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未来を考える情報発信・コラム

心が動く未来のCX ―生成AI時代の新しい顧客体験戦略

未来共創パートナー|生活者視点で考えるCXとコマースの変革

CX・顧客体験
心が動く未来のCX-生成AI時代の新しい顧客体験戦略

多様化する価値観に対し、テクノロジーをどう活用すべきか。
また、進化するテクノロジーに対してサービスをどう進化させるべきか。
──渡辺氏へのインタビューを通じて、その答えを探ります。

1. 個人的価値を求める時代の体験価値とは?

Q1.
最近の消費行動やサービス選びにおいて、「体験価値」や「個人的な価値」が重視されていると言われますが、今の時代の“体験価値”とはどういうものだとお考えですか?

A1.
たとえば、SNSや動画サービス、ソーシャルゲームなどが日常の一部となり、「商品を買う」という行為が、従来よりもずっと多様化していると感じます。
現在の消費者は、単に所有することだけでなく、「体験すること」や「社会とのつながり」、「感情をシェアすること」など、多様な価値を求めて消費行動を選択しています。
現代の消費行動には、特に「共感」「評価」「支援」という三つのキーワードが重要です。

・共感

他者の価値観や行動に共感することが消費の動機になる場面が増えています。自身の体験をシェアし、共感を得ること自体が喜びとなるケースも多いです。

・評価

満足度の高いサービスを利用した際に「評価」を得ることが、精神的な満足やモチベーション向上につながります。特にCtoCサービスやフードデリバリー分野では、この傾向が顕著です。

・支援

いわゆる「推し活」や、誰かの役に立つ消費行動を通じて「感謝」や「役立ち感」を得ることが、新たな価値となっています。

このように、今の消費行動は社会や他者との関わりを前提としています。企業側は、顧客一人ひとりの背景や社会との接点を意識し、サービスや商品の設計に反映させていくことが重要であると考えております。

一言でまとめるなら、「体験価値の多様化は、社会とのつながりを強く意識した消費」へと進化していると言えるでしょう。


2. AIがコマースにもたらす価値

Q2.
AI技術が進化する中で、コマース領域にはどのような価値や変化が生まれているとお感じでしょうか?

A2.
たとえば最近では、「〇〇感のあるバッグ」「近くの〇〇屋さん」といった抽象的な表現でも、AIが最適な商品やサービスを的確に提案できるようになってきました。

AIの活用によって実現する価値は、大きく二つに分かれます。一つはサプライチェーンや在庫管理の最適化、チャットボットなどによる業務効率化といった生産性向上の側面。もう一つは、消費者体験そのものを進化させる、より本質的な変化です。

具体的には、
・ユーザーの「今この瞬間」の気持ちに寄り添うレコメンド
・一人ひとりに合わせたパーソナライズドコンテンツの提供
など、従来型の一律的な提案とは異なる“個別最適化”が進んでいます。

AIエージェントの発展により、これまで課題とされてきた「お客様の声を直接聞くことが難しい」という壁も乗り越えつつあります。まるで友人やパートナーのような存在として、日常的に対話しながら購買体験を高めていく――そうした新しい顧客接点が広がっています。

もちろん、プライバシーや信頼性の確保といった新たな課題も生まれていますが、テクノロジーと人の距離が近づくことで、より豊かで意味のある顧客体験が実現できると感じております。


3. これからの時代の「WOWな体験」を生むための4つの視点

Q3.
これからの時代、企業が顧客に印象的な体験や、思わず“心が動く瞬間”を提供するには、どんな工夫や視点が必要だとお考えですか?
また、御社が考える「これからの顧客体験」のあり方についても教えてください。

A3.
たとえば、SNSで友人が感動したサービスをシェアしているのを見て、「自分も体験してみたい」と思われた経験はないでしょうか。AIによって自分の好みや行動パターンが読み取られ、ぴったりの商品やサービスが提案される瞬間に「特別感」や「驚き」を覚えることも増えてきました。

こうした“WOWな体験”を生み出すために、当社では次の4つの視点が重要だと考えています。

1. テーラーメイドな個客体験

 一人ひとりに合わせた特別な体験を提供し、まだ気づいていないニーズさえも先回りして提案することで、「自分だけ」の価値を感じていただく。

2. 気持ちが一瞬で高まるコンテンツ

 数多くの情報の中でも、瞬時に心をつかみ、消費行動につながるコンテンツを創出する。

3. ソーシャルグッドな消費体験

 自分だけでなく社会や他者にもポジティブな影響を与える体験を通じて、共感や感謝を共有できる消費へ。

4. 境界を越えて広がるシームレスなコマース体験

 どこでも、どんな手段でも違和感なく買い物ができる、日常と一体化したコマースを実現する。

私たちは、お客様との“長期的な信頼関係”や、導入後も続く運用・成長フェーズの伴走を大切にしております。たとえば、システム構築後も10年以上お付き合いが続くお客様が多く、追加開発や現場課題への迅速な対応、業務改善提案などを通じて、信頼を積み重ねてまいりました。

また、既存のシステム資産を活かしながら、最先端のクラウドサービスや新しい技術を柔軟につなげる総合力についても高く評価いただいております。

一言で申し上げますと、「人とテクノロジーが調和し、心に響く体験を生み出すこと」――その実現のため、伴走型のご支援と現場へのこだわりを持ってCX向上に努めております。

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4. 未来を見据えたコマース改革の第一歩とは

Q4.
今後のコマースやマーケティングの未来像を描く上で、どのような考えや方針を大切にされていますか?

A4.
例えば、「これからの時代にどのような体験価値を提供すれば、お客様や社会にとって本当に意味のある存在となれるのか」という問いを、常に大切にしていきたいと考えています。

未来を正確に予測することは困難ですが、
・社会や消費者の変化に敏感であること
・テクノロジーの進化を柔軟に受け入れること
・“少し先の未来”を見据えて、新しい提供価値を具体的なサービスとして形にしていくこと

これらの姿勢を持ち続けることが重要です。
現場の課題や業務改善のご要望を、日々直接吸い上げてご提案に活かすこと、また、PoCから本番運用・長期サポートまで一貫してご支援できる体制があることが、選ばれる理由だと多くのお客様から評価いただいております。

加えて、基幹システムとクラウドなど多様な最新技術を柔軟につなげる総合力も、私たちの特徴のひとつです。

今後も、お客様一人ひとりと真摯に向き合い、“共創パートナー”として価値ある未来のコマースをともに築いていきたいと考えております。


渡辺 啓之

渡辺 啓之

TIS株式会社

  • デジタルイノベーション事業本部 デジタルイノベーション事業部 副事業部長
  • エンタープライズサービス事業部 副事業部長

大手SIerにてコンテンツ領域・EC領域などの新規事業に従事。​ 大手アパレル企業に転職後は、執行役員としてデジタル戦略を統括し、EC事業部門とIT部門を管掌。データドリブンによる事業構造変革に注力し、物流等のサプライチェーンDXや、OMOを軸としたNextコマースの構築に取り組む。講演多数。​ TISに入社後は、コマース/デジタルマーケティング領域のソリューション戦略を統括。事業会社での実績と経験を活かして、事業戦略~施策実行まで幅広くご支援。​