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クラウドERP導入を変革する生成AI駆動開発 |Fit to Standardと競争力強化の両立を目指す

公開日:2026年3月

クラウドERP導入において、「Fit to Standard」と「現場固有要件への対応」の両立は、多くの企業が直面する構造的な課題である。標準機能への業務適合を進める一方で、競争力の源泉となるコア業務をどう扱うか――この問いに対する現実解として、生成AIを活用した開発アプローチが注目されている。

TISは「AI中心開発」を掲げ、システム開発プロセス全体に生成AIを組み込む取り組みを全社的に推進している。本稿では、ERP導入プロジェクトにおける生成AI活用の具体的な方法論と、現場で得られた知見を紹介する。なお、本稿で扱うのはERPプロダクト自体のAI機能ではなく、システム開発プロセスにおける生成AIの活用である。本手法は一般に「生成AI駆動開発」と呼ばれるが、本稿では以降「生成AI開発」と表記する。あわせて、AI全般を指す場合は「AI」、文章やコードなどを生成する技術は「生成AI」、人間が示した目的に基づき自律的に判断・行動しタスクを実行する技術は「AIエージェント」と表記する。

【※事例をすぐにご覧になりたい方は「5. TISの実践事例」へ】

1. 「Fit to Standard」の構造的課題と現実解

クラウドERP導入の基本方針として「Fit to Standard」が有効なのは論を俟たない。導入・運用コストの最適化、ベンダーによる継続的なアップデートへの追従、グローバル標準プロセスへの準拠――これらのメリットは、多くの導入事例で実証されている。

しかし、Fit to Standardのアプローチだけでは立ち行かない現実もある。ERPの標準機能がカバーするのは、業界横断的に共通化可能な業務領域に限定される。一方、日本企業が長年にわたり培ってきた業界特有の業務プロセスや、競争優位の源泉となる独自オペレーションは、標準機能の範囲外に位置することが多い。

この課題に対する現実解はいくつか存在する。
ひとつは、Fit to Standardを前提としつつ、標準化すべき領域とそれが難しい領域を見極めるアプローチだ。標準化できない業務については、TIS提供の会計処理エンジンクラウド型経費精算システム Spendiaなど、最適なサービスを柔軟に組み合わせて対応する。
もうひとつは、ERP本体は標準機能を維持しつつ、競争力に直結する領域はERP外に疎結合でアドオン開発する「Fit to Standard + 戦略的アドオン」というアプローチである。TISはいずれの手法も提供可能だ。

本コラムでは、特に「Fit to Standard + 戦略的アドオン」のアプローチに言及する。重要なのは、アドオンの範囲を「競争力の源泉」に限定し、むやみな機能拡張を避けることだ。この判断を誤ると、「スクラッチ開発」とほとんど同じことになってしまい、Fit to Standardのメリットが損なわれる。

生成AIは、このアプローチを実現するための有効なツールとなる。標準機能で代替可能な領域の特定、アドオンが必要な要件の切り分け、そしてアドオン開発そのものの効率化――各フェーズで生成AIを活用することで、Fit to Standardの原則を守りながら、必要な機能拡張を実現できる。

2. クラウドERP導入における課題

Fit to Standardを推進する過程で、多くのプロジェクトが共通の課題に直面する。以下では、特に生成AIによる解決が期待される領域を整理する。

2-1. 現行システムのブラックボックス化

長期運用されたオンプレミスシステムでは、ドキュメントの陳腐化や担当者の異動により、システムの全体像を正確に把握することが困難になっているケースが多い。As-Is分析に膨大な工数を要し、要件定義の精度にも影響を及ぼす。

2-2. アドオン開発における工数とリスク

Fit to Standardを維持しつつも、帳票やバッチ処理など、顧客固有要件への対応は避けられない。これらのアドオン開発は工数が積み上がりやすく、かつ品質が担当者のスキルに依存しやすい領域である。

