システム運用改善の方法とは?よくある問題点と効果的なソリューション
更新日:2026年3月16日
企業のITシステムは、業務効率の向上や安定したサービス提供を支える重要な基盤です。一方で、老朽化したレガシーシステムや属人化した運用体制、人材不足など、システム運用に関する課題を抱える企業も多く見られます。
本記事では、システム運用において一般的に指摘される課題を整理した上で、企業が検討すべき改善の方向性や、運用改善に向けた代表的なソリューションについて、分かりやすく解説します。
■目次
1. システム運用改善の重要性
企業にとって、社内システム運用の改善は、業務の安定的な遂行や事業成長を支える基盤として重要な取り組みの一つです。
日本の企業ではITシステムの老朽化やIT人材の不足など、システム運用において問題を抱えていることが少なくありません。IPA(情報処理推進機構)が公開している「DX 動向 2025」によると、レガシーシステムの刷新状況について、一部を含めレガシーシステムが残っていると回答した企業の割合は、2024年の調査で合計62.7%にも及びます。
出典:DX 動向 2025 P46 図表 2-17|独立行政法人情報処理推進機構
こうした背景を踏まえ、DX推進やクラウド導入など、システム運用の見直しに取り組む企業が増加しています。
システム運用の改善は、企業活動の安定性を高めるだけでなく、変化の激しい事業環境に対応していくための土台としても重要なテーマといえるでしょう。
2. システム運用改善を行うメリット
システム運用の改善に取り組むことで、企業はさまざまな効果を期待できます。
ここでは、代表的なメリットとして、次の3つを紹介します。
- サービスの安定性確保
- 生産性の改善
- 企業イメージの維持・向上
それぞれ詳しく解説します。
2-1. サービスの安定性確保
システムの運用改善は、サービスの安定的な提供につながります。
運用改善によって監視体制や障害対応フローを整備することで、トラブルの早期検知や迅速な復旧が可能となり、システムのダウンタイムを抑えやすくなります。
また、定期的なメンテナンスやアップデートを計画的に実施しやすくなることで、セキュリティリスクの低減や、長期的なシステムの信頼性向上も期待できます。このように、システム運用改善は、必要な運用業務を安定して遂行できる体制づくりにつながり、結果としてシステムの安定稼働を支える要素となります。
2-2. 生産性の改善
システム運用改善がもたらすメリットの一つに、業務全体の生産性向上が挙げられます。
業務を支えるシステムが効率的に稼働することで、従業員はトラブル対応や手作業に追われる時間が減り、本来注力すべき業務に集中しやすくなります。
例えば、運用プロセスを自動化することで、バックアップやログ管理といった定型作業にかかる工数を削減し、人的リソースをより付加価値の高い業務へ振り向けることが可能になります。
また、システムのレスポンスや操作性が改善されれば、情報検索やデータ処理がスムーズになり、日常業務の効率化にもつながります。
こうした積み重ねにより、業務効率の改善や働きやすさの向上が期待できます。
2-3. 企業イメージの維持・向上
システムの運用改善は、企業イメージの維持・向上という観点でも重要です。
運用上の不備によって障害やトラブルが発生すると、顧客や取引先からの信頼を損なう可能性があります。一方で、障害が発生しにくく、万が一発生した場合でも迅速に対応できる運用体制を整えることで、安定したサービス提供企業としての評価につながります。
また、最新の運用手法や技術を継続的に取り入れる姿勢は、変化に対応しようとする前向きな企業姿勢として受け止められる場合もあります。
このように、システム運用の改善は、結果として企業の信頼性やイメージを支える要素の一つといえるでしょう。
3. システムの保守・運用でよくある問題点
システムの運用改善には多くのメリットがある一方で、具体的にどこから着手すべきか悩むという声も多く聞かれます。そこで本章では、システム運用において一般的によく挙げられる問題点を整理し、代表的な6つの観点から解説します。
- 運用業務が属人化している
- 既存システムがレガシー化している
- 運用人材が不足している
- 障害・災害対策への準備が十分ではない
- 運用コストや工数が可視化できていない
- リソース需要の変動へ柔軟に対応できない
自社の状況と照らし合わせながら、どの課題が当てはまるかを確認し、改善の方向性を検討する際の参考としていただければ幸いです。
3-1. 運用業務が属人化している
システム運用においてよく見られる課題の一つが、業務の属人化です。
属人化とは、運用に関するノウハウや知識が特定の担当者に依存し、組織内で十分に共有されていない状態を指します。
このような状態では、担当者が不在の場合に運用業務が滞ったり、異動や退職によって重要なノウハウが失われたりするリスクがあります。また、特定の人材に業務が集中することで、過重労働につながるなど、労働環境の面での課題が生じることもあります。
属人化を改善するためには、マニュアルやナレッジ共有ツールを整備し、運用ノウハウを組織として蓄積・共有できる仕組みを構築することが重要です。
あわせて、業務内容や運用ルールを整理・標準化し、特定の担当者に依存しにくい体制を目指すことが必要です。
3-2. 既存システムがレガシー化している
システム運用でよくある問題点として、既存システムのレガシー化も多く挙げられます。
レガシー化とは、システムが老朽化・複雑化し、新しい技術や仕組みへの移行が難しくなっている状態を指します。
