株式会社ニチレイ様
ニチレイグループの「社内問い合わせ」をデジタルで変革。
Microsoft 365汎用FAQを活用し、チャットボットの早期立ち上げが実現。
本社 | 中央区築地六丁目19番20号ニチレイ東銀座ビル |
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創立 | 1942年(前身である帝国水産統制株式会社の設立) |
事業内容 | 加工食品事業、水産事業、畜産事業、低温物流事業、不動産事業、バイオサイエンス事業 |
URL | https://www.nichirei.co.jp/ |
目標
問い合わせ対応を減らし、コア業務に集中できる環境づくりを目指す
冷凍食品大手のニチレイグループは「加工食品事業」「低温物流事業」を主軸として、食に関する多彩な事業を展開。2005年に持株会社体制へ移行し、株式会社ニチレイ(以下、ニチレイ)および事業会社4社でグループを構成している。
グループ全社のICTインフラとDX戦略を担うのが、ニチレイの情報戦略部。この数年来、社内問い合わせに回答する現場担当者の負荷軽減と生産性向上が、重要テーマの一つとなっていた。
「総務や人事等に関する電話・メールの問い合わせは、バックオフィス部門が自ら対応しており、生産性向上が課題となっておりました」(情報戦略部 坂口譲司氏)。
一方、Microsoft 365を中心としたITに関する質問は、関連会社の株式会社日立フーズ&ロジスティクスシステムズ※(以下、日立F&L)が運用するサービスデスクで対応。「操作手順やトラブルに関する問い合わせが多く、1件あたり平均15分の対応時間がかかっていました」(日立F&L 松村竜太氏)。
ニチレイはこうした現場での担当者の負荷を軽減するため、2019年夏にチャットボット導入の検討を開始した。「各部門のナレッジを順次FAQ化したり、既存のFAQへのリンクを組み込むことで、段階的にチャットボット化を進めていけると考えました」(坂口氏)。
プロジェクト開始にあたり、ニチレイの情報戦略部と、IT関連のサービスデスクの実践的知識と経験を持つ日立F&Lのメンバーがチームを結成。チャットボットをチームで内製する基本方針が定められた。
※ニチレイと日立製作所の合弁で、2003年に設立されたIT会社。食品・食品物流の情報サービスを強みとし、ニチレイグループのIT構築・運用保守を行なっている。
導入①
Microsoft365の汎用FAQの活用でFAQコンテンツ新規作成を軽減し、チャットボット早期立上げを実現
プロジェクトは、大きく2段階での進行を計画した。まずIT関連のサービスデスク業務を補完する、Microsoft 365に関する質問に答えるチャットボットを先行開発することとした。
ここで課題となったのがFAQの作成で、利用者が増えているTeamsやOneDriveなど、数百個のFAQが必要になると見込まれた。
「チーム内でイチから作成するのは、時間や手数を考えると現実的ではありません。Microsoft365は世界的に多くの会社が使っているサービスなので、汎用的なFAQデータをカスタマイズして利用できるのではないかと考えました」(坂口氏)。
製品として入手可能なコンテンツをリサーチした結果、最も条件に適していたのが、TISインテックグループの株式会社マイクロメイツが提供する製品であった。これは、同社が作成したMicrosoft 365の汎用FAQを、チャットボット「DialogPlay」(TIS提供)にシナリオとして組み込んで動かせる製品。「FAQはWordファイルで提供されるので、ニチレイグループ内の一般的な表現に言い換えたり、足りないFAQを追加したりと、カスタマイズ性に優れている印象でした」(松村氏)。
チャットボット「DialogPlay」についても、シナリオ型/キーワード型に両対応した柔軟性、充実した開発用ドキュメントなど、チーム内で高い評価。チャットボットの開発プラットフォームとして申し分ないと判断され、2020年1月に正式採用された。
なお、IT関連の問い合わせのうち、汎用FAQでカバーできないID申請などに関する質問については、チーム内でFAQを新規作成し順次チャットボットに組み込んだ。
こうして、製品採用から2カ月という短期間で、2020年3月にIT関連のチャットボットの先行公開が実現した。
導入②
総務部門のナレッジを集めてシナリオ化し、チャットボットに登録
