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東邦大学医療センター佐倉病院様

外来がん化学療法の副作用症状を「ヘルスケアパスポート」で無理なく報告。
病院・薬局の薬剤師によるタイムリーな連携で、患者に寄り添ったケアを実現。

東邦大学医療センター佐倉病院様

背景

電話による服薬フォローアップでは患者の詳細な状況把握が困難

東邦大学医療センター佐倉病院(以下、佐倉病院)は、近代医療発祥の地として知られる千葉県佐倉市に1991年に開院した。大学の総合病院として高度先進医療を提供し、地域の人々の健康を支え続けている。
近年、がん化学療法で使用する抗がん剤・副作用を抑える薬は飛躍的に進歩し、治療は在宅・外来へとシフトしている。飲み薬が10種類を超える患者も多く、決まった時間・サイクルで服用し続けるのは容易ではない。
「そのため、佐倉病院の薬剤師とかかりつけ薬局(あやめ薬局 下志津店など)の薬剤師が連携(薬薬連携)し、服薬状況や体調変化をモニタリングしています。2020年に、がん薬薬連携関連の加算新設や、専門医療機関連携薬局(がん)の認定、薬局の服薬フォローアップが法律で義務化されたこともあり、患者さんの体調を管理するうえで薬局の役割は非常に大きくなっています」と、同病院薬剤部の平井成和氏は説明する。
病院薬剤師は、抗がん剤の調製や服薬指導等に加え、医師が決定した抗がん剤の治療方針に従って、適切な治療薬・副作用を抑える薬を医師に処方提案する。患者は外来で点滴等の治療を受け、その後自宅療養へ移行。薬局薬剤師は、処方箋に基づき患者に薬を提供し、自宅療養期間中のフォローを担当する。
薬局薬剤師は、バイタル情報・副作用症状を確認するため、抗がん剤投与1週間後を目途に患者宅に電話をかけ、ヒアリングを行っていた。この方法の課題について平井氏はこう説明する。「情報が断片的であったり、副作用に合わせた適切なタイミングでのフォローが難しいこともあります。また、体調が悪く電話に出られなかったり、会話すること自体がつらい患者さんも少なくありません。そこで、あやめ薬局の薬剤師と相談し、患者さんが無理なく正確な状況を伝えられる新たな手段を検討することとしました」。

選択

患者・薬局・病院をつなぐ地域医療連携を実現する「ヘルスケアパスポート」を選択

候補としたツールは、LINEなどコミュニケーションツール、日々の健康情報を記録するPHR(パーソナルヘルスレコード)サービスなど。しかし、副作用症状の報告という特殊な用途に対応できる方法が見つからない中、2022年中頃に医薬品の大手取引先の東和薬品株式会社からある提案がもたらされた。
それは、同社がTISとアライアンス契約を結び取り扱っているPHR基盤サービス「ヘルスケアパスポート」の活用。「地域医療連携のプラットフォームとしてお客様の課題を解決できるのではと考え、TISと共同提案させていただきました」(東和薬品 営業本部 金井道仁氏)。
平井氏はこう振り返る。「血圧や体温といった基本的なバイタル情報だけでなく、『吐き気』『嘔吐』といった副作用症状をカスタマイズで追加できる柔軟性が印象的でした。また、プラットフォーム型なので、病院と薬局が同じ報告内容を見ながら初期対応について相談できる点も他のPHRサービスにはない優位性でした」(平井氏)。
さらに患者との間で、チャット形式ではない方法でコミュニケーションができる点も評価ポイントとなった。「チャットは“距離が近すぎる”ため会話が頻繁になりがちで、患者さんにも医療従事者にとっても負担がかかってしまいます。ヘルスケアパスポートは助言等を必要な都度メッセージ送信できるので、程よい距離感を保ちつつ双方向コミュニケーションができます」(平井氏)。
加えて、開発・提供元のTISは、セキュリティ要求の厳しい金融業界でのシステム実績が豊富であり、技術面で信頼できる会社である点も決め手のひとつとなった。こうして2022年後半より、約1年をかけてカスタマイズと技術検証を実施した後、現場での実証に臨むこととした。

