豊田通商株式会社様
オンプレミスの仮想デスクトップ基盤をAzure Virtual Desktopに移行。
「リソースの制約」からの脱却で、快適な操作性を実現。

背景
タイムリーなリソース拡張が困難なオンプレミスの仮想デスクトップ基盤
豊田通商株式会社(以下、豊田通商)は、1948年に設立されたトヨタグループの総合商社。8つの営業本部(メタル+(Plus)本部/サーキュラーエコノミー本部/デジタルソリューション本部/サプライチェーン本部/モビリティ本部/グリーンインフラ本部/ライフスタイル本部/アフリカ本部)で事業を展開し、国内外1,000以上の子会社・関連会社で構成されるグローバル企業として成長を続けている。
同社は2012年、Windowsのアップグレードの管理効率向上と、社外作業の効率化のため、データセンターに仮想デスクトップ基盤(以下、VDI)を構築。本社約100人が利用を開始した。
2020年春には、コロナ禍での全社規模の在宅勤務に対応するため、オンプレミスのVDIのリソース強化を計画。ユーザー上限約400人の基盤設計を見直し、約4,000人規模に対応できるようサーバー増設を実施した。
しかし、PC操作時のパフォーマンス面で課題があったと、豊田通商IT戦略部の児玉昌明氏は説明する。「物理的なリソースは約10倍になりましたが、それでも利用が集中する時間帯や月末・月初は速度低下が避けられませんでした」。
社員の業務や職務ごとにリソースを増減するチューニングも試みたが、現行の運用体制での対応は限界に近づいていた。さらなるサーバー増設も検討したが、当時はコロナ禍で物流が滞り、物品調達の目処が立たない状況。そのため、“必要な時に必要なリソースを拡張できる”よう、クラウドでVDIを提供するDaaS(Desktop as a Service)への移行を決定した。
選択
マイクロソフト製品との親和性の高いAzure Virtual Desktopを選択
DaaSへの移行計画は、豊田通商、情報機能子会社の株式会社豊通シスコム(以下、豊通シスコム)、さらに長年のITパートナーであり豊田通商IT戦略部の業務に密接に関わっているTISメンバーとともに進められた。
チームがDaaSの候補としたのが、マイクロソフトのAzure Virtual Desktop(以下、AVD)。その理由を児玉氏はこう語る。「当社のクライアント環境はWindowsからOfficeまでマイクロソフト製品が中心であり、親和性の高さからAVDが最適と判断しました」。加えて、現行のWindows 10から11へアップグレードする際に、2 種類のOSの並行稼働が容易な点も選択理由となった。
また、AVDを基盤として採用しつつ、Citrix Cloudを組み合わせる構成を考案。「従来のVDIはCitrixを利用しており、ユーザーが使い慣れたUIのままDaaSへ移行したいというのが一番の理由です。また、通信帯域を圧縮するICAプロトコルが使えるので、パフォーマンス向上も期待できました」(児玉氏)。
こうして2021年4月、DaaSの構成が正式決定し、プロジェクトの準備に着手した。
導入
グループへのDaaS展開の先駆けとして2社へ先行導入

IT基盤エンジニアリング第4部
エキスパート
真﨑 農
今回のDaaS導入は、豊田通商にとどまらず、グループ各社へ順次展開していくことが目標に定められた。その第1弾として2021年5月から、豊通シスコムの約700人を対象としたDaaS導入がスタートした。
グループ会社向けのDaaS導入推進を担当するTISの真﨑農はこう語る。「先々のグループ展開を踏まえて、個社の業務・規模への最適化が容易な共通基盤を目指しました。快適なPC操作性とともに、仮想デスクトップ端末の管理のしやすさも基盤設計で重視したポイントです」。
この豊通シスコムへの導入は2022年1月に完了。仮想デスクトップの運用チームリーダー、同社の澁井信孝氏はこう語る。「発生した技術課題は、事前に想定していたものよりも軽微であり、これもTISがしっかりと基盤を設計してくれたおかげです」。
続いて2022年6月からは、豊田通商約5,000人を対象としたDaaS導入に着手。豊通シスコムへの導入で実証した基盤をもとに最適化を図り、同年12月に導入完了した。
仮想デスクトップの運用およびヘルプデスクを担当する豊通シスコムの久保田安由美氏は、新環境への移行をこう振り返る。「率先してDaaSに切り替えた社員から“快適になった”とクチコミが広がる好循環で、移行はスムーズでした。UIも従来どおりなので、問い合わせもほとんどありませんでした」。
効果
リソースの制約からの解放で、PC操作時のパフォーマンスが大きく向上

