シスメックス株式会社様
オープンソースベースのビジネス・プロセス・マネジメント・システムを
ワークフローに導入。低コスト、高品質を実現。
シスメックス株式会社は、職場や学校で行われる健康診断や体調が悪くなったときに病院などで行う「検体検査」を事業領域とする医療用検査機器・試薬メーカーで、世界各地の医療機関に機器、試薬をはじめ、検査情報システムやサービス、サポートを提供しています。
今回、ワークフローシステム構築にあたり、老朽化した既存システムから、国内ではまだ事例が多くないオープンソース・ソフトウェア(OSS)による大規模なビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)システムを採用。TISはその当初からプロジェクトの中心として貢献しました。
お客様名 | シスメックス株式会社様 |
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創立 | 1968年2月20日 |
事業内容 | 臨床検査機器、検査用試薬、粒子分析機器、関連ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入 |
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基幹系ワークフローシステムの刷新
シスメックス株式会社は、神戸に本社がある医療関連メーカーで、血液や尿などを調べるために必要な機器や試薬などの開発から販売サービスまでを一貫して行っている。シスメックスの製品は、世界各国に展開する同社の販売サービスネットワークにより150カ国以上の医療機関に届けられ、各国の医療を支えている。
現在、シスメックスは検体検査領域で世界トップ10に数えられ、近年ではがんや糖尿病にフォーカスしたライフサイエンス領域へと事業を拡大。患者の一人ひとりに最適な医療を提供するために必要な、新しい検査・診断技術の創出に取り組んでいる。
シスメックスのワークフローは2000年に構築されたが、運用が進むにつれ、サーバへの負荷増大によるシステムのレスポンス低下に悩まされてきた。また既存システムでは、アプリケーション自体の拡張性の乏しさも障壁となって、他業務への拡大やグループ関係会社への展開が困難な状況になっていた。
そこでシステムのバージョンのサポート期限切れを契機に、全く新しいワークフローシステムの構築に取り組むこととなった。
オープンソースベースのBPMシステム構築
新ワークフローシステムに求められた要件は、まず既存システムよりレスポンスが改善されること。またグループ展開に対応できる自由度の高いシステムであること。そして低コスト、高品質を実現すること。2004年以降、競合プレゼンテーションを経て何度かプロジェクトが立ち上がりかけたが、既存環境からのリプレースの難しさとそれに伴う高額の費用などが障壁となり、本格的なプロジェクト稼働には至らなかった。
TISは従来、ビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)ソリューションとして商用パッケージ製品をベースとした提案をシスメックスに行ってきたが、パッケージそのものが高額であるうえ、独自の拡張性やカスタマイズ機能に限界があり、また継続的なメンテナンスコストも導入の大きなハードルとなっていた。そこでTISは、オープンソース領域で実績のある日本ヒューレット・パッカード社とオープンソース・ソフトウェア(OSS)によるBPMシステム分野で協業し、業界標準サーバであるHP ProLiant上で稼働するOSS「JBoss jBPM」をベースとしたオリジナルのフレームワーク「e-ProcessManager」を開発。これを核としたソリューションをシスメックスに提案した。
このソリューションの強みは、第一にOSSであることによる初期投資額の低さ。そしてJavaベースであるため将来的に保守、開発を自社で行えるなど、保守費用の安さも大きなコストメリットになっている。そしてパッケージ製品との大きな違いとして、OSSならではの自由度の高さが挙げられる。パッケージ製品にあるようなブラックボックス化された部分がないため、システム構築後の機能追加や改修が非常に容易になる。さらに決定打となったのはアプリケーションがライトウェイトで動作が高レスポンスであること。これらのメリットはすべてシスメックスの要望に応えるものだった。
メンテナンス・サポートへの不安、アプリケーション不足への懸念といったOSSに対するネガティブなイメージは、ひとつずつ解消していったが、唯一のネックはワークフローシステムへの導入実績の少なさだった。そこでTISは、2006年春の時点で既にこのシステムを導入済みだった顧客企業の協力を得て、e- ProcessManagerによるシステム構築の事例調査をシスメックスに提案。2007年4月にこれを実施し、シスメックスの不安を払拭した。「実際に稼働している現場を見せていただいて非常に安心しました。もちろんコストメリットも大きかったですね。その他の要求にも応えてもらえそうでしたので、導入を決断しました」(井上氏)。こうしてプロジェクトは2007年7月、正式にスタートした。
新フローシステムへの信頼
スタートから2ヶ月は要件定義にあてられた。ここで問題になったのは稼働時のイメージをどのようにシスメックス側に伝えるか、だった。OSSベースである e-ProcessManagerは、従来のBPMシステムパッケージ製品とは違い画面サンプルを持たないため、実際の運用の際のイメージがつかみにくい。「ワークフローの実際の動きが分からないので苦労しました。そこがパッケージ製品との大きな違いですね」(近藤氏)。そこでTISは運用の感覚をつかんでもらうため、運用イメージに合わせたワークフロー全体のHTML画面を個別の申請書画面(経理の旅費精算、経費精算、支払依頼申請など)と合わせて作り、それを元に説明を繰り返すことでこの問題に対処した。
シスメックスからは前記要件に加え、シングルサインオンの実現、基幹系システムとの申請データ連携やマスタデータ連携、監査対応のためのデータ保存、帳票の追加などが要望として挙げられ、それらはすべて要件定義に盛り込まれた。
9月から本格的な設計・開発作業に入った。現場部門からは作業の間にも何度か仕様の追加や変更の依頼が発生したが、情報ソリューション部の担当者とTIS 間で協力しあい、開発作業自体はきわめて順調に進んだ。3ヶ月間で主要な開発作業は終わり、続いて12月からは統合テストとシステムテストに入った。また将来シスメックス自身の手で保守、拡張を行うための技術移転として、教育活動も同時に進められた。
