アイディア株式会社様
オープンAPI化に向けた標準開発環境をスピード構築。
価値あるデータの集約・公開で、海事産業DXへの貢献を目指す。


背景
DXが急がれる海事産業を支援するため自社SaaSのオープンAPI化を計画
アイディア株式会社は2018年、海運業や港湾業などに代表される海事産業の発展にDXで寄与することを目標として設立された。「この業界はシステム化されていない業務が多く、DXが広く共通課題となっていました。特に国内の内航において課題が顕著であり、当社は、船上や港湾などにおけるさまざまな業務を効率化するため、海事産業プラットフォーム「Aisea(アイシア)」の提供を開始しました」(取締役COO浮田尚宏氏)。
Aiseaプラットフォームは、舶用機器との連携にはじまり、気象などの各サービスベンダーや既存システムとの連携を可能にし、個別管理されていたデータを集約するシステム。集約したデータを横断的に活用することで、海運業、港湾業、海洋土木業、造船業、舶用工業といった幅広い分野で業務の自動化や省力化、現場の可視化、安全性向上を実現し、海事産業のDXを加速させる。
本システムの裏側では、多くのデータや機能、そして外部連携するためのAPIが稼働しているが、同社は2022年、AiseaプラットフォームのオープンAPI化を計画した。オープンAPIとは、自社が持つサービス・機能・データを、さらなる利用拡大のためにAPI化して社外に向けて公開すること、または誰にでも使いやすい形に標準化していくことなどを指す。
取締役CSO/CFO 鈴木智之氏は、オープンAPI化の目的をこう説明する。「従来、海事産業におけるデータの網羅的な収集・整理は、データ収集や業界構造等、さまざまな理由で容易ではなく、これが海事DXの加速の妨げとなった可能性があります。当社はこの課題解決を目指し、Aiseaプラットフォームを構築しました。オープンAPI化により、お客様企業およびそのITパートナーが、プラットフォームの既存アセット(データや機能)を容易に、かつ適切な権限管理のもと利用できるようになります。これにより、他業界を含む外部企業様とのデータ連携やオープンイノベーションが加速し、海事産業に向けた独自ソリューションの開発などが行いやすくなることで、海事DX推進により貢献できると考えました」。
ここで必要となったのが、オープンAPI化に適したAPIゲートウェイの構築。社内のアセットを外部公開するにあたって、アクセス要求に対する認証・認可の仕組みや、大量のトランザクションを迅速に処理するゲートウェイの構成などの検討・検証が必須であった。同時に、社内エンジニアのAPI開発・運用手順の標準化も重要課題となった。
「当社は基礎的な技術としてAPIを扱っていますので、単独で検証する選択肢もありました。しかし、少しでも早く、少しでも多くのお客様のDXに貢献するにはスピード感とAPI利用者が慣れ親しんだ形での実装が重要。そこでオープンAPIに関する知見や実績があり、幅広い業界でプレゼンスのあるパートナーを迎えてオープンAPI開発環境を構築し、エンジニアとともに基礎技術を確立するためのPoC実施を計画しました」(鈴木氏)。
選択
業界トップクラスのオープンAPIの知見を持つTISをパートナーに選択
同社は2023年に入って、複数の大手SIerにコンタクトし、希望条件を満たすオープンAPI開発環境の構築支援を打診した。
その候補の中で、TISには以下の優位性を感じたと鈴木氏は振り返る。「まず、当社が採用を想定していた、認証の要となるAPIゲートウェイ『Kong Gateway』に精通している点。TISは社内に同製品の専門部隊を置いており、十分な経験値が蓄積されていました」。このKong Gatewayは、デジタル庁がAPI連携のコア製品として推奨する、オープンソースソフトウェア。TISは、同製品の取り扱い実績を持つ、国内で数少ないベンダーの一社であった。
そしてふたつめの優位性は、さまざまな業界における業務システムの支援実績。「金融業界を初めとしてミッションクリティカルな用途に対応したシステムの実績も多く、単純に“作って終わり”ではなく、業務システムにおけるAPIの要求事項や活用事例などユーザー視点でフィードバックをいただけると感じました」(鈴木氏)。
各社を比較検討した結果を鈴木氏はこう振り返る。「エンジニアとしての経験を持つ当社の下川部社長と私の二人で各社とのコンタクトにあたりましたが、我々の最終結論は『やはりTISしかない』で一致。それほどの、経験値の高さを感じました」(鈴木氏)。こうして、2023年5月にTISがパートナーとして選定され、4カ月にわたるオープンAPI開発環境構築のPoCがスタートした。
構築
TISの技術検証サービスを利用して開発環境を簡単かつ短期で構築
プロジェクト開始後、TISは自社の「API連携ビジネス活用支援サービス」技術検証(PoC)を活用することで、オープンAPIの開発環境の短期構築を目指した。このサービスは、TISが推奨するアーキテクチャで構成されたオープンAPI開発プラットフォームをPoC環境として提供するもの。APIゲートウェイをはじめ、認証認可の管理機能、ログ管理機能、API開発機能などが標準で組み込まれている。
今回、この開発環境はアイディアがビジネス基盤として利用しているGCP(Google Cloud Platform)上に構築することとなった。TISは、それまで手がけたクラウド上での開発環境構築の知見を生かして作業を進行。「TISはGCP上に環境を構築する際の技術課題を先回りで洗い出し、最適な構成を提案してくれました。Kong Gatewayと相性のよいデータベースの推奨など、当社だけでは出せなかったスピードで対応できたと思います」(鈴木氏)。
また、TISからはKong Gatewayを初めて利用する社内エンジニアに向けて、標準的な管理の考え方についての助言、手順書が提供された。「アクセス要求に対する適切な認証回数や、社外の開発者が権限を含めてコントロール可能にする設計方法など、エンジニアは社外の専門家と有意義な議論をする貴重な機会を得ることができたと感じます」(鈴木氏)。
展望
オープンAPIの標準技術の早期確立で、海事産業とIT業界の架け橋を目指す
PoC期間の後半では、エンジニアが標準化された手順に基づき、約90におよぶAPIの開発および検証を実施した。
今回、TISがオープンAPI開発環境を支援したことで、社内の人的稼働を抑制できるメリットもあったと鈴木氏は振り返る。「海事産業のDXへの関心は高まっており、当社エンジニアのリソースも集めたデータを加工して見やすく表現する、Aiseaプラットフォームの機能・サービスのUI/UX開発に多く割り当てています。当社リソースを割くことなく、TIS主導で調査が行われ、オープンAPIの基礎となる設計と実証、ノウハウ提供をいただけたことで、サービス開発を遅延させることなく、将来に向けた投資を行うことができました。また、海事産業のお客様にオープンAPIの活用法をご紹介する活動の強化にもつながっています」(浮田氏)。
今後は、公開本番を想定し、データの受け渡し方法や認証認可管理などの機能をブラッシュアップし、社外開発者にとっての利便性向上を目指していく。
同社は、オープンAPIの主な利用者として、新たに海事産業へ参入するシステム会社を想定している。「海事産業は特殊なビジネス習慣やデータ化されていない業務が多く、IT業界とは距離が遠かったと言えます。当社が両者をつなぐHUBになり、システム会社の参入障壁を下げ、業界におけるDXの成功体験を増やしていきたいと思います。今後も、公開本番に向けた設定のチューニングや基盤構成など、TISのナレッジに大いに期待しています」(鈴木氏)。
お客様の声

