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非財務情報コラム 第4回
「非財務情報と企業の環境取り組み」

気候変動、SDGs(※1)、カーボンニュートラル、脱プラスチック…最近、地球環境問題に関するニュースを耳にしない日はありません。

筆者が、環境記事をフォローするようになってから25年近くが経ちました。以前は、例えば国連の気候変動に関する会議(国連気候変動枠組条約 締約国会議:UNFCCC COP)期間中は環境記事が活況になりますが、それ以外の時は週に10件強程度でした。

ところが最近では、外交や経済面でも主要ニュースとして環境に関するものが頻出しますし、一日で10件以上の記事を目にすることも珍しくありません。またこうした状況は一過性のものではなく、今後も常態化し、続いていくと考えています。

地球環境問題と企業の関わりという視点で思いを巡らせてみると、その時代ごとでさまざまなテーマが浮かんできます。まず最近でいうと、何と言っても気候変動や循環型社会(プラスチック問題)のことが思い浮かびます。

時代を遡ると、企業と環境の関わりは、日本の環境行政の起点となった公害問題、すなわち化学物質の問題に行き当たると思います。他方で、生物多様性という分野では、国連の生物多様性条約 締約国会議(CBD COP10)が2010年に愛知県で開催され、この前後で日本の企業の生物多様性に関する取り組みは大きな盛り上がりを見せたように感じますが、その後は残念ながら、あまり脚光を浴びることがなく時が流れているように感じます。

■「非財務情報」から見る企業の真価とは

さて、今回のコラムの主題となる「非財務情報」について、少し考察を加えることにします。「非財務情報」、なかなか聞き慣れない言葉ですが、皆さまはいかがでしょうか。

筆者が「非財務情報」という言葉を最初に耳にしたのは、国際統合報告評議会(IIRC)により「統合報告書」という概念が登場したころになります(※2)。統合報告書は情報開示の一つのスタイルですが (※3)、登場の背景の一要素としてリーマンショック時の反省があるようです。それは、企業の真価を評価するためには、財務情報のみを見ていたのでは限界があり、企業のそれ以外の情報(非財務)も合わせて見ていく必要があるという認識です。

他方で、こうした動きが出る前から、多くの企業では環境報告書、CSR報告書、サステナビリティレポートといった「非財務」情報が開示されており「非財務情報」という言葉は、筆者の感覚からすると、ずいぶん最近になって出てきたという印象です。

いずれにせよ、そうした時代背景のもとで、私たちの間で徐々に広まり始めた「非財務情報」という言葉ですが、環境畑を歩んできた筆者としては、非財務情報は「環境」に関する情報を含むという確固たる実感はあるものの、実際に、環境以外のどこまでの情報を含むのか、ということについては明確な全貌をとらえられずにいます。

そこで「非財務情報」の定義を探してみたのですが、意外とこれは一筋縄ではいきません。例えば、前出IIRCの資料の中では、「非財務情報」について財務情報以外の「その他の情報」という記載が見られるだけです(※4)

これに関連して、コーポレートガバナンス・コード (※5)にヒントを見つけました。コーポレートガバナンス・コードでは非財務情報について「経営戦略・ 経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報」という2015年の記載に始まり(※6) 、2018年改訂版では「会社の財政状態、経営戦略、リスク、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項(いわゆるESG要素(※7) )などについて説明等を行ういわゆる非財務情報」との記載に発展しました(※8)

さらに2021年6月の改訂では、非財務情報の定義の点での拡張は見られないものの、企業がSDGs、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)(※9) へ取り組む必要性が明記されています。

●非財務情報をめぐる国際的な動き

国際的な流れにも触れてみましょう。欧州では、2014年に非財務情報開示指令(NFRD)(※10)が発出され、主に従業員500名以上の企業について、非財務情報の開示が義務づけられました。この指令において非財務情報とは、「環境、社会、従業員に関する事項、人権の尊重、腐敗、収賄防止」(※11) とされ、対象企業は、環境に関すること、社会や従業員の扱いに関すること、人権への尊重、腐敗や収賄の防止、会社の取締役会における多様性(※12) という5つの項目について、情報開示をしなくてはならなくなりました。

さらにこの流れは進展を見せ、欧州では2021年4月に「企業サステナビリティ報告指令(案)」(CSRD)が公表されています。(※13)
そして、その策定理由としては、
(1)投資家の間でサステナビリティ課題が、企業の経営危機を招き得るという認識が高まっていること、
(2)特定のサステナビリティ基準への適合や、サステナビリティに貢献することを目的とした金融商品市場が拡大していること(※14)が挙げられています。

企業サステナビリティ報告指令は、特に以下4点において、NFRDとの差異があるとされます。
(1)情報開示義務の対象会社の範囲の拡大
(2)サステナビリティ情報の保証を求める
(3)開示すべき情報をより具体的に示し、EUで義務とされるサステナビリティ報告基準に整合する形で開示することを求める
(4)すべての情報が、企業のマネジメントレポートの一部として発行され、かつ機械判別可能なデジタル形式の開示を求める (※15)

こうした内容を概観してみると、特に(2)(3)がそうですが、非財務の情報開示の際に、情報の質が非常に具体的に問われる時代が、すぐそこまで来ていると言えそうです。

●企業の「非財務」活動が広げるよりよい社会
最後に、環境の分野でのお話を少しさせてください。非財務情報、ESG投資、こうした言葉が社会に広まるにつれて、あるいはそれ以前から(?)環境の領域において顕著な動きの一つとして感じていることがあります。それは、定性的な記述が似合いそうな事柄でも、定量的に表すことが、ことのほか求められているということです。

