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東洋製罐などで採用相次ぐ「SaaS型ERP」の絶大効果!
導入を成功させるポイントとは?(前編)

かつてのERP導入は、現行業務の再現性に重点をおき、業務に応じたアドオンを開発するのが当たり前だった。しかし、近年急速に変化するビジネス環境では、このようなアプローチは限界が生じている。そこで多くの企業が採用し始めているのが柔軟性と迅速性に優れた「SaaS型ERP」である。本稿では、ウーブン・バイ・トヨタやJAF、東洋製罐など具体的な企業の事例からSaaS型ERP導入の効果を紹介するほか、無理なく短期間で導入成功するための重要な考え方を考察する。

従来のERP導入手法ではコストや時間が課題に

企業システムの根幹をなすERP。そのためERPシステムの導入には膨大な時間とコストがかかり、かつては一度導入したら長期間使い続けることが前提となっていた。さまざまな工夫が積み重なった業務を、ITでうまく実現するために、ERPに対して多くのアドオン機能を開発していくのも当たり前だった。

しかし、近年のビジネス環境は急激に変化し続けており、システムも環境の変化にタイムリーに対応していくことが必要とされる。だがこの変化に、長期かつ高コスト、変化を前提としない安定的な思想で設計されたERPシステムが耐えられなくなってしまったのだ。

そのため、近年ではビジネス環境の変化に伴い、最新機能や業務を提供し続けるSaaS型ERPに注目が集まっている。SaaS型ERPは、メーカーが短いサイクルで機能をアップデートし続けるためアドオンをしない導入(Fit To Standard/標準導入)が推奨されている。SaaS型ERPを標準機能で導入することで、コスト面・スケジュール面での課題も解決することができる。

とはいえ、標準機能そのままの導入は、大幅な業務変更が必要となるケースや、そもそも商習慣に合わず業務推進が難しくなるケースも少なくない。業務の負荷が高まり、非効率になってしまっては本末転倒である。

そこでここからは、近年SaaS型ERPを導入した企業の事例とその効果を紹介しつつ、無理なくスムーズな導入を成功させる上で押さえておきたいポイントについて解説する。

顧客フロントから全社DXまで、多様な導入要件に対応するSaaS型ERP

SaaS型のERP製品を提供しているメーカーは数多く存在する。その中でもグローバル市場において一定の認知を獲得している1社がOracleだ。同社はクラウドネイティブなSaaSサービス群として、Oracle Fusion Cloud Applicationsを展開している。代表的なSaaS型ERP製品としては、Oracle Fusion Cloud ERP(以下、Oracle Cloud ERP)がある。

日本オラクル クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 戦略本部 事業開発部 船橋 直樹氏は、自社での活用例を交えて同ERPのもたらすメリットをこう説明する。

「Oracle Cloud ERPの導入が当社の決算発表の迅速化に寄与しており、Oracleでは9営業日でグローバル連結決算を発表しています。SaaS型ERPとして、財務会計、管理会計の効率化を可能にし、経営判断の高速化を実現しています。リモートワークが前提となる現在、在宅環境での決算業務にも貢献しています。」

ERPをはじめとするOracle Cloud Applicationsは日本でも数多くの企業に導入されているが、昨今Oracle Cloud ERP/EPMの採用が加速しており、2022年度も多くの企業で採用・導入が進んでいる。

たとえば、Oracle Cloud ERPを導入したパナソニックでは、事業領域の拡大や外部環境の変化によって、事業の組み換えが頻発しており、財務経理部による連結決算業務では、マニュアル作業でのデータ収集・加工や勘定照合等、業務工数が課題となっていた。

ホールディングス制への移行に伴い、Oracle Cloud ERPを採用し、導入に伴う業務改革によって、会計業務の抜本的削減と、決算早期化、経営管理の強化を進めているという。

<2022年度におけるOracle Cloud ERP 顧客事例>

船橋氏は、「顧客フロント業務からサプライチェーン、会計を含む全社DXを目的とした導入もあれば、電子帳簿保存法対応や調達領域のような部分的な導入や、段階的に導入するケースなど、さまざまな形態に対応した導入が実現できているのは、Oracle Cloud ERPの特徴であるComplete Suite、先進性、継続的な機能強化によるところが大きい」としている。

