サポート終了目前?古いロボットから脱却しよう!
~Windowsレガシプロジェクト移行における教訓~
公開日:2025年12月
皆様こんにちは!TISの松瀬です。
皆様の中には、UiPathでロボット運用をされている方も多いのではないでしょうか。
日々、安定した運用やさらなる高度化を目指し、UiPath社のサポートを活用したり、新機能の導入を検討されたりしている方も多いと思います。
しかし、現在も「Windowsレガシプロジェクト」をご利用の場合、UiPath社のサポートが受けられない、新しい機能が利用できないなど、今後の運用に不都合が生じる可能性があります。
こうした不都合を解消するためには、WindowsレガシプロジェクトからWindowsプロジェクトへの移行(以降、「Windowsレガシ移行」)が必要です。
本コラムでは、弊社が実施したWindowsレガシ移行の際によく発生したエラーや苦労した点についてご紹介いたします。
最初に、教訓として本コラムのまとめをお伝えします。
■Windowsレガシ移行に関する教訓
[1] UiPath公式ドキュメント等のナレッジを活用し、効率的にWindowsレガシ移行を進めるための計画を立てる
[2] Windowsレガシ移行後は、Studio動作確認およびUR動作確認 までを一括して実施することが望ましい
目次
1.Windowsレガシプロジェクトとは?
本章では、Windowsレガシプロジェクトについての概要や留意事項等について説明します。
プロジェクトとは?
UiPathでは、ロボットが実行する一連の処理やワークフローをまとめた単位のことを「プロジェクト」と呼びます。UiPath Studio(以降、Studio)で開発されたプロジェクトには、以下3つが存在します。(表1)
| プロジェクトの種類 | 特徴 |
|---|---|
| Windows | Windows環境で使用可能。 Windowsレガシと比較すると性能面や機能面で優れている。 |
| クロスプラットフォーム | Windows、Linux、macOS環境で使用可能。 Windowsレガシと比較すると性能面や機能面で優れている。 |
| Windows – レガシ | Windows環境で使用可能。 Windowsプロジェクトやクロスプラットフォームプロジェクトと比べて、性能や機能面で劣る場合がある。 |
表1:プロジェクトの種類(*1)
(*1)より詳細な説明は、「※表1に関する補足 」をご参照ください。
Windowsレガシプロジェクトとは?
Windowsレガシプロジェクトは、従来のStudioで作成できたプロジェクト形式のことです。Studio上では、「Windows – レガシ」という表記でプロジェクト作成時に選択できたり(*2)、プロジェクトパネル上で確認することができます。
Windowsレガシプロジェクトは、Studio LTS(*3)では当面の間サポートされるとUiPath社より示されていますが、今後Windowsレガシプロジェクトで使えるパッケージは古いものだけとなり、新しい機能や更新が受けられなくなります。(2025年10月1日時点)
上述のような影響を回避するためにWindowsレガシプロジェクトで作成したプロジェクトは早めにWindowsプロジェクトへ移行することを推奨します。
(*2)Studio2024.10以降では、既定の設定では新規プロジェクトの作成ができなくなっています。
なお、設定を変更することで新規作成は可能です。
(*3)LTS・・・「ロングタームサポート」の略で、年に1~2回リリースされるサポート期間の長いバージョンを指します。
参考URL:
https://docs.uipath.com/ja/studio/standalone/latest/user-guide/about-the-windows-legacy-compatibility
※表1に関する補足
WindowsプロジェクトがWindowsレガシプロジェクトよりも性能面や機能面で優れている理由は、プロセス実行時のマシンのビット数の違い、各プロジェクトで使用される .NETのバージョンの違い、もしくはパブリッシュ時のコンパイルの有無によるものです。(表2)
一般的に、32ビットよりも64ビットの方が、また、コンパイルしない場合よりもコンパイルする場合の方が、性能は向上しますし、.NETのバージョンも新しいほうが機能面で優れています。
| プロジェクトの種類 | プロセス実行 | .NET | コンパイル有無 |
|---|---|---|---|
