株式会社日本触媒様
綿密なアセスメントによりプロジェクトを計画・立案、マネジメント
IFRS対応を視野に入れた基幹システム(ERP)のバージョンアップを実施
幅広い化学製品を自社開発技術により生産している日本触媒は、企業活動を支える基幹業務システムにSAP社のERPシステムを活用しています。このたび、IFRS対応なども視野に入れ、事業拡大に伴うIT基盤強化のためハードウエアのリプレースとともに、バージョンアップを実施しました。TISは、綿密なアセスメントを基にしたプロジェクト計画の立案、およびプロジェクトマネジメントをご支援。また、オフショア開発によるコスト削減など、コストを抑えつつスムーズなインフラ構築を実現しました。
社名 | 株式会社日本触媒 |
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創業 | 1941年8月21日 |
事業内容 | 基礎化学品(酸化エチレン、アクリル酸等)、機能性化学品(高吸水性樹脂、電子情報材料等)、環境・触媒(自動車触媒、環境浄化触媒等) |
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課題
迫る保守期限により急務となったERPのバージョンアップ
圧倒的な世界シェアを誇るアクリル酸や高吸水性樹脂を中心に、技術の先端をゆく多彩な化学製品を開発・生産し、グローバルに提供している日本触媒。最終製品ではなく、中間素材を製造する化学メーカーであるため、その製品が直接、消費者の目に触れる機会は多くはありません。しかし、日本触媒の技術・製品は、紙おむつ、衣類・台所用洗剤、印刷インキ、ペットボトル、自動車塗料、建設資材、液晶ディスプレイなど幅広い分野に生かされており、例えば紙おむつなどに使われる高吸水性樹脂の販売量は世界需要の実に4分の1を占めるなど、グローバルに事業を展開しています。
日本触媒は2004年、業務改革の一環としてERPシステム(SAP R/3 4.6C)を導入。その後、中国・インドネシア・ベルギーなど海外拠点を含む関係会社にもERPシステムの導入を広げ、グループ経営の基盤として活用してきました。
しかし、2009年末には現在使用しているSAPのバージョン(SAP R/3 4.6C)の標準サービスの保守期限を迎えるため、万が一、保守期限切れの後に障害などが発生した場合に、適切なサポートや修正プログラムの適用が受けられなくなる恐れがありました。経営を支える情報基盤であるため、障害によるシステム停止が与える影響は甚大であることが想像されます。そこで日本触媒は、内部統制や国際財務報告基準(IFRS)への対応も視野に、SAP ERP 6.0へのバージョンアップの検討を開始しました。
また、一方で、SAP R/3 4.6Cの導入から4年が経過したため、蓄積されたデータ量も膨大になっていました。例えば、過去データを参照する際の検索や、受注情報の入力時のレスポンスにもストレスを感じるなど、システムのパフォーマンスの低下が散見され始めました。そこで、バージョンアップに先駆けて、アクセス頻度の低いデータを外部ストレージに退避させることでパフォーマンスを向上させる「アーカイブ」を実施。その上で、バージョンアップと同時にハードウエアのリプレースも実施し、エンドユーザーに対して快適な利用環境を提供するとともに、将来を見越したシステムキャパシティを確保することで、IT基盤のさらなる安定・強化を図ることにしたのです。
提案
お客さまとの二人三脚でのプロジェクトマネジメント
日本触媒は、受発注から生産、出荷、決算に至るまですべての業務をERPシステムで行っています。すべての部門が利用する業務基盤であるだけに、もしも移行がスムーズに進まなければ、事業運営に与える影響は甚大であり、失敗は許されません。加えて、日本触媒ではSAP R/3 4.6Cと外部システムとのインターフェースなどを複雑に作り込んでいたため、難易度の高い作業が想定されました。そういった状況において、日々動いている基幹系業務に支障を来すことなく、円滑に新バージョンへと移行するためのパートナーとして日本触媒が選んだのは、TISでした。
「TISは、SAP R/3 4.6C導入の際、2001年11月から当社のビジネスフローを綿密に調査し、無事にカットオーバーさせてくれました。その後の運用保守もTISに委託しているのですが、当社の業務に精通し、かゆい所に手が届くような対応をしてくれていることが、今回の選定の理由でした」と同社IT統括室長の野原利夫氏は説明します。今回のプロジェクトではシステムの安定稼働を優先し、新たな機能は追加せず、テクニカル・アップグレードの方針を採用。また、同時期にグループ会社へのERP展開など、複数のITプロジェクトが並行して動いていたため、バージョンアッププロジェクトを含む、トータルなプロジェクト管理が成功の鍵を握っていました。
