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Fit to Standardの意味とは?メリット・デメリット、進め方を解説

公開日:2025年12月

Fit to Standardとは、システムに搭載された標準機能を最大限に活用し、自社の業務を柔軟に変更していくアプローチのことです。従来のように業務に合わせて大規模なカスタマイズを行うのではなく、標準機能を前提に業務を設計することで、短期間・低コストでの導入が可能になります。

本記事では、Fit to Standardの意味や従来のアプローチとの違い、求められる背景、メリット・デメリット、進め方やポイントなどについてわかりやすく解説します。

1. Fit to Standardとは

「Fit to Standard」は、システム導入におけるアプローチの一つで、自社の業務を、システムが提供する標準機能に合わせていくという考え方です。主に、後述するERP(統合基幹業務システム)のようなシステムの導入時に検討されます。

これまでのシステム導入では、自社の業務内容に合わせて、機能を個別にカスタマイズするアドオン開発が一般的でした。

しかし、Fit to Standardでは、この逆のアプローチを取り、システムの標準機能を最大限に活用し、カスタマイズを可能な限り行わないことを基本とします。これにより、開発コストの削減や導入期間の短縮、さらに導入後の保守・管理の負担軽減が期待できます。

1-1. ERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning)は、「企業資源計画」と訳されます。ICT領域においては、企業の経営資源を一元的に管理し、最適なリソース配分を実現するための統合基幹業務システムを指すことが一般的です。

近年、クラウドサービスの普及とデジタル技術の進化に伴い、多くの企業が従来のオンプレミス型からクラウド型のERPへとシステム環境を移行する動きがみられます。このような流れの中で、クラウドERPに備わった標準的な機能に合わせて業務プロセスを柔軟に変える「Fit to Standard」というアプローチが注目されるようになりました。

オンプレミス型とクラウド型の違いや、クラウドERPのメリット・デメリットなどについては、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:クラウドERPとは?メリット・デメリット、おすすめのシステムを紹介

2. Fit to Standardが求められる背景

次に、Fit to Standardが求められる背景について解説していきます。

2-1.「Fit & Gap」の限界

ERPのシステム導入においてFit to Standardが求められるようになった理由として、従来のアプローチであるFit & Gapには限界がある点が挙げられます。Fit & Gapとは、新しいシステムが自社の既存業務にどれだけ適合し(Fit)、どれだけ適合しないか(Gap)を分析する手法です。

Fit & Gapは、既存業務に適合していない機能(Gap)を、必要に応じてアドオン開発するという前提に基づいています。しかしながら、このアプローチには下記のような課題があります。

<Fit & Gapの課題>

  • 独自機能が多く複雑化しやすく、DXの推進が困難
  • 難解な構成で、データを利活用しにくい
  • 法改正により業務フローの変更が必要だが、新機能の追加にコストと時間がかかる
  • 製品アップデートが受けにくく、メンテナンスの負荷が大きい
  • 導入には数年かかる場合もあり、長期化しやすい

業務に合わせて細かくカスタマイズされたシステムは「レガシーシステム」と呼ばれます。こうしたシステムは、現場の意見を反映して作られるため、その構造が複雑になりがちで、技術面の老朽化などが起こりやすい傾向があります。

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、このレガシーシステムが企業のDX推進の足枷になっていると指摘されました。こうした背景から、より効率的なシステムの導入や運用を可能にするFit to Standardというアプローチが注目されるようになったのです。

参考:経済産業省|DXレポート

2-2. クラウドERPの普及

Fit to Standardという考え方が注目されるようになったもう一つの背景として、クラウドERPの普及があります。

近年の技術進化により、多くのERPには、特定の業界や業務におけるベストプラクティスが標準機能として組み込まれています。これらの汎用性の高い機能を最大限に活用することで、幅広い業務をカバーできるようになりました。

もちろん、クラウドERPが企業固有の特殊な業務をすべてカバーできるわけではありません。しかし、従来のように多くの独自機能を開発する手間が省けるため、システムの導入や運用をスムーズに進められます。