アイディア株式会社
取締役CSO/CFO
鈴木 智之氏

アイディア株式会社
取締役COO
浮田 尚宏氏
開発環境構築をTISにお手伝いいただくことで、APIのオープン化の課題感が早い段階で明確になりました。当社のAiseaプラットフォームは国土交通省の「中小企業イノベーション創出推進事業」にも採択され、海事産業の業界課題解決に役立つプラットフォームとして注目が高まっています。海事DXを実現するには、幅広い企業が海事産業にむけて、Aiseaプラットフォーム上のデータを活用したソリューションを展開することが効果的と考えており、オープンAPIによりこうした動きの活性化に貢献できると考えています。TISには、海事産業のお客様のDXパートナーとしての役割にも期待しています。他業界でのシステム構築の豊富な知見を持つTISとの会話から、新たな発想のサービスやビジネスが生まれてくるのではないでしょうか。
TIS担当者から

TIS株式式会社
IT基盤技術事業本部 IT基盤ビジネス事業部
IT基盤ビジネス推進部 エキスパート
川田 達也

TIS株式式会社
IT基盤技術事業本部 IT基盤ビジネス事業部
IT基盤営業部
後藤 晴香
今回、TISの技術検証サービスをご利用いただくことで、アイディア様には“気軽に・すぐに・簡単に”オープンAPIの開発・管理の検証作業ができるメリットをご実感いただけたことと思います。今後もアイディア様とともに、日本の物資輸送において重要な役割を担う海事産業のDXをともに考えるパートナーであり続けたいと思います。
TISはAPIのビジネス活用に国内でいち早く取り組み、初期の検討段階からAPIビジネスの遂行まで、他社にはない幅広いご支援メニューをお客様にご提供いたします。お気軽にご相談いただけますと幸いです。
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