システムのクラウド移行とは?メリットやリスク、失敗しないポイントを解説
更新日:2025年6月13日

近年、多くの企業が業務効率化やコスト削減を目的にクラウド移行を進めています。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められる中で、クラウドの活用は重要な取り組みの1つです。
しかし、「システムをクラウド移行するとどのようなメリットが得られるのか」「リスクはないのか」「どのように進めれば失敗を避けられるのか」といった疑問を持つ企業も少なくありません。
本記事では、システムをクラウド移行するための基本的な知識から、メリットやリスク、成功のためのポイントまでを詳しく解説します。
■目次
1. クラウド移行はDX推進の第一歩
デジタル技術の進化により、企業の競争環境が大きく変化しています。顧客のニーズはますます高度化・多様化しており、業務プロセスの効率化や新たな価値の創出が、企業にとって重要な課題となっています。こうした状況の中で、企業がデジタル技術を活用してビジネスを変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の重要性が一層高まっています。
DXの推進は、単なる業務効率化にとどまらず、企業の成長戦略にも直結します。例えば、データを活用した迅速な意思決定、新たなサービスの創出、リモートワーク環境の整備など、DXがもたらす効果は多岐にわたります。DXを進めない企業は競争力を失い、将来的に事業継続が困難になる可能性も否定できません。
中でも、システムのクラウド移行は、DX実現に向けた重要なステップです。移行する範囲は企業や業務内容によって異なりますが、クラウドを活用することで、最新技術の柔軟な導入、システムのスケーラビリティ向上、コスト削減、業務の自動化など、多くのメリットが得られます。クラウドとDXは非常に親和性が高く、クラウド移行なくしては、DXの推進は困難であるといえるでしょう。
1-1. 日本では約7割の企業がクラウド化
クラウドサービスの普及が進み、日本企業の約7割がクラウドを導入しています。総務省が発表した「情報通信白書令和3年版」(※)によると、クラウドを一部でも利用している企業の割合は、2017年時点では56.9%だったのに対し、2020年には68.7%へと増加しました。2021年以降もクラウドを利用する流れは加速していると考えられます。
また、クラウドを導入した企業の約9割が「クラウド移行の効果を実感している」と回答しており、コスト削減や業務効率化、セキュリティ強化など、多くのメリットが得られることが背景にあります。こうした背景から、クラウド移行を検討する企業はますます増えていくでしょう。
※参考:「情報通信白書令和3年版」
なお、「クラウドとは何か?」といった基礎的な内容については、こちらの記事に詳しく記載していますので興味のある方はぜひご覧ください。
★コラム:「Webシステム担当者のための入門ガイド~クラウドの基本編~」
2. システムをクラウド移行するメリット
クラウド移行には、企業の成長を後押しする多くのメリットがあります。ここでは特に、「スケーラビリティと柔軟性の向上」「業務の効率化と生産性向上」「セキュリティと可用性の向上」といった観点から、クラウド移行の具体的なメリットを詳しく解説します。
2-1. スケーラビリティと柔軟性の向上
クラウドの大きな特徴の1つが、スケーラビリティ(拡張性)です。クラウド環境では、業務量やトラフィックの変化に応じてシステムの拡張・縮小など、必要なリソースを柔軟に増減させることができます。例えば、ECサイトのセール期間中はリソースを拡張し、閑散期には縮小するなど、状況に応じた最適なリソース配分が可能です。
また、主要なクラウド事業者は世界中にデータセンターを所有しているため、グローバル展開もスムーズに行えます。新たな市場に進出する際には、現地のデータセンターを活用することで、低遅延かつ安定したサービス提供が実現できます。
2-2. 業務の効率化と生産性向上
クラウド移行により、企業はシステム管理にかかる負担が軽減され、業務全体の効率が大幅に向上します。従来のオンプレミス環境では、サーバーの運用や保守、ソフトウェアの更新作業、障害対応などに多くの時間と人手を割く必要がありました。しかし、クラウドではインフラの管理をクラウド事業者に任せることができ、IT部門はより戦略的な業務に専念できるようになります。
また、クラウドの持つ自動化機能は、業務効率化に大きく寄与します。クラウド環境では、システムの更新やバックアップが自動で行われるため、障害発生時にも迅速な復旧が可能です。これにより、人的ミスの削減とシステムの安定稼働を両立できます。