例えば、今、大きな注目を集めている気候変動の分野では、事業が気候変動で受ける影響を定量評価(財務影響を評価する等)することが求められています。それは例えば、河川氾濫でサプライチェーンが滞るとして、その影響コストを把握することが求められるという具合です。もちろん、温室効果ガスの排出量削減活動も、すべて数字の領域です。ひと昔前の、「がんばります」や「積極的に取り組んで参ります」では、済まなくなっています。

さらには、動植物や生態系の保全に関する「生物多様性」の分野でも、世界の動植物や生態系の状態を定量評価した国連ミレニアム生態系評価(※16) を皮切りに、自然資本会計(※17)など、経済価値換算や定量評価を行う流れがあります。例えば干潟を一つ例にとっても、そこへ行くのにかけた交通費を干潟の価値とする方法、干潟の水質浄化機能を価値換算する方法など、さまざまなアプローチがあるようです。

いずれにせよ、こうした潮流、すなわち定量評価や非財務情報開示の流れは非常に大きなものであり、企業は今後もこの方面で積極的な対応を求められることでしょう。私たち企業が非財務それぞれの分野で定量評価をしながら着実に取り組みを進め、情報開示に励んだ先の未来に、将来世代の人々が、安心して笑顔で暮らせる健全な社会があることを、願うばかりです。

◇プロフィール
筆者について:長井菜々子
オゾンホールの影響のある南半球で、中学時代を過ごしたことから地球環境に関心を持つ。上智大学 地球環境法学科卒業、東京大学大学院・情報学環・学際情報学府にて環境の学際的な研究で修士号取得。修了後は研究機関、グローバルメーカー、大手IT関連企業等で、環境分野の業務を10年以上経験。現在は環境分野の専門家として活動している。

(※1)Sustainable Development Goals、国連が2015年に定めた17の目標からなる、持続可能な開発目標。
(※2)国際統合報告評議会(IIRC: International Integrated Reporting Council)は、2010年イギリスに設立された規制者、投資家、企業、学識者等から成る国際連合体。企業経営=価値創造とし、統合報告を通じて、世界の経済安定性と持続可能な開発の実現を目的にしている。
(※3)この他、サステナビリティ報告分野の基準設定団体としてGlobal Reporting Initiative (GRI)、Sustainability Accounting standards Board (SASB)などがある。
(※4)参照:https://integratedreporting.org/wp-content/uploads/2015/03/International_IR_Framework_JP.pdf
(※5)コーポレートガバナンス・コードは、上場企業が守るべき企業統治のガイドラインのこと。
(※6)コーポレートガバナンス・コード2015年6月1日、P.3:https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000000xbfx-att/code.pdf
(※7)ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)のことで、企業の持続的成長のための重要要素とされる。
(※8)コーポレートガバナンス・コード 2018年6月1日、P.11:https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000000xbfx-att/nlsgeu0000034qt1.pdf
(※9)TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は金融安定理事会(FSB)が設置したタスクフォースで、2017年報告書を公表。企業等に財務影響のある気候関連情報の開示を推奨している。
(※10)The Non-Financial Reporting Directive(DIRECTIVE 2014/95/EU)のこと。
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32014L0095
(※11)https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/BRIE/2021/654213/EPRS_BRI(2021)654213_EN.pdf、P.1、4
(※12)https://ec.europa.eu/info/business-economy-euro/company-reporting-and-auditing/company-reporting/corporate-sustainability-reporting_en
(※13)名称:“DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL, amending Directive 2013/34/EU, Directive 2004/109/EC, Directive 2006/43/EC and Regulation (EU) No 537/2014, as regards corporate sustainability reporting”
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52021PC0189&from=EN
(※14)同上P.3
(※15)同上P.5
(※16)“Millennium Ecosystem Assessment”は国連の呼びかけで2001年~2005年にかけて行われた世界規模の生態系評価。合わせて2010年TEEB 「生物多様性と生態系サービスの経済学」も有名。
(※17)自然資本会計とは、経済活動を支える生態系サービス等の自然資本を、その定量評価を通じて、企業の意思決定や各国の国民経済計算の体系に組み込み、持続可能な社会構築を目指す方法のこと。

◇非財務情報参照・点検サービス紹介

Q1:非財務情報参照・点検サービスとはどんなサービス?

A:企業が公に開示している有価証券報告書や統合報告書などの非財務情報を自動収集し、①主要な評価基準に応じた開示充足率チェック②非財務情報の記載元の確認③開示充足率の経年比較④他社比較などが可能なサービスです。

Q2:登録が大変そう。個人情報は大丈夫?

A:登録はいたってシンプル!新規登録ページから必須項目5つ入力するだけです。
https://score-icebreaker.com/Identity/Account/Register

個人情報の取り扱いにつきましては「利用規約」をご確認下さい。
https://score-icebreaker.com/rule.pdf

Q3:登録しても費用は掛からない?

A:登録頂いても特に費用は発生しません。有償の方のみが利用できる機能もございますがまずは無償版でのご利用をお試し下さい。

Q4:使い方を教えて欲しい。

A:ハンズオンの動画も用意しております。またzoom等での打ち合わせも実施可能です。
その旨お問合せフォームから是非お申込み下さい。

その他詳しいサービスについて、こちらのWeb(https://www.tis.jp/service_solution/non-financial/)もご参照ください。


◇非財務情報参照・点検サービスサイト
https://score-icebreaker.com/

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更新日時:2023年1月6日 13時35分