株式会社極楽湯様
スーパー銭湯「極楽湯」海外進出をグローバルパートナーとして全面支援
業界最多のスーパー銭湯を全国展開する株式会社極楽湯(以下、極楽湯)は、さらなる事業拡大を目指し海外進出を決断。海外1号店となる上海店の設営に先立ち、ITシステム全般を構築するパートナーとして選ばれたのが、TISグループの上海現地法人TISI上海であった。
社名 | 株式会社極楽湯 |
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設立 | 1980年 |
事業内容 | スーパー銭湯「極楽湯」 の直営事業・フランチャイズビジネス |
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課題
日本式スーパー銭湯を海外へ
さまざまな種類の風呂を手頃な料金で楽しめる"スーパー銭湯"が、全国で人気を集めている。入浴だけでなく、飲食やマッサージ等のリラクゼーション設備も準備されている点が大きな特色。極楽湯は、直営店・フランチャイズ店を合わせて全国37店舗*のスーパー銭湯を運営する、温浴業界の最大手であり、温浴専業企業としては唯一の上場企業でもある。 *2013年5月現在
「温浴業界の競争は年々激しくなっており、当社の売上もここ数年横ばい状態でした。そこで着目したのが、大きな可能性を持つ海外市場への挑戦です」と語るのは、現在、現地法人である極楽湯(上海)沐浴有限公司〈以下、極楽湯(上海)〉で副総経理を務める山本真司氏だ。
海外プロジェクトチームの中心メンバーでもあった山本氏は、日本で直営店管理の業務を行いつつ、候補地選定のための情報収集に奔走。海外1号店の場所として白羽の矢を立てたのが、中国でも最もマーケットが成熟している上海であった。「現地調査を行ったところ、中国の一般家庭の多くはシャワーのみで浴槽がありません。街の銭湯も、決して衛生的とは言えないものでした。そんな土地柄だからこそ "きれいなお風呂につかる"日本式のスーパー銭湯にビジネスチャンスがある、と感じました」(山本氏)。
温浴施設の要となる精算システム
こうした中国事情を考慮し、上海店は、岩盤浴、和食メインのレストラン、VIPルームなど、風呂以外の施設に十分なスペースを割り当てる計画が立てられた。建物の広さは、日本の平均的な店舗の約6倍の12,000㎡という巨大なもので、2012年末の開業が目標として定められた。
この施設で、来場者のサービス利用・購買の精算を一手に担うのが、ICチップを組み込んだリストバンドによるキャッシュレス精算システムだ(以下、温浴施設向けシステム)。飲食や有料サービスを利用する都度、リストバンドをICチップリーダーにあてることで、料金が加算されていく仕組みで、退館時にカウンターで精算を行う。スーパー銭湯にとって、ライフラインともいえる。
「国内で利用している温浴施設向けシステムは、提供ベンダーが海外保守に対応できないとのことでした。もしシステムがトラブルで長期間停止すると、精算が一切行えなくなってしまうため、現地で保守が受けられる新たなシステムを構築する必要に迫られました」と山本氏は語る。
さらに、もう一つ必要なITシステムが、現地法人の極楽湯(上海)で財務・人事業務を行うためのERP。「店舗工事にかかる費用も財務報告する義務があり、上海店開業の1年前にはERP導入を終わらせておく必要がありました」。この2つのITシステム構築のため、山本氏をはじめとする海外プロジェクトチームは、ベンダーの選定に着手した。
選択
上海現地での活動実績を重視
こうして、2009年末から国内のシステムインテグレーター十数社へ打診を開始する。「まだ極楽湯の上海現地法人も設立前のことで、中国のビジネス事情は右も左も分からない状況でした。初の海外進出だけに、不安とプレッシャーも大きく、パートナー探しは慎重にならざるを得ませんでした」。
