大成建設株式会社様
建設現場等の経費申請60万件/年をクラウド型サービス「Spendia」に移行。
特殊要件にも、新機能の開発・実装できめ細かく対応。
課題
建設業界特有の複雑な仕訳処理がクラウド移行の障壁に
大成建設株式会社(以下、大成建設)は今年10月で創業150年となる日本を代表する総合建設会社。同社では、建設現場およびバックオフィス部門の社員が、年間約60万件の経費申請を行っている。現場での主な経費には、出張旅費、作業所での備品購入、通勤用の自動車のガソリン代などがある。
同社は2000年代初頭に経費精算システムを自社でスクラッチ開発。全国16の支店にある経理部門はそれぞれ、同システムにより、建設現場の作業所からの経費申請や承認に対応してきた。「しかし老朽化で保守性が低下したこと、モバイルや新制度への対応も難しくなったことから、2016年頃より刷新を検討し始めました」(経理部経理室 今井英之氏)。
移行先としてあがったのが、企業への浸透が本格化しはじめていたクラウド型経費精算サービス。しかし、移行には障壁があったと、情報企画部デジタル推進室の木村彰宏氏は説明する。「最大のネックは、本社・支店の複雑な組織構造への対応や、全国で発生する作業所の開設や閉設などの組織情報の反映でした」。
大成建設が新システムに求めた要件はまず、最新の組織情報をタイムリーに反映し、仕訳情報の入力や承認フロー構築ができること。加えて、現場管理費(現場の運営に必要な諸経費)として規定されている、特殊な勘定科目を指定して経費申請ができることも要件とした。情報企画部デジタル推進室の小川淳氏は「検討したクラウド型サービスでは希望する条件を満たせず、選定は難航しました」と振り返る。

