金融系ITシステムの開発・運用でよくある課題や検討ポイントを解説
更新日:2026年3月16日
金融系ITシステムは、銀行・証券・保険・決済など、さまざまな金融サービスを支える重要なITインフラです。高い安定性やセキュリティに加え、法規制や業界ルールへの対応が求められる点で、一般的な業務システムとは異なる特性があります。
本記事では、金融系ITシステムの基本的な仕組みを整理したうえで、開発・運用において多くの企業が直面しやすい課題や、近年の動向、パートナー選定時の検討ポイントなどを分かりやすく解説します。金融系ITシステムの導入や運用改善を検討する際の参考情報としてご活用ください。
■目次
1. 金融系ITシステムとは
本記事で解説する「金融系ITシステム」とは、銀行・証券・保険・決済などの金融取引を支えるITシステムの総称です。
預金・送金・決済・取引処理など、金融取引を実行する基盤として、企業活動や社会を支える役割を担っています。そのため、金融系ITシステムに障害が発生し、サービスが停止した場合には、経済活動への影響や企業の信用低下など、さまざまな影響が生じる可能性があります。
こうした特性から、金融系ITシステムには、一般的な業務システムと比べて、より高い信頼性や安全性を前提とした設計・運用が求められます。
2. 金融系ITシステムに求められる要件・機能
金融系ITシステムの開発・運用にあたっては、一般的に次のような要件が重要とされています。
- 継続して稼働できる安定性
- 金融業界の規制・ルールへの対応
- 高度なセキュリティ機能
それぞれ詳しく解説します。
2-1. 継続して稼働できる安定性
金融系ITシステムは24時間365日稼働が求められるケースが多く、サービスを継続的に提供できる安定性が重要です。そのため、システム停止や性能劣化を極力抑える設計・構成が求められます。
安定稼働を実現する手段としては、クラウドなどの技術を活用した冗長構成の採用や、長年の運用で複雑化したレガシーシステムの見直しなどが挙げられます。ただし、これらの取り組みはシステムの特性や運用状況に応じて検討する必要があります。
また、障害の発生を完全に防ぐことは難しいため、システムを常時監視し、障害発生時には速やかに復旧できる運用体制を整備することも重要です。詳細は「システム障害の防止・対応」で解説します。
2-2. 金融業界の規制・ルールへの対応
金融業界では、関連する法律や規制、各種ガイドラインへの対応が求められ、コンプライアンスを前提としたシステム設計・運用が重要となります。
他業界と比べて、金融分野は法規制やガイドラインが多岐にわたる傾向があり、対応が不十分な場合、業務リスクの増大や行政指導、信用低下につながる可能性があります。
そのため、金融庁が示すガイドラインや、業界団体が定めるルールなどを踏まえ、自社の業務内容に適した形でシステムを設計・運用することが求められます。
あわせて、内部統制や監査対応を考慮した仕組みづくりも重要です。例えば、システム操作ログや取引ログを適切に管理・保管し、後から検証可能な状態を維持することで、不正防止や監査対応を円滑に行える体制を構築できます。
2-3. 高度なセキュリティ機能
金融系ITシステムでは、取り扱う情報や資産の性質を踏まえ、高い水準のセキュリティ対策が求められます。一般的な業務システムと同様に個人情報を扱う場合も多い一方で、金銭や資産に直接関わる点が特徴です。
そのため、通信やデータの暗号化、利用者や管理者ごとのアクセス制御など、不正アクセスや情報漏えいを防ぐための基本的なセキュリティ機能が重要となります。
加えて、セキュリティ監視を継続的に行い、異常を早期に検知・対応できるインシデント対応体制を整備することで、被害を最小限に抑えることが期待されます。
3. 金融系ITシステムの開発・運用でよくある課題
金融系ITシステムの開発・運用においては、次のような点が課題として挙げられることがあります。
- レガシーシステムへの対応
- システム障害の防止・対応
- 高度なIT人材の確保
- ベンダーロックインへの対応
以下では、それぞれの課題の背景や、一般的に取られている取り組みの考え方について解説します。
3-1. レガシーシステムへの対応