また、クラウド型では自動で製品のアップデートが適用されるため、運用にかかる負担軽減にも期待できます。

ビジネス環境が目まぐるしく変わるVUCA時代において、Fit to Standardの考え方を取り入れ、クラウドERPの標準機能を活用することで、企業は変化に柔軟かつ迅速に対応できるようになるでしょう。

3. Fit to Standardのメリット

Fit to Standardはこれからの時代に必要なアプローチというだけでなく、多くのメリットを享受できます。ここでは、Fit to Standardのメリットについて解説します。

3-1. 短期間・低コストで導入できる

Fit to Standardのメリットの一つは、他の方法と比べてシステムを迅速かつ低コストで導入できることです。

ゼロからシステムを開発するスクラッチ方式や、多くの独自機能を開発するFit & Gap方式と比べ、Fit to Standardはシステムの標準機能をそのまま使うため、要件定義や設計のプロセスを大幅に短縮できます。その結果、業務の効率化やコストの削減が期待できます。

3-2. 標準機能を最大限に使用できる

Fit to Standardとは、企業がシステムを導入する際に、自社の既存業務をシステムの標準機能に合わせるという考え方です。このアプローチでは、業務に合わせて特別な機能を追加で開発するのではなく、システムが本来持っている機能を最大限に活用します。

Fit to Standardの大きなメリットは、システムが本来持つ機能を十分に使いこなせることです。多くのシステムは、さまざまな業種や業務に対応できるよう設計されているため、業務フローをシステムに合わせて見直すことで、より高いパフォーマンスを発揮できます。

さらに、システムが定める機能に沿って業務を進めることで、業務プロセスが統一され、標準化が進みます。これにより、特定の担当者しかできないといった属人化を防ぎ、組織全体の生産性向上にもつながります。

3-3. グローバル展開が行いやすい

Fit to Standardという考え方は、企業がグローバルに事業を展開する際にも有効です。

世界的に普及しているクラウドERPの中には、各国の法律や商習慣に対応しているものも多くあります。そのため、国内外の拠点すべてに同じシステム環境を導入しやすくなり、業務プロセスを統一することができます。

これにより、本社がグローバル全体で状況を把握しやすくなり、迅速な経営判断を下せるようになるでしょう。

3-4. 製品アップデートが自動化

Fit to Standardの考え方に基づいて導入されたクラウドERPでは、製品のアップデートやセキュリティの更新は、基本的にベンダーによって自動的に行われます。これにより、ユーザーは常に最新の機能を利用でき、セキュリティも強化された状態を保つことが可能です。

また、数年に一度の頻度で行われるような大規模なアップデート作業が不要になるため、システムの運用にかかる手間が大幅に軽減されるというメリットもあります。

3-5. ガバナンスを強化できる

Fit to Standardには、ガバナンスの観点でもメリットがあります。ガバナンスとは、企業が健全な組織運営を行うための管理体制や仕組みのことです。

システムの標準機能に合わせて業務を行うことで、特定の担当者しかできないといった業務の属人化を防ぎ、透明性と公平性の高い組織運営が実現します。

さらに、独自に機能を追加開発するアドオン開発に頼らないシンプルなシステム構成は、内部統制の仕組みを整えやすくし、結果として企業のコンプライアンス強化にもつながります。

ガバナンスについては、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてチェックしてみてください。

関連記事:05_ガバナンスとは?意味や背景、強化のためのアプローチを解説

4. Fit to Standardの基本的な進め方

Fit to Standardに基づくクラウドERP導入の基本的な進め方は、以下のとおりです。

  1. 対象領域と既存業務を洗い出す
  2. 新機能を把握する
  3. 標準機能に業務を合わせる

クラウドERPを導入する際、まずは対象となる業務領域と既存のプロセスを整理することから始めます。現在の業務内容や課題を明確にすることで、どの部分をシステムの標準機能に合わせられるかを判断できるようになります。