選択
クラウドサービスでありながら複雑な個別要件に対応できる「Spendia」
そんな時、大成建設はTISのクラウド型経費精算システム「Spendia」の情報を入手。クラウド型サービスでありながらカスタマイズが柔軟にできる点、スマホファーストの使いやすいUI設計に注目し、2020年2月、TISとの初のミーティングを実施する運びとなった。「その場で、複雑な要件に対して“できることは何でもする”と前向きな言葉をいただき、好感触が得られました」(今井氏)。
その後、意見交換を重ねる中で感じた「Spendia」の評価ポイントを次のように説明する。「その時点で『Spendia』が未対応の、支店単位での経費処理については、新たに標準機能を開発し実装するとのこと。足りない機能も標準機能として開発して取り込むという柔軟なスタンスが、他社サービスとの大きな違いだと感じました」(今井氏)。
さらに、「Spendia」を選択する決め手の一つとなったのが、大規模なエンタープライズ用途への適性。「多くのクラウド型経費精算サービスは中堅規模のビジネス向けで、大規模実績に不安が残りました。一方『Spendia』は、数千人規模の企業での運用実績があり、かつ国内企業のTISが提供するサービスである点が安心の裏付けとなりました」(木村氏)。
そして2020年に約5カ月をかけてフィット&ギャップ分析を行い、正式採用に至った。
導入
基幹システムとの連携で最新の組織情報を自動反映可能に
2021年1月から始まった導入プロジェクトでは、「Spendia」のパラメータ設定だけでは対応できない、独自要件に応える新機能の開発が大きな挑戦テーマとなった。
本プロジェクトでTISが新たに開発した機能の一つが「コストセンター管理」。これは、本社経理部門の一極集中処理ではなく、支店など拠点単位で経費申請の処理・承認を可能とするもの。同機能は現在、「Spendia」の標準機能として組み込まれており、大企業を中心に活用されている。
新開発した二つめの機能が「コーポレートカード連携」。これは、社員に発行しているコーポレートカードで購入した経費申請・精算処理をサポートするもの。カード会社から毎月送られてくる全社員の請求一覧データをシステムに読み込ませることで、申請漏れが可視化される。経理部門が人手で申請伝票と請求一覧を突きあわせることなく、オンラインで未申請者に督促する機能も備えている。また社員側は、カード利用後に送られてくる明細データの中から、経費として申請するものを選ぶだけで申請ができる。
今回の「Spendia」導入は、基幹システムとの連携においても、意欲的な取り組みが行われた。この開発は大成建設グループにおける社内システムの開発・運用を担う株式会社大成情報システムのもと実施された。同社 第一開発保守部の山田康朗氏はこう説明する。「人事系システムと連携させ、最新の組織情報が自動反映されるようにしました。加えて、『Spendia』上の申請情報を抽出し、データレイアウトを変更して管理会計システムに取り込むための開発を実施。作業所や部署毎での予算/実績管理の精度向上を目指しました」。
また木村氏は、データ連携の柔軟さについてこう続ける。「一般的なクラウド型経費精算サービスでは、最終承認されて初めて仕訳データが確定となるため、申請段階ではクラウドからデータ抽出ができません。『Spendia』は申請中の経費情報を含めて予算/実績管理ができる点が大きなメリットです」。
効果
スマホファーストの使いやすいUIで移動時間等を有効活用した申請・承認が可能に
その後、2022年2月から、本社・各支店の経理担当者を対象としたレクチャーを開始。さらに各支店では、社員に向けたスマホやPCによる申請手順の周知を実施し、7月から本格利用がスタートした。
スマホによる申請のメリットを今井氏はこう説明する。「いつでもどこでも場所を選ばず経費申請ができます。たとえばタクシー利用後にその場でレシートを撮影すれば、申請忘れの防止にも役立ちます」。
なお、建設業でも2024年から時間外労働の上限規制が適用になる。日常的な経費申請など小さな時間のロスを「Spendia」で削減し、より本業に専念できる環境づくりにも役立つことを期待しているという。
一方、各支店や作業所の経理業務担当者からは、ペーパーレス化を歓迎する声が多いと今井氏は説明する。「たとえば、作業所から支店へ紙の領収書を郵送する手間も不要に。以前のシステムでは紙に依存する作業が残っていたため、大きな改善効果をもたらしています」。
導入から1年が経過し、運用手順や機能について各支店の要望をヒアリングする予定。「我々がクラウドサービスに業務をあわせるのではなく、『Spendia』の機能を進化させて我々の要望に対応いただけたのが今回のプロジェクトの大きな特長です。次の新しいニーズが出てきた時、また伴走型で支援いただきつつ、よい仕組みをつくりあげて行きたいと切に願っています」(小川氏)。
お客様の声

大成建設株式会社
管理本部
経理部 経理室 次長
今井 英之氏

大成建設株式会社
社長室 情報企画部
デジタル推進室長
木村 彰宏氏

大成建設株式会社
社長室 情報企画部
デジタル推進室 次長
小川 淳氏

株式会社大成情報システム
第一開発保守部
チームリーダー
山田 康朗氏
本プロジェクトは、経理・財務システム全体のグランドデザインがどうあるべきか、その中で経費精算の仕組みをどのように刷新すべきかをTISと意見交換しながら進めていきました。経費申請・精算は、法改正やIT技術の発展に伴い常に機能アップが求められますが、「Spendia」のスピーディーな進化が、その助けになると期待しています。TISには、社会の動きをいち早く取り入れた提案をいただける、よきパートナーとしての協力関係を今後もお願いしたいと思います。
TIS担当者から

TIS株式会社
DXビジネスユニット 経営管理サービスユニット
経営管理サービス第2部 副部長 兼
経営管理DXサービス企画部Spendia事業推進室長
工藤 大輔
大成建設様とワンチームになって、たくさんのことを学びながら楽しくプロジェクトを進められました。ご要望に応える新機能の追加で、「Spendia」という製品自体も一緒に成長できたことをうれしく思います。
今回印象的なのが、お客様ご自身が「Spendia」をしっかりと細部まで理解し、どうセットアップすればよいかを熟考し、さまざまな工夫をされていたことです。プレオープン前で、かつマニュアルをお渡しする前から、お客様自身でセットアップし、動作検証を進められていたことには驚かされました。今後は、経費精算以外の経理DXの新規提案もさせていただければと思います。
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