金融系ITシステムの開発・運用における代表的な課題の一つとして、レガシーシステムへの対応が挙げられます。
レガシーシステムとは、長年にわたり利用されてきた基幹システムや、古い技術・設計思想のもとで構築・運用されているシステムを指します。こうしたシステムは、度重なる改修によって構成が複雑化している場合があり、保守・運用コストの増加や、変更時の影響範囲が把握しにくいといった課題を抱えることがあります。また、最新技術やクラウドサービスとの親和性が低く、機能追加や改修に時間やコストがかかるケースも見られます。
このような状況にある企業では、既存システムをどの範囲まで維持・活用し、どの部分を見直していくのかといった観点で、段階的な対応方針を検討することが課題となります。
3-2. システム障害の防止・対応
システム障害への備えも、金融系ITシステムの開発・運用において重要な課題の一つです。
システム障害の要因は、ハードウェアやソフトウェアの不具合、運用ミス、外部からの攻撃など多岐にわたります。そのため、すべての障害を未然に防ぐことは難しく、障害発生を前提とした対応体制を整備する考え方が一般的です。
具体的には、障害発生時に迅速に状況を把握し、影響を最小限に抑えながら復旧できる運用体制の構築が求められます。その一環として、運用作業の自動化や標準化を進め、属人的な対応を減らす取り組みが行われることもあります。
3-3. 高度なIT人材の確保
金融系ITシステムの開発・運用においては、高度なITスキルを持つ人材の確保も継続的な課題となっています。IT業界全体で人材不足が指摘される中、金融系ITシステム特有の業務や運用に精通した人材は、特に確保が難しい傾向があります。
必要な人材が十分に確保できない場合、日常運用や障害対応にかかる負荷が高まり、結果として対応の遅れや品質低下につながる可能性があります。
こうした状況に対し、社内育成を進める企業もあれば、外部リソースを活用して運用体制を補完するなど、複数の選択肢を組み合わせて対応するケースも見られます。
3-4. ベンダーロックインへの対応
金融系ITシステムの開発・運用においては、ベンダーロックインへの対応が課題となる場合もあります。ベンダーロックインとは、特定のベンダーや製品、技術に過度に依存することで、システムの変更や見直しが困難になる状態を指します。
この状態が続くと、システムの仕様や設計がブラックボックス化し、内部で全体像を把握しにくくなるほか、技術選択の自由度が制限されることで、将来的なシステム刷新やビジネス変化への対応が難しくなる可能性があります。
そのため、標準技術の活用やドキュメント整備、社内への知識共有などを通じて、特定ベンダーへの依存度を適切にコントロールする取り組みが行われています。
4. 金融系ITシステムの開発・運用について知っておきたい最新動向
金融系ITシステムの開発・運用を検討するにあたっては、技術動向や業界全体の変化を把握しておくことも重要です。
近年の金融系ITシステム分野では、特に次のようなキーワードが注目されています。
- クラウド活用の広がり
- エンベデッドファイナンスの進展
- ブロックチェーン技術の検討拡大
それぞれ詳しく解説します。
4-1. クラウド活用の広がり
クラウドは、業界を問わず活用が進んでいる基盤技術であり、金融系ITシステムの開発・運用においても、適用範囲を限定しながら導入が進んでいます。
これまで金融業界では、セキュリティや規制対応の観点からオンプレミス環境が主流とされてきましたが、近年はクラウド技術の成熟や制度整備の進展を背景に、クラウドを選択肢の一つとして検討する動きが広がっています。
クラウドには、リソースの柔軟な拡張性や運用負荷の軽減といった特性があり、金融系ITシステム運用の効率化や安定化につながる可能性があります。一方で、金融系ITシステムではセキュリティ確保や各種規制・ガイドラインへの準拠が前提となるため、利用範囲や運用ルールを慎重に設計した上で導入を進めることが重要です。
参考:金融業界の基幹システムをクラウド化!メリットやリスク、移行時のポイント、導入事例を解説
4-2. エンベデッドファイナンスの進展
金融系ITシステム分野における近年の動向として、エンベデッドファイナンスへの関心の高まりも挙げられます。
