株式会社近鉄百貨店様
管理会計クラウド「Oracle PBCS(Oracle EPM Cloud-Planning)」で百貨店等10店舗を横断した多角的な予実管理を実現
株式会社近鉄百貨店 (以下、近鉄百貨店)は、各店舗・売場の詳細な月次実績をより迅速に把握するため、新たな管理会計システムへの移行を計画した。TISはクラウド型管理会計「Oracle PBCS※1(現名称Oracle EPM Cloud※2-Planning)」導入を支援し、人手をかけずに多様な切口による予実管理ができる管理会計基盤を実現した。
※1 正式名称「Oracle Planning and Budgeting Cloud Service」
※2 正式名称「Oracle Enterprise Performance Management (EPM) Cloud」
本社 | 大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目1-43 |
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設立 | 1934年 |
資本金 | 150億円(2019年9月末現在) |
事業内容 | 百貨店業 |
URL | https://www.d-kintetsu.co.jp/ |
課題
長時間を要する月次実績の集計・分析作業
近鉄百貨店は、近鉄グループの百貨店部門として、近畿地方を中心に10店舗を展開。中でも2014年にオープンした「あべのハルカス近鉄本店」は、大阪の新たな観光スポットとしても人気が高く、国内外からの来店者で連日賑わいを見せている。
同社は10年程前から、基幹会計のERPとは別に、独立した管理会計システムを利用してきた。「全店舗・売場の月次実績は、販促施策や改装など効果的な“次の一手”を打つために欠かせない情報です」(総合企画本部IT戦略部 藤本忠雄氏)。
しかし、同システムで自動的に導出されるのは店舗単位の月次実績のみで、より粒度の細かい数字の把握には人手と時間を要していた。「たとえば、“本店の特定のフロアのみの収支”や、“全店舗の婦人服売場を横串した収支”のような数字を得るには、システムから書き出したデータをExcelで集計・加工する必要がありました」(同部 竹越理与子氏)。
この作業は、経理部や売場のリーダーらが自ら行い、すべての収支帳票が出揃うまでに約10日を要していた。「タイムラグにより、経営会議等で資料として使う時には既に“冷めた情報”となっていました」(藤本氏)。この課題を解消し、タイムリーな予実管理を行うため、同社は2017年より管理会計システムの見直しに向けて動き出した。
選択
TISの“提案力”で「Oracle PBCS」導入を決断
次期システム導入に向け、同社は数年来、管理会計システムに関する情報交換を続けてきたTISに協力を打診した。「以前、TIS主催のセミナーで『Oracle PBCS』を知り、当社の要件を満たせるのではと考え、改めて提案を依頼しました」(藤本氏)。
同製品は、オラクルが提供するクラウド型の管理会計/予算管理のソリューション。さまざまな分析軸を設け、多角的な予実管理ができる。また、近鉄百貨店は、次期システムを経営層から役職者、現場のリーダークラスまでがログインし、同一の情報を共有できるものにする構想があり、多人数が同時利用できる点が条件に合致していた。加えて、クラウド上のデータをExcelで直接開いてアドホック分析などができる、Excelとの親和性も評価ポイントの一つとなった。
TISから受けた「Oracle PBCS」の提案について、藤本氏は“地に足がついた内容”だったと振り返る。「当社の実際の店舗のフロアや売場を例に、どのような数値が、どのような手順で閲覧できるのか、導入メリットが非常に分かりやすかった。当社のプロジェクトメンバー全員が、TISの提案力を高く評価しました」。こうして、2018年2月、TISをパートナーとして「Oracle PBCS」を導入することが決定した。
導入
約170名を対象にTISがトレーニングを実施
要件定義フェーズは、業務で予実管理を行うユーザー部門から担当者十数名を集め、ヒアリングを行いつつ進められた。経営企画、営業推進、経理など立場の違いで、希望する分析の方法が異なるため、セッションを複数回実施し要望を集約していった。「TISと見解が一致したのは、個別の要望別に分析軸を数多く作るのではなく、極力シンプルな分析軸に絞り込むべきという点。最大公約数となる分析軸を設けることで、“全員が共通の指標を見られるようにする”目標に近付けると考えました」(藤本氏)。