続いてチームは、プロジェクトの第2フェーズとして、総務部門の対応業務をアシストするチャットボット開発に着手した。
まず、よくある質問と模範的解答を整理するためのExcelワークシートをチーム側で作成。これを総務部門へ渡し、実際の現場での問い合わせ内容を整理してもらう進め方とした。こうしてフィードバックされた内容に基づいてシナリオを作成し、チャットボットに組み込んでいった。
開発途中のチェック作業では、本番環境とは別にテスト環境を設けられる「DialogPlay」の機能が活躍。「現場の担当者が実際にチャットボットを触ることで、新しい気づきが生まれるケースも多々あります。バックオフィスの部門を巻き込んでプロジェクトを進めるために、テスト環境は大いに役立っています」(坂口氏)。
こうして、チャットボットに総務部門向けのFAQが登録されたことで、より多くの問い合わせに対し自動回答が可能となった。
チャットボットの入口として、社内ポータル画面にはキャラクター化したアイコンも用意された。なお、ポータルからチャットボットへの連携、有人チャットへのエスカレーション、外部からの接続を遮断するセキュリティ強化については、TISの技術サポートを受けながら機能の実装が進められた。
効果
受け身の意識から、“先回り”で問題を解決するプロアクティブな意識へ変化
公開から約2年半が経過し、松村氏はチャットボットの利用状況を次のように説明する。「初年度の2020年は月平均500件程度の利用でしたが、2022年にはテレワーク比率の高まりも後押しし、約2倍の月平均1,000件程度に増えています」。
実際に問い合わせに利用した従業員からは、業務の合間に時間を気にせず質問ができる点が好評だという。「今さら人に聞きにくいことも気兼ねなく質問できるので、ベテラン世代からも歓迎されているようです。また、特にテレワーク時の問い合わせはチャットボットが便利という声が増えています」(坂口氏)。
今回、チャットボット開発に参加した総務部門では、現場の生産性向上の効果だけではなく、意識の変化も生まれていると坂口氏は言う。「これまでは、“問い合わせが来たら答える”という受け身の考え方でした。今回経験した、あらかじめ聞かれそうな質問と回答を用意しておくプロアクティブな発想は、他の業務の改善でも役立つと思います」。
現在、総務部門に続いて人事部門でもチャットボット化が進められている。「先行した総務部門の開発で、標準的な開発手順をテンプレート化でき、他部門に横展開しやすくなりました。“うちでもチャットボットを入れたい”と自発的に声を上げる部門も増えており、DXの歯車がうまく回り始めた手応えを感じています」(坂口氏)。
お客様の声
株式会社ニチレイ
情報戦略部長
坂口 譲司氏
グループ内で日常的に「DialogPlay」が使われるようになり、分からないことを人に聞く文化から、自己解決する文化への変革が着実に進んでいると感じます。今後も、当グループに最適化したチャットボットの環境づくりにご協力いただければと思います。(坂口氏)
株式会社日立フーズ&ロジスティクスシステムズ
ソリューション第二事業部
統括部長
松村 竜太氏
今回のプロジェクト全体を通して、TISのスピード感のある動きが印象的でした。急に決まったTeamsのミーティングにもすぐ参加いただくことで、技術的な問題を迅速に解決でき感謝いたします。(松村氏)
TIS担当者から
TIS株式会社
ビジネスイノベーションユニット
AI&ロボティクスサービス部
福江 尚史
TIS株式会社
ビジネスイノベーションユニット
ビジネスイノベーション事業推進部 主査
小山 光
今回、汎用FAQまでを含むオールインワンで導入を支援するTISインテックグループの総合力により、チャットボットの早期立ち上げのお役に立てたのではと思います。
今後は、問い合わせ内容によって、社内の他のシステムから稟議書・申請書などのデータを取得し、回答部分にリンクするといった、シナリオのさらなる高度化も考えられます。
また、「DialogPlay」は音声による問い合わせを認識し、音声合成(読み上げ)で回答する機能も有していますので、従業員の皆様にとってのエモーショナルなエージェントとしての新たな活用スタイルもご提案していきたいと思います。
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