古い技術を前提としたシステムでは、保守・運用に対応できる人材が限られる場合があり、将来的な人材確保が難しくなることもあります。また、新しい技術やセキュリティ対策を取り入れにくくなることで、運用負荷の増大やリスク管理の複雑化につながる可能性もあります。
こうした状況を改善する手段として、システム構成の見直しや、段階的なモダナイゼーションを検討する企業も少なくありません。
3-3. 運用人材が不足している
システム運用を担う人材の不足も、多くの企業が直面している課題の一つです。
安定した運用を維持するためには、ITインフラや運用に関する専門的な知識・経験を持つ人材が必要ですが、IT分野全体では慢性的な人材不足が続いています。その結果、採用コストの増加や、限られた人材への業務集中といった問題が生じることがあります。
こうした課題への対応策として、外部の専門事業者への委託や、運用プロセスそのものの見直しを検討する企業もあります。
また、業務内容を整理し、可能な範囲で自動化を進めることで、人手に依存しすぎない体制を目指す動きも見られます。
3-4. 障害・災害対策への準備が十分ではない
障害・災害への備えが不十分な場合、システム停止による事業影響が大きくなるリスクがあります。
例えば、バックアップ体制が整っていない、障害発生時の対応手順や代替手段が明確になっていないといったケースが考えられます。また、インフラが特定の拠点に集中している場合、災害時に事業継続が困難になる可能性も高まります。
こうしたリスクに備えるため、障害対応フローの整備や、システム構成の分散化、復旧手順の明確化などに取り組む企業もあります。
事業継続の観点から、平時から備えを見直しておくことが重要です。
3-5. 運用コストや工数が可視化できていない
システム運用において、どの程度の工数やコストが発生しているのかを把握しきれていないという点も、よく見られる課題の一つです。
ユーザー対応やメンテナンスなどに多くのリソースが割かれていたとしても、それらが具体的なコストや業務量として整理・可視化されていない場合、運用の負荷や非効率性が経営層に十分に共有されないことがあります。その結果、現場の負担が大きくなっていても、改善の必要性が認識されにくくなるケースもあります。
このような状況では、非効率な運用体制が見直されないまま継続され、結果として担当者の負担増加や、見えにくい形でのコスト増大につながる可能性があります。
運用にかかる工数やコストを可視化することで、現状の課題を整理しやすくなり、運用改善に向けた検討を進めるための土台を整えることができます。
3-6. リソース需要の変動へ柔軟に対応できない
システム運用における課題として、リソース需要の変動に十分対応できない点も挙げられます。
例えば、繁忙期などで一時的にアクセスが集中した際に、処理能力が追いつかず、システムの遅延や停止が発生するといったケースです。こうした一時的なリソース不足は、利用者体験の低下や業務への影響を招く可能性があります。
従来型のオンプレミス環境では、リソースを増強するために事前の設備投資や構成変更が必要となる場合が多く、対応に時間やコストがかかることがあります。一方で、繁忙期に合わせて過剰なリソースを確保したままでは、利用が少ない期間に無駄が生じることもあります。
このような課題に対しては、リソースの増減を前提としたシステム設計や運用方針の見直しが求められるケースもあります。
どのような手段が適しているかは、業務特性やシステムの役割を踏まえて検討することが重要です。
4. システム運用改善に向けて検討すべき3つのポイント
システムの運用改善を進めるにあたっては、個別の施策を検討する前に、あらかじめ整理しておくべきポイントがあります。
ここでは、運用改善を検討する際に意識しておきたい代表的な3つの観点を紹介します。
- 運用コストの可視化・削減
- 少ない人数で運用できる体制の整備
- 技術や手段の選択肢を見直す
それぞれどのように検討できるかを詳しく見ていきましょう。
4-1. 運用コストの可視化・削減
システム運用の改善を検討する際の第一歩として、現状の業務内容や運用コストを可視化することが重要です。
運用に関わる業務やコストを整理することで、無駄が発生している箇所や、効率化の余地がある部分を把握しやすくなります。
具体的には、日常的に行っている運用業務やタスクを洗い出し、業務フローとして整理する方法が考えられます。また、人件費、ソフトウェアのライセンス・保守費用、ハードウェアの保守費用など、システム運用にかかるコストを項目ごとに整理し、数値として把握することも有効です。
こうした可視化を行うことで、削減すべきコストや見直しが必要な業務が明確になり、運用改善に向けた検討を進めやすくなります。
4-2. 少ない人数で運用できる体制の整備
システム運用改善を進めるにあたっては、できるだけ少ない人数で安定した運用を維持できる体制を目指すことも重要な観点です。
IT人材の不足が続く中、限られた人員で運用を継続する必要がある企業も少なくありません。そのため、運用業務の内容を見直し、属人化を避けながら、効率的に運用できる体制を検討することが求められます。
例えば、定型的な作業や繰り返し発生する業務については、可能な範囲で自動化を検討することで、担当者の負担軽減や運用品質の安定化につながる場合があります。
人に依存しすぎない運用体制を整えることは、長期的な運用改善の土台となります。
4-3. 技術や手段の選択肢を見直す
システムの運用改善においては、現在採用している技術や運用手段が自社の状況に適しているかを見直すことも重要です。