エンベデッドファイナンスとは、決済・融資・保険といった金融機能を、ECサイトや業務システムなどの非金融サービスに組み込む考え方です。この仕組みにより、非金融企業が自社サービスの一部として金融機能を提供するケースが増えつつあります。
こうした動きの背景には、金融機関がAPIを通じて機能を提供するBaaS(Banking as a Service)の広がりがあります。BaaSを活用することで、非金融企業は自社で金融系ITシステムを構築することなく、必要な機能を組み込める一方、セキュリティや責任分界点の整理、規制対応などを十分に検討する必要があります。
参考:エンベデッドファイナンスとは?事例やメリット・導入時に検討すべき課題
4-3. ブロックチェーン技術の検討拡大
ブロックチェーン技術は、さまざまな分野で活用が検討されており、金融系ITシステム分野でも実証実験や部分的な導入が進められています。
ブロックチェーンは、取引データを分散的に管理し、改ざんが困難な形で記録できる仕組みを持つ技術であり、信頼性が重視される金融分野との親和性が指摘されています。また、取引履歴の共有や検証がしやすい点から、監査対応や内部統制の観点での活用が検討されるケースもあります。
一方で、既存システムとの連携や処理性能、法規制への対応など、実運用に向けた課題も多く、金融系ITシステムへの本格的な導入にあたっては、慎重な検証や段階的な活用が前提とされています。
5. 代表的な金融系ITシステムの例
金融機関で利用されている代表的な金融系ITシステムとして、一般的に次のような種類が挙げられます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 情報系システム | データの蓄積・整理・共有を行い、分析や意思決定を支えるシステム |
| インターネット・モバイルバンキングシステム | 各種金融サービスをオンラインで利用できるようにするシステム |
| 資金証券系システム | 資金取引や証券取引を支える市場関連システム |
| 対外接続系システム | 他の金融機関や決済機関、外部サービスと接続するためのシステム |
| 営業店システム | 店舗での業務を支援するためのシステム |
| 国際系システム | 国境を越えた金融取引を管理・処理するシステム |
| 勘定系システム | 預金・融資などの主要な金融取引を管理・処理する基幹システム |
上記の金融系ITシステムについて、それぞれの特徴・役割などを詳しく解説します。
5-1. 情報系システム
情報系システムは、データの蓄積・整理・共有を行い、分析や意思決定を支援する役割を担うシステムです。
勘定系システムなどから収集した取引データを活用し、経営管理やマーケティング、データ分析といった用途に利用されるケースが一般的です。
情報系システムの範囲や定義は金融機関によって異なりますが、データウェアハウス(DWH)や共通データベースなどの分析系システムを指すことが多くなっています。
5-2. インターネット・モバイルバンキングシステム
インターネット・モバイルバンキングシステムとは、金融機関が提供する各種金融サービスを、PCやスマートフォンなどの端末から利用できるようにするシステムです。
残高照会や振込、振替などの手続きを、店舗窓口に出向くことなくオンラインで行える環境を顧客に提供します。
通常、単体で取引処理を完結させるのではなく、勘定系システムや対外接続系システムと連携しながら取引データを管理・処理します。
5-3. 資金証券系システム
資金証券系システムとは、金融機関が行う資金取引や、国債・社債・株式・デリバティブなどの証券取引を支えるシステムです。「市場系システム」と呼ばれることもあります。
市場価格や金利、為替レートなどの外部市場データを取り込み、取引執行やポジション管理、損益管理、リスク管理などの処理を行います。
市場の変動に応じた迅速かつ正確な処理が求められるため、高い処理性能や信頼性が重視されるシステムです。
5-4. 対外接続系システム
対外接続系システムは、金融機関が他の金融機関や決済機関、取引所、外部サービス事業者とデータ連携を行うためのシステムです。
