設計書なしにマイグレーションを進める懸案を解説

2022/08/23
COBOLで開発された大規模なシステムでは、設計書が正しくメンテナンスされていない場合があります。設計書なしにこれまで保守運用を続けていたとしても、いざシステムの刷新に向けてマイグレーションを実施する際には、設計書がないことが懸案になる場合があります。本ブログでは、マイグレーションには設計書が必要になるかどうかの疑問にお答えするとともに、設計書を用意するメリットや用意するための方法を解説します。
1.設計書が維持されていないCOBOLシステム
システム開発のアウトプットとして、システムとあわせて設計書を作成することが一般的です。設計書とは開発するシステムの機能や具体的な画面のレイアウトが文書化されており、だれが見てもどのような機能が備わっているものかが明確になる概要設計書と、プログラマーが開発工程の作業を進める際に利用する詳細設計書の2種類があります。これらの設計書はシステムの変更を検討する際の開発方針を決めるベースとなります。また、常日頃の保守・運用を行う際にも標準化された手順に則って確実な運用を検討、および実行するためにも必要なものになります。
しかしながら、現行システムが開発されてからかなりの年数が経っている、いわゆる「レガシーシステム」では、設計書が残されていない、または更新されていないことがあります。また、当初の構築に携わったシステムエンジニアがすでにチームを離れていると、手さぐりでのシステム管理、システムを更改する場合の調査に多大な時間と工数が必要になります。特に、国内のレガシーシステムの多くを占める「COBOL」システムは、設計書が維持されていないことが多いため、システム更改の検討が効率よく進められない場合があります。
2.設計書をマイグレーションで活用する意義
では、システム更改にてマイグレーションを行う場合に、設計書はなぜ必要になるのでしょうか?長年にわたる機能追加や外部システムとの連携によって複雑化した、COBOL等のレガシーシステムの更改を検討される方が、しばしば持たれる疑問かと思います。
実は、必ずしも必要とならないケースが多く、弊社のオープンマイグレーションサービスにおいても同様です。 マイグレーションを実施するために必要となる環境情報はシステムのソースコードから導き出すことが可能で、ソースコードから読み取ったプログラム言語を新しい言語に書き換えてからマイグレーションを実施します。このように、設計書がなくてもマイグレーション自体は推進することが可能です。
しかし、設計書を用意する事には2つのメリットがあります。1つ目に、マイグレーション実施後の保守・運用の検討に役立てられる点が挙げられます。マイグレーションは現行踏襲をコンセプトとし、業務やシステムは極力変更せずに実施するニーズが高く、保守・運用についても同じです。設計書に定められた保守・運用ルールがあれば、それらをベースにマイグレーション後の検討がスムーズに行えます。
2つ目に、廃止機能の洗い出しに活用できる点が挙げられます。マイグレーションは現行踏襲をコンセプトとしながらも、使われていないような機能はマイグレーションの対象外とするべきです。設計書があればシステムを俯瞰して各機能の要否が効果的に検討できるようになり、必要機能を絞ったスマートなシステムにすることができます。
それでは、マイグレーションの実施にあたって、上記メリットを享受するために、どのように設計書を用意すればよいのでしょうか。ひとつの方法として、資産棚卸サービスの利用が挙げられます。マイグレーションの事前調査の段階でこのようなサービスを利用することで、既存資産の状況を洗い出すとともに、設計書含む必要なドキュメントが準備できるので、以降のマイグレーションがよりスムーズに実施可能です。
3.資産棚卸サービスを使ったCOBOLシステムの設計調査
資産棚卸サービスは以下のような特長を持ち、COBOLシステムを含む様々なシステム資産を高速かつ柔軟に分析することが可能です。
①分析ツールによる自動化
資産棚卸サービスの大きな特徴は、マイグレーションサービスと同様に自動化ツールを利用して分析を行うことです。大規模な資産も高速かつ効率的な分析が可能となります。
②豊富なサービスメニュー
オーソドックスなものとしては、ステップ数など各資産の規模を洗い出して一覧化するものや、各プログラムの関連性を分析するものがあります。プログラムソースや各種定義、資産情報をリソースからダウンロードする静的な分析や、各種ログの情報を参照し、実際の稼働状況を確認する動的な分析など、様々な観点からの分析が可能です。また、サービスによってはプログラムごとの重複度合い、使われていないプログラムの割合も洗い出すため、廃止機能を特定する事でダウンサイジングも含めたマイグレーションの実施につながります。
③多言語対応が可能
こちらもマイグレーションサービス同様に、様々なプログラム言語に対応可能である場合が多いです。プログラム言語の種類に合わせて自動化ツールをチューニングすることにより、COBOL、メーカ独自のレガシー言語、.NetFrameworkやStrutsのようなフレームワークを含むオープン環境用の言語への対応が可能です。
上記の特徴をもち資産状況の効率的な分析を進めることができる資産棚卸サービスは、マイグレーションの事前準備としては勿論、スクラッチ開発や保守開発、平時の運用を効果的に推進するための検討にも有用なサービスです。
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4.まとめ
マイグレーションを進めるにあたり、実施後の運用保守や機能検討を行うためにも設計書はできるだけ用意するべきです。マイグレーションの検討を開始するにあたり、設計書が手元に残っていない場合には、ぜひ資産棚卸サービスをご検討ください。
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