パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社様
パナソニックグループ人事システムに残存するCOBOL資産をJavaへリライト。
短期に脱メインフレーム化を実現。

背景
保守終了を1年後に控え、短期間での脱メインフレーム化を構想
日本を代表する総合電機メーカー、パナソニックグループは、人材管理などの業務にグループ共通の人事システムを利用している。その始まりは1988年、IBMメインフレーム上にCOBOLで構築した「HUMANホスト」と呼ばれるシステム。
その後の人事システムの環境の推移について、グループのIT中核会社であるパナソニックインフォメーションシステムズ(以下パナソニックIS)の人事・総務ソリューション部 部長 土岐知義氏はこう説明する。「2000年代に入って、同じメインフレームに置かれていた他の業務システムは、パッケージ製品やオープン系システムへの移行が本格化しました。人事システムも例外ではなく、優先度の高い機能からオープン化され、2022年の時点では、給与・賞与明細の帳票作成や、外部システムとのデータの受け渡しなど一部機能を担うシステムだけがメインフレーム上に残存している状況でした」。
パナソニックISは、それまで数年来、IT戦略の基本方針としてグループ全体の脱メインフレーム化に取り組んできた。本件の対象である、人事システムの一部機能が置かれているメインフレームについても、次の保守終了(EOS)のタイミングで廃止し、オープン化を果たすことが目標となっていた。
事業部長 山田裕之氏はこう語る。「オープン化で期待したメリットは、メインフレーム継続のためのコスト軽減。そして、将来的に人事システムの改修が必要になった際、COBOL技術者が不足する事態に備える目的がありました」。
この時点で、メインフレームの次回保守終了は約1年後の2023年7月に迫っていた。そこで同社は、期限までにオープン化を効率的に実現するため、最適な移行手段を検討することとなった。
選択
TISの「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」を利用したリライト手法を選択
方針決定後、パナソニックISは、オープン化の手段およびパートナー選定に着手した。「当初はエンジニアがCOBOLからJavaへ書き直すリビルド手法を念頭に置いていました。しかし、これでは保守終了までに間に合わないため、他の移行手法の知見を持つパートナーを探すこととしました」(人事・総務ソリューション部 竹田敦彦氏)。
モダナイゼーションの実績に基づき候補とした数社のうち、TISから提案を受けたのが、「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」(以下、Xenlon)。これは、独自開発のリライトツールを利用して、COBOLからJavaに業務ロジック100%の精度で自動変換するソリューション。数百万ステップを超える大規模案件の実績も複数ある。
パナソニックISが評価したポイントは、優れた変換率に加え、パナソニックグループと30年来の取引実績があるTISに対する信頼感。「これまでのお付き合いで“寄り添ってくれる会社”という印象がありました。今回、非常にタイトな移行スケジュールですが、TISなら安心して任せられると思いました」(山田氏)。
パナソニックISは、リライト以外の移行手法についても検討したが、条件は満たせなかったと土岐氏は振り返る。「別の会社からは、現行プログラムに手を加えず、オープンCOBOL環境に移行する『リホスト』手法の提案がありました。費用面で大きな差はありませんでしたが、将来的なCOBOL技術者不足の対策にはならないことから、TISのリライト手法が優位と判断し採用を決めました」。
導入
パナソニックISとTISが一致協力し7カ月でのスピード移行に成功
TISは、過去の大規模なモダナイゼーション経験から、Xenlonによる移行の標準モデルとして、約2年のプロジェクト期間を設定している。これに対して本件は、約7カ月という異例の速さでの移行に成功した。
その要因のひとつは、まず残存するCOBOLのステップ数が比較的小規模であることに加え、パナソニックISが移行不要の帳票について棚卸しを済ませていた点。
もうひとつが、変換前と変換後の処理結果を比較する現新比較テストにおいて、パナソニックISおよび現行システムの運用保守を担当するベンダーの全面協力があった点。テストフェーズの作業はまず、テスト用のデータの準備から始まった。「毎年決まった月に流すジョブの結果をテストするには、数カ月先を想定した“未来のデータ”を作成する必要があります。運用保守担当のベンダーにとって初めての経験でしたが、TISに助言をいただき、テスト用のデータを円滑に準備できました」(竹田氏)。
そして、Javaへの変換作業が終わったプログラムから順次、現新比較テストの工程へ進んだ。Xenlonで正確に変換されていても、Java環境の仕様の差異などで処理結果の不一致が発生するケースがある。エラーが起きた場合は、3社でオンライン会議を実施し、Java環境の設定値をチューニングするといった対策で課題を逐次解決していった。
プロジェクトを通じて、TISのマネジメントの印象を山田氏はこう振り返る。「TISは、本来の役割以上に踏み込んで、全体を俯瞰して当社作業の進捗も把握してくれました。週数回、プロジェクト状況を共有することで、当社グループのIT統括組織へ進捗および課題のエスカレーションもスムーズに行うことができ、週次報告のサイクルを確立することができました」。
効果
レガシーシステムを短期間でモダナイゼーションする手法のモデル確立を達成
こうして、順次テストが終わったJavaプログラムから稼働を開始し、2023年7月に、すべてのCOBOL資産の移行が完了。メインフレームは計画どおり、保守終了のタイミングでの廃止となった。
「年間のメインフレーム維持コストを軽減でき、リライト後のシステムの品質にも満足しています。Xenlonの変換に起因するエラーや、業務に影響が及ぶ障害は現時点でまったく発生していません」(土岐氏)。
パナソニックグループでは、他にもメインフレーム上で稼働している複数のレガシーシステムがある。「グループ全体の変革プロジェクトPX(「お客様の声」参照)では、単なるモダナイゼーションではない、業務プロセス変革に取り組んでいます。しかしながら、今回のような業務プロセス変革を伴わない領域のレガシーシステムのモダナイゼーションについては、本件の経験を生かしてオープン化していくのも選択肢のひとつになると考えています」(山田氏)。また、中期的な構想としては、2030年生産終了・2035年サポート終了がアナウンスされている、富士通メインフレームの「2030年問題」を念頭に置きつつ、オープン化の対象となるシステムを検討していくという。
最後に山田氏は、TISへの期待をこう語る。「今回の取り組みを通じて、レガシーシステムをモダナイゼーションする、ひとつのロールモデルを確立することができました。今後もTISと協力し、リライト手法を選択肢のひとつとしながら、モダナイゼーションを加速させていきたいと思います」。
お客様の声