開発フェーズと並行して、日常業務で「Oracle PBCS」を利用する社員へのトレーニングも実施された。近鉄百貨店が想定したユーザー数は、国内の「Oracle PBCS」導入企業で最大級となる500名以上。「このうち、高度な分析およびレポート作成を担当する約170名の社員を対象に、TIS社員を講師として計10回のトレーニングを実施しました」(竹越氏)。その内容は、一人1台のパソコンを使い、Excelからクラウド上のデータを開いて分析を行うといった、実践に即したもの。講義の際に使用するマニュアルについてもTISが作成した。一方で、閲覧が中心となる役職者に向けては、IT戦略部のプロジェクトメンバーが各店舗を巡回し、説明会を実施することで本番稼働後の早期定着化を図った。
効果
他店舗の実績もシステム上で閲覧可能に
こうして2019年3月から「Oracle PBCS」の業務利用がスタートした。以前の課題であった、粒度の細かい月次実績を把握するまでのタイムラグについては、「ERPの数字を締めた月初の段階で、詳細な月次実績を閲覧でき、以前に比べ約10日間も早期化されました。現場や役職者からも“早く見られるようになって助かる”と好評です」(藤本氏)。
また、ログイン権限を持つ全員が同一の情報を見られるメリットについては、「ある売場を担当する社員が、店舗全体の収支を閲覧したり、他店舗の同じ売場の収支と比較することも可能になりました。会社全体に、より視野の広い経営的な考えが浸透していくことに期待しています」(藤本氏)。
「Oracle PBCS」導入後の社員の意識の変化について竹越氏は「これまで、現場のリーダークラスは、経理から紙のレポートが回ってこないと、他店舗の状況が分かりませんでした。新システム移行後、自分からログインして情報収集する人が確実に増えており、情報に対して能動的になっている印象です」と語る。
今後は、経営層がより視覚的に収支状況を把握できるよう、グラフで視覚化するダッシュボードの採用や、収支一覧にKPIを表示して目標達成度をより分かりやすくする仕組みも構想している。「今回導入した『Oracle PBCS』には、まだ当社が使っていない高度な機能がたくさんあると思います。TISには新しいアイディアを提供いただき、ともに最良の方法で実現を目指していきたいと思います」
導入イメージ
お客さまの声
株式会社近鉄百貨店
総合企画本部
IT戦略部 部長
藤本 忠雄氏
株式会社近鉄百貨店
総合企画本部
IT戦略部 課長
竹越 理与子氏
要件定義のセッションは、ユーザー部門から十数名が集まる大規模なもので、それぞれの希望があり調整が大変でした。TISが折衷案を示したり、場の流れをコントロールしてくれたことで、参加メンバーが納得して次の段階へ進むことができ、ありがたく感じました。当社は全10店舗に約9,000の売場があり、改装やブランドの入れ替えなどの都度変更となるため、マスター情報の作成は我々が一番苦心した部分です。そこでも、TISが時には厳しい姿勢で進捗を管理してくれたおかげで、リリース予定に間に合わせることができたと思います。(藤本氏)
TIS担当者から
TIS株式会社
サービス事業統括本部
経営管理サービスユニット
経営管理サービス第2部
甲本 景子 (開発担当)
TIS株式会社
サービス事業統括本部
エンタープライズ営業企画ユニット
エンタープライズサービス営業部
青山 かおり (営業担当)
TISがこれまで経験した「Oracle PBCS」案件で、複数店舗がお互いの収支を見られるように設計した前例はなく、英断だと感じました。お客様の目標が明確だったので、TIS側メンバーも非常によいムードで目の前の課題に集中することができました。
大阪で実施したトレーニングには、三重や名古屋からもご担当者が参加され、全社をあげての熱意を感じました。その効果もあり、お客様によれば、導入後、操作に関する社内からの問い合わせはほぼないとのこと。これからも「Oracle PBCS」の定着化や、新しい活用をお手伝いできればと思います。
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