クラウドネイティブとは?AWSクラウドネイティブを実現する手順
目次
クラウド技術の発展により、システムの作り方や運用のあり方は大きく変化しています。
その中でも注目を集めているのが「クラウドネイティブ」という考え方です。これは単にクラウド上にシステムを移すだけでなく、変化に強く・スピーディーに進化できる仕組みを構築するアプローチを指します。
そして、このクラウドネイティブを最も実現しやすい環境のひとつが、開発・運用・監視のすべてを自動化しながら効率的に運用できるAWS(Amazon Web Services)です。
本記事では、AWSを活用してクラウドネイティブ環境を構築するための具体的なステップを解説します。
クラウドネイティブとは?わかりやすく解説
「クラウドネイティブ」とは、クラウドの特性を前提にしてシステムを設計・開発・運用する考え方のことです。単に「クラウド上で動かす」だけではなく、クラウドを最大限に活かした拡張性、回復力がある柔軟で止まらない仕組みをつくることを目的としています。
たとえば、利用者が増えたときに自動でサーバーを拡張する、トラブルが起きたときに自動で復旧するといったように、「変化に対して柔軟に対応できるシステム」を作るのがクラウドネイティブの基本的な発想です。従来のように一つの大きなシステムを人の手で運用するのではなく、クラウドの機能を活用して、必要なときに必要なリソースを柔軟に動かすのが特徴になります。
クラウドネイティブを実現すると、開発スピードが上がるだけでなく、障害対応の迅速化やコストの最適化も期待できるでしょう。
より詳しい定義やマイクロサービス・コンテナなどの要素技術については、以下のページで詳しく解説しています。
拡張性があり、回復力がある、を追加
修正いたしました。
関連記事:クラウドネイティブとは?意味や定義の基礎とクラウドネイティブを実現する方法
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AWSでクラウドネイティブを実現する方法
AWSは、クラウドネイティブな開発・運用を実現するために最適なプラットフォームです。多様なマネージドサービスがそろっており、システム構築から運用までを自動化しやすいのが大きな特徴です。ここからは、AWSを活用してクラウドネイティブ化を進める際の基本的なステップを順に解説します。
①クラウドネイティブ設計の基本方針を立てる
②コンテナ化でアプリをモジュール化する
③サーバーレス化で柔軟なスケーリングを実現する
④CI/CDパイプライン構築で開発を自動化する
⑤セキュリティを設計に組み込む
⑥運用とモニタリングで安定稼働を維持する
⑦コスト最適化とパフォーマンス改善を図る
AWSでクラウドネイティブを実現するには、段階的なアプローチが欠かせません。
まずアプリを小さな機能単位に分け(マイクロサービス化)、コンテナで環境を統一化し、さらに、インフラ構成をコード化して再現性を高め、監視や復旧を自動化します。
そのうえで、継続的リリース(CI/CD)を整え、セキュリティとコストを常に最適化していくことで、柔軟かつ安定した運用が可能になります。
①クラウドネイティブ設計の基本方針を立てる
クラウドネイティブ化を始めるときに一番大切なのは、「クラウドならではの考え方」でシステムを設計することです。たとえば、家を建てる前に設計図を描くように、クラウドでも「どんな機能をどう動かすか」を決めるのがスタートになります。
AWSは、必要に応じて、リソースを柔軟に増やしたり減らしたりできるため、パフォーマンスを維持し、障害の防止、また、無駄なコストを抑えることができます。
いきなりすべてをクラウド化しようとせず、一部をクラウド化し、その後、段階的にクラウド化していきます。
②コンテナ化でアプリをモジュール化する
AWSによるクラウドネイティブ化の具体的アクションのひとつとして、アプリケーションをコンテナ化することです。AWSでは、Amazon ECS(Elastic Container Service)やAmazon EKS(Elastic Kubernetes Service)を利用して、コンテナをスケーラブルに運用できます。
| 項目 | Amazon ECS | Amazon EKS |
