金融商品会計に見るIFRS導入のインパクト

多くの企業がその動向を注視している「IFRS(国際財務報告基準)」対応ですが、これまで見てきた「連結会計」「固定資産管理」と並んで大きな論点として考えられているのが「金融商品会計」です。金融商品の分類方法や償却原価、公正価値による測定、ヘッジ会計など様々な論点があり、特に銀行や保険、カード会社などの金融機関では何らかのシステム対応が求められます。ただ、基準が未確定な状態のものも多く、どのような観点で準備が必要なのかなど、その対応方法に苦慮していることでしょう。そこで今回は、改めて金融商品会計における論点を整理しながら、制度対応としての導入ステップや業務イベントごとに必要となる計算方法、IFRSが既に適用されている海外金融機関の対応事例なども交えながら、IFRS対応の目指すべき姿を考察します。

「金融商品会計」プロジェクトの動向とその論点

IFRSは世界各国で導入が進められていますが、日本においてはIFRS強制適用の判断が延期されたこともあり、IFRS適用時期が定まっていない状況です。IFRSを規定する「IASB(国際会計基準審議会)」が示す計画においても、減損やヘッジ会計など金融会計商品に係る個別論点については2013年 2QにかけてED、DPを出すことが目標となっており、金融機関としてもその動向を注視している状況が続いています。 なお、金融機関がIFRS対応とともに注目しているのが、銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制である「バーゼルⅢ」や保険会社に対する同様の「ソルベンシーⅡ」など、リスク管理に対する枠組みです。今後、段階的に適用されていく予定です。IFRS対応とともに金融機関が取り組まなければならないものとなっています。

金融商品会計における論点とは?

ここで、IFRS対応における「金融商品会計」に係る論点について見ていきます。具体的には、金融商品の分類をはじめ、償却原価による測定や減損、公正価値による測定などが大きな論点として挙げられます。なかでも、実効金利による償却原価測定や期待損失アプローチによる減損評価などはシステムインパクトが大きく、評価方法や判別基準、期待キャッシュフロー計算など、十分考慮しなければならない論点の一つとなります。

金融商品会計管理における論点一覧表
金融商品会計管理における主な論点一覧表

どこからはじめる?IFRS対応に向けた金融商品会計の導入ステップ

上記論点を十分考慮し、実際の業務フローに組み込んでいくためには、どういうステップで考えていけばいいのでしょうか。金融商品会計の導入ステップは、これまで取り上げてきた論点と同じように「調査フェーズ」「検討フェーズ」「構築フェーズ」のステップになります。
特に、強制適用時期の延期により十分な準備期間が確保できるようになった今こそ、散在する情報の集約を見据えたリスク管理業務及びリスク管理業務に活用するシステムの調査をしっかり行うべきです。なかでも、今後対応が迫られるバーゼルⅢなども含めて、各リスク管理システムや情報系システムの機能の保持データのIFRSへの活用の可能性を検討することが、無駄な投資を防ぐことに繋がります。また、保有する金融商品ごとの計算方法を検討することで、どんなデータソースが必要になるのかが明らかになります。同時に、リスク管理業務及びシステム・情報の効率的配置を検討していくことが重要です。

金融商品会計の導入ステップ

会計イベントごとに「IFRS計算方法」を定義

IFRSにおける金融商品会計では、金融商品に対するイベントが発生するたびに、キャッシュフローの計算や実効金利である実効金利算出などを行う必要があります。このイベントごとに必要な計算処理を把握することで、勘定系システムや有価証券管理システムなどの市場系システムから、どんなデータソースを抽出すべきなのかが見えてくるはずです。キャッシュフローの展開や実効金利、償却額の算出など、図のようなマトリクスで業務イベントごとに必要な計算処理を整理することが重要です。
これらの計算処理を業務プロセスに反映し、継続的に運用するためにはシステムでのサポートが求められます。IFRS対応を効率的に進めるためにも、システムを活用して計算処理を業務プロセスの一部に組み込んでいきたいところです。

会計イベントごとに「IFRS計算方法」を定義

金融商品会計に対応するシステムデザインの“3つ”のパターン

IFRSにおける金融商品会計への対応を円滑に行うためにはシステムの活用が不可欠ですが、既存の環境を含めた複数の方法が考えられます。制度変更に応じて都度カスタマイズしていくのは効率的ではありません。

第一に、メインフレームなどで作られた現行システムをうまく活用する方法です。既存の環境を利用することでイニシャルコストは最小限に抑えられますが、制度変更に応じて都度カスタマイズしていくのは効率的ではありません。
第二に、IFRSで求められる計算機能をIFRS計算エンジンに集約するデザインです。図で示されているような仕組みをイメージすれば理解しやすいはずです。既存の業務システムから得られるデータをもとに、IFRS計算の仕組みを別途用意し、仕訳データを財務会計に受け渡すことでIFRS処理を可能にします。特に取引データベース部分を汎用的な仕組みに構築すれば、今後対応が必要となるリスク管理の仕組みなどにも柔軟に対応できるようになります。すでに対応が進んでいる韓国などでは、多くの金融機関がこの方法を採用しています。既存システムへの影響が小さく、パッケージ製品を活用すれば、導入制度の変更にも製品によってはバージョンアップで対応することも可能となります。
そして第三の方法としては、バーゼルⅢやソルベンシーⅡなど今後整備する必要があるリスク管理系の仕組みを含めて検討し、全体最適を図る仕組みにアップデートしていく方法です。理想的な方法ではありますが、投資規模が大きく膨らむことを念頭に置いておく必要があります。

金融商品会計のシステム対応例

金融商品会計のシステム対応例

制度対応だけで終わらせない選択肢も念頭に

これまでほかの論点でもお伝えしてきたとおり、IFRSに必要な計算処理を個別に構築することは、あくまで制度対応のためのアプローチに過ぎません。企業の課題認識に応じて、リスク管理に関連したシステムを最適に配置し、各上流システムにそれぞれ組み込まれた仕訳生成機能を集約し、他のシステムと連携しやすいように機能配置を見直すなど、業務改善を見据えたアプローチを検討したいところです。
また、強制適用時期が延期された今だからこそ、単なるIFRSへの制度対応ではなく、経営・リスク管理の統合管理を実現するデータ基盤の整備や将来予測の活用などにより、経営管理をさらに高度化させる効果創出アプローチを選択することも一案です。

IFRS導入のゴールと活用ステップ

先行する韓国海外金融機関のIFRS対応事例

最後に、直近でIFRS対応が行われた韓国の金融機関を例に挙げ、どんな点を考慮しながらIFRS対応を進めたのか、その実例を紹介します。
この金融機関では、IFRS適用にあたって貸倒引当金を含む金融商品評価や開示領域が大きな課題となっていました。そこで金融商品の評価において、バーゼルⅡで規定された、金融機関が推計するデフォルト確率(PD)やデフォルト時損失率(LGD)をIFRS基準に調整し、評価を行っています。また、IFRSにおける膨大な注記開示に対応するため、専用システムを構築することで注記に必要な情報収集を円滑に行う仕組みを構築しています。

韓国金融機関のIFRS対応例

韓国金融機関のIFRS対応例

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更新日時:2018年12月18日 15時50分

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