株式会社みずほ銀行様
全国約400支店と入力センターを接続し
財務情報の読取/登録業務の約60%時間削減を実現
株式会社みずほ銀行(以下、みずほ銀行)は、取引先企業の決算書をシステム登録する一連の業務について、効率化と正確性向上を計画した。TISは与信管理ソリューション「SCORE LINK」を軸として、約400支店からの決算書送信からセンターの登録業務までをペーパーレス化するワークフローを構築し、業務効率の向上を支援した。
本社 | 東京都千代田区大手町1–5–5(大手町タワー) |
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発足日 | 2013年7月1日 |
資本金 | 1兆4,040億円(2020年3月31日現在) |
事業内容 | 預金業務、貸出業務など |
URL | https://www.mizuhobank.co.jp/ |
背景
決算書登録業務のデータ化を計画
銀行が企業への融資を行う際など、各企業から入手する決算書は、与信判断や格付けのための重要な情報となる。みずほ銀行では、全国約400の支店が取引先企業から入手した決算書を東京の財務分析センター(以下、センター)に一元集約し、社内システムに登録する体制が設けられている。
これまで支店側もセンター側も、長年にわたり紙の決算書を前提として業務を行ってきた。まず支店は取引先企業から決算書を入手し、そのコピーをセンターへ郵送。センター側ではオペレーターが内容を読み解き、オペレーターが勘定科目と金額をシステムに手入力するという流れであった。
この一連の業務の課題について、与信企画部の樋口達也氏はこう語る。「センターに送られてくる決算書は、決算発表が集中するピーク時で月間約16,000件。紙を扱うため、郵送コストや管理コストがかかり、情報漏洩のリスクも伴います。不備があった場合は支店に再送を依頼し、2日程度のロスが発生していました」。
そして、決算書の勘定科目を正確に読み解ける人材が慢性的に不足している課題。同部の梶谷昌弘氏は「ノウハウが必要なので、それを習得するのに一定期間がかかります。処理が集中するピーク時は国内で人員が足りず、中国にアウトソーシングしていたため外注費も負担になっていました」と語る。
こうした課題を解決するため、与信企画部は2018年、決算書のOCRによるデータ化などの技術を積極的に取り入れ、ペーパーレス化を目指すこととした。
選択
解析精度に優れる決算書OCR「SCORE LINK」
条件を満たすソリューションを探し始めた与信企画部は、2018年8月、社内の別部門で案件を進めていたTISにコンタクトした。「TISが決算書をOCRでデータ化するソリューションを提供していると聞き、候補の一つとして検証したいと考えました」(樋口氏)。
打診を受けたTISは、まず現行の運用についてヒアリングを実施。その翌日には与信企画部とともにセンターを訪問し、実際の作業の流れや各作業にかかる時間を確認した。そして数日後、現状のフローの課題を踏まえたシステムの全体像をみずほ銀行に対して提案した。
その骨子は、センター側に与信管理ソリューション「SCORE LINK」を採用するとともに、全国約400支店からの決算書送信をペーパーレス化するというもの。提案を受けた梶谷氏は「候補の会社の中で、OCRによるデータ化だけでなく、全体のワークフロー構築を提案したのはTISのみ。我々の意図を汲んでくれていると感じました」。
また、OCRによるデータ化の精度については、「TISでは短期間のうちに、本番を想定した解析テストから完了報告までを終えてくれました。その結果、他の候補製品よりも精度が高いことが分かり、パートナーとしてTISを選択する決め手になりました」(梶谷氏)。
開発
支店が進捗を可視化できるワークフローを構築
プロジェクトは2018年10月からスタートした。「お互いに課題は共有できていたので、TISの提案内容をベースにしつつ、さらにこういう機能を加えられないかといったディスカッションしながら要件定義を進めました」(樋口氏)。