導入

さまざまな副作用症状を報告できるようオリジナル項目を追加

約1年の準備期間では、TISと東和薬品が要望をヒアリングし、症状報告の画面を設計。抗がん剤による副作用症状として、重症度別に入力可能な12項目をカスタマイズで追加することとなった。また、5段階から選択し記録できる『体調』の項目や、どれにも該当しない症状をフリーフォーマットで記録できる『気づいたこと』の項目も追加された。「患者さんがより簡単に状況を詳しく報告できること。そしてその情報を活用してよりよい医療を提供していけるよう、この先もカスタマイズにゴールはありません。TISと東和薬品がそれぞれの強みを生かして対応してくれる体制は、我々にとって非常に有り難い、良好なパートナーシップです」(平井氏)。
カスタマイズの作業と並行して、ヘルスケアパスポートの「施設間連絡メモ」機能を利用し、共通基盤の中で情報を共有するテストも実施。あやめ薬局の薬剤師と佐倉病院薬剤師が、患者が報告した同じデータを見ながら、チャットで初期対応の相談等ができること。また、薬局から病院に提出する副作用状況報告書(トレーシングレポート)のPDFが安全性を保ちつつ送信できることも確認された。
こうして準備を終え、2024年1月から抗がん剤治療患者に向けたヘルスケアパスポートのアプリ導入勧奨をスタート。病院での治療開始時や、薬局での薬の処方時に紹介している。「患者さんからは“治療に役立つなら使ってみたい”と好感触で、開始から約10カ月で延べ50人程に使っていただいています」(平井氏)。

効果

「報告しやすいので毎日続けられる」と患者から高い評価

実際のユーザーである患者の声を平井氏はこう紹介する。「多かったのが“入力が簡単だから続けやすい”という感想です。報告は毎日継続いただくことが何より大切ですから、ヘルスケアパスポートの導入で目標のひとつが達成できました」。また、自宅療養を続ける患者にとって、不安をやわらげる効果をもたらしているという。「つらい副作用症状を報告した時は、薬局から電話やメッセージにて助言を行ったり、病院への受診を促したりすることで、“安心して治療に臨めた”、“治療に役立った”という声も多くいただいています」(平井氏)。
あやめ薬局の薬剤師はヘルスケアパスポートで、より患者に寄り添ったフォローアップが可能となった。「以前の電話では、吐き気や下痢といったすべての症状を、トレーシングレポートに記載されたリストの先頭から順に質問していたので、かなり時間を要したそうです。導入後は、適切なタイミングで、患者さんが特につらく感じる症状を重点的にヒアリングし、その改善に集中できるようになったと報告を受けています」(平井氏)。
近年、がん化学療法だけでなく、心不全や糖尿病などの慢性疾患も、在宅でのフォローアップが重要とされている。そうした領域でも、服薬状況や体調のモニタリングにヘルスケアパスポートが有効なツールとなる。
最後に平井氏は、地域医療連携という観点でヘルスケアパスポートへの期待を語る。「病院薬剤師と薬局薬剤師の距離が縮まり、“薬薬連携”がよりスムーズになったと感じます。今後、医療機関や介護施設、行政など地域包括ケアの担い手の関わりが重要性を増していくでしょう。各プレイヤーが安全なプラットフォームの上で患者さんの情報を共有し、それぞれの役割をより発揮できるようになることを期待しています」。

お客様の声

平井 成和氏

東邦大学医療センター
佐倉病院
薬剤部
平井 成和氏

患者さんが「ヘルスケアパスポート」で報告するようになって約10カ月、適切な服薬マネジメントに役立っており、自宅で服用する副作用対策の薬を上手く活用できず抗がん剤の量を減らしたり、治療を中断するといったケースは起きていません。
今回、東和薬品はこれまでのジェネリック医療医薬品以外の新たなIT領域で力になっていただき感謝しています。医療情勢を熟知した東和薬品と、地域医療の基盤サービスを有するTISのパートナーシップで、患者さんのよりよいケア、住民のヘルスケアリテラシー向上の力になっていただくことを期待しています。

TIS担当者から

中村 太一

TIS株式会社
デジタルイノベーション事業本部
ヘルスケアサービス事業部
ヘルスケアプラットフォームサービス部
セクションチーフ
中村 太一

東和薬品様と共に、佐倉病院薬剤師の皆様およびあやめ薬局薬剤師の皆様と、外来がん化学療法におけるPHRの役割や機能改修の協議を重ね準備に臨みました。運用フェーズに入ってからも、引き続き“薬薬連携”でのPHR活用をサポートしてまいります。今回、薬剤師の皆様やがん患者様より使用感を現場で伺うことができ、サービス向上の励みになりました。
直近の目標としては、佐倉市内の薬局様の協力のもと参加施設の拡大を目指します。また本“薬薬連携”モデルには他エリアからも関心をいただいていますので、ヘルスケアパスポート導入、そしてさらなるアプリ普及に注力していきたいと思います。

※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。

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更新日時:2025年3月6日 15時52分