UIとUXの違いとは?UXデザイン成功事例と改善プロセスを解説
- UXデザイン
- UIデザイン
-
- デザインディレクター
- 人間中心設計スペシャリスト
濱野 祐香
2026.04.01
ユーザーが製品やサービスに求める価値は、単なる使いやすさだけでなく、心地よい体験を得られるかどうかも評価を大きく左右する重要な要素です。
こうしたニーズに応えるには、UXとUIの違いを正しく理解し、ユーザー視点でサービス全体を設計することが大切です。
本記事では、UXデザインの定義やUIデザインとの違いを整理したうえで、企業が直面しやすい課題と改善プロセスを分かりやすく解説します。あわせて、成功事例についても紹介しますので、UXデザインの導入や改善を検討する際の参考としてご活用ください。
UXデザインとは?UIデザインとの違い
「UX・UI」はセットで語られることが多い言葉ですが、これは互いに深く関わり合っているためです。ここでは、UXの定義とUIとの違い、それぞれの役割について詳しく見ていきましょう。
UXはユーザーの体験を指す
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーがサービスや製品を通じて得る「体験」のことです。UXは「使いやすい」「分かりやすい」「心地よい」など、ユーザーの感情や行動に影響を与える体験全体が対象になります。
難しい専門用語のように聞こえるかもしれませんが、例えば”誰かにプレゼントを贈るとき、相手の好みや気持ちを想像して選ぶ”という過程も、実はUXデザインの考え方と共通しています。
ユーザーが求める体験は日々変化するため、UXは直接的に設計できるものではありません。そのため、ユーザー視点で課題やニーズを見つけ、使いやすさや便利さだけでなく、心地よさや喜び(または感動)といった体験価値を含めて設計するのがUXデザインの本質です。
UXデザインとUIデザインの違い
UXデザインが「ユーザー体験」を設計するのに対し、UIデザイン(ユーザーインターフェース)は「ユーザーとの接点(見た目や操作性)」を設計するものです。
自転車を例にすると、ハンドルやサドルの形状はUIであり、「風を感じる気持ち良さ」や「自由に移動できる快適さ」がUXとなります。
どれだけ自転車のデザインが美しくても、乗り心地が悪ければ選ばれません。つまり、UIはUXを支える道具であり、UXの質を左右する要素の一つといえます。そのため、デザインを考える際は、UXを基点にUIを設計する必要があります。
UXデザインが重要な理由
近年、ユーザーは「モノ」そのものだけでなく、「それを使って得られる体験=コト」も重視するようになっています。
例えば、同じジャンルのアプリでも、使ってみたいと感じる機能や楽しさがあるか、直感的に操作できるかといった点によって、選ばれるサービスは大きく変わります。これは、UXの質がサービス全体の評価を左右しているためです。
また、スマートフォンの普及により、多種多様なサービスに日常的に触れられるようになったことも一つの要因でしょう。ユーザーの目が肥えたことで、少しの使いづらさや不便さでも、サービスから離脱してしまうケースは珍しくありません。
UXの良し悪しは、コンバージョン率や継続率、NPS(顧客推奨度)、離脱率といったKPIにも影響します。UXデザインの向上はブランドの信頼性を高め、ファン獲得につながる重要な要素といえます。
企業が抱えるUXにおける課題と改善ポイント
多くの企業がWebサイトやアプリを運営する中で、直面する課題はさまざまです。ここでは、企業が抱えがちな代表的な課題を取り上げ、それぞれの改善策やポイントを具体的に紹介します。
サイトやアプリの離脱率が高い
Webサイトやアプリの離脱率が高くなる主な要因として、ユーザーが求める情報にスムーズにたどり着けなかったり、操作にストレスを感じてしまうケースが挙げられます。ユーザーの離脱を防ぐためには、視覚的に分かりやすいインターフェース設計や、直感的なナビゲーション設計が欠かせません。
具体的な改善策は次の通りです。
- 必要な情報へ素早く誘導する導線を確保する
- ユーザーが困ったときにすぐに頼れるヘルプページやチャットサポートを用意する
- 適切なインタラクション設計を実施する
こうしたページ構成やボタン配置などの工夫により離脱を防ぎ、UXの質を高めることができます。
ユーザーのニーズを掴みきれていなく、アクティブユーザー数が伸びない
そもそも企業が「誰にとって、何ができて、どううれしいサービスなのか」を明確に定義できていないケースも少なくありません。
ユーザーの価値観や行動は多様化しているため、開発者側がユーザーのニーズを掴みきれていないと、期待された体験を提供できず満足度を下げてしまう原因となります。
こうした双方のギャップを埋めるためには、ユーザーへのインタビューやアンケートなどを通じて、定量・定性の両面から調査を行うことが重要です。
また、過去に作成したペルソナやカスタマージャーニーが現実のユーザー像と乖離している場合は、改めて見直しを行い、現状に即した形で再定義する必要があります。
社内にUX専門のデザイナーがいない
UXの重要性が理解され始めている一方で、社内にUXデザインを担える人材がいないという企業も少なくありません。UIデザイナーは在籍していても、UXデザインまでは対応できないというケースもあります。