全銀システムや証券取引所、決済事業者のシステムなどと接続し、振込や証券取引、クレジットカード処理などに関するデータをやり取りします。
外部と機密性の高いデータを扱うため、暗号化や認証、監視などのセキュリティ対策が重要となります。
5-5. 営業店システム
営業店システムは、金融機関の店舗での業務を支援するシステムです。口座開設や入出金、振込といった顧客対応業務を処理します。
窓口端末やATM、通帳繰越機、両替機などの店舗設置機器と連携し、顧客情報や口座情報を参照・更新しながら、勘定系システムと連動して処理を行います。
5-6. 国際系システム
国際系システムは、金融機関が国境を越えた金融取引を行う際に利用されるシステムです。
外国為替取引や国際送金などを管理・処理し、SWIFT(国際銀行間金融通信協会)などの国際金融ネットワークを通じて、海外の金融機関と取引情報をやり取りします。
5-7. 勘定系システム
勘定系システムは、金融機関の中核を担う基幹システムであり、預金や融資といった主要な金融取引を管理・処理します。
口座の入出金管理や融資残高管理、利息計算などの勘定処理を担い、営業店システムや対外接続系システム、インターネット・モバイルバンキングシステムなどの周辺システムと連携して、金融機関全体の業務を支えます。
高い正確性や信頼性が求められ、障害時にも業務を継続できる設計や、セキュリティ対策が重視されるシステムです。
6. 金融系ITシステムの運用に必要な業務
金融系ITシステムを適切に運用するには、次のような業務に対応できる体制を整えることが重要です。
- システム監視・保守
- 障害・インシデント対応
- セキュリティ・リスク管理
金融系ITシステムは24時間365日の稼働が求められるケースが多く、これらの業務を継続的に実施する必要があります。そのため、業務の内容やシステム特性に応じて、運用の自動化や標準化を検討することが一般的です。
それぞれどのような業務が含まれるのか、詳しく解説します。
6-1. システム監視・保守
システムの稼働状況を監視し、必要なメンテナンスを行う保守作業は、金融系ITシステム運用において定常的に発生する業務です。
監視業務では、サーバーやネットワーク、アプリケーションの稼働状況を継続的に確認し、性能低下や障害の兆候を早期に検知します。保守業務では、ソフトウェアの更新やセキュリティパッチの適用、ハードウェアの点検・更改などを計画的に実施します。
これらの業務を継続的に行うことで、障害の未然防止やセキュリティ水準の維持につながり、金融系ITシステムの信頼性と安全性を保つことが期待されます。
6-2. 障害・インシデント対応
金融系ITシステムの運用では、障害やインシデントが発生した場合に備えた対応体制の整備も重要です。
障害・インシデント発生時には、原因の切り分けや影響範囲の把握を迅速に行い、状況に応じた暫定対応や復旧作業を進める必要があります。また、過去の事例や監視結果をもとに、障害やインシデントの兆候を把握し、事前に対策を講じるといった予防的な取り組みも行われています。
6-3. セキュリティ・リスク管理
金融系ITシステムでは、個人情報や取引情報などの機密性の高い情報を扱うため、セキュリティ・リスク管理も重要な運用業務の一つです。
通信の暗号化やアクセス制御といった技術的な対策に加え、担当者の権限管理や運用ルールの整備など、組織・プロセス面での対応も求められます。
また、定期的な脆弱性診断やセキュリティ監査を通じて、システムの状態を確認し、必要に応じて改善を行うことで、リスクを継続的に管理していくことが重要とされています。
7. 金融系ITシステム開発の基本的な流れ
金融系ITシステムの開発を進めるにあたっては、一般的に次のような工程を踏むケースが多く見られます。
- 要件定義
- 設計
- 開発・コーディング
- テスト
- 運用開始
それぞれ詳しく解説します。
7-1. 要件定義
要件定義は、金融系ITシステム開発において重要な工程の一つです。業務担当者や関係部署へのヒアリングを通じて、システムで実現したい業務内容や機能、性能要件、セキュリティ要件などを整理します。
