、更にお客様のDX推進をサポートする各種サービス群と先進テクノロジーを提供します。また、アーキテクチャコンサルティングチームがトータルでサポートし、お客様のビジネス成功を支援します。
本記事で紹介したパブリッククラウドやハイブリッドクラウドも、本サービスを活用することで簡単に導入可能です。

ぜひ、この機会に利用してみてください。
★TISデジタル基盤オファリングサービスの詳細はこちら

クラウドを活用したWebシステムを担当することになった際は、基本的な構成や仕組みを理解しておくことが大切です。
クラウドを活用するにあたり、不安を感じることもあるかもしれませんが、学んだ知識を業務に活かしながら、少しずつ理解を深めていきましょう。
なお、本シリーズでは、今後も企業の情報システム部門に配属さればかりの方を対象に、ITに関連する基本的な知識から、実際の現場で活かせる情報を幅広くお届けしていく予定です。
ぜひ、お楽しみに！

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本コラムの執筆者

渡邉　千春

2023年度新卒でTIS入社。PAYCIERGEのクラウド領域を担当。マルチクラウドや生成AI活用など日々新たな挑戦を重ね成長し、先進の知見を持ってお客様の"DX実現"というチャレンジの成功に貢献することを目指す。