SAP Business AIで実現する業務改革|最新の主要機能や活用領域を解説
ビジネス環境の変化が加速する中、AIによる業務改革は企業の最重要課題のひとつです。グローバルで広く使われる統合基幹業務システムのSAPにおいても、「SAP® Business AI」の登場により、業務効率化や意思決定の高度化が進んでいます。
この記事では、SAP Business AIによってどのような業務改革が実現するのかを解説。さらに、構成要素の中核を担うAIデジタルアシスタント「Joule」の主要機能や活用領域など、SAP Business AIの世界観をわかりやすく紹介します。
SAP×AIの業務変革で意思決定を最適化し生産性を向上

日本では少子高齢化や人手不足が深刻化する中、企業には業務の抜本的な効率化と意思決定の迅速化が求められています。AI活用はもはや選択肢ではなく前提となり、「どうAIを使いこなすか」が企業の競争力を左右する時代に入りました。
こうした中、SAPはERP・データ・AIを融合した業務基盤を通じ、「AIドリブン経営」を推進。2025年に開催されたカンファレンス「SAP® Sapphire®」では、Business AIにより業務生産性を最大30%向上させる目標が示され、SAPのAI戦略は新たなステージへ進んでいます。
SAPのAIは特定タスクの自動化を超え、ユーザー意図の理解から判断、実行までを担うAIへと進化。社内外の最新データを組み合わせ、業務判断に対する示唆やアクションをリアルタイムで提供します。これにより企業全体の意思決定が最適化され、業務を横断して生産性が飛躍的に向上します。
SAP Business AIとは?全体像を解説
SAPのAI活用を支える基盤が「SAP Business AI」です。これは、SAP製品に組み込まれるAIソリューションであり、主に以下の機能で構成されています。これらの機能が連携することで、より多くの業務を迅速かつ効率的に遂行することが可能となります。
■SAP Business AIの全体像
機能 | 詳細 |
---|---|
Joule | 業務を会話ベースで的確にサポートするAIデジタルアシスタント |
組み込みAI | 各 SAPアプリケーションに標準搭載され、業務を効率化するAI機能群 |
カスタムAI | 生成AIなどで独自のAIシナリオを開発できるカスタマイズ用AI |
AI Foundation | SAP BTP上でJouleや組み込みAIなどを支え、最適なモデルへのアクセスを制御する共通基盤 |
Jouleとは?業務体験を変えるAIデジタルアシスタント
前項で紹介したSAP Business AIの機能において、プロセス全体を指揮する中心的な役割を担うのが、AIデジタルアシスタント「Joule(ジュール)」です。Jouleは、会話ベースでアプリケーションを操作する新しいUI/UXとして、業務体験を革新します。
また、Jouleに関連する機能として、自律的に業務を遂行する「Jouleエージェント」や、ノーコード対応の「Joule Studio」などが、ユーザーの業務を強力に支援。ここでは、それらの主要な機能について解説します。

複数業務を自律的に動かす「Jouleエージェント」
Jouleには、複雑な業務を自ら思考・実行するAIである「Jouleエージェント」が組み込まれています。ユーザーから与えられた目標を達成するために、自律的に必要なステップを計画し、複数のエージェントと連携しながら多段階のタスクを実行します。
例えば、ユーザーが顧客クレームの解決を依頼すると、Jouleエージェントが必要なタスク計画を立案します。関連プロセスのJouleエージェント同士が連携しながら情報を収集し、最適なプランを推論。対応策をユーザーに提案することで、業務全体の迅速化や意思決定の高度化をサポートします。
あらゆる開発を支援する「Joule Studio」「Joule for Developers」
「Joule Studio」は、企業独自のJouleスキルを開発できる機能です。ローコード・ノーコード開発機能を活用し、カスタムAI開発を支援します。
さらに、開発者向けには「Joule for Developers」を提供。SAPのプログラミング言語であるABAPの予測コード補完や単体テストの自動生成など、開発効率を高める機能が備わっています。これにより、ABAP開発者の開発生産性の向上につながります。
社内外の最新情報を連携する「Joule Everything」
企業の内部と外部の最新データを組み合わせ、AIによるリアルタイムのビジネス回答を可能にする「Joule Everything」。Perplexityとの統合により、社内外の情報をシームレスに連携させた、インテリジェントな回答を提供します。
さらに、Microsoft 365 Copilotとの統合により、SAPを活用するユーザーがそれぞれのエコシステムの中で、両方のアシスタント機能にアクセスすることが可能です。これにより、JouleからMicrosoftアプリケーションの操作をしたり、Microsoft 365 CopilotからSAPアプリケーションの操作をしたりできるため、デジタルアシスタントを行き来する必要がありません。こうしたプロセスの合理化によって、業務全体の効率化につなげます。
AIで進化するSAPの活用領域

SAP Business AIは、特定の業務にとどまらず、企業のさまざまな部門で活用が進んでいます。ここでは代表的な活用領域を紹介します。
サプライチェーン:生産性・スピード・顧客サービスの向上
サプライチェーン領域では、SAP Business AIをサプライチェーンエコシステム全体にシームレスに組み込むことで、オペレーションの効率化や生産性の向上を実現し、競合優位性を確保します。リアルタイムの業務可視化とAIインサイトによって意思決定を改善。生産性やスピードを上げ、顧客サービスや透明性の向上にもつなげます。
財務:コンプライアンス管理の向上や収益機会の拡大
財財務領域では、SAP Business AIが最適な意思決定を支援し、コンプライアンス強化と財務プロセス全体の最適化を実現します。キャッシュフロー管理を合理化しながら運転資本を最適化し、正確な予測を提供。自動化されたプロセスやリアルタイムのインサイトなどを通して、財務の安定性と効率性を高めます。さらに、新たな収益機会の特定や価格設定の最適化なども支援します。
人事:従業員エクスペリエンスの向上や採用の効率化
人事領域では、SAP Business AIによって組織全体の変革を支援します。まず採用プロセスにおいては、AIが職務記述書や面接質問を自動作成し、人材の見極めと採用の円滑化に貢献。入社後は、従業員一人ひとりに合わせたキャリアアップのための推奨事項をAIが提供します。これにより従業員エンゲージメントと定着率が向上。採用・育成への投資が最大化され、組織全体の成長が加速します。
SAPとAIで切り拓く次世代の業務基盤
SAP Business AIは、特定業務の支援を超えて、企業全体の意思決定と実行を支える存在へと進化しています。SAPとAIを組み合わせた業務改革は、もはや効率化の手段ではなく、経営を進化させる基盤といえます。
TISは、30年以上にわたり培ってきたSAP社のERPと製造業の業務ノウハウを生かし、SAP S/4HANA®とAIを活かした業務改革の実現をサポートしています。TISとともに、変化の先を見据えた業務改革を進めませんか?
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