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#1. 開示だけではない!なぜ今人的資本経営か?

1.はじめに

こんにちは。TIS株式会社の稲葉涼太です。ESGと人的資本経営のエキスパートです。

私たちTISは長らくITを活用し経営管理の高度化を支えてきたこともあり、お客様から「人的資本経営と言っても何から取り組めばよいかわからない」「人的資本について何をどのように開示していくべきかわからない」というご相談をいただいています。

このコラムでは昨今話題に上がることが多い「人的資本経営」をテーマにしていきます。

2. 今、人的資本経営が注目される背景

少子高齢化による人不足と生産性

皆様ご存じの通り、日本は少子化と高齢化が進み、人不足が激化しています。

人不足の課題の解消は一人一人の生産性の向上が大事ですが、その一方で、就労者の生産性は先進国中で最低クラスの状態が続いています。

このような状況で、「人」に関する課題は日本の多くの企業にとって課題であり「人という資本」の価値向上は企業が持続的であるための重要テーマです。

非財務資本価値の重要性

また、企業の評価における非財務価値の重要度が増しています。

非財務資本価値とは、財務諸表で評価できる財務価値以外の企業価値です。
IIRC(国際統合報告評議会)が策定した、統合報告書の作成に係る指導原則である国際統合報告フレームワークでは「6つの資本」を定義しており、そのうち財務資本を除く以下の5つの資本が非財務資本です。
人的資本も重要な非財務価値の要素です。

  • 製造資本:生産又はサービス提供にあたって組織が利用できる建物や設備等の製造物
  • 知的資本:特許や著作権、ソフトウェア、権利及びライセンス等の無形資産
  • 人的資本:組織人員の能力、経験、意欲
  • 社会関係資本:ステークホルダーとの間で良好な関係の構築がもたらす効果
  • 自然資本:組織が依存または影響を与える水、空気、生物多様性などの自然環境資源

米国S&P500企業では時価総額のうちの90%を無形資産つまり非財務の価値が占めていますが、それに対して日経225企業では非財務の価値は30%程度であり、上場企業は市場からも非財務の情報開示と非財務価値の向上が求められています。

「人材版伊藤レポート2.0」

そのような状況の中で、2022年に「人材版伊藤レポート2.0」が発行され、経営層や経営企画部、人事部など「人」に関して課題意識とミッションを持つ方の中で大きな話題となりました。

「人的資本経営」がビジネスシーンで注目ワードになった大きな要素が人材版伊藤レポート2.0だと思います。

出典:経済産「人材版伊藤レポート2.0」
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220513001/20220513001.html
本稿では人材版伊藤レポート2.0の詳細な説明はしませんが、人材版伊藤レポート2.0は大きく「3つの視点」と「5つの要素」で構成されています。

■ 3つの視点

  • 経営戦略と人材戦略の連動
  • As is‐To beギャップの定量把握
  • 人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化への定着

■ 5つの共通要素

  • 動的な人材ポートフォリオ、個人・組織の活性化
  • 知、経験のダイバーシティ&インクルージョン
  • リスキル・学び直し
  • 従業員エンゲージメント
  • 時間や場所にとらわれない働き方

人材版伊藤レポート2.0は人的資本経営と開示のガイドとして認知されましたが、同時に、具体的にどのようにすればよいのか難しいという声も聞かれるようになりました。

例えば、「3つの視点」に関して

  • 経営戦略と整合性がある人事戦略をどう経営と人事部門が連携して考えればよいのかわからない
  • As-isの可視化はどうすればよいのか、そしてTo-beをどう定量的に定義すればよいのかわからない
  • 企業文化への定着の仕方がわからないが、その前に上記が難しく人材戦略が具体的にならない

例えば、「5つの要素」に関して

  • ポートフォリオを構成するための求める人材像の定義が難しい
  • 性別・年齢・国籍以上にどのような多様性が必要で、何を実現したいのかわからない
  • リスキルの目的と対象の言語化が難しい
  • エンゲージメントとは何を指標にしてどのように測定するのかがわからない
  • 時間や場所にとらわれない働き方を効果的に実現するための業務プロセスの変更の仕方がわからない

…などです。

3. 人的資本開示だけではない人的資本経営

特に上場企業においては、「人的資本開示」の潮流が急速に変化しその対応に追われる企業も多いと思います。

  • 2021年6月:東証「コーポレートガバナンスコード」の改定に伴い、サステナビリティをめぐる取り組みへの課題が追記され人的資本項目も記載対象になりました
  • 2022年6月以降:「新しい資本主義」政策決定に基づき女性活躍推進法、次世代法、育児介護休業法、若者雇用促進法、労働施策総合推進法など労働諸法の法改正により法的開示の義務が制定されました
  • 2023年1月:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、有価証券報告書等においてサステナビリティ情報の開示が義務化され人的資本項目も開示義務対象になりました。

法改正に伴い対応する「スタンダード」も国際統合フレームワーク、GRIスタンダード、SASBスタンダード、ISO30414、内閣府人的資本可視化指針…など多く、実務担当者の負荷も増えています。

本稿をお読みの方の中にも、人的資本開示のための情報は人事・給与システムやタレントマネジメントシステム、目標管理システムなどに散在しており、情報の収集と整理や分析の手間に負担を感じられる方はいませんでしょうか。

また、人材版伊藤レポート2.0を人的資本開示のガイドとして活用しようとする企業も多いと思いますが、自社にどのように適用すればよいか、頭を悩ませている方はいませんでしょうか。

まずは、法定義務やコーポレートガバナンスコードに対応するため、同業他社の発信を参照して「開示」を実現すること、またそのために既存の散在するITシステムを何とかやりくりして、情報の収集と整理や分析を行う企業も多いと思います。
もちろん、市場や社会に対して「開示」の責任を果たすことは大事です。

しかし、開示は人的資本経営のスタートです。
せっかく開示をするためにデータを集めたのですから、企業をより良くし企業価値を高めるためにデータを利活用しないのはもったいないです。

目標を設定し、経年で開示を行い、今までと比べてどのように良くなっているのか又は状況が芳しくないのかを気づけるからこそ次の打ち手を検討して講じることができます。
人材版伊藤レポート2.0も人的資本「開示」のためのガイドラインというだけではなく人的資本「経営」のために活用するガイドです。

ITシステムも人的資本開示のためだけではなく、自社と自社の従業員が持続的に成長し価値を向上させるために、現状を可視化し課題の気づきを得て打ち手を講じるために活用することで人的資本経営が実現に近づけます。

4. 人的資本経営実現のために

本稿では、まず人的資本経営の背景と、開示でだけでない人的資本経営への向き合い方について記載しました。

次回は人的資本経営で向上させる「価値」の定義と可視化について、ESGとの関連も踏まえ記載したいと思います。

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更新日時:2024年12月19日 17時29分