IFRSの動向から見つめ直す新たな価値とその取り組み

数年前から注目されてきた「IFRS(国際財務報告基準)」ですが、2011年に予定されていた米国のIFRSに対する強制適用の意思表明を受けて、日本側でもIFRSの強制適用に関する何らかの動きが計画されていました。しかし、現実にはなかなか議論が前に進んでいないのが実情で、任意適用している日本企業の数も現在までに大きく増えている状況にはありません。とはいえ、海外からの資金調達を容易にするためにも、IFRSに対する任意適用は引き続き検討していくことが大切です。そこで今回は、IFRSの任意適用を視野に入れながらも、日本の企業会計基準委員会によって7/31に公開草案が公表された「修正国際基準(JMIS)」の話題やトップマネジメントが求める要請に応えていくための具体的な指針について考えていきます。

IFRSをめぐる日・米の動向について

IFRSをめぐる現在の日本国内の動きは、以前に比べるとトーンダウンした感が否めません。当初は2011年に米国が強制適用、いわゆるアドプションに関する意思決定の表明を受けて、日本では2012年に強制適用の可否を判断し、最短で2015年に強制適用という動きがありました。しかし、2011年に米国がIFRSの適用決定を延期したことで、日本では2011年に自国の会計基準をIFRSに近づけていくコンバージェンスを進めながらも、震災後の産業界からの要請もあり現時点では米国同様に強制適用の時期決定には至っていません。
強制適用に至らなかった米国では、2011年ごろからコンドースメントという新たなアプローチが提唱されています。国ごとの承認手続きを入れるエンドースメントとコンバージェンスを組み合わせた造語で、自国の会計基準を前提にIFRSを解釈していきながら、適用できる部分だけを任意適用していくという考え方です。つまり、結局のところは強制適用とはなっていない状況です。

日本では、2013年6月に公開された企業会計審議会の報告書の中で、IFRSの強制適用の是非については判断できないとしながらも、米国の動向を注視しながら任意適用の積み上げを行っていくことが重要だと記されています。当面の方針としては、IFRS任意適用要件の緩和やIFRS適用の方法、そして単体開示の簡素化などが示された形となりましたが、ここで新たなキーワードが登場しています。適用方法のなかで新たに示されたのが、エンドースメントされた日本版IFRSの開発、「修正国際基準(JMIS)」とも表される概念です。今後日本では、このJMISの開発・導入について、IFRSを早期適用した会社との併存方法なども含めて議論が展開されていくことが予想されています。
ちなみに、現在IASBのIFRS検討の動きについては、2014年5月に収益認識に関する最終基準書、2014年7月にはIFRS9号:金融商品の最終版が公表され、今後、リースに関する改訂も予定されています。ただし、IFRSに関する大きな変更は実施されていない状況にあるため、以前よりも余裕を持って様々な準備を進めていくことができるようになっています。

日本企業のIFRS任意適用状況

現在のIFRSに関する適用状況についてはどんな状況にあるのでしょうか。
東京証券取引所が行った調査によると、2009年時点では56社がIFRSの導入を検討していましたが、2010年には日本電波工業が任意適用1号となり適用予定も96社にまで大きく膨らんでいました。
しかし2014年7月現在では適用済み会社が27社にまで増加したものの、これを含めても適用予定社数は43社にまで縮小し、2009年当初をも下回る状況となっています。
この理由として考えられるのは、適用そのものの検討がストップしてしまったということはもちろん、適用に向けた要件に課題があると考えられます。海外からの資調達を考えた場合、さほど無理なく適用できる要件であれば、任意適用するはずです。この要件が緩和されるのを今や遅しと待っている企業も決して少なくないと考えられます。

企業が抱えるIFRS適用における実務上の課題

では実際にIFRS適用における困難さ、実務上の課題にはどんなものがあるのでしょうか。経団連が発表している報告書では大きく4つ指摘されており、対応コストやその効果などについて経営層を含めた自社内でコンセンサスを得るのが困難な状況が見て取れます。

課題 詳細説明
グループ業績管理における経営指標の取扱い 実務上の課題として業績管理面から、経常利益に変わる経営管理指標の検討や、OCIのノンリサイクリングに伴う当期純利益概念の変質、連単分離項目の業績管理上の取扱いを課題として挙げる企業が多かった。
過大な開示項目への対応コストが高い 事務コスト負担が重い項目として、ほとんどの企業が過大な開示項目への対応を挙げている。その他非上場株式の公正価値評価、MOU項目を中心としたIASBにおいて審議中の基準への対応を挙げる企業が多かった。
複数会計基準への対応コストが高い 親子会社間の役割分担の整理、並行開示期間のリソース不足の対応や決算システムの改訂、単独及び国内グループ会社では日本基準で決算実務を行うことによる二重管理負担等が挙がった。
IFRS導入の費用対効果が見えない IFRS適用にあたって、競合他社との比較可能性の向上や、M&A や資金調達などの個別項目について、具体的なメリットを定量的に示すことは困難である一方、連単分離への対応や開示項目増加による事務コスト負担の増加などのマイナス面は明確であるため、社内の合意形成を図ることが難しいという企業もあった。

