連結会計に見るIFRS導入のインパクト

国際的な会計基準「IFRS(国際財務報告基準)」への対応を進める過程で、大きな論点のひとつとなっている「連結会計」。円高が進む昨今の経済情勢の中では、海外子会社を含めた戦略的なグローバル経営財務管理の拡充が急務となっており、そのためには、よりスピーディな連結情報収集から対外開示、及びマネジメントサイクルの精度向上を実現するための体制作りが欠かせません。今回は、IFRSにおける個別論点について振り返りながら、特に重要となっている連結会計を考える過程で大きなインパクトのある「決算期の統一」や「注記」の扱いなど、より具体的な課題を紐解きます。

IFRSにおける個別論点で取り組みが重視される「連結会計」

すでにIFRSへの取り組みを加速させている企業が増える中、様々な個別論点への対応が検討されています。日本基準と比べた場合の影響度の大きさは企業によって変わってきますが、IFRSコンソーシアムが上場企業の経理財務担当役員、経理財務部門の上級管理職を対象に調査を行った「システム・ITインフラへのIFRS対応の影響度」(2010年9月)によると、システムへの影響度は「固定資産」「連結会計」などが大きなインパクトとして捉えられているのが明らかです。

システム・ITインフラにおけるIFRS対応の取り組みへの影響度 (一部抜粋)

システム・ITインフラにおけるIFRS対応の取り組みへの影響度

連結会計における論点とは?

IFRSは連結での開示を求められており、IFRS適用にあたって、各社も含めたグループ全体で検討すべき論点(連結全体における論点)と、連結決算処理にて対応すべき論点(その他連結特有の処理)があります。 「連結財務諸表」や「会計方針の統一」などは多くの企業が取り組むべき論点として認識しているものですが、中でもグループ各社に対してもインパクトが大きく、IFRS導入の前段階で検討しやすい論点として、「決算期の統一」や「注記」があります。連結会計を行う上で子会社との対応を協議し、どんな体制で行うのかを早期に決めていく必要がある論点となっています。

では、具体的にどんな課題が顕在化しているのか、その内容を詳しく見ていきます。

連結会計における第一の論点「決算期の統一」

IFRSでは、本社と連結子会社の決算期の統一が基本的に求められています。連結対象子会社の決算日が親会社の決算日と90日より大きく異なる場合、グループ全体で決算期を統一しなければならず、たとえ90日以内であっても可能な限り会計期間統一に向けた経営努力を行うことが必要とされています。先行している企業では、4月~3月期で決算期が設定されている親会社に子会社を合わせるケースだけでなく、海外子会社の1月~12月期に決算期を統一するグローバル企業などの例もあります。これは、決してIFRSへの制度対応を目的としたものだけではありません。経営管理の精度を高めながら、決算業務の効率化やグローバル市場への対応を含めた成長戦略の強化など、グループ経営管理の高度化を目指した先進的な企業が増えているためです。

決算期変更時の課題

決算期を変更する際の課題には、大きく「法的要件」「業務」「システム」の3つに分けることができます。なかでも業務上の課題については、グループ全体での決算業務が早まることでの監査人との調整事項をはじめ、切り替え時期における予算の執行や業績管理、人事評価など広範囲な影響が考えられます。また、システム上の課題には、財務会計・連結会計システムだけでなく連携している周辺システムなど、影響を十分に見極めておく必要があります。

決算期変更・決算期統一における検討事項

決算期変更・決算期統一における検討事項

決算期統一論点におけるシステム上の課題

上記3つの課題の中で、特にシステム上の課題は十分確認する必要があります。特に財務会計・連結会計システムでは、システム上で決められた会計期間を持っているのが一般的です。例えば、1月~12月期の会計期間となっている海外子会社が4月~3月期の親会社にあわせる場合、海外子会社の会計期間が一時的に15カ月となるため、会計年度の変更が現状のシステムで可能かどうか、手作業を含めてシステム移行が実際に行えるかどうかを早期に見極めなければなりません。販売管理など会計システムと連動している周辺システムへの影響についても十分注意が必要です。

決算期統一論点におけるシステム上の課題

見落としがちな“決算早期化プロセス”

さらに決算期を統一することで、決算業務のスピードアップが求められることも忘れてはなりません。12月決算の海外子会社にあわせて3月決算の親会社が決算期を変更する場合、これまでは海外子会社の決算業務が親会社の決算となる3月末までに終わっていればよかったものが、決算日程が短縮することにより、早期化対応が迫られます。また、連結決算を行う親会社に対して早期に決算情報を提出するためには、監査スケジュールの前倒しや、各種ルールの合意など、監査人と調整しなければならず、これまで以上に決算業務プロセスの精度を高めていかなければならないのです。

