日本貨物航空株式会社:NCA様
会計システムから採算管理を分離し「CCH Tagetik」で再構築。毎週の収支レポート作成のスピード化で、戦略会議前に半日の“考える余裕時間”を創出。
背景
ERPのアドオンで実行していた採算管理の分離独立を計画
日本貨物航空株式会社(以下、略称NCA)は、日本郵船グループに属する、国内唯一の国際貨物専門航空会社。日本と、アジア・北米・欧州各都市の間で、自社保有のボーイング747-8F型貨物専用機を運航している。半導体・機械・自動車などの関連部品や、生鮮品、医療品、美術品まで多種多様なモノの空輸で、世界のサプライチェーンを支えている。
在庫を持たない業態である同社にとって、ビジネス上の重要なテーマとなるのが、前週の運航結果に基づき収支をタイムリーに把握すること。この採算管理業務は、同社のレベニューマネジメント部が担っている。「週次の収支については、毎週木曜日の定例会議に向けて速報レポートを作成しています。会議では、マーケティング部門・営業部門とともに同レポートを見ながら、計画に対する実績を確認し、翌週以降の事業の方針確認および改善に向けた議論を実施します」(同部 土方卓氏)。
NCAは、2008年からこの採算管理の一連の業務をERP(会計システム)に組み込んだアドオンで対応してきた。しかし、事業の多角化への臨機応変な対応が図れるよう、独立したシステムとして分離し機動性・柔軟性を高めることを計画した。そして2020年末、新たな採算管理システム構築のパートナーとなるSIer選定に向け、約10社にRFP(提案依頼書)を発行。製品カテゴリとして、EPM(経営管理プラットフォーム)またはBI(ビジネス インテリジェンス)製品を軸とした提案を求めた。
選択
タイムリミットまで1年を切る中、TISの“最強のプロジェクト推進力”に期待
2021年が明けてから、SIer各社の提案内容の比較がスタート。まずNCAチームが重視したのが、約1年という短期間で、確実に新システムへ移行させるための具体案であった。「当社にとっても親会社にとっても、スケジュールが遅れて収支レポートが止まる事態は、絶対に避ける必要がありました」(レベニューマネジメント部 下田雅美氏)。
提案参加社の中で、TISはウォルターズ・クルワー社のEPM製品「CCH Tagetik」のSaaS版を提案。この製品は、EPM製品の中でトップクラスの多機能・拡張性の高さを特長とし、世界約40カ国で利用されている。
土方氏は、その印象をこう振り返る。「体制については、TIS側で『CCH Tagetik』に精通したメンバーを用意するため、当社はプロジェクトの専任者を置かなくてもよいとのこと。TISは以前『CCH Tagetik』を半年で稼働させた実績も有していて、実現度が高い。TISは“プロジェクト推進力が最強”との印象を受けました」。
一方、「CCH Tagetik」の機能面での評価をIT戦略部の坂上智子氏はこう語る。「当社が求める要件をすべて満たしていました。まず、運航系システムやERPから粒度の細かい情報を集めて管理できること、次にツール内の設定だけで採算計算の独自のロジックを組み込めること、三つ目が収支レポートの柔軟な設計ができるという点です」。
他社が推すBIツールは、単体でのレポート出力の様式の多さが特長。一方「CCH Tagetik」は、経営管理の専門製品として豊富な標準機能やExcelとシームレスに連携した迅速なレポート作成という強みを備えている。下田氏は「使い慣れたExcelを使って、効率よく収支データの集計を実施しレポートを作成できる点が、当社業務にフィットしていると感じました」と説明する。
こうして諸条件を高い水準でクリアしたTISをパートナーとして、2021年4月からプロジェクトが開始した。
導入
TISとCCH Tagetikとの技術連携で、プロジェクトを確実に遂行
本プロジェクトは、TISが過去に手がけた「CCH Tagetik」案件と同様、TISとCCH Tagetikが密に連携し、技術情報を共有しながら進められた。未知の課題には、両社が迅速に原因究明にあたり、対策に取り組んだ。「ある技術課題に対しては、1カ月もおかずに『CCH Tagetik』の修正パッチがリリースされ、TISとCCH Tagetikのつながりの深さを実感しました」(坂上氏)。
