大日本塗料株式会社様
ERPの15年間の“資産”を継承しつつ、クラウド移行で柔軟性を強化。
TISとの二人三脚で「SAP S/4HANA Cloud Private Edition」による攻めの経営基盤へ刷新。


背景
時代の変化にも迅速に対応できる柔軟性を持つERPへの刷新を計画
大日本塗料株式会社(以下、大日本塗料)は、1929年の創業以来、塗料やインクの製造・販売を通じて日本社会を支えてきた。特に、過酷な環境下で金属をサビ(腐食)から守る「重防食」技術を強みとし、東京ゲートブリッジや本州四国連絡橋などの建造物にも同社の重防食塗料が採用されている。
同社は、2008年に初めてSAP ERP(ECC6.0)を導入。原料の購買から生産、販売、財務会計・管理会計まで、業務全般を支える基幹システムとして利用してきた。以降、約15年にわたり、塗料業界特有の商習慣にシステムをフィットさせる機能改修を重ねてきた。「塗料は部品のように1個2個と数えられるものではなく、配合で無限の品目が生まれます。そのため商習慣が特殊であり、ERPの標準機能だけでは、取引先とのスムーズな連携もできません。15年間で開発した約100本のアドオンは当社の業務にとってかけがえのない資産となっていました」(管理本部システム部 藤井博之氏)。
しかし、多数のアドオンを加えたことで構造が複雑化し、保守性の低下という課題も顕在化していた。「機能の似通ったアドオンがあると、“片方は修正済みだが、もう片方は未修正”といった不整合が起こり得ます。保守性に課題があり、めまぐるしく変わる社会情勢にシステムが迅速に追随できないという課題を感じていました」(同部 佐々木修治氏)。
加えて、現行バージョン(ECC6.0)の標準保守サポートが終了する「2027年問題」も決断を後押しする一因となった。「時代の変化に即応できるよう、新しい基盤へと移行すべきタイミングだと判断しました」(同部 上出博靖氏)。
選択
業務を熟知した提案と信頼が決め手となり、TISをパートナーに選択
次期ERPへの刷新にあたり、同社はあえて白紙の状態から選択肢を絞り込んでいく方針とした。「もしかするとSAP製品以外に、化学系に適したERPパッケージがあるかもしれません。また、TIS以外にも良いパートナーがいる可能性もあります。いったんリセットし、幅広い選択肢の中から最善の選択をしたいと考えました」(藤井氏)。
そして、TISを含む複数のITベンダーから提案をもらい、公平な視点で比較検討を行った。その結果、大日本塗料が最終的に選択したのが、TISが提案したSAP S/4HANAへの移行だった。
「完成度が高く、使い勝手のよいアドオンの資産を有効活用しながら、発展性のあるものに切り替える提案をもらい、SAP S/4HANAを選択することとしました」(藤井氏)。
TISの提案は、大日本塗料との長年の関係が反映された“一歩踏み込んだ”内容だったと佐々木氏は振り返る。「要件定義、ユーザー教育、稼働直後の保守・サポートなど密に連携が必要なところは、TISはオンサイトでのサポートを提案するなど、当社側メンバーの負担をいかに軽減するか、といった点まで具体的に配慮されていました。最終的にTISの提案が一番と判断しました」。
こうしてTISの採用決定後、SAP S/4HANAへ移行するプラットフォームの選定に着手。オンプレミスとクラウドの両方を検討し、最終的に、インフラからSAP S/4HANAアプリケーションまでを一体で提供するSAPのクラウドサービス「SAP S/4HANA Cloud Private Edition」を利用することを決定した。「人手不足の中で、インフラ基盤をSAPが維持管理してくれる、また、バージョンアップが容易になる点が大きなメリットでした。TISはSAPとの太いパイプもあり、クラウドでも従来と同等のサービスを提案いただけました」(佐々木氏)。
導入
業務の見直しからスタートし、15年間のアドオン資産を棚卸し
プロジェクトの進め方について、上出氏はこう説明する。「単なるコンバージョンではなく、業務そのものの見直しから着手しました。販売、生産、購買、受注といった全部門がERPで実施している業務手順の見直しを、十分に時間をかけて進める大規模な計画でした」。
そしてプロジェクトの初期段階で約4カ月の準備フェーズを設け、業務部門を交えて見直し作業に着手した。各部門のメンバーに、現在の業務プロセスにおける問題点や改善点の洗い出しを依頼し、その結果を情報システム部とTISも加わって検証するというものだ。「不要な業務はそぎ落としてシンプル化する。SAP S/4HANAの機能を熟知するTISにかじ取りをしてもらいながら、TISと二人三脚で業務を作り直しました」(藤井氏)。
最終的に大まかに10%を新規開発、60%は既存アドオンを移行、残り30%は移行しないことにした。
2年3カ月に及ぶ長期プロジェクトにおいて、もうひとつの課題となったのが、ERPと連携する周辺システムとのインターフェース開発であった。「周辺システムはさまざまなベンダーが構築を手がけたもので、インターフェース開発は当社が担当する領域です。中心となるSAP S/4HANAのプロジェクトをTISが遅延なく推進してくれたことで、全体の足並みを揃えられ、我々が担当する領域も計画通りに推進できました」(佐々木氏)。
こうして、2025年1月、新システムは予定通りに本番稼働を迎えた。
効果
創業100周年に向けた「攻めの経営」の推進エンジンとなるSAP S/4HANA
本番稼働後の3カ月間は、TISがオンサイトで運用保守にあたった。「品質面での大きなトラブルもなく、業務への影響を最小限に抑えながら安定運用に入ることができました」(佐々木氏)。
プロジェクトオーナーである取締役常務執行役員の永野達彦氏は、TISの印象をこう振り返る。「大げさな表現ではなく“運命共同体”として、長期プロジェクトをゴールまで走り抜いていただきました。今回のプロジェクトは社内で高い評価を得ていますが、この成果はTISの支えがあってこそだと思います」。
プロジェクト成功の要因について、藤井氏はこう説明する。「さまざまな場面で、TISとのコミュニケーションが非常に良好だったことに尽きます。我々システム部をはじめ、現場や関係者と、トラブルが発生してもすぐに問題をリカバリーできる体制がとれ、コミュニケーションをリードしてくれたのが大きかったです」。
大日本塗料は、2029年に創業100周年という大きな節目を迎える。M&Aも視野に入れ“攻めの経営”へと大きく舵を切り、今後の成長シナリオを支えるのが、刷新したERPに他ならない。上出氏は、ERPのデータを利活用したDXの構想をこう語る。「良質なデータを取り出しやすくなったことで、経営状況の可視化などDXの加速が期待されます。過去のECC6.0の時代から、将来のデータ利活用を見据えてデータ項目を追加するといった布石を打ってきましたが、SAP S/4HANAでその成果が得られます」。
最後に上出氏はTISへの期待をこう語る。「当社にとってTISは単なるSIerではなく“戦友”のような存在で、これ以上のパートナーはなかなか見つからないでしょう。この関係を継続していただくとともに、当社がさらに成長するための提案を期待しています」。
お客様の声