| Windows | 64ビットで稼働 | .NET 5、.NET 6、.NET 8を使用 | 有 |
| Windows – レガシ | 32ビットで稼働 | .NET Framework 4.6.1を使用 | 無 |
表2:WindowsプロジェクトとWindowsレガシプロジェクトの特徴
2. Windowsプロジェクトへの移行方法
本章では、Windowsレガシ移行の移行方法について説明します。移行にはStudioを使用します。
バージョンごとの移行方法の流れ
まず、現在ご使用中のStudioのバージョンを確認してください。バージョンによって移行時に必要となる作業内容が異なります。(表3)
続いて、以下にバージョンごとの移行方法の流れを示しますので、ご確認ください。
| パターン | Studioバージョン | 移行方法の流れ |
|---|---|---|
| A | V2022.4以前 | ① Studioをv2022.10以上にバージョンアップ(*4)
② ①で上げたバージョンに応じてパターンBまたはパターンCを実施 |
| B | V2022.10~V2023.10 | ① Windowsプロジェクトへの移行 ② Windowsプロジェクトで実行確認 |
| C | V2024.10以降 | ① ワークフローアナライザーによる構文検証(*4)
② パターンBを実施 |
表3:Studioバージョンに応じた移行方法の流れ
本コラムでは、パターンB「①Windowsプロジェクトへの移行」についてご紹介します。
(*4)パターンA「①Studioをv2022.10以上にバージョンアップ」、およびパターンC「①ワークフローアナライザーによる構文検証」は、本コラムでは割愛いたします。以下、参考URLなどをご参照ください。
参考URL:
https://docs.uipath.com/ja/studio/standalone/2024.10/user-guide/update-studio
(v2024.10へバージョンアップする場合)
https://docs.uipath.com/ja/studio/standalone/2024.10/user-guide/about-workflow-analyzer
(ワークフローアナライザーについて)
Windowsプロジェクトへの移行手順
Windowsプロジェクトへの移行は、以下の手順で行います。
なお、移行後に正常に動作しないケースも多いため、移行前には必ず移行元のプロジェクトのバックアップを取得し(*5)、継続してRPA運用ができる状態を確保しておくことを推奨します。
①Studioで移行対象のWindowsレガシプロジェクトを開きます。
②Studioのプロジェクトパネル内でプロジェクトを右クリックし、「Windowsに変換」を選択します。
③「Windowsに変換」というウィンドウが表示されます。
④「新しいプロジェクトを作成する」にチェックを入れ(*6)、「変換」ボタンをクリックします。
以上で、Windowsレガシ移行は完了です。
移行手順はそれほど難しくなく、比較的シンプルかと思います。
なお、移行後はWindowsプロジェクトが問題なく動作するかどうか、必ず実行確認を行ってください。
(*5)Windowsエクスプローラーで、該当のWindowsレガシプロジェクトを別の場所(例:ローカルのデスクトップなど)へコピーしてください。
(*6) 移行後は元のプロジェクトへ戻すことができないため、念のため新しいプロジェクトとして作成することを推奨します。
3. Windowsレガシ移行で頻発したエラー事例の紹介
本章では、過去に弊社が実施したWindowsレガシ移行の際に、発生頻度が高かったエラーの種類についてご紹介します。
アクティビティパッケージに関するエラー
Windowsレガシ移行時には、さまざまな種類のエラーが発生しますが、なかでもアクティビティパッケージに起因するエラーは頻繁に見受けられました。本コラムですべての事例を挙げることはできませんが、一例として、発生したエラーの内容や原因、対策についてご紹介します。
■エラー内容
Windowsレガシプロジェクトで使用していたアクティビティが、移行時に自動的にバージョンアップされてしまい、移行後のWindowsプロジェクトで正常にRPAが稼働しなくなった。
■原因
低いバージョンのアクティビティパッケージが.NET 6をサポートしておらず、.NET 6をサポートする最も低いバージョンに自動的に更新されたため。
■対策
本エラーは事前に対策を講じることが難しいため、移行後のWindowsプロジェクトにおいてワークフローを修正し、正常に動作することを確認する必要がある。