さらに、クラウド環境はリモートワークとの親和性が高く、従業員はインターネット環境があれば業務システムにアクセスでき、柔軟な働き方が可能になります。リアルタイムのデータ共有やドキュメントの共同編集も容易になるため、チーム間の連携も強化されます。これにより、作業のスピードと精度が向上し、企業の生産性向上につながります。
2-3. セキュリティと可用性の向上
クラウド移行により、企業のセキュリティ対策とシステムの可用性は大幅に向上します。オンプレミス環境では、サーバーの管理やセキュリティ対策を自社で行う必要があり、適切な対策を講じなければサイバー攻撃の脅威にさらされる、データが漏えいするといったリスクが高まります。クラウド環境でもセキュリティ対策は必要になりますが、以下2点からその対策にかかる負荷を低減することができます。
- 責任共有モデル(https://aws.amazon.com/jp/compliance/shared-responsibility-model/)の考えに基づき対策することで、システムの一部についてクラウド事業者が責任を持ってセキュリティを担保することが可能
- クラウド事業者がセキュリティ動向に鑑みてリリースする最新のセキュリティ対策サービス・機能を活用することで、ユーザが一からセキュリティ対策を検討するよりも効率的にセキュリティ対策の実装が可能
さらに、クラウド環境ではデータが複数のデータセンターに分散して保存されるため、システム障害や災害が発生しても迅速な復旧が可能です。
特に高可用が求められるシステムでは、複数の地域(AWSであれば東京と大阪)にサーバー・データベースなどを分散配置することも可能なため、大規模災害の際にも継続してサービスを提供できる体制を構築できます。
2-4. DXの推進・最新技術の活用
クラウド移行は、DXを推進し、最新技術を取り入れるための基盤整備という意味でも大きな意義があります。企業がデータを活用し、新たなビジネス価値を創出していく上で、クラウドの先進性や柔軟性、拡張性は欠かせません。
クラウドサービスでは世の中のニーズや技術の進歩に合わせて、新たなサービスのリリースや機能アップデートが頻繁に行われています。自社のシステムをクラウド化することにより、先進的なサービス・機能を自社システムに組み込んで活用することが容易になります。
例えば、2025年現在、非常に注目されている生成AIの活用においても、クラウド環境であれば導入や実装を迅速に行うことができます。生成AIの活用には、大量のITリソースが必要ですが、クラウドサービスを利用することで、必要な分だけリソースを柔軟に確保でき、DXの推進を加速させられます。
2-5. 法規制・コンプライアンス対応
クラウド移行を検討する際には、法規制やコンプライアンスを遵守することも非常に重要です。特に、個人情報や機密データを扱う企業では、データの保存場所やアクセス管理の厳格な運用が求められます。例えば、欧州のGDPR(一般データ保護規則)やクレジットカードのセキュリティ基準であるPCI DSS、保険業界のプライバシー保護・セキュリティ確保に関する法律であるHIPAAなどのように国・地域で定められているルールや業界で定めたルールにクラウドサービスが準拠していることはクラウドサービスの採用にあたって重要な観点となります。
また、多くのクラウドサービスには監査ログの自動記録や暗号化技術が標準で備わっているため、情報の改ざん防止やアクセス履歴の管理も容易です。特に、金融機関や医療機関のように厳格な基準が求められる業界では、クラウド事業者が提供するセキュリティ機能を活用することで、法令遵守を確保しながら、業務の効率化を図ることができるでしょう。
2-6. 競争力の向上
クラウド移行は、企業の競争力を高める重要な手段となります。特に、新しいサービスの開発や市場投入へのスピードを向上させる点で、そのメリットは顕著です。
オンプレミス環境では、サーバーの調達やシステムの環境構築に時間がかかり、開発のスピードが制約されていました。しかし、クラウドを活用すれば、必要なリソースを即座に利用でき、開発環境の構築も短時間で完了するため、新しいプロダクトやサービスを迅速に市場へ投入できます。
さらに、グローバルに展開されているクラウドインフラを活用することで、海外市場への展開もスムーズです。各国にあるクラウドデータセンターを利用することで、現地ユーザへの高速かつ安定したサービス提供が可能になり、国際市場での競争力も強化されます。AIやビッグデータ解析、先端技術の導入も、クラウド環境ならスピーディに実現できます。こうした技術を活用することで、より高度なビジネス戦略を実現し、企業成長のさらなる加速につながります。
【補足】クラウド移行=コスト削減ではない?