金融分野では、法令や業界ガイドラインへの対応も重要な前提条件となります。要件の整理が不十分な場合、後続工程に影響を及ぼす可能性があるため、関係者間で認識をすり合わせながら進めることが一般的です。
7-2. 設計
設計工程では、要件定義で整理した内容をもとに、システムの構成や処理の流れを具体化します。
画面構成や機能の振る舞いなどシステムの外部仕様を定める「基本設計」と、データベース構成やシステム間連携など内部仕様を定める「詳細設計」を行うケースが多くあります。
7-3. 開発・コーディング
開発・コーディング工程では、設計書に基づいてプログラムを実装します。複数人での開発が一般的であるため、コーディング規約の統一やソースコード管理を行いながら進めます。
金融系ITシステムでは多様な機能を実装する必要があることから、機能や処理単位で開発を進め、各単位ごとに単体テストを実施しながら品質を確認する進め方が一般的です。
7-4. テスト
テスト工程では、単体テストを終えた各プログラムや機能を組み合わせ、要件通りに動作するかを検証する結合テストを行います。
あわせて、本番に近い利用状況を想定した総合テストを実施し、要件定義で設定した仕様を満たしているかを確認します。テストは、通常、本番環境とは分離したテスト環境で行われます。
金融系ITシステムでは、わずかな不具合が業務や利用者に影響を及ぼす可能性があるため、テスト結果をもとに修正を重ねながら品質を高めていくことが重要です。
7-5. 運用開始
テストが完了した後、本番環境へシステムを移行し、実際の業務での運用を開始します。
運用開始にあたっては、監視・保守・運用業務が円滑に行えるよう、関係者への操作説明やマニュアル、業務フローの整備を行います。運用開始直後は想定外の事象が発生する場合もあるため、状況を注視しながら対応することが一般的です。
運用開始後も、法改正への対応や技術動向を踏まえた機能改善などを行い、システムを継続的に見直していくことが求められます。
8. 金融系ITシステムの開発・運用について検討すべきポイント
金融系ITシステムの開発・運用においては、要件定義や設計の段階で、いくつかの観点を整理しておくことが重要です。一般的には、次のようなポイントが検討対象となります。
- 業務要件や前提条件と整合しているか
- 障害・トラブルへの備えは十分か
- 運用を見据えた設計になっているか
- 将来的な拡張性を考慮できているか
それぞれ詳しく解説します。
8-1. 業務要件や前提条件と整合しているか
金融系ITシステムの開発・運用を検討する際には、業務要件や前提条件とシステム設計が整合しているかを確認することが重要です。
金融系ITシステムは、業務効率化や新サービスの提供といった目的だけでなく、法令対応や既存システムの更改、取引量の増加への対応など、さまざまな前提条件を踏まえて導入・刷新されるケースが多くあります。こうした前提条件を整理したうえで、システムに求められる役割や制約を明確にしておくことで、必要な機能や性能要件を検討しやすくなります。
また、現在の業務だけでなく、将来的な事業展開や環境変化を見据えて前提条件を整理しておくことで、後から大きな設計変更が必要となるリスクを抑えることにもつながります。
8-2. 障害・トラブルへの備えは十分か
金融系ITシステムの開発・運用においては、障害やトラブルが発生した場合の影響を想定し、事前に備えておくことも重要な検討ポイントです。
具体的には、障害発生時にどの業務へ影響が及ぶのか、影響範囲やリスクを整理したうえで、冗長化やバックアップなどの対策を検討します。
あわせて、障害発生時の対応フローや連絡体制を整理し、関係者が状況に応じて行動できるようにしておくなど、組織面での備えも検討対象となります。
8-3. 運用を見据えた設計になっているか
開発段階から運用のしやすさを考慮することは、金融系ITシステムを安定的に運用していくうえで重要な視点です。
例えば、次のような点について、自社の運用体制やリソースに照らして確認するケースがあります。
- システム構成や仕様が過度に複雑になっていないか
- 運用手順やマニュアルが整理されているか
- 特定の担当者に依存しない体制を想定できているか
- 自動化や標準化を取り入れる余地があるか
- 外部委託を含めた運用体制を検討しやすい構成か