2-3. レビュー・テスト工程の属人化

設計レビューやテストケース作成の品質は、担当者の経験値に左右される。特に複数システムとの連携が発生するERP導入では、見落としリスクが高まる。UAT(ユーザー受入テスト)での手戻りは、プロジェクト全体のスケジュールとコストに直接影響する。

3. 生成AI活用による課題解決のアプローチ

こうした課題に対して、生成AIは「たたき台の高速生成」と「人によるブラッシュアップ」を組み合わせるアプローチで解決策を提供する。以下では、具体的な効果を整理する。

3-1. 開発リードタイムの短縮

設計書のドラフト作成、画面モックアップの生成、コードの雛形出力など、「たたき台」を高速に生成することで、エンジニアは本質的な設計判断に集中できる。関係者間の合意形成も、具体的な成果物をベースに進めることで効率化される。

3-2. Fit to Standard判断の精度向上

Fit to Standardの手法によるERP導入成功を阻む要因の一つは、現行システムの機能が「本当にアドオンが必要か」を判断しきれないまま、カスタマイズに流れてしまうことにある。生成AIで現行システムを解析し、ERP標準機能との対応関係を可視化すれば、「標準機能で代替可能な領域」と「アドオンが必須な領域」を客観的に切り分けられる。結果として、不要なアドオン開発を回避し、Fit to Standardの原則を維持しやすくなる。

3-3. 成果物品質の標準化

生成AIを活用したレビュー支援により、要件の曖昧さや矛盾点を機械的に検出できる。レビュー観点の標準化が進むことで、担当者のスキル差による品質のばらつきを抑制できる。属人化した品質管理から解放されれば、特定の担当者に依存するリスクも軽減される。

3-4. 運用フェーズへの継続的な効果

FAQ・操作手順書の自動生成、クラウド製品アップデートの影響調査など、導入後の運用・保守フェーズでも生成AIは継続的に活用できる。特定の担当者しか対応できなかった業務をAIが支援することで属人化が解消され、IT人材リソースの制約がある中でも持続可能な運用体制を構築できる。

4. 工程別の生成AI適用領域

生成AIはERP導入の全工程で活用可能だが、効果が出やすい領域とそうでない領域がある。以下では、TISが実際のプロジェクトで効果を確認している工程別の活用ポイントを整理する。

4-1. 要件定義・基本設計

現行システムのソースコード解析によるリバースエンジニアリング、標準機能に合わせた業務設計、業務フロー図・設計書ドラフトの自動生成、画面モックアップの作成など。特に、ドキュメントが整備されていないレガシーシステムの可視化において、生成AIの効果は顕著である。

4-2. 開発

設計書からのコード生成、帳票・バッチ処理の開発支援。生成AIが出力したコードを人がレビュー・修正するアプローチにより、ゼロからのコーディングと比較して効率化が見込める。特に定型的な処理パターンにおいて効果が高い。

4-3. テスト

テストケース・テストコードの自動生成、テスト実行の自動化。手作業で工数を要していた領域の効率化により、テストカバレッジの向上とUATでの手戻りリスク低減が期待できる。

4-4. 運用・保守

クラウド製品のアップデート影響調査や技術調査にはAIが、QA対応や障害一次対応・切り分け支援、運用マニュアルの作成・更新には生成AIが力を発揮する。「ちょっと調べてほしい」から「ドキュメントを整備したい」まで、導入後も継続的に改善を回していくための頼れるパートナーになる。

5. TISの実践事例

TISでは、複数のクラウドERP導入プロジェクトで生成AIを活用した開発を実践している。以下では、現場担当者の知見を交えながら、帳票開発での効率化事例と、全工程での活用に取り組んだ事例を紹介する。成功体験だけでなく、試行錯誤のプロセスも含めてお伝えしたい。