クラウドのメリットとして語られることの多いコスト削減について、「クラウド移行してみたが、意外とコストを低減できなかった」という声を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
その主な原因の1つは、オンプレミスのアーキテクチャや設計思想をそのままクラウドに持ち込んでしまうケースです。
クラウドには、マネージドサービスなどクラウド特有の効率的な運用方法がありますが、オンプレミス同様に仮想サーバーを多用してしまうと、必要以上にコストがかかる場合があります。
クラウド移行によるコストメリットを最大化するには、クラウドならではのアーキテクチャや運用思想を理解し、最適な構成で活用することが不可欠です。
3. クラウド移行のリスクと対策
クラウド移行には多くのメリットがある一方で、さまざまなリスクも存在します。本章では、企業がクラウド移行をする際に直面しやすい主なリスクと、その具体的な対策について解説します。
3-1. セキュリティとデータ保護
クラウド移行を検討する際、多くの企業が懸念するのがセキュリティとデータ保護の問題です。企業の機密情報や顧客データをクラウド上に移すことで、「外部からの不正アクセスや情報漏えいのリスクがあるのでは」「クラウド事業者に依存して本当に安全なのか」といった不安を抱く企業は少なくありません。
また、クラウド環境ではデータの保存場所が明示されない場合もあり、「海外のデータセンターに保存された場合、各国の法規制の影響を受けるのではないか」「自社の管理下から外れてしまうのではないか」といった懸念も存在します
しかし、主なクラウド事業者はこれらのリスクに対して適切な対策を講じており、その内容を対外的にも明確に公開しています。そのため、クラウド移行を検討する際には、各クラウドサービスのセキュリティ対策やデータ保護方針を十分に確認しておくことが重要です。
3-2. 運用コスト増大の可能性
クラウド移行にはコスト削減のメリットがある一方で、適切な運用・管理を行わなければ、かえってコストが膨らんでしまう可能性があります。特に、クラウドの料金体系は従量課金制が一般的であり、リソースの使用状況に応じてコストが変動し、管理が不十分な場合には無駄な支出が発生しやすくなります。
例えば、不要なインスタンスを停止せずに放置したり、予想以上にデータ転送料がかさんだりすることで、気付かないうちにコストが増加してしまうことがあります。
また、クラウド環境の最適化には専門知識が求められるため、社内のIT人材の育成が必要です。自社で対応できない場合は外部のクラウド運用サービスを活用する選択肢もありますが、その分コストが追加で発生します。さらに、高度なセキュリティ対策やデータバックアップ、監視ツールなどを導入すると、クラウド利用の基本コストに加えて、運用費用のコストが高騰する恐れがあります。
このようなコスト増大のリスクを回避するためには、クラウドのリソース管理を適切に行い、定期的なコスト見直しを実施することが重要です。運用の効率化とコスト最適化を両立させることで、クラウドの利点を最大限に活用できるでしょう。
3-3. 既存システムとの互換性・移行の難易度
クラウド移行を進める際、既存システムとの互換性は大きな課題です。特に、長年オンプレミス環境で運用されてきたシステムは、クラウドとアーキテクチャが異なることが多く、そのままでは移行できないケースがあります。
例えば、特定のハードウェアや古いOS、独自仕様のミドルウェアに依存したシステムは、クラウド環境では正常に動作しない可能性があり、場合によってはアプリケーションの大幅な改修が必要になることもあります。
また、クラウド移行にはシステムの再設計を伴うことが多く、移行期間中は業務に影響が及ぶリスクもあります。移行作業が長引けばシステムの一時停止が発生し、業務への影響が避けられません。特に基幹システムやリアルタイム処理が求められる業務では、慎重な計画が求められます。さらに、クラウド特有の運用ルールやセキュリティ要件を考慮しながら移行を進めることも必要です。
こうした課題を克服するためには、事前にシステムの適合性を評価し、段階的な移行計画を立てることが重要です。Lift&Shift(そのまま移行)、リファクタリング(最適化)、リビルド(再構築)などの移行手法から適切な方法を選択し、リスクを抑えながらクラウド環境への移行を進める必要があります。また、専門知識が不足している場合はクラウド移行支援サービスの活用も検討しましょう。
その他クラウド環境の利用においては、クラウドサービスの障害が自社システムに影響を与えるリスクも挙げられます。
しかし、このリスクはオンプレミス環境においても同様で、自社で全てのコンポーネントを管理した場合にも存在します。むしろ、主要なクラウド事業者ではデータセンターを用いた冗長構成や、障害に備えた高度な対策を標準で導入しており、自社で同等の対策を実現しようとすると多大なコストがかかることになります。このように、クラウドは「新たなリスクを伴う存在」ではなく、「従来のリスクをクラウドにオフロードすることで軽減できる手段」と考えられます。
