東電化(中国)投資有限公司様
中国拠点の経理・財務を集約するシェアードサービスセンターにRPAを導入
TDKグループの中国事業を全般的に支援する東電化(中国)投資有限公司(以下、TDK中国)は、2015年に財務シェアードサービスセンターを設立し、各拠点の経理・財務の集約を図った。2019年には同センターの業務効率化を目的に、TISI上海の支援でRPAを導入し、中国各拠点へのロールアウトも開始。中国発のRPAへの挑戦は、世界各リージョンの地域本社からも大きく注目されている。
本社 | 上海市長寧区延安西路2201号国際貿易中心1907室, 200336 |
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設立 | 2004年 |
資本金 | 3,200万USD(2020年12月現在) |
事業内容 | 中国における投資・M&A、グループ企業の管理サービスなど |
URL | https://www.tdk.com.cn/ |
背景
ガバナンス強化の要となる財務シェアードサービスセンター
電子部品の世界的大手であるTDKグループの中で、TDK中国は中国の地域本社として、M&Aや投資をはじめ、グループ会社の従業員教育、管理サービス全般までを担っている。同社はSAP ERP導入を経て、2015年には各拠点で行っていた経費精算や売掛金管理などの経理・財務業務を集約する財務シェアードサービスセンター(以下SSC)を設立した。
その目的を財務部門の能塚健太郎氏は「拠点によって、紙で申請したり、システム上で入力したりと業務手順がさまざま。これを標準化しSSCへ集約することで、ガバナンス強化を目指しました」と語る。
業務集約の具体的な方法は、SSCがイントラネットを通じて各拠点へ標準ワークフローを提供し、社員が直接申請・承認や情報入力を行えるようにするというもの。標準ワークフローは、NTTデータイントラマートの「intra-mart」で構築することを決定した。この際、開発パートナーとして選ばれたのが、TISの現地法人であるTISI上海であった。「『intra-mart』の構築経験が豊富で、独自のノウハウを集積した『TISI上海 経費精算テンプレート』を保有していたことが採用の決め手でした」(能塚氏)。
標準ワークフローには、新たに経費申請などの承認をモバイルから実行できる機能も盛り込まれ、業務のスピード化に貢献している。2015年に完成した標準ワークフローは、中国大陸、香港、台湾、シンガポール、フィリピンへと順次ロールアウトを実施。TISI上海は、各拠点で事前に従来業務とのフィット&ギャップ分析を行い、新たな業務プロセスへ円滑に移行できるよう支援にあたった。
計画
TISI上海をパートナーとしてSSCへのRPA導入に着手
2019年には、SSCに集約した業務のさらなる効率化を目指し、人手のかかるオペレーション業務をRPAで自動化する計画を実行に移した。実はこの「自動化」は、2014年にSSCを計画した時点で、「集約」「標準化」とともに目標に掲げていたものだったという。「当時はRPAという言葉自体が社内で浸透しておらず、周りから “自動化なんて無理”と笑われたほどです。しかし、将来的に技術が追いつき自動化が当たり前の時代が来るという確信があったため、集約したプロセスの標準化を急ぎました」(能塚氏)。
目指したのは単にSSC内に閉じた業務効率化の効果ではなく、TDKグループ全体へRPAを波及させること。中国の各拠点、そして米国や欧州などの海外リージョンを担当する地域本社にRPAの有用性を発信していくことを最終目標に定めた。
そしてSSCへのRPA初期導入にあたっては、ワークフロー構築でパートナーを務めたTISI上海が引き続き参画することも決定した。期待された役割は、RPAに関するコンサルティングから開発、ガイドライン作成まで多岐にわたる。
まず準備段階として、自動化する対象業務の選定がスタートした。「SSCの全280種類の業務のうち、どれが自動化に適しているのか。判断を行うため、TISI上海のエンジニアが1カ月オフィスに常駐し、業務の分析を実施しました」(能塚氏)。
開発
ロボット内製化で、全業務の4分の1の自動化を目指す