これらの観点を踏まえ、運用コストや人員体制などを考慮しながら、自社にとって無理のない設計になっているかを検討することが重要です。
8-4. 将来的な拡張性を考慮できているか
金融系ITシステムは長期間にわたって利用されるケースが多いため、将来的な拡張性を考慮した設計も重要な検討ポイントとなります。
取引量の増加や新サービスの追加が発生した場合でも、性能や安定性を維持できる構成かどうかを確認しておくことが一般的です。また、クラウドやAPI連携などの技術を取り入れる余地があるかといった点も、拡張性を検討する際の観点となります。
加えて、金融分野では法規制や業界ルールの変更が想定されるため、将来的な要件変更に柔軟に対応できる設計かどうかも重要な判断材料となります。
9. 金融系ITシステムの開発・運用のパートナー企業を選ぶ際のポイント
金融系ITシステムの開発・運用においては、業務内容や体制によって、外部のパートナー企業と連携するケースも多く見られます。こうした場合には、自社の状況や目的に合ったパートナーを慎重に検討することが重要です。
パートナー企業を検討する際の一般的な観点として、次のようなポイントが挙げられます。
- 実績・サポート事例の内容
- 得意とする技術領域
- サービス・サポート範囲
それぞれ詳しく解説します。
9-1. 実績・サポート事例の内容
パートナー企業を検討する際には、これまでの実績やサポート事例を確認することが参考になります。
例えば、次のような観点から事例を確認することで、その企業がどのような領域に強みを持っているかを把握しやすくなります。
- 金融分野におけるシステムの開発・運用実績があるか
- 自社の業務領域やシステム規模に近い事例があるか
- 大規模システムの構築や移行に関わった実績があるか
- 長期的な運用・保守を支援した事例があるか
実績を確認する際には、件数の多さだけでなく、どのような役割を担っていたか、支援範囲について、確認しておくことが重要です。
9-2. 得意とする技術領域
パートナー企業ごとに、得意とする技術分野や経験領域は異なります。そのため、自社のシステム特性や将来的な方向性と、企業の強みが合致しているかを確認することが重要です。
金融系ITシステムでは、勘定系や対外接続系など、金融特有のシステム構成に関する知見が求められる場面も多くあります。こうした分野での経験がある企業であれば、業務要件や制約条件を踏まえた設計を検討しやすくなります。
また、クラウドやAPI連携などの技術についても、将来的な拡張やシステム更改を見据えて、どの程度の知見や実績があるかを確認するケースがあります。
9-3. サービス・サポート範囲
パートナー企業を検討する際には、どこまでの業務を支援してもらえるのかといったサービス・サポート範囲も重要な観点となります。
金融系ITシステムは、開発後も長期にわたって運用されることが多いため、要件定義から設計・開発、運用・保守までのうち、どの工程を担ってもらうのかを整理しておくことが一般的です。
例えば、次のような点を確認することで、役割分担や責任範囲を明確にしやすくなります。
- 要件定義から開発、運用・保守までの対応範囲
- 24時間365日対応の可否や対応レベル
- 障害発生時の対応範囲や責任分界点
- 将来的な機能追加や改善への対応可否
自社で担う部分と外部に委ねる部分を整理したうえで、無理のない体制を構築できるかを検討することが重要です。
10. まとめ
金融系ITシステムは、社会や経済活動を支える重要な基盤であり、高い安定性やセキュリティを前提とした設計・運用が求められます。また、システムは開発して終わりではなく、24時間365日の監視・保守や障害対応、法改正への継続的な対応など、運用を含めた長期的な視点での取り組みが重要です。
こうした特性を踏まえると、金融系ITシステムの開発・運用では、技術面だけでなく、金融分野特有の業務や制度、運用を理解した体制づくりが求められます。自社の体制やリソースに応じて、内製・外部活用を含めた適切な役割分担を検討することが、安定した運用につながります。
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