また、主要なクラウド事業者はSLA(Service Level Agreement)を公開しており、可用性やサポート内容を明示しています。その内容を基にシステム停止によるビジネスインパクトを踏まえ利用可否を判断することが重要です。
4. クラウド移行を成功させるためのポイント
クラウド移行を成功させるためには、計画的かつ戦略的なアプローチが欠かせません。本章では、スムーズな移行を実現するための重要なポイントを解説します。
4-1. クラウド移行の目的を明確化し計画を立てる
クラウド移行を成功させるためには、まず目的を明確にし、それに基づいた移行計画を立てることが重要です。移行の目的が不明確なまま進めると、適切なクラウド環境の選定ができず、コストの増大や運用の複雑化を招くリスクがあります。
例えば、「インフラコスト削減」を主目的とする場合と、「DXの加速」を目的にクラウド移行をする場合では、選択すべきクラウドサービスや移行手法は大きく異なります。そのため、自社の課題や目的を整理し、最適なクラウドサービスを選定することが不可欠です。
クラウド移行に当たって、多くの企業がAmazon Web Services(AWS)をはじめとする大手クラウドサービスを選択しています。その理由として、安定性や信頼性の高さに加え、サポート体制が充実していることが挙げられます。どのサービスもAIやビッグデータ解析、IoTなどの最新技術を活用するためのツールが豊富で、企業のDX推進を強力にサポートしてくれるでしょう。
また、移行計画の策定では、既存システムの分析と優先順位の決定が欠かせません。全てのシステムを一度にクラウドへ移行するのではなく、まずは影響が少ない部門や業務から段階的に移行を進めることで、リスクを抑えながら適応を進めることができます。
特に、Web系のシステムはクラウドとの親和性が高く、企業がクラウド活用を始める第一歩として多く採用されています。
Webシステム及びWebシステムのクラウド移行に関するプロジェクトに関して概要を以下の記事で詳しく紹介しています。特に「最近Webシステムを担当することになった」「Webシステムのクラウド化を進めていかなければならない」という情報システム部門の方に向けた内容となっていますので、ぜひご覧ください。
★コラム:「Webシステム担当者のための入門ガイド~Webシステムの基本編~」
★コラム:「Webシステム担当者のための入門ガイド~クラウドの基本編~」
★コラム:「Webシステム担当者のための入門ガイド~ITベンダーとのプロジェクト推進編~」
4-2. 適切なクラウドサービスを選定する
クラウド移行を成功させるためには、自社の目的やシステム要件に合ったクラウドサービスを選定することが重要です。クラウドサービスの種類には、先述の通りIaaS、PaaS、SaaSの3つの形態があり、それぞれ適した利用シーンがあります。
既存のオンプレミス環境をそのままクラウドに移行し、自由にカスタマイズしながら運用したい場合はIaaSが適しています。サーバーやネットワークといったインフラはクラウド事業者が提供し、OSやアプリケーションの構成・管理は自社で行えるため、自由度の高いシステムの構築や運用が可能です。
一方、インフラ管理の負担を軽減し、アプリケーションの開発・運用に注力したい場合は PaaS が有効です。開発環境やデータベースなどをクラウド上で利用できるため、迅速な開発とスケーラブルな運用が実現できます。
すぐに業務アプリケーションを導入・利用したい場合には、SaaS を選択することで、インストールや構築の手間を省き、スピーディに業務へ活用することが可能です。メール、CRM、会計ソフトなどの業務系サービスが代表例です。
クラウドの選択肢を誤ると、コスト増や運用の複雑化を招く可能性があるため、自社の目的やリソース、将来的な拡張性を踏まえた上で、最適なサービス形態を選ぶことが重要です。
4-3. クラウドの利点を活かして移行を進める
クラウド移行を成功させるためには、クラウドならではの柔軟性と俊敏性を活かしたアプローチが効果的です。特に不確定要素が多い場合には、PoC(概念実証)を取り入れた段階的な進行も手段の1つです。クラウド環境での移行プロジェクトの進め方の一例です。
- 移行対象のシステム特性を加味してあるべきアーキテクチャを検討する
- クラウド環境上で仮の環境を構築しそこにアプリケーションを移行して動作確認を行う(PoCの実施)、その際可能な限りIaC(Infrastructure as Code)でのシステム構築を行う
- PoCの結果1で検討したアーキテクチャ通りでシステムを構築すべきか見直しすべきかの方向性判断を行う