そこで、両社ともに、業務とシステムに精通している最適な人材をプロジェクトメンバーとして選出。ミスコミュニケーションや業務知識移転のための工数を最小限に抑制するとともに、並行で進む複数のプロジェクトに参画するメンバーを適宜調整しながら、日本触媒とTISでの二人三脚によりテストケースの洗い出しおよび検証を実施。TISの実績および経験や方法論も活用しながら、抜け・漏れのないテストを実施しました。
「バージョンアップに際しては、当社独自に追加開発したアドオンプログラムの改修が必要になりますが、その工数がどれくらい必要になるのかが最も心配したところでした」と同社IT統括室課長の奥野俊博氏は振り返ります。
解決
オフショア開発でコスト削減を実現
日本触媒がバージョンアップを決断したのは、リーマン・ショック(2008年9月)直前でしたが、その後は先行きに不透明感が増す経営環境にあったことから、可能な限りコストを抑制したいという思いがありました。自社のIT要員のパワーを生かすことで大幅なコスト削減を実現していましたが、「さらなるコスト削減に向けて、中国でオフショア開発ができないかと相談しました」(奥野氏)。
「日本と離れているだけに、当初は不安を感じましたが、TISは上海にも拠点を持ち、現地と日本をつなぐ優秀な中国籍の人材にオフショア開発全体のマネジメントをしていただけたため、安心して任せることができました」と野原氏は語ります。
その結果、中国でのオフショア開発を活用したことで、オフショアを利用しない場合に比べ、アドオンプログラムの改修コストを約4割削減することができました。
一方、ERPシステムのバージョンアップは、財務報告における内部統制の大型稟議案件に該当するものであり、システム変更におけるしかるべき手続きを踏まなければ、有価証券報告書に「内部統制非有効」と記載され、影響は企業価値の毀損にまで及ぶ可能性がありました。そこでTISでは類似事例などを基に、日本触媒と共に議論を重ねて内部統制基準にかなう改修プログラムの本番環境への移送承認の手順を確立。このような一致協力した活動を通じて、内部統制の監査をクリアできる見通しが立ちました。「こうした協力を得られることは、コスト以上の価値があると感じています」(野原氏)
効果
IFRS対応等の将来性を考慮に入れたインフラの構築
今回のバージョンアップとハードウエアのリプレースにより、システムのパフォーマンスは大幅に向上しました。「このバージョンアッププロジェクトが成功したことで、すべての連結子会社を含めて基幹業務システムをSAP ERP 6.0に統一できる目処が立ちました。当面の重要課題はIFRSへの対応をどうするかということです。グループ会社のERPのバージョンがそろうことにより、IFRSに対応できるインフラがほぼできあがったと考えており、IFRSへの対応がスムーズに進められるのではないかと考えています」(奥野氏)
「TISは300人規模のIFRS専門部隊を抱えていると聞いているので、そうした専門知識を活用しつつ、当社のIT統括室メンバーのノウハウやスキルとの相乗効果を発揮していけるような展開を期待しています」と、野原氏は今後の展望とTISへの期待を語りました。
お客さまの声
プロの目からの改善提案に期待します
株式会社日本触媒
IT統括室長 野原 利夫 氏
当社の業務に精通している強みを生かし、われわれが気づいていない、しかしプロの目で見れば分かるというような改善提案などを期待しています。シンクライアントやBCP、新型インフルエンザ対策など、キーワードはたくさんあります。Win-Winの関係で、共に成功しハッピーになれるようなパートナーでありたいと思っています。
事前のアセスメントの重要性を実感しました
株式会社日本触媒
IT統括室 課長
奥野 俊博 氏
TISにはIT統括室のメンバーのスキルレベルまで把握してもらっており、運用者の良きパートナー、理解者だと思っています。ERPのバージョンアップについては、アセスメントの重要性を実感しました。事前にしっかりと見通しを立てることが、予算と納期を守るポイントだと改めて認識し、それを気づかせてくれたのがTISでした。
TIS担当者から
日本触媒様とTISのパワーの連携が成功要因でした
TIS株式会社
産業事業統括本部 ビジネスシステムコンサルティング事業部
エンタープライズリソースマネジメント第3部 マネジャーコンサルタント
阪本 龍門
日本触媒様はITガバナンスが強く機能しており、少数精鋭のIT統括室メンバーで各事業部や関連会社のIT関係の動きまでコントロールしています。数あるアドオンプログラムの調査には、IT統括室と共にエンドユーザーの協力も仰ぎながら早期に着手し、改修も前倒しで進めることができました。
今回のプロジェクトは、綿密なアセスメントにより全体の見通しをしっかり立てられたこと、日本触媒様のIT人材のパワーとTISのパワーをうまく融合させられたことが成功要因でした。
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