|---|---|---|
| 学習コスト | 低い | 高い(Kubernetes知識が必要) |
| 管理の容易さ | 簡単(AWS管理に最適化) | 柔軟だが複雑 |
| 運用範囲 | AWS専用 | マルチクラウド・オンプレも対応 |
| 向いている規模 | 小~中規模 | 中~大規模 |
| 代表的な利用例 | Webサービス、社内システム | SaaS基盤、大規模分散アプリ |
たとえばECSを使えば、Fargateと組み合わせることでインフラ管理を不要にし、タスク単位で自動スケーリングが可能です。開発チームは、ビルドとデプロイを自動化して機能改善に集中できます。ただし、イメージ管理はAmazon ECRで統一し、バージョン管理とセキュリティパッチの適用を怠らないことが重要です。
「Amazon ECS」が向いているケース
Amazon ECSは、AWSが独自に提供するコンテナオーケストレーションサービスで、シンプルにクラウドネイティブ環境を構築したいチームに最適です。Kubernetesのように複雑な設定や学習コストが不要で、AWSコンソール上から数クリックでコンテナを実行・スケーリングできます。
特に、AWSの他サービスと密接に連携できる点が魅力で、CloudWatchでの監視やIAMによるアクセス制御、ALBによる負荷分散などをスムーズに統合できます。さらに、AWS Fargateを利用すれば、サーバーを意識せずにコンテナを起動・停止できるため、インフラ管理の負担を大幅に軽減できます。
【Amazon ECSが向いているケース】
- 小~中規模のプロジェクト
- 開発チームがKubernetesの専門知識を持っていない場合
- 短期間でデプロイや運用を開始したい場合
中小規模のアプリケーションや、リリース頻度が高いプロジェクト、スタートアップなど「スピードとコスト効率」を重視する開発チームには、ECSが最もバランスの良い選択肢といえるでしょう。
「Amazon EKS」が向いているケース
Amazon EKSは、Kubernetesを本格的に活用したい企業や開発チームに向く選択肢です。EKSはオープンソースのKubernetesをAWS上でマネージド運用できるサービスであり、クラウド間やオンプレミスとの統合が容易です。そのため、AWS以外にもシステムを展開するマルチクラウド戦略を取る場合に非常に有効です。
【Amazon EKSが向いているケース】
- 複数のコンテナアプリを一元管理したい場合
- 自社でKubernetesを運用するリソースが不足している場合
- ハイブリッドクラウド/マルチクラウド環境を想定している場合
EKSは細かい制御ができるため、ネットワーク構成やセキュリティポリシーを柔軟に設定できます。大規模なマイクロサービス環境や、チーム単位で独立したアプリを多数展開する場合にも適しています。
一方で、Kubernetesの知識や運用ノウハウが求められるため、学習コストはECSより高めです。とはいえ、企業全体でコンテナ基盤を標準化したい、または外部エコシステム(Istioなど)を活用したい場合には、EKSが最適解となります。
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③サーバーレス化で柔軟なスケーリングを実現する
サーバーレスとは、開発者がサーバーの管理を気にせずアプリを動かせる仕組みです。AWSでは、AWS Lambdaを中心に、必要な時だけ自動で処理が動き、使った分だけ費用が発生します。これにより、アクセスが急増した場合、自動的に拡張し、負荷が減れば自動的に縮小し、コストも下がるといったように効率的な仕組みを実現できます。
また、API GatewayやS3、DynamoDBなどと組み合わせることで、システム全体を“イベントがトリガーになる”構成にできます。
AWS Lambdaの基本的な使い方
AWS Lambdaは、サーバーを立てなくてもコードを実行できる「関数実行サービス」です。たとえば、S3にファイルがアップロードされたときに自動で画像をリサイズしたり、フォーム送信をトリガーにメールを送信したりと、“イベントが起きたときだけ自動的に実行される”のが特徴です。