次に、導入を検討しているクラウドERPが持つ新しい標準機能を確認します。これを理解することで、自社の業務フローをどのように変更すべきかが見えてきます。

最後に、既存の業務を可能な限りシステムの標準機能に適合させます。このとき、特定の部門や業務など、限定された範囲から段階的に導入していくことで、現場の混乱を最小限に抑えながらスムーズな移行を進められます。

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5. Fit to Standardを進める上での課題・デメリット

ここでは、Fit to Standardを採用したクラウドERPの導入を進める上での課題・デメリットについて解説していきます。事前に課題やデメリットを押さえておくことで、これらに対処しながらスムーズに進められるようになるでしょう。

5-1. 業務プロセスを見直す必要がある

Fit to Standardというアプローチでは、システムの標準機能に業務を合わせるため、既存の業務プロセスを根本から見直さなければならないケースも少なくありません。

これにより、従業員が慣れ親しんだ仕事のやり方を変えなければならず、反発が起きる可能性も考えられます。そのため、新しいやり方を従業員に理解し、納得してもらうまでに時間と労力がかかることもあるでしょう。

この点については、なぜこのアプローチが必要なのか、導入によってどのような未来を目指すのかといった目的を、経営層が従業員に明確に伝え続けることが重要です。これにより、「やらされ感」ではなく、全社的なプロジェクトとしての認識が醸成され、スムーズな導入と定着化を図れるでしょう。

5-2. 従業員が慣れるまで時間がかかる可能性もある

Fit to Standardの導入では、業務プロセスが大きく変わるため、従業員が新しいやり方に慣れるまでに時間がかかることがあります。新しい業務手順に慣れていない間は、操作ミスが発生するリスクも考えられるでしょう。

導入初期は、一時的な生産性低下は避けられないことを理解する必要があります。また、現場を対象に説明会や勉強会を実施することもポイントです。

また、システムに関する問い合わせ窓口を設置するなど、導入後のサポート体制をしっかり構築しておくことも重要です。

5-3. 標準機能で対応できないワークフローもある

Fit to Standardは基本的にシステムの標準機能を活用するという考え方ですが、すべての業務が標準機能でカバーできるとは限りません。

業界特有の複雑なプロセスや独自の業務フローがある場合は、標準機能だけでは対応しきれないケースがあるでしょう。その際は、不足する部分を補うための別のツールやシステムを連携させるといった対応を検討する必要があります。

導入段階で対象領域と既存業務を洗い出し、事前に標準機能で対応できないワークフローを明確にしておくことがポイントです。

6. Fit to Standardのアプローチで失敗を防ぐポイント

ここでは、Fit to Standardのアプローチを採用してクラウドERP導入のプロジェクトを進める際に、失敗を防ぐためのポイントを解説します。

6-1. チェンジマネジメントによる企業変革に取り組む

Fit to Standardというアプローチを成功させるためには、チェンジマネジメントによる企業変革に取り組むことが重要です。

チェンジマネジメントとは、変革を適切に管理して、全体の成功に導くためのマネジメント手法です。

この変革を推進するためには、「Fit to Standard」という言葉を合言葉に、関係者全員が意識を共有し、主体的にプロジェクトを進めていく必要があります。具体的には、導入する製品の検討や機能の把握、そして社内ユーザーへの丁寧な説明などを、積極的に行っていくことが求められます。

また、こうした企業変革を円滑に進めるために、信頼できる外部パートナーにサポートしてもらうことも有効な手段の一つです。

6-2. ノーコード・ローコードツールを活用する

導入を予定しているクラウドERPの標準機能だけでは対応できない業務がある場合、ノーコード・ローコードツールの活用を検討することもポイントです。

これらのツールは、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作や簡単な設定で、アプリケーションやシステムを構築できます。従業員にプログラミングの専門知識がなくても、現場の課題に合わせて必要な機能を内製で開発することが可能です。

