IBJL東芝リース株式会社様
「Oracle GoldenGate」で顧客向け決済サーバ移設のダウンタイム“ほぼゼロ”を実現
IBJL東芝リース株式会社(以下IBJL東芝リース)は、小売事業者の決済を代行するASPサーバを新たなデータセンターへ移設する計画に着手した。TISはオラクルのリアルタイムデータ統合製品「Oracle GoldenGate」を利用し、最小のダウンタイムでサーバ移設を実現した。
本社 | 東京都港区虎ノ門1-2-6 |
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設立 | 1998年 |
資本金 | 15億2千万円(2014年5月現在) |
事業内容 | 総合リース・賃貸借・割賦などファイナンス |
URL |
背景
都市型データセンターへのサーバ移設を計画
IBJL東芝リースは、独自開発のASP・SaaSを組み合わせて提供可能な“付加価値の高いリース”を特色とする業界大手だ。「たとえば、電子マネーやクレジット決済を導入されたいお客様には、東芝グループ企業である東芝テックのPOSレジシステムのリースと、当社の決済サービスを組み合わせたワンストップ契約が利用いただけます」(情報システム部 小林信幸氏)。同社のASPサービスの代表格「T-CON PAYMENT」は、一契約でクレジット・コンビニ払い等の複数の決済手段に対応可能で、主に東芝グループのECサイトなどで利用されている。
同社のASPサービス、業務システムのサーバ群は、TISの横浜データセンターに置かれていたが、TISは2013年末までに、これを品川区の都市型データセンター(GDC御殿山)へ統合することを決定した。「データセンター移行について、2011年7月にTISから相談がありました。準備期間が十分あることに加え、新たなデータセンターは山手線内というロケーションの優位性、災害対策・セキュリティ面で設備が整っており、翌年初頭に移設を正式決定しました」(小林氏)。
しかし、移設するサーバ群のうち、決済を代行するT-CON PAYMENTのサーバについては、大きな課題があった。「通常、サーバの移設には約3日かかりますが、その間はお客様の店舗やECサイトでの決済、すなわち商品販売がストップしてしまいます」(情報システム部 福山巨氏)。そこで両社は、2012年6月より、T-CON PAYMENTのサーバを “ほぼ無停止”で移設する手段の協議を開始した。
選択
リアルタイム同期が可能な「Oracle GoldenGate」
IBJL東芝リースとTISは、サーバのダウンタイムを最小化すべく、次のような基本計画を立てた。本サーバを横浜から御殿山へ物理的に移す3日間の空白期間は “つなぎ”となるブリッジ環境サーバで決済処理を行う。そして本サーバが準備でき次第、ブリッジ環境サーバの最新データを逆同期させた後、本サーバへ切り替えるというものだ。
「この手順を成功させるには、サーバ間の同期を迅速かつ正確に行う必要があります。以前、手作業によりサーバ間でデータをマージした経験がありますが、情報の不整合などトラブルが起きたため、同期の自動化は必須でした」(福山氏)。
2012年の半ば、定例ミーティングにおいてサーバ同期の手段として話題に上ったのが、オラクルのリアルタイムデータ統合製品「Oracle GoldenGate」であった。「付き合いのあるオラクルの営業担当者から紹介を受けたもので、今回のサーバ移設に使えるかも知れないと思いました。一方TISは、既に同製品の導入経験があり、有力候補のひとつとして検討していたとのことでした」(福山氏)。
TISは同製品を含め複数候補の検証を行い、最終的な候補を「Oracle GoldenGate」に絞り込む。「最も評価したのは、稼働中のサーバと同期を行っても、ほとんどCPU負荷が発生しない点でした」(福山氏)。また、導入を決めた背景には、TISへの信頼感もあったという。「TIS社内にはオラクル製品の専門チームがあり実績も十分で、オラクルとの密な連携にも期待しました」(小林氏)。
準備
検証環境によるシミュレーションで万全を期す
2013年5月、TISは横浜データセンターに本番と同等の検証環境を構築し、「Oracle GoldenGate」によるサーバ間の同期テスト、切り替えテスト等を実施し、今回のプロジェクトにおいて同製品の機能・品質が要件を満たしていることを確認した。テストを経て試算されたダウンタイムは、現行の本サーバからブリッジ環境サーバへ切り替える30分間と、最終的に本サーバへ切り戻す30分間。「切り替え自体は数分でも可能ですが、ユーザーの注文のセッションが残ったままサーバを変更してロストが発生するのを避けるため、状況を確認する時間を考慮しました」(福山氏)。
