ダイキン工業株式会社様
累計10万時間分の手作業の自動化を達成!
− 全社規模のRPA展開を約1年半で完了 −
ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)は2020年、間接業務の生産性を向上させる全社プロジェクトに着手。その一環として、RPAによる「年間10万時間の作業自動化」を目標に定めた。パートナーに選定されたTISは、全社各部門に対して対象業務選定からソフトウェアロボット開発までをトータル支援し、目標達成に貢献した。
背景
2017年に始まったRPAの技術検証
家庭向けエアコンや業務用空調機・冷凍機などを手がけるダイキン工業。開発・製造・販売からアフターサービスまでを自社提供する世界唯一の総合空調メーカーとして、グローバルで事業を展開している。
同社IT推進部は、2017年に業務効率化のツールとしてRPAに着目した。繰り返しが多い、主にバックヤードのルーティン業務を自動化し、生産効率を高めることが狙いだ。同年2月にPoCを実施後、経理部や人事部を中心にRPAツール「UiPath」のパイロット運用を開始した。以来、業務削減の効果や社内システムとの親和性等の検証を進めてきた。
当初から、各部門でソフトウェアロボット開発を内製化する運用も視野に入れていたと、IT推進部の清木場卓氏は説明する。「初期段階はグループ会社のダイキン情報システムに開発を任せ、徐々に現場社員による開発比率を高めていきたいと考えていました」。
初回のPoC実施および翌年の開発標準化のガイドライン策定時には、エンタープライズでの大規模RPA導入の実績があり、RPAや業務整理の知見を持つTISが支援にあたった。これがダイキン工業とTISの最初の接点となった。
RPAが全社プロジェクトの一つに昇格
それまで、社内の限られた部門で進めてきたRPAのパイロット運用だが、2020年夏に全社プロジェクトの一部へと昇格する運びとなった。「社長のリーダーシップのもと、全部門の間接業務を3割以上削減する全社プロジェクトが立ち上がったことがきっかけです。RPAは目標実現のためのツールの一つに位置づけられ、RPAプロジェクト単体では年間10万時間の作業の自動化を目標としました」(清木場氏)。
自動化の対象は、全部門における「ものをつくる・販売する」を除いたあらゆる間接業務。「たとえば、ERPなど社内システムからデータを取得してExcelで加工後に提出するといった業務が該当します。部門によって、ルーティン作業は多種多様であり、全社各部門からRPA化の対象業務を洗い出すことは高いハードルが予想されました」(清木場氏)。
選択
大規模RPAプロジェクトの実績が豊富なTIS
IT推進部では、全部門を巻き込んでRPAを同時展開していくために、グループ内で足りないリソースを社外ベンダーの協力で補う方針とした。
ここで候補となったのは「UiPath」導入支援の経験を持つ複数のSIer。TISはそれまでのPoC支援やガイドライン作成支援の実績から候補の一社に加えられた。
ダイキン工業が重視したパートナー選定の条件は、大きく次の二つ。
一つめが、ダイキン工業と同規模のエンタープライズで「UiPath」の短期導入の実績があるかどうか。国内で普及が始まって日が浅いRPAだけに、実績の裏付けがあることは欠かせない条件であった。
二つめが、大規模RPA開発に対応できる人的リソースを有していること。「全社各部門から対象業務を選定し、ロボット開発を短期間で完了させるために、社外の40〜50人程度のリソースが必要だと見込んでいました」(清木場氏)。
これら条件をクリアしたのは、候補ベンダーのうちTISのみであった。加えて、TISは「UiPath」のダイヤモンドパートナー※であることも、信頼感を後押しする材料となった。
※ダイヤモンドパートナー:UiPath社認定リセラーのレベルにおいて最上位に位置するパートナーであり、認定リセラーの中で最も高い技術力とサポート力を有し、UiPath製品の導入支援と販売実績が豊富なパートナーです。日本の認定リセラーのうち、ダイヤモンドパートナーはTISを含めて6社のみ(2022年4月現在)であり、TISは2年連続でダイヤモンドパートナーの認定を維持しています。