そのうちの一社として声がかかったのが、TISグループのTISI上海だった。同社はTISが2003年に全額出資で上海に設立した現地法人であり、以来、日本企業の中国進出の支援を中心に数多くの案件を手がけている。「TISI上海は、以前から取引があったTISから紹介を受けたのですが、このとき初めてTISグループの拠点が中国にあることを知りました」(山本氏)。
山本氏がベンダー選びで最も重視した点が、上海現地での保守体制だ。「あるベンダーは、海外でも保守ができるという話でしたが、詳しく聞くと、トラブルが起きた場合は日本から技術者を派遣するということ。これでは温浴施設のライフラインとしては信頼性に欠けます。上海現地で保守が可能であり、かつ温浴施設向けシステム構築の経験に長けた3社が最終候補となりました」。
中国事情を知り尽くした提案内容
山本氏は最終候補となった、TISI上海を含む3社の提案内容を精査。「各社の温浴施設向けシステムは仕様が異なるため、それぞれの会社で、実際にデモを触らせてもらいました。TISI上海へも出向き、リストバンドとロッカーの鍵の連動はどうなるのか、各エリアの精算はどういう手順で行うのかなど、丸1日かけてヒアリングを行いました。その結果、我々の要求に最も対応できるのはTISI上海と判断しました」。
特にTISI上海を高く評価したのが、中国を知り尽くしたベンダーならではの、スピード感を重視した提案内容だったという。
「温浴施設の精算システムは、スクラッチ開発ではなく、中国の大手温浴施設で採用実績がある、現地ベンダーの『宝和店舗システム』をカスタマイズして導入するという提案でした。実際に使うのは中国人スタッフであり、現地パッケージ製品の採用は理にかなっていると感じました」。
またTISI上海は、現地法人の極楽湯(上海)で使用するERPについて、中国で最大シェアを持つパッケージ製品『用友』を提案した。「最初から中国独自の法・税制に対応したパッケージなので、カスタマイズ不要で即業務に利用できるということでした。現地法人の財務・人事業務は建屋建設に先行してスタートするので、短期間で導入できる点が何よりの安心材料でした」。こうして、2010年末、上海店のシステム構築がTISI上海に任された。
導入
実際のハードウェアで機能を事前検証
温浴施設向けシステムの開発は、上海店「極楽湯 碧雲温泉館」開設の約1年前となる2012年2月からスタートした。同時期に山本氏は極楽湯(上海)の副総経理として現地に赴任し、建屋建設と並行してシステム開発の陣頭指揮を努めた。
TISI上海は、要件定義に従って温浴施設向けシステムのカスタマイズを進め、同年6月頃には基本部分についての開発が完了。TISI上海内の会議室にはリストバンドやICチップリーダー、レジなどの端末が用意され、動作検証の環境が設けられた。
「実際に触ってみないと、細かい問題点を洗い出せないため、このデモ環境は非常に助かりましたね。早速フロントや飲食、物販などの各エリア担当者を集め、社員がお客さま役となり対応のシミュレーションを行いました」(山本氏)。
なお、上海店で必要となる温浴施設向けシステムの機材一式の調達についても、TISI上海に一任された。「システム構築からハードウェア調達まで、TISI上海にトータルで支援してもらえたことで、余力を開店準備に注ぐことができました」と山本氏は振り返る。
不足機能はカスタマイズで補充
こうして山本氏とスタッフが、デモ環境で気付いた課題点・問題点をTISI上海へ伝え、その都度プログラムの調整を行うことで、段階を踏んで理想的なシステムへと機能を磨いていった。
「たとえば、標準機能では、売店で商品を販売した際、店員がリストバンドの番号を見てレジに手入力する方式でした。これでは番号を打ち間違う恐れがあるため、国内の既存システム同様に、ICチップリーダーで読み取る方式に変更を依頼しました」(山本氏)。