プロトタイプとなる第1号のソフトウェアロボットの対象業務は、取引先からの入金を消し込む作業が選出された。「この作業は、複数の請求の合計額が入金された中から、どの案件が該当するかを判断して、手動で消し込むものです。1カ月に2~3万件の膨大な消し込み処理が発生していました」(能塚氏)。
RPAツールとしてサーバー型・クライアント型に両対応した製品が採用され、ノウハウを持つTISI上海が開発を担当することになった。TISI上海では、実際の作業手順を分析し、不要な工程を省くことで“あるべき業務プロセス”を定義。これに基づき、ロボットの動作手順が考案された。
こうして完成したロボットにより、消し込み作業の約8割を自動化することに成功した。「人手のかかる業務を減らせば、その分、社員には付加価値の高い業務を任せられます。第1号のロボットは期待どおりの成果があり、他の業務についてもロボット開発を急ぐこととしました」(能塚氏)。
開発体制としては、高度なチューニングを要するものはTISI上海、それ以外は将来的な内製化を視野にSSCの社員が受け持つことが決定。2019年4月に第1号のロボットが稼働を開始、その後約1年半で計10台のロボットが実務に投入された。このうち半数が、TDK中国で内製されたものだ。
自動化の対象業務は、ExcelからERPに情報を登録する作業や、社外のサイトから企業の与信情報をダウンロードして整理する作業など。「SSCの280の業務のうち、4分の1はRPAで自動化できる見込みです。RPAの技術がより進化すれば、さらに多くの業務を自動化できるでしょう」と、能塚氏は将来の目標を口にする。
展開
「SSC」+「RPA」のベストプラクティスをグローバル展開
現時点でのSSCにおけるRPA導入効果について、「年間約4,700時間、約2.5人分の業務を自動化できています。SSCでは約20名の社員が働いていますが、ピーク時の作業負担を減らすことで、付加価値の高い業務へのシフトが可能になります」(能塚氏)。
さらに今後の展開については、SSC内での業務改善にとどまらず、中国各拠点に対してRPAの啓蒙・普及に注力していくという。「自動化の様子を撮影した動画を提供するなど、現場の関心を高めながらRPA導入を促しています」(能塚氏)。
また、TDK中国の新組織としてRPA推進室を立ち上げ、ロボット開発の事前審査などガバナンス強化にも取り組んでいる。ロボットの品質を高水準に保つための開発ガイドラインも作成された。「万一、外部からの不正操作などが起きると、大きなリスクにつながります。そのため、ロボットにどこまでの権限を与えるかといったITガバナンスについてもTISI上海と相談しつつ、開発ガイドラインに盛り込んでいます」(能塚氏)。
世界のTDKグループの中で、“シェアードサービスセンター”も“RPA”も、TDK中国が先駆的に取り組んでいるテーマであり、グループ内での反響は大きいと言う。「いずれもTISI上海との6年にわたるパートナーシップで生まれた成果物。今では2つのワードは、グループ内でブームと言えるほど注目され、米国や欧州など地域本社からの問い合わせも増えています。我々TDK中国が牽引役となり、グローバルでの『SSC+RPA』の流れを加速させたいと思います」(能塚氏)。
導入イメージ
お客さまの声
TDK中国本社
最高財務責任者
能塚 健太郎氏
TISI上海とは、SSC設立時以来タッグを組んできた信頼関係があります。開発面だけでなくガイドラインの作成やメンテナンス、今後のロードマップ考案など、どんなお願いでも柔軟に対応してもらい感謝しています。今後、バックオフィス業務はDXによってさらに効率性向上、自動化できる余地が大きくなると見ており、TISI上海にはアンテナを高くはって最新の技術トレンドをいち早く紹介してほしいと思います。(能塚氏)
TIS担当者から
TISI上海
プロジェクトマネージャ
方 建華
TDKグループ初のシェアードサービスセンター開設という重要な経営テーマに続き、RPA導入プロジェクトにも参画させていただき感謝しております。「intra-mart」基盤上では、信用度評価や人事申請、ロボット開発の申請などさまざまなワークフローが運用されるようになり、RPA連携による部分的な自動化も進行中です。お客様とTISI上海が、同じ目標に向かって共に成長していることを実感でき、担当者としてうれしく思います。
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