業務理解による業務プロセスの改善にも期待
TISをパートナーとして指名したもう一つの理由が、ダイキン工業の業務を熟知している点だったと清木場氏は説明する。「ロボット開発のための業務フローを作成するにあたり、当社の業務や社内システム環境についての知識は非常に重要です。もともとERPの提案など大企業の基幹システム提案に強いTISですが、過去数年のお付き合いで弊社についての知見を積み重ねていました。TISなら、開発過程で既存の業務手順のムダを見つけ、業務プロセス改善にも貢献してくれると期待しました」。
こうして2020年8月、RPA全社プロジェクトの支援パートナーとしてTISが正式に指名された。
チームの一員となったTISの寺本寛は、プロジェクト開始時をこう振り返る。「ダイキン工業様は、ERPの導入をはじめ業務のIT化が高度に進んでいる一方、業務全体のプロセスを見た場合、一部にまだ手作業等の非効率な作業が残っているのではと推測しました。そのような作業を現場のご担当者様自身にいかに課題として認識していただき、RPA化を含む業務プロセス改善にご協力いただけるかが“年間10万時間の作業自動化”を成功させるポイントだと考えていました」。
TISのRPAソリューションメニュー
開発
多数の部門の対象業務選定を同時並行で進行
各部門ごとに、自動化の対象業務を選定する作業は、2020年8月から本格スタートした。RPAの認知が進んでいるコーポレート部門(経理・人事・IT)から着手し、それが一段落後、生産や販売のビジネス領域を担う事業部門へと進んだ。TISは5〜6人の専門チームを組み、ダイキン情報システムとともに、各部門とのヒアリングに臨んだ。
TISの大森淳志は、部門数の多さから、進行管理の舵取りに苦心したと振り返る。「常に複数部門のご担当者とのやり取りを並行して進めていたので、それぞれ回答の期限を決め、スケジュールを厳密に管理していました」。
TIS側が用意したヒアリングの体制について清木場氏は「頭では分かっていましたが、実際に複数部門のヒアリングが同時進行する様子を見て、TISのキャパシティの大きさを改めて感じました」と語る。
各部門の現場では、RPAに対する認知度があまり高くなく、基本的な説明から入るケースも多かったという。「RPAとはどういうもので、何ができて何ができないのか。限界についても事前にお話しすることで、“どんな作業でも自動化できる”と誤解を生まないよう気をつけました」(TIS 釣裕樹)。
部門によるRPAへの“温度差”を解消するために
こうして対象業務選定を進める中で、部門による協力姿勢の違いが次第に明らかになっていったという。ダイキン情報システムの山口裕未氏はこう振り返る。「現場担当の皆さんは日々の業務で多忙であり、こちらが希望するスピード感になかなか対応していただけないケースもありました」。
そこで清木場氏は、計画初年度の方針として、現場担当者にRPA導入を“自分ごと化”してもらえるよう、部門の協力度に応じて提供するベネフィットを増やすこととした。「当初は、RPA化に適した業務がない部門には、ソフトウェアロボットは提供しない予定でした。この方針を変更し、部門ごとに少なくとも一つの業務は、ロボットを開発することを確約。そして、業務選定への協力度合いによって、部門に対するロボットの開発数を上乗せすると約束しました」(清木場氏)。
これをきっかけとして、協力的な姿勢を見せる部門が増加。最終的に各部門で1本〜5本の業務が選出され、全社合計で約100本(初年度50本、次年度50本)の対象業務が洗い出される結果となった。
開発した業務ロボットの例
現場担当者の業務のフロー化をサポート
対象業務が決まった部門から順次、ソフトウェアロボットの開発に必要な、現行業務のフロー作成がスタートした。具体的には、現場担当者に個々の対象業務をプロセス(手順)ごとに分解してもらい、フロー図をつくることが最大テーマとなる。
「現場のご担当者は、業務をプロセスで切り分けたり、誰かに説明するという経験がほとんどありません。そのため、こちら側から必要な情報を質問したり、説明を受けながらフロー作成を代行するケースもありました」(TIS 大森)。
