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千葉脳神経外科病院様

病院薬剤師が作成した患者の医療履歴“ペイシェントジャーニー”を「ヘルスケアパスポート」で提供。
退院後のチーム医療への参加意識を後押し。

千葉脳神経外科病院様

背景

価値ある“ペイシェントジャーニー”を退院患者に渡す方法を模索

「自分はなぜこの薬を飲んでいるのだろう?」 病院にかかった後で「お薬手帳」を見ても、基本的に処方された薬の名前しか分からない。同じ薬でも複数の疾患に使われることがあるため、この疑問に明快に答えられる人は少ないはずだ。
急性期医療を専門とする、千葉脳神経外科病院の薬剤科科長の堀口大輔氏はこう語る。「その薬が治療とどう関係しているのかを理解することは、退院後もチーム医療の一員として健康を目指す前向きな意識に直結します。そのため当院では2019年より、過去すべての医療履歴、つまり“ペイシェントジャーニー”を患者さん自身に知ってもらう取り組みを続けています」。
これは、入院患者一人ひとりのペイシェントジャーニーを「薬剤情報提供書」として紙にまとめ、退院時に手渡すというもの。同書は、入院時のヒアリングや他院からの診療情報提供書(紹介状)に基づいて、薬剤師が作成する。「この取り組みが画期的なのは、当院にかかる前の既往歴まですべてを集め、連続性を持たせている点です。こうした情報はマイナポータルでも取得できません」と堀口氏はその価値を強調する。
この情報提供書は、退院後の生活の質向上に大いに関連する。例えば歯科にかかる際、本書を見せれば血液をサラサラにする薬がなぜ処方されているか一目瞭然となり、歯科医師は休薬の要否を的確に判断できる。
しかし、この優れた取り組みも「紙」で手渡すことの限界に直面していた。保管の難しさや紛失のリスク、遠方の家族と共有できないといった課題から、電子化を望む声が多く寄せられていた。

選択

単一ファイルを複数人で共有できるプラットフォーム型の「ヘルスケアパスポート」

堀口氏が目標としたのは、価値ある薬剤情報提供書をデジタルの形で患者へ提供することであった。しかし、PDF化したファイルをメールなどで送信する方法では、更新のたびに再送信が必要となる点、スマートフォン内に保管したファイルが破損などで閲覧できなくなるリスクも想定された。そのため、病院・患者・家族といった関係者全員がクラウド上の同一ファイルにアクセスできる、プラットフォーム型のサービスが理想だと考えていた。
そんな折、2024年夏に、医薬品取引先の東和薬品株式会社を通じて、TISのPHRサービス「ヘルスケアパスポート」の紹介を受ける。PHR(Personal Health Record)とは、個人の日々のバイタル情報等を自らがクラウド上で一元管理し、関係者と共有する仕組みのこと。堀口氏は、同サービスのメッセージ機能に注目した。これは、ファイルを直接相手端末に送るのではなく、クラウド上に保存したファイルへのリンク情報を共有する仕組みだ。「比較検討した中で、医療情報を複数の関係者間で共有できるプラットフォーム型のサービスは他になく、まさに“これしかない”という思いでした」。
そして同院は、ヘルスケアパスポートを用いた実証実験を2024年暮れから開始することを計画。目標は、これまで紙で提供してきた価値ある情報を、クラウド経由で患者に届けることであった。情報の中身である薬剤情報提供書は既に存在するため、退院患者のスマートフォンにヘルスケアパスポートのアプリをインストールしてもらうことが最初の取り組みテーマとなった。

導入

退院患者のインストール率約40%という高い導入率を達成

アプリのインストールは、当初は薬剤科が対面でサポートしていたが、後に退院患者に家族の支援のもと自宅で行ってもらう方式に変更された。これは、病院の人的リソースに制約があったことに加え、患者本人や家族が自らの意思による治療やケアに関する合意(コンセンサス)をデジタル情報としても得るためである。それでもなお、約40%(2025年5月時点、対象患者529名中212名)という非常に高いインストール率を達成している。
この高い導入率の背景には、2つの要因がある。ひとつは、具体的なメリット訴求が患者の関心をとらえたこと。「かさばらず、紛失しない」という利便性に加え、堀口氏は災害時の有用性を力説する。「大規模災害で病院の電子カルテが参照できなくても、クラウド上の情報にアクセスできれば、被災地外から薬を調達することも可能になります」。
2つめの要因が、家族の後押し。退院時には家族が同席することが多く、離れて暮らす家族もヘルスケアパスポートのアプリを使って医療履歴を共有できるという利点から、患者に導入を勧めてくれるケースが多いという。
実際に、患者本人だけでなく家族からも感謝の声が多数寄せられており、ヘルスケアパスポートは家族が患者の病歴を理解し、寄り添うための架け橋ともなっている。
この良好なインストール率を受けて、堀口氏はこう語る。「これまで感覚的だった『提供する情報の価値』が、客観的な数値として可視化されたと感じます。当院で治療を受けた約4割の方が、この情報の価値を認め、満足いただいていることの証明です」。