本番の移行スケジュール策定にはオラクルのコンサルタントも参加。基盤ベンダー、アプリベンダーなど関連部門との調整はTISが一括して担当した。こうして、現行の本サーバを御殿山へ搬送する日は2013年12月31日と決定し、その約1週間前から、御殿山に置かれたブリッジ環境サーバと、横浜で稼働中の本サーバの同期および確認作業がスタートした。「初期のレプリケーションでは数十GBのデータのやり取りが発生しますが、以降、本サーバで情報が更新されると差分データのみが送られるため、ほぼリアルタイムの同期が可能です」(福山氏)。
12月31日の早朝、横浜の本サーバへの通信経路を停止、その瞬間から顧客のアクセスは御殿山のブリッジ環境サーバへと切り替えられた。「一時的に使用するサーバとは言え、年末年始の購買の決済を一手に担うため、トラブルに備えてTISが保守要員を確保し、御殿山データセンターに待機させていました」(小林氏)。そして同日の午前中、横浜データセンターから運び出された本サーバは、保守ベンダーが手配した運搬車で御殿山へと搬送された。
成果
ダウンタイム最小化で顧客の信頼に応える
明けて2014年の1月2日までは、ブリッジ環境サーバで決済を行いつつ、TISは御殿山に搬入された本サーバのラック設置や、アプリケーション設定などの作業を行う。そして、最終段階としてブリッジ環境サーバから本サーバへの逆同期を実行して最新の情報を反映した後、1月4日早朝に本サーバへの切り替えが行われた。当初の予定どおり、サーバ切り替えに伴うダウンタイムは30分以内で作業が完了した。
顧客企業に出向いて事前説明を行ってきたネットビジネス営業部の三輪祥司氏も、移行成功に安堵したという。「決済サーバの移設や一時停止は、お客様にとって望ましくありませんが、“30分以内のダウンタイムが2回”と、ぎりぎり許容いただけるであろう条件に収めたことで、納得いただけました。お客様の信頼に応えることができ、満足しています」。
福山氏は、TISの都市型データセンター「GDC御殿山」に移行したメリットについても言及する。「現地を見学して、地震に強い堅牢な構造、煙感知器の装備などの最新設備に感心しました。こうしたファシリティの優位性は、お客様に対してASPサービスを案内する際のアピールポイントにもなります」。
小林氏は今回のプロジェクトをこう振り返る。「『Oracle GoldenGate』という実績のある製品と、オラクル製品に長けたTISの協力で、計画どおりにサーバ移設を行うことができました。今回、最新設備を持つデータセンターに移行したことを契機に、より多くのお客様に『T-CON PAYMENT』を導入いただけるよう働きかけていきたいと思います」。
お客さまの声
IBJL東芝リース株式会社
情報システム部 システム管理グループ グループ長 小林 信幸氏
情報システム部 システム管理グループ 主任 福山 巨氏
ネットビジネス営業部 営業グループ 三輪 祥司氏
TISには、さまざまなリスクを考慮し、安全・確実にプロジェクトを進めていただき、信頼感がさらに深まりました。当社が強みとするASP・SaaSの安定稼働の継続についても、ぜひご協力いただければと思います。
今回の「Oracle GoldenGate」は、サーバ間を双方向同期することで、DR対策やビッグデータ集積にも有用とうかがっています。当社扱いのサーバ製品と「Oracle GoldenGate」、そしてTISのネットワークを組み合わせたDRソリューションをリース・レンタルで提供するといった、新たな協業スタイルの可能性も考えていきたいですね。(小林氏)
TIS担当者から
TIS株式会社
IT基盤サービス本部
IT基盤サービス第1事業部
IT基盤サービス第1部 主任
徳嵩 賢
サーバ移設の計画立案にあたっては、お客様の業務に影響を与えないことを最重要テーマとしました。リスクを回避するため、お客様の協力のもと、稼働中サーバへの影響調査や、移行リハーサルの実施など、事前準備を念入りに実施。その結果、データ同期で問題が発生することなく、予定どおり本番移行を完了することができました。
今後「Oracle GoldenGate」は、サーバ移設をお考えのお客様だけでなく、ビッグデータ解析プラットフォームやDRシステムの構築など、リアルタイムデータ連携の経営課題を持つお客さまへ積極的に提案していきたいと考えています。
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