5-1. 事例1.帳票開発における「0→1」プロセスの変革

あるお客様のクラウドERP導入プロジェクトでは、帳票ツール(Oracle BI Publisher)を使った帳票設計・開発に生成AIを活用した。
従来の帳票開発は、設計書を基にゼロからコーディングする作業であり、担当者の経験・スキルへの依存度が高かった。生成AIの導入により、このプロセスは「ある程度出来上がった形で生成AIが出力し、人が最後にブラッシュアップする」という形に変わった。いわば「0→1」の部分を生成AIが担い、人は「1→完成」の品質向上に集中できる構造である。
また、既存のソースコードに対するパフォーマンス改善においても効果が確認されている。従来、改善箇所の特定には相応の調査工数を要していたが、生成AIが解析を補助することで、調査フェーズの効率化が実現した。なお、本事例で採用した手法は特定業種に依存するものではなく、汎用的に適用可能である。業種固有の複雑な要件が発生しにくい領域であったことも、生成AI活用がスムーズに進んだ要因の一つといえる。

5-2. 事例2.要件定義からテストまで:全工程での生成AI活用

別の事例では、要件定義から設計、開発、単体テストまで、幅広い工程で生成AIを活用している。現行システムの解析、帳票開発、データモデル設計、バッチ設計、コーディング、画面モック作成――対象範囲は多岐にわたる。既に「AI」は単なるトレンドワードではない。生成AIによる対話型の支援や、AIエージェントによる業務タスクの実行支援が広がることで、具体的な業務改善を議論するための共通言語として、顧客との対話を後押ししている。

一方で、生成AI活用は最初から順風満帆だったわけではない。このプロジェクトでは、数十年前に導入されたシステムのリプレースを担当した。導入後のドキュメント整備が不十分であり、現行システムの全体像把握には膨大なソースコードを解析する必要があった。人的リソースのみでの対応は現実的ではなく、生成AIを活用したリバースエンジニアリングに取り組んだ。
ソースコードから設計書を起こし、さらに仕様書へと落とし込むプロセスを構築した。初期段階では期待どおりの結果が得られず、プロンプトの改善を繰り返した。試行錯誤を経て、チーム内で有効な方法論が確立され、業務部門へのヒアリングと生成AIによる解析を組み合わせることで、要件定義を完了できた。
実際に、現行システムの解析に生成AIを活用したことで、ブラックボックス化した仕様の可視化が大幅に効率化された。ブラックボックス化したシステムの可視化は、多くの企業が抱える共通課題であり、生成AIはその解決に有効なアプローチを提供する。

この経験から得られた知見は、生成AIは即座に成果を出せる「魔法の杖」ではなく、現場での試行錯誤とノウハウ蓄積が前提となるということである。TISでは、こうした実践知を社内で体系化し、他プロジェクトへの展開を進めている。

6. TISがこれから目指すこと

生成AIの導入だけでは、期待する効果は得られない。成功の条件として、以下の2点が重要である。

第一に、ERP導入の方法論と生成AIの特性、双方への理解が必要である。ERPの業務コンテキストを踏まえずに生成AIを適用しても、現場で使える出力は得られない。逆に、ERP導入の経験が豊富でも、各AIの得意領域と限界を理解していなければ、適切な活用シーンを設計できない。
第二に、現場での試行錯誤と知見の蓄積・共有が不可欠である。生成AIの出力品質は、プロンプト設計やインプットデータの整備に大きく依存する。プロジェクト固有の学習を経て、有効な方法論を確立する必要がある。

7. まとめ

クラウドERP導入における「Fit to Standard」と「競争力維持のためのアドオン」の両立は、構造的な課題である。生成AIは、この課題に対する有効なアプローチを提供する。標準機能の適用範囲の見極め、アドオン開発の効率化、成果物品質の標準化――各フェーズで生成AIを活用することで、Fit to Standardの原則を維持しながら、必要な機能拡張を実現できる。

TISは、ERP導入の実績と生成AI活用の知見を兼ね備えたパートナーとして、プロジェクトを支援する。Fit to Standardの進め方やクラウドERP製品について不安がある場合は、ぜひ一度お問い合わせいただきたい。

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更新日時:2026年3月11日 15時47分