効果

薬薬連携による患者を含めた“チーム医療”が加速

同院が取り組んできた薬剤情報提供書の作成は、ヘルスケアパスポートを組み合わせることで、先進的なモデルとしての完成度を大きく高めた。「我々は価値ある情報(ソフト)は持っていましたが、それを安全かつ分かりやすく届ける手段(ハード)がなかった。両者が揃い、より大きな価値が生まれました」と堀口氏は振り返る。
これを弾みとして、堀口氏は“病院薬剤師のあるべき姿”の実現へと歩みを進める。「薬剤師は、処方箋どおりに薬を渡すベンダーではなく、常に患者さんの方を向き、薬学知識を価値に変える存在であるべきです。患者の病歴全体を俯瞰し、治療の文脈を分かりやすく伝えるナビゲーターになるのが望ましいというのが私の持論です」。
今後、この先進的な取り組みを他病院へ広げたいと堀口氏は熱意を見せるが、普及には“壁”があると言う。同院では調剤業務を補助員へタスクシフトし、薬剤師が情報作成に専念できる環境を整えているが、すべての病院で同様の体制がとれるわけではない。「しかし、その現実に甘んじていては、患者さんがチーム医療に積極的に参加することは難しいでしょう。業界全体での意識変革が大切だと思います」。
最後に堀口氏は、薬剤師の未来のビジョンを語る。「10年後、20年後を見据え、“これが薬剤師の新しい役割”と言われる未来の基盤をつくりたいと思います」。現状は紙をPDF化したものを提供しているが、ヘルスケアパスポート上で、傷病名を項目名として薬剤情報を記述できるよう、入力フォームを実装することが当面の目標となる。「病院薬剤師と薬局薬剤師の薬薬連携で、患者さんのペイシェントジャーニーをブラッシュアップしていくかたちが最終目標です。今後も東和薬品とTISにIT面で協力いただき、患者が真に中心となる医療の未来を築いていきたいと思います」。

お客様の声

堀口 大輔氏

千葉脳神経外科病院
薬剤科 科長
堀口 大輔氏

国は現在、医療DXの一環として、医療機関で共有すべき標準情報「3文書6情報」の整備を進めています。医療機関から患者へ提供する情報はさらに多種多様なものとなると予想されますが、患者さんやご家族に対して情報を提供する手段(ハード)として「ヘルスケアパスポート」は今後ますます重要な役割を担っていくと確信しています。
現状、「チーム医療」という言葉の中には患者さんは基本的に含まれておらず、専門的な情報共有の輪からは外されがちでした。ヘルスケアパスポートは、自分から能動的にチーム医療に参加する意識変革を促す強力なツールとして大いに期待しています。

TIS担当者から

中村 太一

TIS株式会社
デジタルイノベーション事業本部
ヘルスケアサービス事業部
ヘルスケアサービス企画室
セクションチーフ
中村 太一

堀口先生とお会いして「電子化したペイシェントジャーニーを患者さんに提供したい」という情熱に感銘を受けました。ヘルスケアパスポートがその一助となれていることを光栄に思います。
先生方の熱意あるご説明のおかげで、紹介患者の約4割がアプリを導入するという高い利用率を維持できています。システム上のモニタリングでも非常に活発に利用されていることを確認しています。
また、東和薬品様にはヘルスケアパスポートのユースケースづくりでも全面協力いただいており、全国展開が非常にスムーズになりました。これも東和薬品様が医療機関様と築かれた信頼関係があってのことと感謝いたします。
これからも、多くの薬剤師の皆様が、患者さんに対する新しい価値を創造できるよう、ヘルスケアパスポートを成長させてまいります。

※本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。

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更新日時:2025年9月16日 10時55分