IT基礎エンジニアリング第4部
セクションチーフ
堀 櫻子
DaaS導入による効果を児玉氏はこうまとめる。「一言でいえば“リソース制約からの脱却”に尽きます。以前は限られたリソースをやり繰りしていたものが、マイクロソフトのクラウド上のリソースを柔軟に調達できるようになり、常に快適なパフォーマンスを維持できるようになりました」。
澁井氏は、DaaS移行のメリットをこう続ける。「以前は操作が“重い”という理由で、FAT PCを使い続ける社員が一定数いたことで、情報漏えいの潜在リスクがありました。全社的なDaaS移行は、セキュリティ面の安全強化にもつながっています」。
また久保田氏は操作パフォーマンス向上で、複数のグループ会社をまたぐ仕事がしやすくなったと説明する。「私は豊通シスコムに所属しつつ、豊田通商IT戦略部の仕事を兼業しています。DaaSを使えば、会社間を移動することなく、両社の業務や日常的な社内申請をスムーズに行えます」。
さらに、豊田通商の基礎運用チームのメンバーとして業務に従事するTISの堀櫻子は、DaaSの運用面での導入効果をこう説明する。「オンプレミスの基盤では、ハードウェア故障の都度、対応に人手がかかっていましたが、その工数を削減できたのもDaaSの大きなメリットです」。
展開
2026年度末までにグループ約40社15,000人へのDaaS展開を目指す
そして2023年1月からは、TISメンバーがプロジェクトリーダーとなって、グループ会社への展開が進められている。2026年度末までに、国内約70社のグループ会社のうち約40社、約15,000人のDaaS利用が目標。
仕様を共通化したDaaSの基盤は、コーポレート機能の集約でも効果を発揮している。「グループの小規模な拠点では、専属のIT担当者がいないケースもあります。豊田通商が基盤の管理・運用をサポートすることで、個社の業務負荷を減らすとともに、ガバナンスの強化にもつながっています」(児玉氏)。
最後に児玉氏は、今後のTISへの期待を次のように語る。「TISには今回のDaaSに限らず、ITの戦略立案からシステムの開発・運用まで、多方面で力になっていただいています。今後も、我々と同じ目標を共有しながら、ともにチャレンジし続けるパートナーであってほしいと期待しています」。
お客様の声

豊田通商株式会社
IT戦略部
インフラサービスグループ
グループリーダー
児玉 昌明氏

株式会社豊通シスコム
ICTサービス技術部
カスタマーサービスグループ
グループリーダー
澁井 信孝氏

株式会社豊通シスコム
ICTサービス技術部
インフラ企画グループ
久保田 安由美氏
当グループは2018年、人員と投資の最適化を目的に、業務システムのクラウドファースト戦略を策定しており、今回のDaaS移行もその一環に位置付けられます。この戦略を立案した際も、TISのメンバーが大きな力になってくれました。
豊田通商IT戦略部は、豊通シスコムとともに、グループにおけるあらゆるIT系のビジネス施策を支える、縁の下の力持ち的な存在になることを目指しています。この目標を実現するには、上流のIT戦略立案から、下流となる運用保守の面でも、TISの協力が必要不可欠であると考えています。今後とも、TISインテックグループとして人的リソースをさらに増強し、力になっていただきたいと思います。
TIS担当者から

TIS株式会社
IT基盤技術事業本部 IT基盤エンジニアリング事業部
IT基盤エンジニアリング第4部 セクションチーフ
眞﨑 明日香

TIS株式会社
IT基盤技術事業本部 IT基盤ビジネス事業部
IT基盤ビジネス推進部
瀧内 権輔
TISは約20年来、豊田通商様のパートナーとしてITに関する各種施策をお手伝いしてきました。現在、DaaSのグループ会社への展開をはじめ、EOSLを迎えるWindows10から11へのアップグレードなど複数案件を同時並行で進めています。
DaaS導入検討開始から約3年が経過し、クライアント環境に関連する技術は当時より進化しています。今後も豊田通商様およびグループ各社のビジネスに合った、最新の技術やサービスをご提案し、最適な環境づくりに貢献したいと考えています。
TISは、今回お客様が導入されたAVDに対し、リリース当初の2019年から導入・運用を支援してきた実績があります。2023年にはMicrosoft様よりVDI Partner of the Year Awardの表彰もいただきました。DaaS導入に関心をお持ちのお客様は、ぜひご相談ください。
※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。