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
事業部長
山田 裕之氏

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
人事・総務ソリューション部 部長
土岐 知義氏

パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社
コーポレートソリューション本部
人事・業務改革DXソリューション事業部
人事・総務ソリューション部
人事基幹システムチーム 主幹
竹田 敦彦氏
現在パナソニックグループでは、ITを活用して社員のマインド・組織・風土・旧態化した業務プロセスなどを変革し、経営基盤を強化しようという、グループ横断のPX(Panasonic Transformation)に注力しています。このPXが、プロセスの見直しを伴う改革であるのに対し、本件のように従来の業務プロセスをそのまま継続しながら刷新するモダナイゼーションについては、Xenlonのような自動化ツールの活用が非常に有効です。今回、TISの支援で、品質・コスト・納期面を考慮しつつ、効率的にモダナイゼーションを進めることができ感謝いたします。
その一方で、PXの主テーマとも言える、業務プロセス改革を伴う新たなシステムづくりの領域についても、ぜひTISに力をお借りできればと思います。
TIS担当者から

TIS株式会社
産業モダナイゼーションビジネス部 部長
川口 昌宏

TIS株式会社
産業ビジネス営業部 セールスマネージャー
西岡 春香
メインフレームのEOSまで7カ月という短期間でしたが、テスト工程などお客様の全面協力で、期間内に無事リリースでき感謝いたします。稼働開始後は障害の発生もなく、安定運用に貢献できていることをうれしく思います。
本案件を通じて、比較的小規模なレガシーシステムを短期間・高品質でモダナイゼーションするという、Xenlonの新たな移行モデルを確立でき、TISのプロジェクトメンバーにとって貴重な経験となりました。
今後、残存している他のレガシーシステムについても、パナソニックIS様とモダナイゼーションの進め方を議論しつつ、中長期的にご支援させていただけますと幸いです。
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