常時稼働しないため、使った分だけ課金され、コスト効率が高いのも魅力。PythonやNode.jsなど複数の言語に対応しており、コンソールから直接コードを書いて実行できます。
API Gatewayとの連携
API Gatewayは、Web APIのエンドポイントを作成、公開するサービスであり、ユーザーのリクエストを受け取り、裏側でLambdaを起動して処理を実行します。
たとえば、ユーザーがWebフォームから送信した内容をLambdaが受け取り、DynamoDBに保存するなど、サーバーレスAPIの構築には欠かせません。
さらに、認証やアクセス制限、CORS設定も簡単に組み込めます。これにより、安全かつスケーラブルなAPIを短期間で構築でき、アプリの更新も容易になります。
イベント駆動アーキテクチャの設計
イベント駆動アーキテクチャとは、「何かが起きたときに自動で処理を実行する」仕組みを組み合わせて構成する考え方です。AWSでは、S3、SNS、DynamoDB、EventBridgeなど、さまざまなサービスがイベントの発火源になります。
たとえば、ユーザーが画像を投稿したらS3に保存され、それをトリガーにLambdaが起動してサムネイルを生成し、SNSで通知を送るといった連携が可能です。
④CI/CDパイプライン構築で開発を自動化する
クラウドネイティブ開発では、変更を素早く安全に本番環境へ反映できる「継続的インテグレーション(CI)」と「継続的デリバリー(CD)」が不可欠です。AWSでは、CodeCommit(Gitリポジトリ) を起点として、CodePipeline、CodeBuild、CodeDeployを組み合わせることで、自動化されたデプロイメント環境を構築できます。
開発者がCodeCommitにコードをプッシュすると、CodePipelineを通じて自動でビルド・テスト・デプロイが行われるため、手動ミスを防ぎながら迅速なリリースが可能になります。リリース頻度が高くても品質を維持しやすくなるのが大きな利点です。
また、CloudFormationでインフラをコードとして管理(IaC)することで、環境構築の再現性を確保できます。検証環境、ステージング環境、開発環境の設定を統一できるため、運用の安定性も向上します。
CodePipelineでパイプラインを構築
AWS CodePipelineは、アプリの開発から本番リリースまでの流れを自動化するサービスです。たとえば、開発者がGitHubにコードをプッシュすると、CodePipelineが自動でテスト・ビルドを実行し、問題がなければAWS LambdaやECSにデプロイします。これにより、リリース作業をボタン1つで完結でき、ヒューマンエラーを大幅に減らせます。
さらに、CodeBuildやCodeDeployと組み合わせれば、テスト→ビルド→デプロイの全工程を完全自動化でき、継続的な改善サイクルを回しやすくなります。
CloudFormationでIaCを実現
AWS CloudFormationは、インフラ構成を「テンプレート」として管理できるサービスです。サーバー、ネットワーク、ストレージなどをYAMLやJSONで定義することで、同じ環境を何度でも再現できます。
検証環境、ステージング環境、開発環境を一貫した設定で立ち上げることが可能になり、構成ミスや環境差異によるトラブルを防げます。CloudFormationを使えば、環境構築をプログラムのように自動化し、変更履歴も管理できるため、大規模チーム開発にも対応できます。
⑤セキュリティを設計に組み込む
AWS上で安全に運用するためには、「最初からセキュリティを組み込む」ことが欠かせません。具体的には、IAMを使って「誰が何をできるか」を明確に制限し、不要な権限を持つユーザーをなくします。また、S3などのストレージには常に暗号化設定(Encryption)を有効にしておきましょう。通信もHTTPS(TLS)で保護するのが原則です。Amazon GuardDutyやAmazon Inspectorなどの脅威検出サービスを利用し、リスクを早期に発見・対処することも重要です。