このフロー作成の過程において、作業の目的を達成するうえで不要と判断されたプロセスについてはフローから除外。これにより、個々の業務手順がコンパクト化・最適化される効果がもたらされた。
また、手順が頻繁に変わるものや、途中で人手が何度も必須となる作業については、そもそもRPAによる自動化に適さないという判断で、対象業務から除外された。
こうして、フロー作成が完了した対象業務は、ソフトウェアロボットの開発工程へと進められた。
高品質かつ超高速開発を実現するTISの大規模プロジェクト推進力
ソフトウェアロボットの開発は、2020年11月から2021年3月にかけてピークとなった。ERPにデータを登録したり社外サイトに接続するような、動きが複雑かつクリティカルな業務のロボット開発も含めてTISが一手に引き受けた。
ダイキン工業には広く知られている大規模ERPだけではなく、スクラッチ開発したシステムや、現場部門にて独自に導入したシステム、ネットワーク等の構成が複雑なシステムも存在し、それらシステムを利用する作業内容も多岐に渡った。TISでは、このようなシステムと連携する難易度の高いロボット開発にあたり、品質を担保すると同時にダイキン工業が求めるスピードに応えられる体制を構築した。具体的には、ハイレベルなRPAコンサルタント6名とピーク時40人ものエンジニアを作業にあてることで、品質とスピードの両立を可能とした。
さらに、TISがそれまで培ってきた大規模ERP導入・システム開発経験も、短期開発・品質の担保に大きく寄与した。ダイキン情報システムの山口氏はこう説明する。「TISは、システム操作を含む複雑な手順の業務について、現場部門担当者と丁寧に会話しながら理解を深め、着実にロボット開発を推進してくれました。その結果、タイトな開発工程を遅延なく乗り切ることができたのだと思います」。
TISが構築したロボット実行基盤の例
TISが構築したロボット実行基盤の例
効果
年間10万時間の自動化の目標を達成
2020年8月よりスタートしたRPA全社導入プロジェクトの初期フェーズは2021年3月末をもって完了し、次のフェーズへと移行している。清木場氏は現時点でのRPA全社展開の成果を次のように説明する。「目標としていた年間10万時間の作業自動化は2022年3月までに確実に達成できる見込みです。人間による入力ミスの削減や、作業の属人化の解消も、着実に進んでいます。全社レベルでの、間接業務の効率化、そして業務変革にも貢献できていると感じます」。
初期フェーズで開発したロボットに対する各部門での導入効果は、既に検証がスタートしている。「単に作業時間が減って楽になっただけでは意味がないと考えています。空いた時間を高付加価値業務に充てられているか、また、そのためにどのような計画を立てているかについて、各部門に報告をお願いしています」(清木場氏)。
なお、2022年3月までの本フェーズでもTISが引き続きロボット開発を担当。後述するロボットの市民開発と併せて、さらなる自動化を達成できる見込みだ。
現場社員が自らロボットをつくる“市民開発”を促進
今後のRPAの活用について、清木場氏は次のように説明する。「最近、IT部門ではない現場社員がアプリケーションを自ら開発する“市民開発”というキーワードをよく耳にします。当社でも、精度が求められる重要度の高いロボットを除き、日々のルーティン作業の自動化は現場社員に任せていく方針です。目的に応じて開発主体を選び分けることで、よりスピード感のある課題解決を目指します」。
TISが2022年3月末まで推進してきたRPA大規模導入を通して、初期フェーズ開始時に目標の一つとして掲げた“RPAの認知度向上”および“RPA導入の自分ごと化”が達成され、現場社員自身が業務の効率化を強く意識する土壌整備は完了した。また多くのロボット開発を通して開発ルールおよび運用ルールもブラッシュアップされ、“市民開発”の推進に向けたベースは出来上がりつつある。今後もTISとの協力体制で、RPA活用促進に取り組んでいくと、清木場氏は語る。「社員への開発スキルのトレーニングや、品質レビューなど、社外の支援が必要になる場面は多くあると思います。TISには引き続きRPAのパートナーとしてご協力いただければと考えています」(清木場氏)。
