ソニー株式会社様
ソニーのスマートウォッチ「wena 3」にSuica決済機能を短期間で実装
ソニーはスマートウォッチ「wena」(ウェナ)第3世代モデルに、Suica決済機能を実装することを計画した。スマホからwenaのSuica初期設定やチャージを行うためのアプリ開発にあたり、TISの「デジタルウォレットサービス」を活用。ウェアラブル端末をSuica決済に対応させる仕組みを一括で提供することで、アプリ開発期間の大幅短縮が実現した。
本社 | 東京都港区港南1-7-1 |
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設立 | 1946年 |
資本金 | 30億円(ソニーグループ株式会社 100%出資) |
事業内容 | エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション 等 |
URL | https://www.sony.co.jp/ |
背景
アナログ腕時計をスマートウォッチ化できる「wena」シリーズ
ソニーのスタートアップの創出と事業運営を支援する「Sony Startup Acceleration Program(ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム)/SSAP」から生まれたスマートウォッチ「wena」シリーズは、2016年から販売を開始。腕時計のヘッド(盤面)部分ではなく、バンド部分にスマートウォッチ機能とディスプレイを集約した、個性的なウェアラブル端末だ。愛用しているアナログ時計のヘッドにwenaを組み合わせ、手軽にスマートウォッチ化することもできる※。
wena事業室の對馬哲平氏は、同製品のコンセプトについて「アナログ時計の美しさや長年培った文化・伝統と、スマートウォッチの便利さを一つにできないかという発想が、事業化のきっかけでした」と説明する。
2020年11月には、大きく進化した第3世代「wena 3」を発売開始。それまでバンドの複数のコマに分散させていたスマートウォッチのモジュールをバックル部分に集約し、バンドのデザインの自由度が大きく向上した。
電子マネー対応も強化され、Suica(スイカ)決済への対応を果たした。「従来モデルでは楽天Edy、iD、QUICPayに対応していましたが、最も利用者の多いSuicaは未実装。事業開始から約5年、ユーザーの方々から“Suica対応はまだか”と言われてきましたが、ようやくお応えできました」(對馬氏)。
Suica対応により、スマホを持たずに外出しても、腕時計のバックル部分をかざすだけで駅の改札を通過したり、店舗レジで支払いができるようになる。
※「wena 3」の場合、ラグ幅18mm~24mmまでの、市場の約7割の腕時計に装着可能。
選択
スマホアプリの開発期間を圧縮するためTISのサービスを採用
ソニーがwena 3の開発に着手したのは2019年。実機と同時並行で、スマホをwena 3にペアリングしてSuicaの初期設定やチャージを行ったり、歩数や心拍など活動ログを閲覧する機能を持つ「wena 3アプリ」を開発することとした。
ここで課題となったのが、アプリ開発期間をいかに短縮するかであった。wena事業室の鎌田秀和氏は「我々チームは、ハードの開発は得意分野ですが、高いセキュリティレベルが求められる決済系のネットワーク構築に十分な知見がなく、自社開発ではかなりの期間を要すると見込まれました。これがボトルネックとなり、wena 3の発売計画に影響することも懸念されました」と語る。
そこで2019年秋、モバイルFelicaの要となるFeliCaサーバを運用しているフェリカネットワークスに、モバイルFelicaに関わる開発経験があるベンダーの紹介を依頼。この時、候補として紹介されたのがTISであった。「メジャーな決済アプリをいくつも世に出していて、技術面での実績は十分。いただいた提案書には、アプリ開発の短期化に役立つツールが具体的に説明されており、この会社なら安心して任せられると判断しました」(對馬氏)。
開発
3つの機能を提供するサービスで、アプリ開発期間を大幅短縮
今回TISが提案したのは、スマホ向けアプリにさまざまな決済手段を加える「デジタルウォレットサービス」のメニューを組み合わせたもので、大きく次の3つの機能を提供する。
まず1つめは、スマホアプリとFeliCaサーバの中間地点に設ける、Felica通信情報を制御するためのウォレットサーバの提供。
