ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社様
保険契約を管理する基幹システムをマルチクラウドに移行。
OCIとAzureを組み合わせた環境の設計・構築から一元運用までをTISがトータル支援。

背景
クラウドジャーニーの新たなステージは基幹システムのクラウド移行
ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社(以下、ニッセイ・ウェルス生命)は、金融機関の窓口を通じた、資産形成・資産承継に資する商品・サービス提供を強みとし、保有契約件数は60万件を超えている(2024年度末時点)。
「2018年頃より、あらゆる業務システムの脱データセンターを目指す『クラウドジャーニー構想』を推進してきました」と語るのは、IT本部ITインフラ推進部 東田歩氏。2021年には100以上の業務システムの仮想マシンをMicrosoft Azure(以下、Azure)上へ移行し、2022年には仮想デスクトップ基盤のAzure移行も完了した。
次にクラウド化の対象となったのが、保険契約・支払い・契約者からの問い合わせ対応など、業務全般を支える「保険契約管理システム」であった。このシステムは、Oracle Databaseを組み込んだオープン系サーバ上に構築され、データセンターで運用されてきた。クラウド移行にあたっての課題について同部の石川太郎氏はこう語る。「基幹システムのクラウド移行は初の挑戦です。OCI以外の他社クラウドへの移行も検討しましたが、Oracle Databaseの新規ライセンス購入が必要となり、高額なコストがかかると試算されました」。また、本システムに障害が発生すると、あらゆる業務に影響が及ぶことになる。そのため、可用性や堅牢性を高める機能がクラウド上で利用できることは必須であった。
そこで同社は、オラクルのパブリッククラウド、Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)に注目。「Oracle DatabaseがPaaSの機能として提供され、ライセンス費用は月々の従量課金に含まれます。OCI以外の他社クラウドと比較してコストを大幅に抑えられることが分かりました」(石川氏)。
加えて、OCIではRACやData Guardをサービスとして利用可能。「24/365稼働のミッションクリティカルなシステムをクラウドで構築するには“OCIしかない”と判断しました」(石川氏)。こうして、リプレイス後の「保険契約管理システム」はDB基盤をOCI上に構築し、Azure上にある複数の業務システムと連携させるマルチクラウドを目指すことを決定した。
選択
マルチクラウドの構築から運用までをワンストップで支援するTISをパートナーに選定
プロジェクトのパートナーには、過去数年間同社のAzure環境の構築・運用を支援してきたTISが指名された。その理由を石川氏はこう説明する。「AzureとOCIを別々の会社が運用管理すると、障害時の連絡窓口が分散し、問題解決に時間を要するリスクがあります。その点、TISならAzureもOCIも含めクラウド全般の技術に精通し、当社の業務基盤も熟知しています。マルチクラウドの環境構築から統合運用までを託せるベストパートナーであると判断しました」。
そして2022年終盤から、ニッセイ・ウェルス生命とTISは導入プロジェクトの計画を立案。短期間で確実に遂行するため、TISが現在「マルチクラウドインテグレーションサービス for Oracle Cloud Infrastructure & Microsoft Azure」の名称でサービス提供している、一気通貫型のサポートの枠組みを利用することとした。本サービスは、OCIとAzureによるマルチクラウド環境構築のPoC支援から、設計・構築、導入後の統合運用までをTISがワンストップで支援するというもの。
そして2023年1月より、まずはPoCに着手した。「当時国内でOCIの普及は始まったばかり。第三者評価で障害発生率の低さや、セキュリティの高さは確認していましたが、保険業界で求められる耐障害性を備えているかを確認して万全を期したいと考えました」(石川氏)。
数カ月に及ぶPoC期間を通じ、OCI上のOracle Databaseの安定稼働が確認されたことで、マルチクラウド環境構築の本番へ進むこととなった。
導入
オンプレミスと同等の堅牢性・安全性を目標として設計・構築
同年9月から要件定義・設計フェーズをスタートし、約1年をかけてマルチクラウド環境の構築が行われた。この間のTISの技術支援について石川氏はこう振り返る。「たとえば、Azureでのセキュリティ方針をお伝えし、TISにてOCIに置き換えた実現方針を考えていただきました。既に運用実績のあるAzureと同等のセキュリティ対策を実現することで安全性を強化することができました。Oracle Databaseのクラウド化に関する全般的なガイドは、今後の他の基幹システムのクラウド化に役立つと思います」(石川氏)。
情報が外部に漏えいするリスクを最小化するため、AzureとOCI間はインターコネクトで接続し、ニッセイ・ウェルス生命と2つのクラウド間は専用線で接続する構成が組まれた。「パブリッククラウドでありながら、プライベートネットワークに近い構成を採用することで、大切な保険契約情報を安心して管理することができます」(石川氏)。
プロジェクトの終盤を迎えた2024年3月から、確実なシステム切り替えを成功させるため複数回の移行リハーサルを実施した。本番移行では、まず週末にオンプレミス環境のデータ更新を停止し、移行する保険契約データをエクスポート。このデータをOCIに移行後、新システムへの切り替えが実施され、2024年9月から実際の業務での利用がスタートした。
効果
AzureとOCIの運用の一元化で、障害発生時の速やかな解決が可能に
新システムへ移行して約半年、マルチクラウド環境は期待どおりに安定稼働を続けている。TISは過去に金融機関をはじめ数多くのミッションクリティカルなシステムのクラウド移行を手掛けてきたが、その豊富な知見が、今回のOCI上での堅牢なDB基盤構築の支えとなっている。「PoCで確認したとおりの、品質の高さに満足しています。今後もOracle Databaseが関連する他のシステムをクラウド化する際は、OCI とAzureの組み合わせを基本としていく予定です」(石川氏)。
今回のクラウド化によって、情報照会の際のレスポンスも快適になったという。「旧態化した物理サーバから最新のIaaS基盤に移行したことに加えて、Oracle Database 11gからPaaS上の最新版19cへのバージョンアップも、パフォーマンス向上に貢献しているようです」(石川氏)。また、保険契約に関する各種計算等を行う夜間バッチ処理も大幅に高速化した。1日あたりの処理時間は、平均2時間から1時間7分へと約半分に短縮されている。
TISによる一元運用管理については、次のように語る。「障害が発生した際、どちらのクラウドが原因なのかを突き止めるのは容易ではありません。TISに障害ポイントの特定から課題解消まで、迅速に対応してもらえるようになったのは、社内ITインフラの安定稼働を第一とする我々にとって大きな安心材料です」(石川氏)。
最後に、今後のクラウドジャーニーにおけるTISへの期待を東田氏はこう語る。「現状は、今回の基幹を含めて業務システム群をクラウド基盤に移行した段階です。今後、クラウドネイティブなサービスを組み合わせて柔軟なシステムへと機能向上を図っていきたいと考えています。TISには引き続き技術面でのアドバイスに期待しています」。
お客様の声

ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
IT本部 ITインフラ推進部 部長 兼
IT基盤運用管理G グループ長 兼
ITサービス推進G グループ長
東田 歩氏

ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
IT本部 ITインフラ推進部
IT基盤運用管理G ITサーバチーム
チーム長
石川 太郎氏
導入プロジェクトを通じて、「運用の統合を前提とした設計・構築をお願いします」と何度も口にしたほど、一元運用は当社にとって最優先の条件でした。OCI とAzureを組み合わせて基幹システムを構築するという、前例が少ない取り組みをトータルで支援していただけたのは、TISだからこそだと思います。
コスト削減効果については、既存のオープン系サーバは暫定的に継続利用しているため単純比較はできませんが、5年という期間で考えるとマルチクラウドの方がかなりコストを抑えられると考えています。何よりも、年々旧態化していくシステムを使い続けるリスクがなくなることは大きなメリットです。TISにはこれからも当社のクラウドジャーニーのパートナーとして支援いただければと思います。
TIS担当者から

TIS株式会社
デジタルイノベーション事業本部
サービスプラットフォーム事業部
サービスプラットフォーム第3部 セクションチーフ
今宮 久夫

TIS株式会社
デジタルイノベーション事業本部
デジタルイノベーション営業統括部
デジタルイノベーション第2営業部 シニアアソシエイト
川倉 秀介
お客様の基幹システムを無事にリリースできたこと、OCIへの移行で性能面が向上したことに、担当者として満足しています。お客様からはTISの支援への感謝のお言葉もいただき、お役に立てたことをうれしく思います。
今後も、お客様のクラウドジャーニー構想を、Azure領域・OCI領域で継続的に支援し、信頼されるパートナーであり続けることをお約束します。
近年、ニッセイ・ウェルス生命様のようにOracle Databaseのクラウド移行を検討されるお客様が増えています。TISはAzure・OCIの各領域にて最高位のパートナーランクを有しており、移行実績も多数ございます。設計・開発から導入後の運用支援まで、トータルで対応させていただきますのでお気軽にご相談ください。
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