三井化学株式会社様
管理会計の高度化や決算開示の早期化を目指し制管一致の連結会計システムを刷新
総合化学メーカーの三井化学では、管理会計の高度化や決算開示の早期化を目指して、制度連結・管理連結データの整合を図る制管一致の新連結システムを構築しました。TISは、連結システムの構築および運用保守を担当。国際財務報告基準(IFRS)対応などの制度変更に対応できる、経営力強化に向けた環境を整備しました。
社名 | 三井化学株式会社様 |
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創業 | 1997年10月1日 |
設立 | 1955年7月1日 |
事業内容 | 石化、基礎化学品、ウレタン、機能樹脂、加工品、機能化学品 |
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課題
競争力強化で求められる制度連結と管理連結の整合
生産拠点の海外移転が進み、売上高に占める海外比率が上昇するなど、多くの企業で、事業のグローバル化が進展しています。しかしビジネスチャンスが広がる一方で、海外の景気や為替動向といったありとあらゆる不確定要素が企業にとってのリスクとなる時代となっています。
高機能樹脂や電子情報材料、石油化学製品など先進素材の製造販売・研究開発を手がける総合化学メーカー、三井化学株式会社(以下、三井化学)では、事業のグローバル展開が加速しています。連結決算の対象となる子会社・関連会社も国内55社・海外43社(2009年3月31日現在)にわたり、海外グループ会社の重要度は増しています。刻一刻と変化するグローバル経済に対し、従来型の制度連結決算情報だけに基づいた経営管理では、情報の把握や分析が迅速にかつ十分に行えず、経営の意思決定の遅れを招きかねないことから、三井化学では連結ベースでの業績管理を迅速に行える仕組み作りに向けて、情報システムを積極的に活用してきました。
しかし、約10年前に導入された既存の連結会計システムは、法律によって定められた対外報告を目的とする「制度連結」用の連結会計システムに、自社の経営状態の把握を目的とする「管理連結」用のシステムを追加構築し、改修を重ねながら運用されてきました。そのためデータ収集からレポートまで複数のシステムを経由しており、現状以上の決算の早期化に限界がありました。さらに企業価値向上を図る経営のためにも不可欠な、事業単位での資源配分と活用状況を把握するバランスシート(貸借対照表)の作成に時間と労力を要していました。また国内外のグループ会社から届いた連結データを制管で別々のシステムに取り込んでそれぞれで処理をしていたことから、三井化学では制度会計・管理会計の整合を取ることが困難となっていました。
そこで、2008年を初年度とする中期経営計画での「グループ経営管理を見据えてビジネス基盤を強化する」という経営方針のもと、連結経営情報の可視化、管理要件への柔軟な対応、連結処理のスピードアップや効率化を実現するべく、制度・管理の一致を図る新たな連結会計システムを構築することとなりました。
提案
管理連結に強い「SAP BOFC」を提案、短期間でのシステム構築に応えるTISの実績
制管一致の連結会計システム導入に向けた検討は、2007年に始まりました。三井化学では戦略的なグループ経営の実践に向けて連結業績管理を重視しており、システム選定ではこの迅速化・効率化が図れることが、大きなポイントでした。
こうした管理連結の重要性に関連して、三井化学予算管理部長の黒川知則氏は、「ビジネス基盤強化を図るためにも、決算開示の早期化や管理会計の強化が重要。特に管理連結については、中期経営計画の戦略課題である"ROA(総資産利益率)を基軸とした業績管理"、すなわち事業単位・会社単位・四半期単位での損益計算書・貸借対照表・キャッシュフローの把握が不可欠でした」と、システム構築の具体的な目的について語ります。
2000年から三井化学の基幹システムであるSAP R/3 の導入を進めてきたTISは、その後も運用保守を実施する中で、今回の提案の機会を得ました。その内容は、三井化学においてSAP ERP 6.0 をすでに活用しており、主要なグループ各社でもSAP システムを利用している点を考慮し、新たな連結会計システムとして「SAP BusinessObjects Financial Consolidation」(SAP BOFC)の導入を提案するというものでした。このシステムは、事業別連結などセグメント連結の柔軟性を有している、同じ収集データをもとに制管で連結処理ルールを分けて処理し、それぞれの結果を保持できる――といった管理連結に強い特長を持っていました。そして、制度連結に関しては日本会計基準(JGAAP)向けのテンプレートが用意されており、まさに三井化学のニーズに応える最適なシステムでした。
三井化学は、TISがSAP 製品に関する数多くの実績やノウハウ、豊富な業務知識を有していること、日ごろの運用保守を通じて三井化学のシステムにも精通しており、詳細な要件定義を迅速に策定し、短期間でのシステム構築が可能であること、構築後は直ちに運用保守体制に移行できることなどを評価。「SAP BOFC」を用いた制管一致の連結会計システム構築に向けて、TISと共同で取り組むことを決めました。
解決
制度連結・管理連結双方の要件を調整し、1つのシステムへの統一を実現
「SAP BOFC」を用いた新たな制管一致の連結会計システムを構築するプロジェクトは、2009年2月の連結予算(管理連結)、及び2009年7月の連結決算(制度連結・管理連結)での利用開始を目標として、2008年7月に始動しました。
今回のシステム構築にあたっては、制度連結・管理連結それぞれの要件を1つのシステムで実現することが必要でした。そのため、プロジェクトでは、制度連結・管理連結双方のニーズを考慮しながら要件定義・開発・導入を進めていきました。特に制管共通入力データの持ち方の検討と入力フォーマットの設計については綿密な調整を実施、その中でも制管一致の連結会計システムには特に欠かせない、勘定コードの制管共通化に対しては早めに着手し、作業を進めました。また、特に複数のセグメントに関連するグループ会社には入力作業が増えるため、システム構築の早い段階からプロジェクトへの参加を要請し、優先して説明を行うことで、理解が得られるよう努めました。
