SAP Business Suiteとは?AI・データ・アプリ統合で企業DXを加速
企業がビジネス環境の変化に対応するには、全社データを一元化し、迅速な意思決定を行う仕組みが不可欠です。しかし、従来のERPシステムでは部門間の情報連携や迅速な意思決定が難しく、DX推進の足かせとなっている場合も少なくありません。
こうした状況を打開するソリューションとして注目されているのが「SAP® Business Suite」です。
この記事では、SAP Business Suiteの概要からメリット、構成要素、導入のポイントまで、企業のDXを推進するための情報をわかりやすく解説します。
SAP Business Suiteとは?
SAP Business Suiteは、SAPの包括的なビジネスアプリケーションにAIやリアルタイムデータが統合されたソリューションセットです。ビジネス全体のあらゆる機能を接続して最適化することで、企業のビジネス変革を推進します。
SAP Business Suiteの中核を成すのが、次の3つの要素です。
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SAP® Business AI:
ビジネスコンテキストを理解し、複雑なプロセスを実行するAIエージェントを活用できるAIソリューション -
SAP® Business Data Cloud:
企業全体のデータをデータプラットフォームと統合して活用するSaaSソリューション -
統合ビジネスアプリケーション:
ビジネスバリューチェーン全体をシームレスに接続するアプリケーション群
これら3つを統合することで、SAP Business Suiteは従来のERPシステムの枠を超え、これまでにないスピードでビジネスを進化させます。
企業が直面する課題とSAP Business Suiteの価値
近年、市場の変動性が高まり、サプライチェーンの不安定化や消費者ニーズの多様化も進むなど、ビジネス環境の変化が加速しています。
そうした中で、企業は複雑化するデータや断片化したシステムの管理に課題を抱えています。また、AIの発展によりテクノロジーが急速に進化する中、時代に合った価値を提供しながら、変化に強い体制を築くことが必要です。
こうした課題に対応するため、SAP社が2025年に提供を開始したのがSAP Business Suiteです。
AI・データ・アプリケーションを1つのスイートに統合することで、業務プロセスの無駄を省き、意思決定を迅速化。組織全体が同じ目標に向かって連動する仕組みを実現します。また、市場の変化を先読みし、より迅速に新たな価値を生み出せるようになります。
つまり、SAP Business Suiteは単なるIT投資ではなく、この先の持続的な企業成長を促す原動力といえるのです。
SAP Business Suiteのメリット
SAP Business Suiteは、業務プロセスの最適化から、より正確なインサイトの取得、変化への適応力向上まで、さまざまな効果をもたらします。ここでは、SAP Business Suiteのメリットを解説します。
部門を超えて業務が最適化される
SAP Business Suiteでは、AI・データ・アプリケーションを活用して部門間のプロセスをつなぐことで、非効率性を抑えながらコスト削減と生産性向上を実現できます。
また、業務の自動化が進むことで手作業が減り、チームは本来注力すべき戦略的タスクに時間を割けるようになるでしょう。さらに、特定の領域で行われた判断が他領域にも波及し、組織全体の対応力が強化されます。
行動につながるインサイトを得られる
SAPシステムと他社システムのデータを結ぶことで、信頼性の高いデータ基盤を一元的に構築できます。これにより、ビジネス全体の状況を把握しやすくなり、より詳細な分析や戦略的な判断につなげることが可能です。
また、特定の業務ニーズに合わせて事前に構築されたアプリケーションやデータモデルによって、意思決定のスピードが上がり、業務の自動化を着実に進めることができます。
組織全体の変化への適応力を高められる
AI・データ・アプリケーションの統合により、変化に迅速に対応できる柔軟な基盤が整い、新たなビジネス機会の創出へとつなげることが可能です。
また、統合スイートにより従業員それぞれの強みが組織全体の優位性として活かされ、将来どのような状況が生じても対応できる、しなやかな体制を整えることができます。
SAP Business Suiteの構成要素
SAP Business Suiteを構成するのは、冒頭で解説したとおり、AI・データ・アプリケーションの3つの要素です。それぞれが異なる役割を担いながら連携し、ビジネス全体を支える統合的な基盤を作り上げます。ここでは、それらSAP Business Suiteの構成要素について解説します。
1. ビジネスを推進する:SAP Business AI
SAP Business Suiteに組み込まれているSAP Business AIは、企業が利用するソフトウェア全体でAIツールを統合し、ビジネスのさまざまな場面で知的な処理を可能にします。
具体的には、事業運営のあらゆる領域で自動化や予測にもとづく洞察、リアルタイムでの意思決定を実現。AIが業務フロー全体に組み込まれることで、部門間のプロセスはより滑らかにつながり、管理業務も一段とインテリジェントに進められます。
また、AIエージェントがユーザーの操作や判断を支援するため、ユーザーエクスペリエンスが向上。予測分析によって、環境の変化にも迅速に対応できるようになります。
以下がSAP Business AIの代表的な構成要素です。
<SAP Business AIの代表的な構成要素>
| 構成要素 | 概要 |
|---|---|
| Joule AIオーケストレーター | 自然言語での対話を通じて、ユーザーの質問や指示に応答し、業務アプリケーションを横断的にサポートする |
| Joule AIエージェント | 財務管理、サプライチェーン管理など各領域に特化し、情報にもとづく推論から、計画、課題解決まで、複雑なタスクを自動実行する |
| カスタマイズされたAI | SAP Foundation ModelやSAP Knowledge Graphを活用し、企業固有のデータ構造にもとづいた高精度なAI分析・生成を実現する |
SAP Business AIについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
SAP Business AIで実現する業務改革|最新の主要機能や活用領域を解説
2. ビジネスデータの価値を最大化する:SAP Business Data Cloud
SAP Business Data Cloudは、SAPシステムと非SAPシステム全体のデータを統合し、単一のデータレイヤーに統合するSaaSソリューションです。