RPA定着までの流れ
お客さまの声
ダイキン工業株式会社
IT推進部 IT企画担当課長 兼
テクノロジー・イノベーションセンター
主任技師
清木場 卓氏
ダイキン情報システム株式会社
PoC開発グループ
山口 裕未氏
プロジェクト全般を通じて、TISの大規模RPA案件に対する実力を見せてもらったと感じました。今回、進捗管理もTISにお願いしましたが、基幹システムのインテグレーションに長けていることもあり、勘どころを押さえた適切な管理でした。
また、目の前にある顕在化した問題への対処だけでなく、将来起こり得るリスクに対しても先手を打つ、あるいは発生の可能性が非常に低い場合はそのままプロジェクトを進行する。そうした判断がTISの助言を得て、より確度が上がり、トラブルに陥ることなく大規模プロジェクトを乗り切れました。
TIS担当者から
TIS株式会社
エンタープライズビジネスユニット
経営管理サービスユニット
経営管理サービス第3部 副部長
寺本 寛
今回、ダイキン工業様には安定的かつ効果的にRPAを運用いただけるよう、統合環境「UiPath Orchestrator」や「UiPath Insights」等を組み合わせたRPA基盤構築をご提案しました。この基盤構築では、社内のエンジニアの力を結集し、TISの総合力を十分に発揮できたと思います。
一般的に「RPA導入支援」と言うと、ツールを使ったロボット開発支援と思われがちですが、TISの支援内容はそれだけではありません。運用ルールや体制の整備・インフラ基盤構築・対象の業務選定など、さまざま。課題によっては、RPA以外の解決策もご提案できますので、業務改善をご希望のお客様はお気軽にご相談ください。
TIS株式会社
エンタープライズビジネスユニット
経営管理サービスユニット
経営管理サービス第3部 主査
大森 淳志
非常にタイトな進行のプロジェクトでしたが、お客様のご要望される開発規模とスピード感に、TISとして最大限応えられた達成感を感じています。
私自身、元々ERPや会計システムの導入・運用保守の経験があり、これが現場ご担当者の“現在の業務内容”を把握するのに役立ったと思います。
多くの部門からのヒアリングを並行して進めていくのは非常に大変でしたが、清木場様と山口様が間に入っていただいたおかげで、円滑に進めることができ感謝いたします。
TIS株式会社
エンタープライズビジネスユニット
経営管理サービスユニット
経営管理サービス第3部 主査
釣 裕樹
今回のような規模のRPA全社プロジェクトは、TISにとっても過去最大と言えるもの。私はプロジェクト開始の数年前からのダイキン工業様とのお付き合いですが、前任者を含めてRPA導入に向け誠実に着実に取り組んできたことが実を結んだと思います。
RPA導入を検討されている企業の方に知っていただきたいのは、RPAは品質・機能に比例してコスト・工期がかかり、一概に「システム開発よりも簡単」とは言えないこと。ご希望の予算や機能に応じて、最適なRPAを提案・推進できるのが、TISならではの強みです。
TIS株式会社
エンタープライズビジネスユニット
エンタープライズ営業企画ユニット
エンタープライズビジネス営業第2部 主査
山口 芳正
プロジェクトが進行する中、ダイキン情報システムの山口様から「開発メンバーの皆さんには、いつもきっちりと作業してくれて感謝しています」と何度も声をかけていただき、営業担当としてうれしい限りです。
RPA案件として、非常に大規模なプロジェクトでしたが、実際にソフトウェアロボットをお使いになった現場部門の方から品質面での不満はほとんど出ていないと聞き、安堵しています。
今後、ダイキン工業様はRPAの“市民開発”の比率を高めていくと伺っています。今後もUiPath社と連携して、一層のRPA活用のお手伝いをさせていただきたいと思います。
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