多様な要件に柔軟に対応できる「コンポーザブル」なERP

Complete Suiteとは、End to Endの業務の網羅性とコンポーザブルアーキテクチャによって成り立っている。Oracle Cloud Applicationsの特徴としては、お客様のフロント業務からバックオフィスまで企業活動に必要な業務領域を幅広くカバーしていることが挙げられる。また業務カバレッジの広さだけではなく、内部的なパラメータの豊富さで、その設定によってお客様ごと、業種ごとに異なる業務要件に対応することができる。

2つ目の特徴として、OracleのSaaSアプリケーションは、AI、機械学習、デジタルアシスタント、IoT、ブロックチェーン、ローコード・ノーコード開発などの先進的な技術を含む。たとえばAI領域においては、複雑な機械学習モデルを構築する必要がなく、標準機能でAIによる画像認識や将来予測、原因分析、不正検知などを利用できる。

3つ目は、継続的な機能強化で、全世界のOracleユーザーによるコミュニティから寄せられるリクエストから、直近1年では1,700以上の新機能が追加されており、ユーザーが求める時代に即した機能をいち早く利用できるのである。

4つ目はシステムの柔軟な組み立てや組み替えができる「コンポーザブル」なアーキテクチャであることだ。現代のビジネス環境では、絶えず変化する業界の需要に対応できる柔軟性が必要とされる。そこでは、アプリケーションの変更や追加によって他のシステムが受ける影響を最小限に抑え、安全かつ迅速、効率的にシステムを変更できるようにしなければならない。

<コンポーザブルなアーキテクチャにより、さまざまなプラットフォームとの連携が可能>

Oracle Cloud ERPは、コンポーザブルなアーキテクチャを採用していることから、基幹システムとのデータ連携を含め、効率性を重視して構築されている。

「もちろん、標準機能で対応できない要件も必然的に生じますが、PaaS上で、Oracle Cloud ERPと疎結合する形でExtension開発が可能なためコンポーザブル性は守られます。Oracleが提供するAPEXというローコード開発プラットフォームで対応でき、加えてERP内のデータと外部データを組み合わせたデータ分析環境を効率的に構築したいというニーズに対応する機能も備えています。ビジネスの変化に合わせてお客様とともに進化するのがOracle Cloud ERPです」(船橋氏)

これらの特徴、メリットの価値を享受するため、近年ERPの導入手法は次のように大きく変わってきている。

まず、経営環境変化への迅速な対応や、DXの本格的な展開など新たな環境変化に対応するため、長期で大規模なプロジェクトからの脱却である。そのためにSaaS型を選択し、追加開発は極力行わず、標準機能を活用した業務、プロセスの標準化を重視する傾向が強くなっている。

また、早期に導入効果を出すためにスモールスタートで成功体験を積み上げ、段階的な導入を進めるケースが増えている。

さらに、SaaS型ERPを活用して標準化できる業務領域と、企業としての独自性や競争優位性を支えるIaaSやPaaS上で構築する業務領域を切り分けて実装する手法がある。SaaS型ERPが持つ、標準機能やプロセスを採用することで従来よりも追加開発が圧倒的に減っており、導入プロジェクト期間の短縮化にもつながっている。

コンポーザブルなアーキテクチャの実装を目指して導入を決めたのがJAF(日本自動車連盟)である。

自動車の価値が変わる中で、顧客との関わり方や求められるサービスを変化させなければならないという課題を抱えていた同社は、疎結合アプリケーションとして設計・開発されたパッケージを使用しながら、データ基盤を整理した。会計と在庫管理の業務は標準機能を活用して業務プロセス改革を実施。顧客管理や会員サービスなどの分野については異なる製品を利用して適材適所の機能配置を行い、システムを刷新した。

また、トヨタ自動車の子会社で、自動運転技術の開発やスマートシティの建設を手掛けるウーブン・バイ・トヨタでは、会計と間接材購買のシステムをわずか2カ月で立ち上げた。この短期間での導入は、まさにFit To Standardを基軸とし、Oracle Cloud ERP の標準機能を採用、Extension開発を最小限に抑えたことによるものだ。

次のページでは、「SaaS型ERPを無理なく短期間で導入する3つのポイント」を紹介していく。

>>SaaS型ERPを無理なく短期間で導入する3つのポイント

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更新日時:2023年11月16日 16時10分