目標としたワークフローは、次のような方法で、ペーパーレス化を実現する。まず、支店は取引先から紙の決算書を入手するまでは従来と同様だが、それをオフィス内の複合機でスキャンしてイメージデータ化する。このデータは、新たに開発するワークフローのWebアプリケーションを利用してセンター側に送信することになる。
このWebアプリケーションは、支店とセンターを結ぶコミュニケーションツールとしての役割も担う。「送信書類の不備など、センターから各支店にメッセージを通知して再送信を依頼できる機能を持たせています。以前のように、電話でなかなか担当者がつかまらない手間もなくなります」(梶谷氏)。
また、支店の担当者は、Webアプリケーションを利用して、送信した決算書についてのステータスを確認することが可能。センター側がデータを受領したかどうか、決算書の情報が社内システムに登録され閲覧可能になったかも確認できる。
なお、今回構築するOCRによるデータ化を含めた業務基盤は、みずほ信託銀行との共同利用を目標に進められた。同じグループの会社間で財務情報入力の基盤を一元化し、運用管理の効率化を目指す最初のチャレンジとなった。TISでは、両社が自ら登録した情報のみを閲覧できるよう厳格に制限するといった仕様を持たせることで、共同利用が可能な財務情報入力基盤を実現した。
効果
決算書の読取/登録時間が約60%削減
こうして、決算書登録業務は2019年11月に新たなワークフローへと切り替えられた。全国の支店は、複合機でスキャンする工程が加わるため1カ月前に告知が行われ、移行はトラブルなく完了した。
移行後のメリットについて樋口氏は「まず、OCRによるデータ化によって、人の手を介さず正確に決算書情報を読み込める点です」。普段の運用で辞書学習をさせることで、変換精度は導入時に比べてさらにアップしているという。これにより、手のかかる作業が大きく減少し、人手不足の課題も解消した。
加えて、決算書1件あたりの処理時間も大幅に短縮された。「以前は紙の決算書を登録する際は第三者の確認作業を含めて1件あたり約30分かかっていましたが、平均12〜13分程度と半分以下に短縮されました」(梶谷氏)。また、ペーパーレス化の恩恵として、紙の決算書を保管するためのスペースも不要になり、管理コストの削減にもつながっている。
樋口氏は決算書登録ワークフローへの今後の期待をこう語る。「たとえばお客様の会社を訪問しなくても決算書をデータで受け取れる仕組みがあれば、お客様からの非対面のニーズにも応えやすくなります。また、当社では法人のお客様は決算書のみを登録していますが、確定申告書などについてもOCRでデータ化して登録し、財務情報をより充実させたいとも考えています。TISには引き続きサポートいただきながら、効率化、正確性、時間短縮を追求する相談に乗っていただければと思います」。
システム概略図
お客さまの声
株式会社みずほ銀行
与信企画部 部長
樋口 達也氏
株式会社みずほ銀行
与信企画部 調査役
梶谷 昌弘氏
TISと初めてプロジェクトを経験して、財務諸表など専門分野に強いSIerだと感じました。細かい質問をしても、すぐに的確なアドバイスがレスポンスよく返ってきたことが印象的です。銀行はグループ内にシステム会社を持っていることが多いのですが、外のSIerの新しい知見・技術も取り入れていかないと、この先の時代に求められる業務が成り立たなくなっていくと思います。今後ともTISのご協力に期待します。(樋口氏)
TIS担当者から
TIS株式会社
サービス事業統括本部
ペイメントサービスユニット
フィナンシャルサービス部 部長
小林 秀史
TIS株式会社
サービス事業統括本部
ペイメントサービスユニット
フィナンシャルサービス部 主査
鈴木 均
打ち合わせの後で、今回構築するワークフローの未来について、お客様と時間を忘れて語り合ったことが特に印象に残っています。技術的な課題はありますが、お客様と目標を共有し、さらなる高みを目指していけることをうれしく思います。
今回TISが担当させていただいた範囲は、与信管理業務の入口に当たりますが、今後は新たな情報のデータ化や活用方法についてもご提案していきたいと考えています。
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