AWSには、AWS Security Hub や CloudTrail など、セキュリティ状況を監査・記録できるサービスもあります。これらを活用して、設定ミスや不審な操作を自動検知できるようにしておくとより堅牢なセキュリティ対策が実現できます。
⑥運用とモニタリングで安定稼働を維持する
最後のステップは運用とモニタリングです。クラウドネイティブ環境では、システム全体が分散構成になるため、可視化と自動検知が重要になります。AWSではAmazon CloudWatchやAWS X-Rayを活用し、メトリクス監視やトレース分析を行うことで、問題の早期発見が可能です。
CloudWatchではCPU使用率やメモリ、アプリケーションログをリアルタイムで監視でき、異常を検知した際にはSNSで通知を送信して自動対応も可能です。一方で、X-Rayを使えば分散トレーシングにより、API間の遅延や障害箇所を特定できます。
CloudWatchでメトリクスとログを監視
Amazon CloudWatchは、AWS上のあらゆるリソースの稼働状況をリアルタイムで監視できるサービスです。CPUやメモリの使用率、リクエスト数、エラーレートなどをグラフで可視化し、異常を検知すると自動でアラートを発信できます。
たとえば「CPU使用率が80%を超えたら通知」など、しきい値を設定しておけば、問題の早期発見が可能になります。また、CloudWatch Logsを使えば、LambdaやECSのログを集中管理できるため、トラブル発生時の原因特定や分析がスムーズになります。
X-Rayで分散トレーシングを実装
AWS X-Rayは、アプリケーション全体の「処理の流れ」を収集、可視化、分析できるツールです。複数のマイクロサービスが連携して動く場合でも、どのAPIで遅延が発生しているか、どこでエラーが起きているかを一目で把握できます。これを「分散トレーシング」と呼びます。
ユーザーがWebページを開くまでの処理時間を分析したり、ボトルネックを特定して改善するのに役立つでしょう。X-Rayを導入することで、複雑なクラウド環境でも透明性の高い監視と継続的改善が実現します。
⑦コスト最適化とパフォーマンス改善を図る
AWSを使ううえで大切なのは、「今どこにどれだけお金がかかっているのか」を把握し、無駄を減らすことです。そこで便利なのが AWS Cost Explorerです。
これは、クラウドの「家計簿アプリ」のようなもので、サービスごと・日ごとの料金をグラフで見られます。使いすぎている部分や、逆にほとんど使っていないリソースを簡単に見つけられるため、節約ポイントが一目でわかります。
さらにもう一歩進めるなら、オートスケーリングの仕組みを組み合わせましょう。オートスケーリングとは、アクセスが増えたときは自動でサーバーを増やし、減ったら自動で台数を減らしてくれるものです。
この2つをセットで使うことで、費用を見える化して管理しつつ、「無駄を省きながらも、自動で最適な状態に保つ」ことが可能になります。
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TISのAWSクラウドネイティブ支援サービス
AWSによるクラウドネイティブをより確実に実現するには、設計から運用・監視までをトータルで支援する専門的なパートナーの存在が欠かせません。
TISの「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ」は、AWS環境を活用したクラウドネイティブ化を包括的に支援するサービスです。
現行システムの診断から最適なクラウド設計、インフラ自動化、セキュリティ強化、そして運用監視までを一気通貫でサポート。AWSのマネージドサービスやサーバーレス技術を活用し、企業が自社の業務に集中できる環境を整備します。
また、マイクロサービス化・コンテナ化を見据えた基盤設計や、CloudFormationを用いたIaC構築、CloudWatchによる監視自動化にも対応。これにより、短期間でスケーラブルかつ安全なクラウド基盤を実現できます。
TISはAWSプレミアティアパートナーとして豊富な導入実績を持ち、クラウド移行からネイティブ運用への最適なステップを伴走型で支援。企業のクラウド活用を「構想」から「実装」まで確実に導く頼れるパートナーになります。