社内リソースだけで改善できない場合は、UXデザイン専門のパートナーと連携するのも一つの方法です。
特に、初期段階ではスポット的に専門パートナーに依頼することで、実践的なノウハウを得ることができます。その後、社内にナレッジを蓄積して、持続可能なUX体制を整えていく方法も効果的です。
UXデザインのプロセス
UXデザインには、ユーザーの視点から課題を見つけ、最適な体験を提供する「人間中心設計(Human Centered Design 略:HCD)」という考え方が根本にあります。ここからは、UXデザインを効果的に実践するための5つのプロセスを、ステップごとに詳しく見ていきましょう。
①ユーザーのニーズ・課題発見
UXデザインの第一歩は、ユーザーの本質的なニーズや行動、不満点を深堀りし、現状の課題を明らかにすることです。例えば、「使いづらい」という声の背景には、「必要な情報が見つからない」「導線が直感的ではない」など複数の要因が隠れていることもあります。
こうした根本的な課題を正確に把握するためには、インタビューなどでユーザーの声を直接聞く「定性調査」と、アクセス解析やアンケートによる「定量調査」を組み合わせて実施することが理想です。
ニーズや課題が曖昧なままでは、UX改善の施策がズレた方向に進んでしまい、期待した成果が得られません。この段階からUXデザインのゴールを論理的に設計し、ユーザー理解を深めることがUX設計の土台になります。
②収集した情報の分析、体験設計や解決策の作成
ユーザーリサーチで収集した情報は整理して「ユーザー像(ペルソナ)」や「利用シナリオ(カスタマージャーニーマップ)」としてモデル化しましょう。
ペルソナ:ユーザーの行動パターンや利用目的、直面する課題を想定し、具体的な人物像に整理したもの
カスタマージャーニーマップ:ユーザーがサービスやプロダクトと出会い、体験するまでの行動や感情の流れを時系列で可視化したもの
ペルソナを設定することでターゲットが明確になり、意思決定の判断基準が揃います。また、カスタマージャーニーマップを用いることで、感情の起伏やつまずきやすいポイントを洗い出し、改善すべき点に優先順位を付けることができます。
これらをチーム全体で共有すれば、共通の課題認識や戦略的な方針が生まれ、プロジェクトをブレなく進行することが可能になります。
③試作品の設計
UXデザインの課題と改善の方向性が明確になったら、仮説を具体的な形に落とし込むプロトタイプ(試作品)の作成に進みます。
ここで気をつけたいのは、プロトタイプは実際のサービスやプロダクトの完成形を目指すものではないということです。「仮説を検証する」ことが目的であるため、最初から完成度を高くする必要はありません。
むしろ、作り込みすぎてしまうと、修正に時間やコストがかかり、改善サイクルのスピードが遅くなるリスクがあります。完成度よりもスピードと柔軟性を重視し、試作と検証を繰り返しながら改善サイクルを回しましょう。
④ユーザビリティの評価
試作品が完成したら、実際にユーザーが目的を達成できるものになっているか?を検証する必要があります。検証はターゲットユーザーにサービスを利用してもらい、使い勝手や操作時の迷い、不備などを観察・分析する「ユーザビリティテスト」の実施が有効です。
テストを通じて、操作ミスが頻発する画面、行き止まりとなる導線、手間がかかる操作フローなど、設計時には見落としていたUX上の課題を明らかにします。
社内メンバーの視点だけでは気づきにくい問題やバグを発見できるので、明確になった課題点はユーザーの表情や反応も含めてすべて記録し、客観的に評価します。
また、テスト結果はチーム内で共有し、何を優先的に改善すべきかを整理することで、次の改善サイクルに活かすことができます。
⑤サイクルを回しブラッシュアップ
UXデザインは、一度設計して終わりではありません。UX改善は「PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)」を基本とし、継続的に取り組むことが求められます。
製品やサービスをリリースした後も、アクセス解析やユーザーアンケート、利用ログの分析などを通じて、実際のユーザー行動や満足度を把握することが大切です。
仮説通りに機能していない箇所や、予想外の行動が見られた場合には、これまで実施した各ステップに立ち戻り、原因を特定しながらブラッシュアップを行います。
ユーザーの声はプロダクトの成長を左右する指標であるため、定期的なチェックと継続的な改善サイクルはUX向上には欠かせません。
UXデザインの実践事例とその成果
UXデザインは理論だけでなく、実際のビジネス課題の解決に直結する実践力が必要です。私たちUXデザイン専門チーム「XD Studio」は、業界を問わず多様なプロジェクトでUXデザインを支援してきました。ここでは、その取り組みの一例として、UXデザインの実践事例と成果をご紹介します。
金融機関向け会員サイトのUX刷新(MUFG)
三菱UFJ銀行では、富裕層顧客との新たな接点を生み出すため、来店や対面相談が難しい顧客に価値ある情報と体験を届ける会員サイトMUFGウェルスマネジメントOPUS(オーパス)を立ち上げました。