組織全体の構造化データと非構造化データが1つにまとめられ、コンテキスト化されます。これによって、情報が断片的で判断しづらい状況が解消され、より意味のあるインサイトを得ることができます。
SAP Business Data Cloudの主な機能は以下です。
< SAP Business Data Cloudの機能>
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| Analytics Cloud | アナリティクスとエンタープライズプランニングを1つのソリューションで統合して実行する |
| Datasphere | 信頼性の高い同じデータをビジネスデータファブリック全体で発見・共有・モデリングする |
| Business Warehouse | オンプレミスの SAP BW データを中断することなく、クラウドに保存・利用することができる仕組みを提供する |
| SAP Databricks | パイプラインの管理やデータのコピーをすることなくSAP のデータに接続して、サードパーティのデータと組み合わせる |
| インテリジェントアプリケーション | ビジネスを理解する AI を用いたアプリケーションで、自動化・調整・学習をリアルタイムで行う |
| AI と ML | 信頼性の高いビジネスデータを活用した、多種多様なAI と機械学習の機能を利用する |
3. あらゆるビジネス機能に対応する:統合アプリケーション
SAP Business Suiteの統合アプリケーションでは、サイロ化されていたこれまでのポイントソリューションに代わり、受注から入金、調達から支払いなど、ビジネスバリューチェーン全体を業種ごとの細かな違いに合わせて調整しながら、シームレスにつなぎます。
SAPが提供する包括的な統合アプリケーションポートフォリオにより、企業はエンドツーエンドの業務プロセスを一貫して強化できます。
統合アプリケーションがカバーする業務領域は以下です。
<統合アプリケーションがカバーする業務領域>
| 業務領域 | 概要 |
|---|---|
| 財務管理 | 財務会計や財務計画などの業務を最適化し、データにもとづく迅速な意思決定と事業拡大を支援する |
| サプライチェーン管理 | 需要から供給までのプロセスをAIとデータでつなぎ、業務の可視化と最適化を実現する |
| 支出管理 | 調達・購買のプロセスを効率化し、支出状況の可視化と自動化によって、戦略的な意思決定と価値創出を支援する |
| 人事・人材管理 | 人材・データ・プロセスを統合し、従業員の能力を引き出しながら、あらゆる状況に対応できる組織づくりを支援する |
| カスタマーエクスペリエンス | 充実したインサイトとプロセスの統合により、顧客にとって一貫性のある魅力的な体験を創出し、収益性の高い成長を支援する |
| サステナビリティ | サステナビリティとビジネスデータを統合し、ESG対応や脱炭素経営など、持続可能な変革とリアルタイムな意思決定を支援する |
SAP Business Suite導入にあたってのポイント
SAP Business Suiteを効果的に導入するためには、そのための基本原則と、適切な導入アプローチを理解することが重要です。ここでは、導入時に押さえておきたい原則と、SAPの導入アプローチを紹介します。
Fit to StandardとClean Coreの実践
SAP Business Suiteの導入にあたって重要なのが、「Fit to Standard」と「Clean Core」という原則です。これらを実践することで、SAP Business Suiteの価値を最大限に引き出すことが可能です。
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Fit to Standard
自社の業務をSAPが提供するシステムの標準プロセスに合わせていく考え方で、過度な個別開発を避けることで導入期間の短縮や運用の複雑化の防止につながります。また、SAPの最新ベストプラクティスを取り入れやすくなり、業務の高度化も図れます。 -
Clean Core
ERPシステムを、ベンダーが提供する標準状態にできる限り近い形で保つという原則です。コア部分を標準のまま維持することで、アップグレードを迅速に行えるうえ、SAPが提供する継続的なイノベーションを安定して取り込めます。また、過度なカスタマイズによる技術的な負債を減らし、運用コストの抑制、システムパフォーマンスと信頼性の向上にもつながります。
GROW with SAP・RISE with SAPによる導入アプローチ
SAP Business Suiteへの移行を支援する導入アプローチとして用意されているのが、「GROW with SAP」と「RISE with SAP」の2つです。
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GROW with SAP
新たにSAP ERPを採用する企業が対象です。標準化されたフレームワークやツール、ガイダンスを利用し、SAP Business Suiteをスピーディーに実装するための導入アプローチです。 -
RISE with SAP
すでにSAP ERPを利用している企業が対象です。オンプレミスの SAP ERP アプリケーションから、SAP Business Suite を基盤とした最新のビジネス環境へ段階的に移行できるよう支援する導入アプローチです。
GROW with SAP と RISE with SAP を通じて、SAPは新規ユーザー・既存ユーザーが着実にSAP Business Suiteを導入できる仕組みを整えています。
AI・データ・アプリ統合がもたらす新しい経営基盤
SAP Business Suiteは、AI・データ・アプリケーションを統合することで、断片化された業務システムをつなぎ、経営判断のスピードと精度を飛躍的に高めます。さらに、市場の変化を先読みし、迅速なイノベーションを実現。不確実性が常態化する時代において、多くの企業がデータドリブン経営やAI活用の第一歩として、SAP Business Suiteを選択しています。
TISは、30年以上にわたり培ってきたSAP社のERPと製造業の業務ノウハウを生かし、SAP Business Suiteによる業務改革の実現をサポートしています。SAP Business Suiteの導入で企業DXを推進し、変化に強い経営基盤づくりをともに進めましょう。
※ 本文中の社名、製品名、ロゴは各社の商標または、登録商標です。
※ 記載されている情報は、2026年1月時点のものです。また、TISの見解・解釈を含んでおりますので、詳細・最新の情報は公式サイトをご参照ください。