TISI上海では、こうしたカスタマイズの要望を精査し、現地のパッケージベンダーと協業で修正を実施。「中国の業者は総じて、こちらからの要求に対しすぐ "わかった"と言ってくれるのですが、実際に上がってみると要望と違うことがよくあります。こうした神経を使うコミュニケーション部分は、すべてTISI上海の担当者が行ってくれて助かりました。最終的には、課題はすべて解決でき、満足のいく機能を実装できました」(山本氏)。
稼働
開業までの2週間でスタッフをトレーニング
温浴施設用システムの開発は2012年中に無事に完了し、上海店「極楽湯 碧雲温泉館」開業を待つばかりとなった。しかしこの頃、山本氏は店舗オープンに向け、ぎりぎりのスケジュール調整に追われていた。「建物工事の遅れもあり、オープン日は2013年2月頭にずれこんでいました。ちょうど大型連休の春節(旧正月)に重なったことで、接客に必要なスタッフ数がなかなか集まらずに苦労しました」と振り返る山本氏。
オープン日を迎えるためのスタッフ約140名が揃ったのは、開業の2週間前。限られた時間の中で、システム操作方法をマスターしてもらうため、TISI上海の技術者が付きっきりでスタッフのトレーニングに取り組んだ。「売場でリストバンドを使って精算する手順をはじめ、食事のメニューの登録方法、業務後のお金合わせのやり方まで、スタッフが覚えなければいけないことが山積みでした。しかし、毎日夜遅くまでTISI上海の担当者が現場に詰めてくれたおかげで、無事に開店の日を迎えることができました」と感謝を口にする。
「日本品質」のITベンダーの安心感
多い日は2,000人近くの来館者があるほどの盛況となった「極楽湯 碧雲温泉館」だが、現地では珍しい、日本らしい心からのおもてなしが評判になっているという。「清潔感のある空間、きれいな水質はもちろん、快適な接客サービスは欠かせません。今回導入した温浴施設向けシステムは、機能面でも安定性にも優れており、日本の極楽湯店舗と同様『お待たせしない』『手間をかけない』サービスが実現しています」。
山本氏が、TISI上海とプロジェクトを進める中で実感したのも同様に、日系ベンダーならではのサービスのきめ細やかさ、安心感だという。「中国のローカルパッケージを中心とした提案でありながら、プロジェクトを進める際に言葉の壁、意思疎通の壁を感じることはありませんでした。おかげで、初の海外出店にも関わらず、日本にいるような感覚でプロジェクトが進められました」。
この1号店の成功を足がかりに、上海近郊に2号店、3号店と拡大していきたいと語る山本氏。「そのときはもちろん、TISI上海にシステム構築をお願いしたいと考えています。また、中国以外のグローバル展開でも、TISグループの対応力に大いに期待しています」。
お客さまの声
極楽湯(上海)沐浴有限公司
副総経理
山本 真司 氏
初めての中国店開設ということもあり、建屋工事や認可取得の遅れなど、予期しないことの連続でした。正式なオープン日がなかなか決まらない中、TISI上海には最後までお付き合いいただき感謝しています。 今後の目標としては、温浴施設向けシステムで集計した売上情報と、ERPの連携を図り、日本への実績報告の即時性を強化できればと考えています。今後もTISI上海には、現地のパートナーとして、システム強化の面でもお手伝いいただければと思います。
TIS担当者から
TISI上海
営業副部長
金書伶
今回の極楽湯様のシステムでは、納期短縮と開発の効率性を重視し、既存システムのロールアウトではなく、現地のパッケージ製品を中心とした提案をさせていただきました。提案に先立ち、現地で実績のあるパッケージを一つずつ検証し、最も極楽湯様の希望に沿うカスタマイズが可能な製品を選択しました。最終的に、極楽湯様に喜んでいただけるシステムが完成し、満足しています。今後も、温浴施設向けシステムおよびERPの保守を通じて、極楽湯様の海外ビジネスに貢献できればと思います。
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