近年では、運用効率化や柔軟性向上を目的として、さまざまな技術やサービスが活用されています。例えば、運用自動化を支援する仕組みや、システム構成を柔軟に設計できる環境などが選択肢として検討されることがあります。
こうした技術や手段を導入する際には、「最新であるかどうか」だけでなく、自社の業務特性や運用体制に適しているかという視点で検討することが重要です。
運用改善の目的に照らし合わせながら、適切な選択肢を見極めることが求められます。
5. システム運用改善に効果的な3つのソリューション
システム運用の改善に取り組む際には、課題や目的に応じて、さまざまなソリューション(解決策)を組み合わせて検討することが重要です。
ここでは、システム運用改善の手段として広く活用されている、代表的な3つのソリューションを紹介します。
- 運用自動化
- クラウド化
- 外注化
それぞれの特徴を理解したうえで、自社に適した選択肢を検討していきましょう。
5-1. 運用自動化
システムの運用自動化は、システム運用改善における基本的なアプローチの一つです。
自動化の対象となる業務には、次のようなものがあります。
- バッチ処理やデータベース操作などの定型タスク
- 承認プロセスやデータ入力などのワークフロー
- システム監視やインシデント対応
- アクセス制御やログ監査などの保守作業
これらの業務を自動化することで、運用担当者の負担軽減や、作業品質の安定化が期待できます。
運用自動化を実現する技術の一例として、RBA(Run Book Automation)があります。RBAは、運用手順をあらかじめ定義することで、システム運用に必要な各種タスクを自動実行する仕組みです。
また、AI(人工知能)を活用し、障害の兆候検知やリソース利用状況の分析などを支援する取り組みも進んでいます。
これらの技術は、運用業務の効率化や属人化の解消を目的として活用されるケースがあります。
運用自動化について詳しくは以下のページをご参照下さい。
運用自動化とは?メリット・事例・導入方法を徹底解説
5-2. クラウド化
システムのクラウド化も、システム運用改善において広く採用されている選択肢の一つです。
オンプレミス環境で運用していたシステムをクラウド環境へ移行・再構成することで、インフラ管理の負担軽減や、システム構成の柔軟性向上が期待できます。また、クラウドサービスが提供する機能を活用することで、システムの更新や拡張を行いやすくなる場合もあります。
さらに、場所に依存せずアクセスできる環境を構築しやすい点や、需要の変動に応じてリソースを調整しやすい点も、クラウドの特徴です。一方で、既存システムとの親和性や運用ルールの見直しが必要になるなど、検討すべき点もあります。
クラウド化は、レガシー化やリソース調整といった課題への対応策として検討されることが多いものの、自社の業務特性や運用方針に適しているかを十分に見極めることが重要です。
システムのクラウド化について詳しくは、以下のページをご参照下さい。
システムのクラウド移行とは?メリットやリスク、失敗しないポイントを解説
5-3. 外注化
システム運用の改善策として、外部への委託(外注化)を選択する企業もあります。
運用業務の一部または全部を外部に委託することで、社内の運用負担を軽減し、限られたリソースをより付加価値の高い業務に振り向けることが可能になります。
例えば、自社で運用しているシステムを、専門ベンダーが提供するサービスへ移行することで、保守・運用に関する業務を外部に任せるケースがあります。また、フリーランスや運用支援を専門とする事業者のサポートを受けるといった形も考えられます。
外注化を検討する際には、コスト面だけでなく、役割分担や責任範囲、ノウハウの蓄積方法などを整理したうえで進めることが重要です。
6. システム運用改善の成功事例
システム運用改善に取り組んだ実際の企業の事例を3つご紹介します。IPA(情報処理推進機構)のデジタル事例データベースと、AWS(アマゾンウェブサービス)の公式サイトに掲載されている事例です。
| 会社名 | 事例URL |
|---|---|
| 株式会社ヒバラコーポレーション | https://case-studies.ipa.go.jp/jirei-data/case_studies/111 |
| 三共電機株式会社 | https://case-studies.ipa.go.jp/jirei-data/case_studies/56 |
| 株式会社 CARTA HOLDINGS | https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/carta-holdings/?did=cr_card&trk=cr_card |
7. まとめ
システム運用改善は、企業活動の安定性や生産性を支える重要な取り組みであり、中長期的な経営視点で検討されるテーマの一つです。
運用自動化、クラウド化、外注化といった手段を、自社の課題や体制に応じて適切に組み合わせることで、限られたリソースの中でも、効率的かつ安定したシステム運用を目指すことができます。
そのためには、まず自社の運用状況や課題を整理し、どの改善アプローチが適しているかを見極めることが重要です。
必要に応じて、外部の知見や支援を活用することも、運用改善を進めるうえで有効な選択肢となります。
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システム運用の改善に向けて検討を進める中で、進め方や判断に悩まれる場合には、専門家に相談することも一つの方法です。
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