SBI生命保険株式会社様
保険業務のデータベース基盤をOracle Database Applianceに刷新し耐障害性を強化
SBI生命保険株式会社(以下、SBI生命)は、障害発生時の事業継続性を高めるため、データベース基盤を「Oracle Database Appliance」(以下、ODA)へ刷新することを計画した。TISは豊富なODA導入経験を活かし、可用性に優れたデータベース環境を設計・構築。さらに、20種を超える運用手順書の作成、ソフト・ハード両面の課題を解決するカスタム保守サポートにより安定運用に貢献している。
本社 | 東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー |
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設立 | 1990年 |
資本金 | 475億円 (2018年5月末現在) |
事業内容 | 生命保険 |
URL | https://www.sbilife.co.jp/ |
背景
データベース専用アプライアンスによる可用性・耐障害性強化を計画
SBIグループは、インターネットを活用して銀行・証券・保険などの事業を展開する金融コングロマリット。SBI生命は、2015年に同グループの一員に加わり、保険領域の中核を担っている。
保険契約者の情報を管理するデータベースについて、IT部の安部政幸氏は「保険契約の引受け、支払い、オンライン見積り、コールセンターの応対など、あらゆる業務で契約者の情報を参照しています。そのため、データベースが停止すれば、その間はほぼすべての業務が遂行できなくなります」と語る。
従来のデータベースは、同社の前身であるピーシーエー生命保険の時代に、物理サーバとOracle Database 11gを組み合わせて構築されたもの。サーバの冗長化、DRサイトの設置などBCP対策を施していたが、緊急時の運用面で不安要素があったとIT部ITインフラ課の高田恭雅氏は言う。「予備サーバに切り替える遠隔操作の手順などは、もともと標準のドキュメントがなく、DB管理者に属人化していました。また、切り替えには30分~1時間程度が見込まれ、業務に影響が及ぶリスクがありました」。
そこでSBI生命は、データベース基盤を刷新し、耐障害性を強化する計画に着手した。既存の4台の物理サーバは、それぞれハードウェアとソフトウェアが一体となった「Oracle Database Appliance」(ODA)にリプレイスし、同時にOracle Database 12cへのアップグレードを決定した。「従来機はストレージが外付けでしたが、一体型のODAなら障害が発生するポイントを減らせますし、ハードウェア保守費用やラック設置スペース等のTCOも節減できます。さらに、導入後の運用保守の負荷も抑えられることも、ODA選択の決め手でした」(高田氏)。
選択
高品質な運用手順書と保守サポートへの期待
SBI生命は2017年1月、ODA導入支援を託すITベンダーの選定を実施した。TISは、ODAおよびOracle Database 12cの導入実績と、日本オラクルとの長年のパートナーシップを評価されて候補の一社となった。
TISの提案内容について安部氏はこう振り返る。「オラクル製品の技術的な知見、可用性を高めるための提案は、当初から十分納得のいくものでした。加えて目をひいたのが、ODAのあらゆる運用手順をまとめたドキュメントの作成です。再起動やログ取得などの通常業務は当然のこととして、障害発生時のオペレーションまで、20種類以上の運用手順書を作成するとのこと。見せてもらった手順書のサンプルは非常に質が高く、オペレーションをより確実なものにできると思いました」。
さらに、他のベンダーに対する優位性として、TIS独自のカスタム保守サポートの存在があったという。「アプライアンス機器は、ハードとソフトの保守が必要ですが、その両方をTISがワンストップ提供するというものです。TISのデータベース専門部隊がオラクルとの間に立って技術的な質問に答えてくれたり、ハード故障時には外部の専門業者と連携して部品交換を代行してくれる。こうした、当社の負荷を軽減するサポートは、非常に評価できる部分でした」(高田氏)。こうして、2017年2月にTISへの発注が決定した。
導入
障害からの早期復旧が可能なグランドデザインを実施
導入プロジェクトが開始した2017年3月、SBI生命が利用している東京および西日本のデータセンターに、計4台のODAが納品された。SBI生命は当初、エントリーモデルのODA X6-2Sを3台、メインマシンとして最上位のODA X6-2-HAを1台導入する計画であった。しかし、TISと議論を重ねた結果、ストレージを冗長化して可用性を高めるため、3台のODA X6-2Sは上位モデルのODA X6-2Lへ変更された。
同月からスタートした設計フェーズでは、可用性・信頼性を強化するため、1台のODAの中にアクティブなデータベースを2つ用意するRAC構成(Active-Active)が設けられた。より低コストなRAC One Node構成(Active-Standby)の場合、アクティブ環境が停止すると、スタンバイ環境の起動が完了するまでの時間は業務を行えない。一方、RAC構成なら、障害時に瞬時にもう一方のデータベースへ自動切り替えされる。