このようなサイクルを、1~2カ月程度の短期間(但しシステムの規模次第)で行うことにより、プロジェクト開始前にノックアウトファクターを取り除くことが可能になり、プロジェクトの成功確率を高めることにつながります。
これが可能なのは、システム環境構築を短期間で実現できるクラウドの利点があるからです。さらに、2の仮環境構築にIaC(Infrastructure as Code)を活用することで、本格的な環境構築時にそのIaCコードを転用し、効率化を図ることができます。
クラウドを初めて利用する人々にとって、これら全てを行うことは少しハードルが高いかもしれません。しかし、クラウドを強みとする外部パートナーを活用することで実現可能性が高まります。
4-4. クラウドを活用できる人材の育成
クラウド移行を成功させるには、クラウドを活用できる人材の育成が不可欠です。オンプレミスとは異なり、クラウドではインフラ管理の方法やセキュリティ対策、コスト最適化の手法が大きく変わるため、従来のIT開発・運用スキルだけでは対応しきれないケースが増加します。そのため、クラウドの概念を理解し、適切な開発と運用・管理ができる人材を長期的に育成することが求められます。
具体的には、AWSなどの主要なクラウドサービスの認定資格を取得することで、クラウドの基礎から応用まで体系的に知識を習得できます。また、クラウド特有のセキュリティ対策や、自動化ツールの活用方法を学ぶことも重要です。さらに、クラウド技術は日々進化しているため、社内研修や外部セミナー、実際のクラウド環境を活用したハンズオン研修を通じて、長期的かつ継続的にスキルアップを図ると良いでしょう。
自社での人材育成が難しい場合は、クラウドに精通した外部パートナーと協力し、専門的な知識を補完する体制を整えることも効果的です。
5. クラウド移行にあたってのパートナーの選び方
ここまで述べてきたように、クラウド移行を成功させるためには、十分な準備と専門的な知識が必要です。移行の計画立案からシステムの設計、運用後の最適化に至るまで、自社で対応しようとすると多大な時間とリソースを要します。特に、オンプレミス環境からどの領域をクラウドへ移行するのかを見極め、セキュリティ対策、コストの最適化に高度なノウハウが必要です。
そのため、クラウド移行をスムーズに進めるためには、自社と共にクラウド推進を進めてくれるパートナーの存在は非常に有意義です。
こうしたパートナーの支援内容として、クラウド化のグランドデザイン検討など上流工程の整理を中心とするコンサルティングや、オンプレミスのシステム開発と同様に各企業の依頼に基づき個別の開発案件を受託するシステムインテグレーションが挙げられます。
私たちTISでは、これに加えて、お客様のニーズに応じて最適なデジタル基盤を提供し、デジタル化だけではなく新たなサービスの創出や事業成長まで支援する「デジタル基盤オファリングサービス」を提供しています。
本サービスは、パブリッククラウド・プライベートクラウドの両方のプラットフォームを1つのサービスの中で統合的に提供することによりお客様のニーズに細やかに対応することができます。さらに、プラットフォームの提供だけではなくシステム基盤を有効活用するためのコンサルティングまで行い、システム構築から運用、最適化までトータルで支援します。
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6. ハイブリッドクラウド活用に向けた検討ポイント
クラウド移行は、企業のDX推進や業務効率化、コスト最適化を実現する重要なステップです。しかし、移行には計画的なアプローチと専門的な知識が求められ、適切なクラウド環境の選定や運用体制を再構築する必要があります。クラウド移行をスムーズに行い、移行による目的を達成するには、それに合った最適なサービスを活用するのが効果的です。
TISの「デジタル基盤オファリングサービス」は、お客様のクラウド移行を全面的にサポートし、基盤環境自体をサービスとして提供します。特に、高いセキュリティレベルを確保しつつ、クラウドの利便性を最大限に活かせる環境であることからクラウド移行を検討しているお客様にとって理想的な選択肢となるでしょう。
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デジタル基盤オファリングサービス
デジタル基盤オファリングサービスはお客様のニーズに合わせて、「インフラ基盤」「サービス基盤」「サービスアーキテクチャコンサルティング」を最適な形に組み合わせて提供します。ニーズに応じて最適なデジタル基盤を提供し、デジタル化だけでなくサービスの新規立ち上げや成長を後押しします。
本コラムの執筆者

二出川 弘
PAYCIERGE クラウド領域の技術統括。
AWSのスペシャリストとしてAWS社より2024 Japan AWS Ambassadorsに選出。AWS Summit Tokyo 2023での登壇をはじめ多くの講演/執筆活動を実施。