最優先課題とされたシステムのレスポンスについては、実稼働前にシスメックスの現場の協力による大掛かりなテストが行われた。200~300名の社員が一斉に新システムにアクセスし伝票を記入するというもので、従来のピーク時の20倍ほどの負荷をかけたが、レスポンスの劣化は見られず、安定した高いパフォーマンスを見せた。これによって新しいワークフローシステムに対する信頼は盤石のものとなった。
稼働後の評価と今後の展開
こうして2008年2月に経理システム、4月に総務システムと人事システム(の一部)の実稼働が始まったが、システムの安定性と格段に速くなったアプリケーション動作に高い評価が集まった。「やはりレスポンスの大幅な向上が大きい。日々の申請が出しやすくなったという声を聞きます」(近藤氏)。「パッケージ製品と違い、一から自分たちで手作りをした、という感覚ですね。導入後の品質にも非常に満足しています」(井上氏)。
6月には人事・勤怠システムも稼働が開始し、本プロジェクトの第一フェーズと位置づけられた既存システムの置換作業はほぼ90%が完了した。現在は人事採用系、情報システム系の開発および移行作業に取りかかっている。
今後の第二フェーズとしては、シスメックスの関連会社への同システム導入が大きな目標として挙げられている。シスメックスと同じERPを導入済みの国内関連会社から先行導入する方針で、既に具体的な導入計画が検討されており、同システムは企業マネジメントの中核として展開されていく。
またTIS にとっても、自社開発のe-ProcessManagerが年間50万伝票を超える規模でも安定稼働できるという大きなハードルを越えたことで、今後 JBoss jBPMとe-ProcessManagerによる基幹系システムインテグレーションは、TISの新しい強力な戦略商品となるだろう。
お客さまからの声
パフォーマンスと将来性の高さに非常に満足
シスメックス株式会社
情報ソリューション部 システム開発課 課長
井上雅勝氏
「申請系の伝票だけでなく、基幹系システム(ERP)と一体となったシステムとしての活用、グループへの展開に柔軟に対応できるワークフローシステムソリューションを探していたところ、TISさんからオープンソースであるJBoss jBPMをベースとしたe-ProcessManagerによるワークフロー構築のご提案をいただきました。基幹系フロントとしての実績があまり多くなく、当初少なからず不安はありましたが、実稼働後はコストメリットだけではなく、そのパフォーマンスと将来性の高さに非常に満足しています。今後は関連会社への導入を進めていきます。」
私たちの要望にきめ細かく対処いただきました
シスメックス株式会社
情報ソリューション部 システム開発課 主任
近藤直樹氏
「今回の新システム導入における最大の懸案事項はパフォーマンスでした。従来のシステムのレスポンスを少しでも向上させたかったのですが、その点は想定以上の結果が出て、喜んでいます。システム全体としてのクオリティも全く問題ありません。またTISさんの技術力の高さも大変印象的で、我々の細かなオーダーにも的確に応えていただきました。
今後はオープンソースベースの強みを活かして、関連会社にこのワークフローシステムをどんどん導入していきたいですね。
TISさんにはこれからも我々情報ソリューション部だけでなく、経理、人事、総務といったユーザ部門にも先を見越したご提案をいただけるよう、期待しています。」
TIS担当者から
OSSへのお客様のご理解が推進力に
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部 産業システム営業部 主任
河端厚
「今回のOSSベースのソリューション提案は、シスメックス様にとって全く新しいものでしたから、その信頼性、品質を認めていただくのが大変重要でした。 OSSベースの自由度の高さ、将来性、メンテナンスコストの低さといったところをご理解いただけたのが大きかったです。これを機会に継続的なお取引ができることを願っています。」
プロジェクトを通してお客様との関係を深化
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部 産業システム第2部 統括マネジャー
岡本俊之
「このプロジェクトはTISにとっても大きなチャレンジでしたが、お客様の期待を超える成果を出せたと思っています。おかげさまでシスメックス社内でも高い評価をいただきました。このプロジェクトを契機に、情報ソリューション部以外の部署との関係も作ることができました。今後は、各部署に向けて新たな提案をどんどん出していきたいと考えています。」
プロジェクトの経験を活かし次のステップに
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部 産業システム第2部 主査
西垣内健司
「シスメックス様にOSSを使ったフレームワークのメリットを、ご理解いただくところからこのプロジェクトはスタートしました。無事に稼働することができ、ほっとしたというのが正直な気持ちです。私たちメンバーが持つ経理、人事、総務に関する知識を活かして、今後さらにe-ProcessManager を成熟させ、デプロイメント型の開発を進めていきたいと思っています。」
e-ProcessManagerの要望実現に苦心
「今回のプロジェクトは、TISとe-ProcessManagerに対してお客様がどのような期待をされているかを知る良い機会になりました。お客様のご要望を、e-ProcessManager全体のバランスを考えながら実現していく部分が一番苦心したところです。おかげさまで高い評価をいただきましたから、その甲斐はありました。」
初めてのフルスケールプロジェクト
TIS株式会社
産業事業統括本部産業第2事業部 産業システム第2部
田畑博光
「私にとって要件定義から始まるフルスケールの開発プロジェクトは初めてで、良い経験になりました。勤怠機能に関しては全仕様を統括するサブリーダーという立場でしたから、苦労もありました。また、このプロジェクトではお客様から要件や仕様をいかに聞き出すかということを学びました。今後もこの経験を活かし、e-ProcessManagerの開発に取り組んでいきたいと思います。」
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- ※本資料に掲載された情報は、弊社情報誌「シスナビ Vol22」発刊当時のものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があることをご了承ください。
- ※シスナビ発刊日:2008年9月30日