2つめが、同サーバと安全な通信を可能にするスマホアプリ用のSDK(ソフトウェア開発キット)で、Android版とiOS版の2種類が提供された。
そして3つめは、Suica専用wenaコールセンターが、紛失申請などに対応する際、Suicaの顧客データベースを閲覧するツールの提供。
これら機能について鎌田氏は、「すべての仕組みを我々がイチから開発した場合、2年の開発期間ではとても間にあいません。既に品質が担保されたサービスを利用することで、大幅なショートカットが可能になりました」。
TISは、サービス提供とあわせて、FeliCaサーバに接続する品質認定が得られるよう、フェリカネットワークスとの技術情報のやりとりを含め、Felica認定に必要なテストケースを実施した。
アプリ開発の最終段階では、TISがwena 3実機を利用して、約3カ月におよぶ結合テストを行い、やり取りする情報の正確さと安全性が確認された。
展開
時計メーカーとの協業で、wena市場の裾野拡大を目指す
2020年11月のwena 3発売以降、TISが提供するウォレットサーバやSDKのサービス品質に満足していると鎌田氏は言う。「TISは既に何社もの大手企業にウォレットのサービスを提供しており、品質面での不満の声は一度も聞いたことがありません。前評判どおり、安心して運用を任せられると実感しています」。
現在ソニーは、時計メーカーが容易にスマートウォッチ市場に参入できるよう、wena 3のバックル部分をパーツとして提供するBtoBのビジネスモデルを展開している。「腕時計は、服・靴・メガネのように好きなデザインを選択できる自由があるのが理想。時計メーカーとの協業で、身に付ける喜びと、便利さを兼ね備えた腕時計という、新しい市場をつくっていきたいと思っています」(對馬氏)。
時計メーカーとの協業にあたってTISに期待する役割を鎌田氏は「スマートウォッチ市場に参入する際、電子マネー決済のネットワーク構築やアプリ開発など、時計メーカーの負荷は小さくありません。そこで、今回TISと協力して構築した仕組みをパッケージ化して提供し、負担軽減をお手伝いしたいと考えています」。
最後に對馬氏は、wenaシリーズのモバイル決済の今後についてこう語る。「新たな電子マネーやクレジットカード決済への対応など、やりたいことはたくさんあります。TISは、クレジットカード事業者や決済事業者とのつながりも強み。長期的なパートナーとして、スマートウォッチ市場を一緒に大きくしていきたいと思います」。
お客さまの声
ソニー株式会社
モバイルコミュニケーションズ
事業本部
wena事業室 統括課長
對馬 哲平氏
ソニー株式会社
モバイルコミュニケーションズ
事業本部
wena事業室
鎌田 秀和氏
今回TISには、ウォレットサーバ開発プロジェクトの中枢メンバーとして協力いただきました。技術的な問い合わせへのレスポンスが速く、内容もこちらの意図を的確にくみ取ったもので、コミュニケーションのレベルの高さが印象的でした。
TISが提供するSDKはアプリに組み込みやすく、ドキュメントも非常に分かりやすい。コールセンター用のツールについても、UIが洗練されており、現場の目線に立った使いやすさがオペレータから好評です。
TIS担当者から
TIS株式会社
DXビジネスユニット DX営業企画ユニット
DX企画部 エキスパート
久保田 恭介
TIS株式会社
DXビジネスユニット DX営業企画ユニット
DX第1営業部 上級主任
小谷 拡司
世界を代表するメーカーであるソニー様のウェアラブル端末に、Suica決済機能を実装するお手伝いができ、うれしく思います。
wena3のSuica対応への反響は大きく、多くのユーザーが待ち望んでいたことを実感しました。
今後、wenaシリーズが対応する電子マネーやクレジットカードについて、裏側で情報を受け渡す仕組みをTISで一元管理できないか、検討を行っています。これにより、新たな決済手段を追加しやすくなり、ユーザーに新しい利便性を提供できる可能性が広がります。
これからもwena事業の拡大をお手伝いできるよう、ソニー様の期待に添えるパートナーとして頑張っていきたいと思います。
※ TIS、TISロゴはTIS株式会社の商標または登録商標です。
※ 「wena」はソニー株式会社の商標です。
※ その他の会社名、商品名、サービス名は各社の商標またはサービスマークです。