今回、短期間でのプロジェクト遂行の支えとなったのが、TISの経験に裏打ちされた進捗管理であった。「途中で何度か設けられている検収では、いつまでにどの資料を用意すればよいか、TISから的確に指示をいただきました。“ついていけば何とかなる”と思わせる安心感がありました」(IT戦略部 櫻井梨穂氏)。
また坂上氏は、航空輸送サービスという業務に対する、TISメンバーの理解度の深さをこう振り返る。「社内の人間でも理解が難しいテーマを、TISのメンバーがセッションを通じ、スポンジが水を吸収するように習得していくスピードに驚かされました。また、成田空港内事務所でのユーザー教育の際には、飛行機を見学するなど、当社業務を理解しようという熱意を感じました」。
こうしてプロジェクトは2022年3月末、予定どおりカットオーバーを迎え、翌月から「CCH Tagetik」による採算管理システムが稼働を開始した。
効果
毎週の収支レポートが半日早まり、事業計画立案のPDCAサイクルがスピード化
本稼働から半年以上が経過し、「CCH Tagetik」で構築した採算管理システムは安定稼働を続け保守フェーズへと入っている。
以前のアドオンと比較した大きなメリットが、複数の社内システムから収支計算に必要な情報を収集・整理する速度の向上。「連携データを修正し、1日のうちに何度か実行をする一連の処理が、15分から3分程度に短縮されました」(下田氏)。
また、以前は定例会議の席で配布していた収支レポートを、早ければ当日の午前中に、マーケティング担当者・営業担当者に渡せるようになった。「各メンバーはレポートに目を通し、翌週の対策を考えたり、今後の数字を予測する等の準備をした上で、夕方の定例会議に出席できます。また、じっくり目を通す余裕が生まれ、異常値を見落とすリスクの回避にもつながっています」(土方氏)。
NCAでは今後、収支予測シミュレーションの活用も検討している。「当社の業態は、世界の経済状況、社会情勢など他律的な影響を受けやすく、採算の数字は激しく上下動します。翌週・翌月の収支の予測シミュレーションにより、より効果的な事業戦略を立てられると期待しています」(土方氏)。
お客様の声
日本貨物航空株式会社
レベニューマネジメント
部長
土方 卓氏
日本貨物航空株式会社
レベニューマネジメント部
管理会計チーム
アシスタントマネジャー
下田 雅美氏
日本貨物航空株式会社
IT戦略部
業務システムチーム
アシスタントマネジャー
坂上 智子氏
日本貨物航空株式会社
IT戦略部
業務システムチーム
櫻井 梨穂氏
TISの皆さんは、提案段階から当社の要件・業務をしっかり研究いただいていると感じました。
本プロジェクトは、TISの過去の案件の中でも、特に進捗がスムーズだったと聞いています。期日までに確実なシステムを構築していただいたことに感謝しています。
約1年のプロジェクトを通して、TISの仕事ぶりはまさにプロフェッショナルと言えるものでした。参画した当社メンバーにとって、学ぶものが多いプロジェクトになったと思います。(土方氏)
TIS担当者から
TIS株式会社
DXビジネスユニット
経営管理サービスユニット 経営管理サービス第二部
主査 横井 芙未子
TIS株式会社
DXビジネスユニット
経営管理サービスユニット 経営管理サービス第二部
主任補 青木 麟太郎
プロジェクト開始時、お客様からの「全員でゴールを目指しましょう」という言葉で、チームが一つになれたと思います。
日本貨物航空様は、在庫を持たない航空輸送サービスという特殊要件の多い業態ですが、「CCH Tagetik」を活用することで、ご要望に応える最適な管理会計の仕組みが実現できました。
今後、必要なデータを収集して予測分析する環境構築や、ダッシュボード機能によるデータの視覚化など、より「CCH Tagetik」を活用いただけるようご提案をしていきたいと考えています。
※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。