※ 経団連『今後のわが国の企業会計制度に関する基本的考え方 ~国際会計基準の現状とわが国の対応~』をもとにTISが要約した。

これから具体的な適用実現性が議論される「修正国際基準」では、これらの課題が解消できるような動きが期待されており、1つの選択肢として検討できる可能性を秘めています。特に過大な開示項目への対応コストや複数会計基準への対応コストなどは修正国際基準がIFRSと同等であると認められれば大きく軽減される可能性があります。もちろん、会計基準の世界共通ルールとなるIFRSとは違う新たな基準が、IFRS、日本基準、米国基準に加えて併存することについて疑問視する声が挙がっていることも事実です。このようにIFRSをめぐる動きは混とんとしていますが、どのような基準を採用するにしても「IFRS適用の費用対効果が見えない」という点は、今後も大きな課題として考えていく必要があります。

強制適用であれば致し方ないものの、本当に資金調達が容易になるのかどうかといった定量的な効果は示すのが難しい部分です。そこで、費用対効果を明確に示すためのアプローチを多くの企業が模索し始めています。

IFRS適用の意義及び今後の取り組み

費用対効果の明確化に関して課題を解決するべく、多くの日本企業はIFRSを単なる法制度対応としてだけでなく、企業における経営管理やガバナンス強化のツールとして活用することで、経営層に対して投資効果を明確に示そうとしています。IFRS適用を見据えながら、グループ全体の経営基盤整備を行っていくことでその効果を示そうというアプローチを多くの企業が採用している状況です。
特に経営層であるトップマネジメントの要請には、どんな情報が必要なのかという業績評価項目の明確化やその情報を得るタイミング、そして投資家に対して何を伝えるべきなのかという報告情報の明確化などが考えられます。これらの要請に応える具体的な手段として、「会計方針の統一」や「決算の早期化」「勘定科目含めたコード体系の統一」への取り組みをすでに行っている企業が増えています。

グループ経営管理の高度化の要請:会計方針の統一

会計方針の統一については、グループ全体で同一の会計基準に基づいた会計処理を行うことで、製品原価や売上比較などはもちろん、同じ物差しで業績評価が行えるようになります。例えば、同一資産であっても日本と中国、欧米では減価償却方法や耐用年数が異なって処理していると、商品ごとの原価比較が難しくなります。
そのためには、子会社間の比較を行うよう原価管理や業績評価を統一し、役員報酬や株主配当など成果配分も合わせていく必要があります。予算や経営計画の変更タイミングも重要になってきます。もちろん将来的なIFRS対応も視野に入れておきたいところです。

グループ経営管理の高度化の要請:決算早期化 

決算の早期化については、特に決算期の統一を行うことで連結経営管理の最適化を図ることが可能になります。グループ会社ごとに決算時期が異なっていると、決算情報がなかなか揃わないことで連結決算が確定しないばかりか、数ヵ月ずれた状態の決算情報で経営判断を行わなければなりません。
決算の早期化に向けては、決算業務の見える化を行いながら決算業務の整備や見直しを行い、管理会計との関連性を考慮しながら決算期統一の方針を決めていくことが大切です。また、勘定科目の整備やERPに代表される会計システムの導入などインフラ整備も重要な施策となってきます。将来のIFRS対応を意識しておくことも忘れてはなりません。

グループ経営管理の高度化の要請:コード体系の統一 

勘定科目の統一については、グローバルでの取引や財務指標を統一する基盤を整備していくことで、経営情報を元にした多角的な分析が可能となり、経営判断の迅速化にも貢献します。勘定科目が統一できていないと、原価情報を比較することが困難なばかりか、原価情報を集計するために変換するためのツールやひと手間がかかってきてしまいます。
それを回避するためには、原価管理はもちろんのこと個別及び連結財務諸表などの制度会計をしっかり見直しながら、コート体系の採番方法などメンテナンスの仕組みやコード統一後の管理会計のあり方などをしっかりと念頭においておく必要があります。これも将来的なIFRSへの対応が求められる部分です。

ダウンロード資料「IFRS導入検討企業の投資最大化に向けた取り組み事例」

IFRS導入をグループ経営の高度化のための重要なサクセスファクターと捉え、取り組む企業が増えています。本資料では、経営環境やIFRS適用ルールが変化した場合でも、IFRSのコストを無駄にせず、効果が説明しやすいグループガバナンスの向上施策の代表的なテーマの1つ「決算早期化」の取り組み・検討の進め方を解説いたします。決算の早期化に既に取り組んでいる日本企業の事例から、決算早期化を阻む課題の詳細、そして課題の解決策など。IFRSの導入検討を進める上で、参考にしていただきたい資料です。是非、ダウンロードしてご覧下さい。

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更新日時:2018年12月18日 15時50分

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