このようにグループ各社に協力を依頼した点について、システム企画部長の目黒洋之氏は、「従来はグループ各社から届いたデータを本社側で加工して業務に役立てることに注力してきましたが、さらなる決算開示の迅速化やデータの有効活用を図るためには、勘定コードの共通化を実施し、グループ各社で入力する最初のデータの品質向上を図る必要がありました」と理由を語ります。
また、現業と兼務するメンバーが多いプロジェクト体制のもとでも検討が進むよう、三井化学では兼務メンバーの現業負担を極力軽くするように努めるとともに、TISでは操作マニュアル作成作業の支援を行うなど、三井化学・TISでお互いに協力しながらシステム構築に臨みました。
効果
制管一致の環境のもとIFRSへの対応に備える
制管一致の連結会計システムは、2009年1月に予算系の構築を完了し、同年2月の連結予算(管理連結)から運用を開始しました。また、連結決算(制度連結・管理連結)についても2009年7月から運用を開始(7月の既存システムとの並行運用を経て10月からBOFCの単独運用)しました。新しいシステム環境によって業務が効率化するとともに、管理連結に必要な四半期毎の事業別貸借対照表・キャッシュフローも作成できるようになるなど、当初の目的が達成され、明細データの提供など、事業部門への情報公開の改善もなされています。
また、従来の連結システムでは、煩雑な編集作業を経て制管共通のデータ収集用Excelファイルを作成し、データ回収後システムにアップロード作業を行い連結処理していました。そのためシステム投入後にデータの修正が発生した場合、両者で整合が取れなくなる可能性がありました。
今回構築された「SAP BOFC」による制管共通システムでは、Web経由でグループ各社がパッケージデータをシステムに直接入力する方式を導入。これにより、収集の効率化やアップロード作業に伴うエラーデータの発生を防ぐことができ、一元化されたデータベースのもとで運用業務の大幅な効率化が実現しました。連結での業績をスピーディかつ正確に把握できる仕組みが整ったことで、今後は、決算開示の早期化やIFRSへの対応も期待されています。
今後のIFRS対応について、IR・財務部長の宮内伸氏は次のような見通しを語ります。「IFRSが求める事業部単位のマネジメント・アプローチは、いわば当社の文化として以前から根付いていたもの。欧州で一般的に利用されているSAP製品を社内システムに採用していることもあり、システム側での対応はしやすくなっています。IFRS対応ではむしろ、業務プロセスの変更要素にどう対応するかが鍵になるかもしれません」
欧米の大手化学企業とのグローバルな競争が激化し、原油価格の高止まりが続くなど先の見えにくい経営環境の中で、制管一致の連結会計システムの構築により、ビジネス基盤の強化を果たした三井化学。TISは、今後も高度できめ細かな運用保守サービスなどを通じて、環境変化に即応する三井化学の適応力の強化に貢献していきます。
お客さまの声
管理会計に強いシステムを導入することが重要
三井化学株式会社
予算管理部長
黒川 知則 氏
制度連結に基づく決算報告と管理会計からのレポートが同時に出ることで、管理会計データの信頼性が確保され、業務改善や迅速な意思決定といった面でビジネスに役立てることが可能となります。そのために、制度・管理の整合を図ることは不可欠。制管一致の連結会計システムを構築できたメリットは大きいですね。連結データをビジネスに役立てたいなら、迅速なデータ収集が図れ、管理会計に強いシステムをお勧めしたいと思います。
豊富な業務知識に基づくTISのサポートは力強い味方
三井化学株式会社
IR・財務部長
宮内 伸 氏
決算業務の合間をぬってシステム導入の検証作業を進める過程では、当社の業務知識に精通しているTISの支援が力強い味方となりました。決算開示の迅速化が図れる環境が整ったので、年度決算においても30日以内の開示を目指したいですね。国内の会計制度を踏まえたシステム対応は、システムの使い勝手を大きく左右する部分ですので、法制度の変更などにも迅速に応えられるTISのサポートや先進的で高度な提案に期待しています。
IFRS対応も視野に入れ、先進的環境を構築できました
三井化学株式会社
システム企画部長
目黒 洋之 氏
多くの企業で「SAP BOFC」の導入が進むのはまだこれからと聞きますが、当社では、SAP製品の構築・運用を長年にわたり手がけてきたTISとともに、先進的なシステムを他社に先駆けて導入することができました。会社の業績そのものを取り扱うだけに、システム障害などのトラブルは許されません。今後はIFRSへの対応も求められます。TISには今後もサービスのレベルアップを継続し、万全な運用保守の維持を期待しています。
TIS担当者から
「制管一致」の連結システムは、制管同時の構築が最適
「制管一致」はこれからの経営効率化のための重要なキーワード。制度・管理の統合を図るためには、制管一致の連結会計システムを制管同時に立ち上げることが、その経営効果を最大限に発揮するという観点からも最適です。今回のシステム導入は先進的な取り組みであり、まさに道理にかなった仕組みといえます。決算業務で多忙な状況の中で、三井化学様には業務検証、データ投入や検証作業にご尽力いただき、短期間での導入を果たすことができました。
TIS には、「SAP BOFC」の迅速な導入と効果の最大化を可能とする、SAP製品についての豊富な導入実績やノウハウ、万全な構築・運用保守体制があります。IFRS対応に関しても、SAP BOFCなどシステム面でのIFRS対応だけでなく、IFRS適用の与える影響を洗い出し、対応方針を立案するアセスメント・企画立案サービスを用意して、経営の意思決定に必要な材料を提供します。
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