決算期変更による決算早期化の必要性

決算期変更による決算早期化の必要性

連結会計における第二の論点「注記」

会計方針や各種増減の内訳、資産の評価基準など、決算書を開示する際にはその内容に沿った注記が必要です。もちろんIFRSでも注記の記載が必要ですが、現行の日本基準と比べ、膨大かつ詳細な連結財務諸表注記が要求されています。
 金融庁が公表した「国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例の公表について」では、40にも及ぶ注記項目が例として示されており、連結会計の組替時には負荷のかかる業務になることが想定されます。だからこそ、グループ会社全体を含めた形で網羅的に情報収集できる体制を早期に確立しておく必要があります。

IFRS注記 40項目「国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例の公表について」の金融庁開示例より

IFRS注記 40項目

「注記」論点におけるシステム上の課題

しかし、注記に関してはインフラが整備されていないケースが多く見られます。連結会計における注記データの作成には、個社ごとに情報基盤を整備することが必要ですが、現実的には後回しになっている企業が後を絶ちません。また、連結パッケージにおいても、日本基準と海外現地基準、IFRS基準に対応する必要があり、IFRSに対する知識レベルの習熟度や既存システムの状況に応じて、業務負荷に差が出てくる可能性が十分考えられます。
そこで重要なのが、注記情報を含めた情報収集を効率的に行うためのシステム化です。数値としての財務情報だけでなく、注記など非財務情報をいかに効率的に収集できるのかを早期に検討する必要があります。可能であれば、財務情報を収集するプラットフォーム上で注記データも自動収集し、タスク管理が可能なインフラを整備することで、情報収集にかかる業務負荷を軽減することが可能となります。

IFRS注記データの収集・作成のための機能要件

IFRS注記データの収集・作成のための機能要件

そのためには、子会社自身が注記に対する必要な情報を特定し、それぞれデータとして入力できるような環境整備が必要不可欠です。個社システムの変更も含め、連結会計における膨大な注記への対応策を十分に練っておきたいところです。

将来を見据えた「連結会計」の姿

ここまで見てきた通り、連結会計ひとつとってみてもIFRS対応には様々な論点があり、検討すべき課題は数多く存在しています。特に連結会計は、連結対象子会社を含めて包括的に取り組む必要があるため、決算業務の効率化も考慮しながらグループ全体で連結会計システムを再構築することも選択肢として考えておくべきです。
しかし、単なるIFRSへの制度対応で終わらせることなく、グローバル市場を見据えた経営管理プロセスを再定義し、より戦略的な視点に立ったグループ経営管理の高度化を目指す大きなチャンスとして捉えることが何よりも大切です。そのためには、積極的な経営戦略のなかでグループ経営情報システムの再構築を行っていくべき時だと言えるのです。

将来を見据えた「連結会計」の姿

理想的なグループ経営基盤の姿は、グループ企業それぞれから財務情報及び非財務情報を円滑に収集し、IFRSへの連結組替を行う仕組みと並行して、事業セグメントや商品別、地域別など経営判断に必要な管理会計をグループ全体で行うことができるインフラです。IFRS対応を包含したグループ経営管理を兼ね備えたグループ経営基盤が、戦略的な一手を打つための貴重な情報基盤となるはずです。

システム対応例

システム対応例

IFRS 予算策定支援ソリューション

IFRSの強制適用が先延ばしになったことで、計画していたプロジェクトや試算していた予算などの修正変更が今後迫られます。また、IFRSに限らず経営課題への新たな取り組みを進めていく企業が現れていることからも、業務改善を含めた予算の見直し作業がこれから行われることになるはずです。TISでは、2009年から取り組んできたIFRS関連ソリューションはもちろんのこと、IFRSに限定することなく予算の見直しを幅広く支援することができます。お困りの際はぜひご相談ください。

次回予告

次回は、固定資産管理のテーマについて掲載する予定です。固定資産管理は、連結と同様に企業へ与えるインパクトが大きく税務申告との両立させるための仕組みが必須となります。
主な影響ポイントや、必要となるシステム機能・構成について企業の取り組みなどと合わせてご紹介いたします。

関連情報

更新日時:2018年12月18日 15時50分

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