「事前の構想段階ではRAC構成を検討していたものの、予算超過が懸念され、各ベンダーにはRAC One Node構成を条件として提示した経緯がありました。しかし、TISは、耐障害性を考慮し、自主的にRAC構成を提案に盛り込み、かつ他社よりも安価であったことから、RAC構成の採用を決めました」。
また、検証環境用のODAでは、Oracle Database 12cのマルチテナント機能が採用された。これは、一つのデータベースの中に、仮想的なデータベースを複数収容する機能で、さまざまな環境を用意して検証を実施可能となる。「従来のサーバでは、リソースが足りず複数の検証環境を持てない課題がありました。仮想化のようなかたちでデータベースを増やすことで自由度は大きく向上しました」(高田氏)。
こうして設計・開発を終えた4台のODAは2017年7月にSBI生命に引き継がれ、同年末に本番切り替えが行われた。移行テストおよび本番移行は、TISのPoC環境で検証済みの運用手順に基づき、スムーズに実施された。
効果
TISのワンストップ対応による負荷軽減
ODA導入後の効果として、まず従来機から処理能力が大きく向上した点をあげる。「基幹業務システムに渡すデータを作成する夜間バッチ処理は、以前2~3時間かかっていたものが45分程に短縮されました。以前はパフォーマンス面にも不安があり、開発担当者から何度かパフォーマンスに関する報告を受けていました。ODA導入後はハードウェア性能の大幅な向上もあって課題もほぼなくなり、性能面での不安が解消されました」(高田氏)。
TISから提案を受けた際、高く評価した運用手順書とカスタム保守サポートは、社内のエンジニアのスキル向上にも役立っているという。「属人化されていたDB作業が運用手順書に落とし込まれたことで、Data Guardスイッチオーバーやフェイルオーバー等、障害発生時に必要となるオペレーションをデータベース管理者以外の運用担当者がシステムリリース前に検証することができました。これにより、データベースのスキルや知見が、社内に確実に蓄積されてきています」(安部氏)。
安部氏は、かたちとしては目に見えないが、事業継続性の向上が一番の導入効果だと説明する。「言い換えれば、ご契約者がいつでも当たり前のように、安定的で高品質なサービスを受けられるようになったということ。これが今回の基盤刷新の最大の目標であり、達成できたことに満足しています」。
最後に、TISのカスタム保守サポートがもたらした効果を語る。「ハードのサポート、ソフトのサポートが別々の会社の場合、問題の原因がどちらなのかを判断するための負荷がかかります。TISのワンストップ対応により、こうした障害対応に追われる時間を大きく削減できると期待しています。実際、オラクルへの問い合わせ等については、TISの代行により負荷が大幅に軽減されています。その分、IT部内の人的リソースをサービス向上の取り組みに集中できるようになり、結果として顧客満足度を高めることにつながると考えています」(安部氏)。
システム構成イメージ
お客さまの声
SBI生命保険株式会社
IT部 次長
安部 政幸氏
SBI生命保険株式会社
IT部ITインフラ課
スペシャリスト
高田 恭雅氏
TISはカスタム保守サポート以外の部分でも、月に1回訪問いただき、データベースの技術的な相談をさせてもらっています。我々はデータベース専門のエンジニアではないので、導入した後も継続して相談やサポートを受けられることは非常に心強いです。今までいろいろなベンダーとお付き合いしてきましたが、TISの要件定義の進め方は、最もいいやり方だと感心しました。単にこちらの要望をヒアリングするのではなく『A案ならこういう使い方ができて、B案ならこうなります。TISとしては、こういった理由からA案を推奨しますがどうしますか』というように、複数のアイデアを提示してくれることで、こちらの考えも整理できました。また別の案件でも、TISから提案をいただければと思います。
TIS担当者から
TIS株式会社
サービス事業統括本部
エンタープライズソリューション事業部
エンタープライズソリューション営業部
主査 鈴田高之進
TIS株式会社
サービス事業統括本部
エンタープライズソリューション事業部
アプリケーションテクノロジーソリューション部
エキスパート 村松資大
TIS株式会社
サービス事業統括本部
エンタープライズソリューション事業部
アプリケーションテクノロジーソリューション部
上級主任 女池洋介
今回、SBI生命様にご提供している「カスタム保守サポート」は、ODAの日常的な運用業務から、クリティカルな状況下でのオペレーションまで対応できるサポートを目指し開発したものです。具体的なサポートメニューについては何度もお客様と議論を重ねることで、結果的によりよいものにすることができました。今回、お客様からTISの要件定義・設計の進め方を高く評価いただいたことが、非常に印象に残っています。我々の役割はODAを導入して終わりではありません。今後もビジネスパートナーとして、セキュリティ面の強化をはじめ、いろいろな切り口で提案していきたいと思っています。
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