そこで「XD Studio」は、既存の世界観を継承しつつ、富裕層の心理や行動特性に寄り添ったUXデザインを提案。顧客インタビューを基にペルソナやカスタマージャーニーを設定し、情報構造や導線の最適化を行いました。
さらに、レコメンド設計やプロトタイプ制作、デザインガイドライン整備により、回遊性を高める導線や拡張を見据えた仕組みを構築。ブランドの信頼感を保ちながら新たな顧客接点を創出し、データ蓄積や資産運用への関心喚起につながる体験を支援しています。
本事例の詳細についてはこちらをご覧ください。
富裕層向けオウンドメディアの顧客体験デザイン支援
スポーツ業界のファン体験向上(B.LEAGUEシリーズ)
国内の男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」では、「2028年度までに総入場者数700万人」の目標達成に向け、バスケットボールを起点とした地域創生を推進しています。
その一環として、観戦目的で全国を訪れるファンが試合以外でも地域の魅力を体験できるよう、ファン向け施策「B.旅PROJECT」を立ち上げました。
「XD Studio」は、本プロジェクトのPoC(概念実証)において体験設計からロゴ・コピー、LP制作までデザインを一貫して担当。過去のユーザーリサーチを活用し、遠征経験があり新しい出会いを楽しめるタイプの層をターゲットに、投稿型の参加施策やインセンティブを盛り込んだUXを設計しました。
結果として、公開後の47日間で約200件の「おすすめスポット投稿」がSNSに集まり、ファン同士の交流促進や地域の新たな魅力発見につながる体験を数多く創出することができました。本取り組みは「B.LEAGUE」のビジョンを体現する試みとして、今後の施策立案にも活用可能な成果を残しています。
本事例の詳細についてはこちらをご覧ください。
ファンと地域をつなぐ「B.旅PROJECT」PoCを成功に導いたUXデザイン支援
地域幸福度可視化アプリによるウェルビーイング支援
「XD Studio」は、地域住民の幸福度を可視化し、住民参加型のまちづくりを促進する「地域幸福度可視化アプリ」のUX設計の支援を行いました。
当初の課題は「UIの使いづらさ」でしたが、詳細なヒアリングを通じて「サービスビジョンがユーザーに伝わっていない」という根本的な問題が判明しました。
「XD Studio」はまず、ワークショップを通じてサービスの想いや目指す体験を言語化し、「誰に、どのような価値を届けるのか」を明確化しました。
さらに、過去のPoC参加者へのインタビューを実施し、コンセプトの受容性を検証。内発的な動機から体験につながるよう、「自律性」「有能性」「関係性」を盛り込んだUXデザインを導入しました。
その結果、アプリの体験価値がユーザーに正しく伝わるようになり、継続利用を促すUXが実現。より多くの地域での導入を目指し、社会性・公共性の高い事業として本格的な事業化フェーズへと移行しました。
本事例の詳細についてはこちらをご覧ください。
地域住民の幸福度を可視化する「地域幸福度可視化アプリ」を成功に導いたUXデザイン支援
「XD Studio」では、他にもさまざまな企業のUX支援を実施しています。他の事例については以下にまとめているので、ぜひ参考にしてください。
XD Studio事例紹介
UXデザインに関するよくある質問
UXデザインの導入に必要な期間の目安は?
プロジェクトの内容や規模によって異なりますが、Webサイトやアプリを全体設計する場合は3〜6カ月以上、小規模な改善施策であれば数週間かかります。初期のリサーチから設計、プロトタイピング、検証・改善まで多くの工程が含まれるため、一定の時間とリソースが必要です。
期間はプロジェクトの規模や目的、対応範囲によって変動するため、導入前には必ず専門チームに相談し、見積もりを取るようにしましょう。
UXデザインはどのタイミングで始めるのが理想?
新規サービスの立ち上げ時のほか、既存サービスの運用フェーズやリニューアル時のUXデザイン導入も効果的です。
例えば、コンバージョン率(CVR)の低下やユーザーの離脱率増加、問い合わせの増加など、明確な課題が見られたらUX見直しのタイミングといえます。
また、ブランド戦略の刷新や新たなターゲット層へのアプローチを検討している場合も、UXデザインの再設計が必要です。
UXデザインの向上でサービスの魅力を高めよう
UXデザインは、ユーザーの心に届く体験そのものを設計する施策です。サービスやアプリが多様化する現代では、ユーザーがなぜ使いたいと思うか、どうすればユーザーに使い続けてもらえるかの見極めが求められます。
自社サービスの魅力を最大限に引き出すためにも、継続的な改善を行い、UXデザインを向上させましょう。
執筆者のプロフィール
-
濱野 祐香
デザインディレクター/人間中心設計スペシャリスト
TISインテックグループ クリエイティブデザイン部にて、デザイン組織「XD Studio」の立ち上げに貢献。UX デザイナー/デザインプロジェクトのディレクターとして、社内外の事業開発プロジェクトに多数携わり、ユーザー中心の視点から革新的な体験設計を推進。 XDStudioの対外的なプロモーション活動や、後進の育成にも積極的に取り組み、デザイン文化の浸透と組織強化に力を注いでいる。