押さえておきたいIFRS最新事情

世界共通のルールであるIFRS(国際財務報告基準)への対応が日本企業に求められています。しかし、その状況は極めて流動的と言わざるを得ません。当初は2015年に強制適用とされていたIFRSですが、現在はその適用時期に変化が生じ、企業の対応状況にも大きな差があるのが実情です。それでも、IFRSを含めた経営課題への対策は待ったなしの状況に変わりはありません。そこで、IFRSにおける最新動向や企業の取り組み状況などを概観し、IFRSを含めた経営課題へどう取り組むべきなのか、詳しく見ていきます。

不透明さを増す「IFRSの強制適用時期」

会計基準の世界標準となるIFRSは、欧州をはじめとして世界各国で導入が進められており、すでにIFRSによる早期適用を済ませている先進的な日本企業も存在しています。しかし、震災の影響や米国の対応遅れからIFRS強制適用の最終判断を先延ばしする旨の会見が金融庁から行われるなど、強制適用の時期は不透明な情勢に。そのため、企業においても進捗状況が大きく変化しています。
欧州などでは全面適用に踏み切っていない国もあり、上場企業を中心とした適用対象範囲を見直す可能性も指摘されているなど、予断の許さない状況が続いているのです。

強制適用時期が不透明な主な理由

  1. 1現行基準・商慣習との違いに対する適用に向けた充分な検討、準備期間の確保
  2. 2米国の意思決定、及びIASB/FASBコンバージェンスの遅れ
  3. 3東日本大震災による経済、産業界への影響
強制適用のタイムテーブル
  • 現在予定の2015年又は2016年から強制適用時期が後ろ倒しとなる可能性
  • IFRSの適用方法が全面適用(アドプション)ではなくなる可能性
  • 2012年の強制適用に関する意思決定が延期される可能性
  • IFRS適用対象範囲の見直し(全上場企業⇒?)の可能性

米国FASBとIASBの調整が続く・・・日本への影響が避けられない状況に

現在、IFRSを規定するIASB(国際会計基準審議会)が直近の作業計画を明らかにしていますが、留意するべきいくつかの論点が存在します。特に米国との間で調整が進んでいる金融商品の取り扱いに関しては、2012年の後半に公開草案が示される段階で、リースや収益認識、保険契約など重要な論点も最終化には至りません。それぞれの論点に対する目途が立っていない現在の状況では、米国においてもどう適用するのかの意思決定を行うのは難しく、日本での最終判断もそれ以降にずれ込んでくる可能性もあり得ると言えます。

直近のIASB作業計画

直近のIASB作業計画

大臣(金融担当)の発言から大きく様変わり!IFRS対応ビフォーアフター

2011年6月21日に自見庄三郎・郵政改革担当内閣府特命担当大臣(金融)が行ったIFRS強制適用に関する会見を境に、企業におけるIFRSへの取り組みは大きく変化しています。
以前は、海外投資家からも資金調達を行っているグローバル企業などに代表される「早期適用パターン」、2015年の強制適用を念頭に計画通り進めていた「通常対応パターン」、大手企業の対応状況を見ながら情報収集をしていた「駆込対応パターン」の3グループに企業の対応が分かれていましたが、会見以降の動きをみると、新たに3つのパターンに分けることができるようになっています。

IFRS対応のビフォーアフター

制度対応は後になるが、経営課題見直しや
経理業務の効率化のチャンス!

注目すべきは、「通常対応パターン」の企業がそれぞれ対応スタンスを変化させ、その中から「効果創出型」と呼ばれる新たな道を選びはじめた企業が登場していることです。強制適用が延びたことで、IFRS導入プロジェクトを全社プロジェクトの最終ゴールと位置付けつつも、長年懸案となっていた経営課題の解決もねらいに追加し、目標設定を見直しする企業が増えつつあります。この経営課題には、決算の早期化や財務及び管理会計を統一する「制管一致」の実現、グループ全体での経営基盤の統一による経営リスクの回避や効率化などが 挙げられます。
また、社内プロジェクトチームや専任担当者を一度解散した後に数年後に改めて再組織化する場合、社内稟議に関する調整や、要員変更に伴う知識・スキルの再習得で余計にコストや時間を費やす可能性があります。IFRS導入時の費用対効果を高める取り組みが、こうした無駄やリスクを排除する事に も繋がるでしょう。今やIFRSプロジェクトは、単なる“制度対応”として捉えるのではなく、経営基盤の強化を図るチャンスと位置付けることができるのです。

他社はどうなの?気になるユーザの動き

IFRS対応を視野に入れつつ各課題解決へ取り組むことも想定できる

では、実際の企業の動きはどうなっているのでしょうか。日本CFO協会が2011年9月に行ったCFOマネジメントサーベイによると、CFOにとっての重要な経営課題として「財務基盤の強化」をはじめ、「業績/予算の管理」や「事業ポートフォリオの再構築」「グループ経営管理の高度化」などが挙げられています。
「IFRS対応」は未だに優先順位の高い経営課題として認識されていますが、IFRS対応への対応が先延ばしになったぶん、その他の経営課題に取り組みやすい環境となっていると言えます。

8割の企業はIFRS対応継続!半数以上の企業はIT投資の予算を確保

また、あずさ監査法人が行ったアンケートによると、約8割の企業がIFRS対応の継続を明らかにしており、スケジュールの見直しはあるものの引き続きIFRSプロジェクトを進めていく企業が多いことが浮き彫りとなっています。
同時に、IFRS導入によるシステムへの影響と対応予算について聞いたところ、半数以上の企業がシステムへの影響を考慮してすでに予算化を終えていると回答しています。全社横断的なプロジェクトになりやすいIFRS対応だけに、予算化についてはできるだけ早めに検討しておくべきではないでしょうか。

IFRS導入割合
IFRS導入によるシステムへの影響

決算期統一の流れは、個別論点の中でも早い段階で対応している

グループ企業の決算期統一については、IFRSにおける個別論点の中でも多くの企業が対応を進めている状況が垣間見えます。強制適用の時期が延びた今の状況であっても、グループ全体への影響が大きいことで多くの企業が何らかの対応を検討しており、すでに対応済みの企業も多いことが見て取れます。おそらく、プライベートクラウドなどで経営基盤を整備することでシステム及び業務のシェアード化などが実現しやすい状況にあることも、決算期の統一化に向けた動きに拍車をかけている一つの要因として考えられます。

決算期統一の流れ

IFRS 予算策定支援ソリューション

IFRSの強制適用が先延ばしになったことで、計画していたプロジェクトや試算していた予算などの修正変更が今後迫られます。また、IFRSに限らず経営課題への新たな取り組みを進めていく企業が現れていることからも、業務改善を含めた予算の見直し作業がこれから行われることになるはずです。TISでは、2009年から取り組んできたIFRS関連ソリューションはもちろんのこと、IFRSに限定することなく予算の見直しを幅広く支援することができます。お困りの際はぜひご相談ください。

次回予告

次回は、単なる制度対応のアプローチから、目指すべき効果創出アプローチに至る「IFRS導入のステップ」を振り返りながら、IFRSの早期適用に向けて先進的に取り組んでいる企業の先行事例を大研究。IFRS導入に対して課題となった論点がどんな領域で発生するのかを見ていきます。

関連情報

更新日時:2018年12月18日 15時51分

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