これにより、導入・運用時の業務効率化が期待できます。

6-3. スモールスタートで取り組む

Fit to Standardの考え方に基づいてクラウドERPを導入する際は、スモールスタートで始めることがポイントです。

最初から全社一斉に進めるのではなく、業務範囲が明確な小規模なプロジェクトや、企業の競争力に直結する重要な領域から着手する方法を検討します。これにより、小さな成功体験を積み重ねながら、徐々に全社へと展開していくことができます。

6-4. トライアル・無償体験サービスを利用する

クラウドERP製品を扱うベンダーによっては、トライアルや無償体験サービスを提供しています。このサービスを利用すると、Fit to Standardの進め方についても事前に相談できます。

Fit to Standardを導入すると、既存の業務プロセスが大きく変わる可能性があるため、自社の業務と照らし合わせて十分に検討したい場合は、トライアル・無償体験サービスを活用してみましょう。

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7. クラウド型ERPの導入支援サービス

TIS株式会社は、企業の財務会計や調達管理、リスク管理、製造・物流など、企業活動に関わるあらゆる情報を一元管理できるクラウドERPシステムの導入支援サービスを提供しています。

企業のフロントオフィスからバックオフィスまで幅広い業務領域をカバーしており、スモールスタートでの導入から将来的なグローバル展開まで段階的な拡張が可能です。

さらに、導入されたシステムは定期的に最新の機能へアップデートされ、生成AIを含む最先端のテクノロジーを利用できるほか、常に高いセキュリティ環境が維持されます。

TIS株式会社は、30年にわたる豊富な導入実績から、Fit to Standardを推進するためのノウハウや知見を豊富に蓄積しています。TISの独自の導入方法論と「Fit to Standard」を合言葉にしたプロジェクトマネジメントの支援を通じて、企業のシステム導入をサポートしています。

Fit to Standardを実現する導入手法とアセットについて説明している。従来主流であった開発手法の「Fit&Gap」と、TIS導入方法論に基づくFit to Standard導入手法を比較している図。

Fit to Standardを前提にクラウド型ERPを導入し、標準化すべき業務とそれが難しい業務を見極め、標準化できない業務に関しては、最適なサービスを柔軟に組み合わせることで対応が可能です。

Fit to Standardの実施にあたり、標準化可能な業務とERP標準が適応できないコア業務の関係を示し、TISのFit to Standard手法と一般的なFit to Standard手法の内容を説明した図。

たとえば会計業務においては、クラウドERPと既存の業務システムをノーコードで連携させることで、会計データハブを構築できます。これにより、各システムから会計明細データを自動で集めて蓄積する仕組みが実現します。

この仕組みを構築する際には、「ERPの会計フロント」として「Spendia」、「データ連携基盤」として「会計処理エンジン」といったツールを必要に応じて活用することで、導入負担の大きいカスタマイズを減らすことができます。

Fit to Standardの進め方やクラウドERP製品について不安がある場合は、まずは以下のリンクから無償体験にお越しください。

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7-1. 【導入事例】グループ統合会計基盤の構築

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※導入事例に記載されている情報は、取材当時のものです。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。

8. まとめ

Fit to Standardは、ERPのようなシステム導入時に検討される考え方で、システムの標準機能に業務を合わせていくというアプローチです。従来の業務にシステムを合わせるFit & Gapと異なり、カスタマイズを最小限に抑えられるのが特徴です。

これにより、短期間・低コストでの導入が可能となり、業務の標準化やグローバル展開がしやすくなります。導入には業務の見直しや従業員の抵抗といった課題もありますが、チェンジマネジメントやスモールスタートで乗り越えることが可能です。

チェンジマネジメントによる企業変革や、Fit to Standardのスムーズな推進には、外部パートナーのサポートを受けることも有効です。

TIS株式会社は、クラウド型ERPの導入支援サービスや、Fit to Standardの進め方がわかるクラウド型ERPの無償体験を提供しています。30年にわたる豊富な導入実績により蓄積した知見やノウハウを活かし、Fit to Standard導入を実現するプロジェクト推進をサポートいたします。

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更新日時:2025年12月23日 14時9分