大日本塗料株式会社
取締役 常務執行役員
管理本部長 兼
財務部長
永野 達彦氏

大日本塗料株式会社
管理本部 システム部
部長 理事
上出 博靖氏

大日本塗料株式会社
管理本部 システム部
次長
佐々木 修治氏

大日本塗料株式会社
管理本部 システム部
専任部長
藤井 博之氏
よく言われる「伴走」を超え、我々の一員としてやっていただけました。15年の知識があるので安心感もあります。システムづくりは、テストの点数で言うと「0点」か「100点」しかなく、80点でOKを出すことはできません。我々はSAP S/4HANAのすべてを知っているわけではないので、足りない部分をTISの知見で補完していただくことで、満点のシステムにできたと思います。パートナーとして最適でした。
今後もTISには、当社に何が足りていないのか、改善が必要なのか、業界を知っている広い視点で提案していただきたいです。
TIS担当者から

TIS株式会社
エンタープライズコンサルティング事業本部
ERPコンサルティング第1事業部
エンタープライズコンサルティング第3部
セクションチーフ
田代 雄揮
2年半弱の長期プロジェクトでしたが、予定どおりに本番稼働を迎えることができました。稼働直後に見られた課題も速やかに解消し、早期の安定稼働を実現でき、お客さまからも感謝のお言葉をいただくことができました。大日本塗料様のPJメンバーの皆さんには、各業務部門の現場で安定化に向けご尽力いただき、心より感謝申し上げます。
TISは本PJと並行して、大日本塗料様のグループ会社でのSAP S/4HANA導入も支援させていただきました。両チームがしっかりとした体制を構築したうえで、ナレッジを共有しながらのPJ推進により、無事に2つの大型PJを完遂させることができました。
今後も、TISのSAP S/4HANAに関する豊富な経験を生かし、データ利活用などDXの提案も積極的に実施していきたいと思います。
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