アクティビティパッケージに関するエラーはその他にも以下のような事象が発生していました。
- Windowsプロジェクトで使用できないアクティビティパッケージのバージョンが、エラーとして検出された。
- アクティビティパッケージ自体はWindowsプロジェクトで使用可能でも、パッケージ内の一部アクティビティがサポートされず、削除されている場合があった。
- 一部のアクティビティにおいて、プロパティパネルが表示されなかった。
今回ご紹介したエラーも含め、Windowsレガシ移行時に発生するエラーについては、UiPath社にも問い合わせをしながら対処していました。しかし、事前の検証や把握が難しいという回答をいただくことも多く、上記「■対策」のような対応を取らざるを得ない場合もありました。
また、発生したエラーの種類については、原因や対処法をナレッジとして蓄積し、今後Windowsレガシ移行を行うプロジェクトで活用することで、徐々に効率良く推進していくことが大切だと考えます。
4. Windowsレガシ移行における課題と振り返り
本章では、弊社がWindowsレガシ移行を実施した際に苦労した点や、その振り返りについてご紹介します。読者の皆様の環境や状況によって、Windowsレガシ移行の最適な進め方は異なる場合がありますので、参考情報としてご覧いただけますと幸いです。
苦労した点①:Windowsレガシ移行の必要性を現場に浸透させる難しさ
皆様の中には、RPAの運用・保守に携わっている方も多いかと思います。
運用・保守の現場では、RPAのエラー対応や運用改善対応など、日々多様な業務が発生していると思います。そのような状況の中で、2025年現在は、Windowsレガシ移行の対応もRPA運用・保守における重要なテーマの一つとなっていると考えます。
しかし、以下のような理由により対応を行う優先度が低い現場もあるのではないでしょうか。
- Windowsレガシ移行に取り組まなくてもRPAが稼働しているため、特に困っていない
- Windowsレガシに対するUiPath社のサポート期限が延長されたことで、「いつかやればよい」という考え方になっている(*7)
- Windowsレガシ移行に関するナレッジが不足しており、移行計画の策定が難しい
弊社でも同様の傾向があり、Windowsレガシ移行は後回しとなっていました。
■対策
上記の状況に課題を感じたため、以下の計画でWindowsレガシ移行に取り組むこととしました。
- まず、「いつかは必ず対応しなければならない」という点を現場に理解・浸透させる。
- 移行の進め方やスケジュールを工夫し、メンバー全員で納得して取り組むように配慮。
1.Windowsレガシ移行のナレッジが不足していたため、事前調査フェーズや移行対応フェーズを設け、先に課題を洗い出す。
2.本番稼働フェーズに移る際は、Windowsレガシ移行以外の改善対応と合わせてWindowsレガシ移行に取り組むようにする。
“いかに効率良くWindowsレガシ移行を進めるか”を現場で何度かすり合わせし、結果、上記のようなステップとなりました。
現在はUiPath社のドキュメントポータルにWindowsレガシ移行の計画策定に関するページ(*8)もありますし、弊社がWindowsレガシ移行に取り組んだ際の対応ナレッジ(*9)なども公開しているので、これらの情報を活用することで、以前よりもWindowsレガシ移行が進めやすい状況になってきていると考えます。
(*7)Windowsレガシプロジェクトに関するタイムラインの詳細については、以下のURLをご参照ください。
参考URL:
https://docs.uipath.com/ja/overview/other/latest/overview/deprecation-timeline#deprecation-timeline
「今後削除される機能」>「以下のアクティビティ パッケージ(記載されたバージョン以降)における .NET Framework 4.6.1 のサポート」の項目をご確認ください。
(*9)ナレッジの提供方法・条件等については、以下フォームよりご相談ください。
https://www.tis.jp/inq/rpa_uipath/
苦労した点②:Windowsレガシ移行の進め方に課題があり、手戻りが発生した
Windowsレガシ移行を行った後は、最終的に本番環境で問題なく動作することを確認する必要があります。この点については、多くの方にご理解いただけるかと思います。
そこで、弊社ではWindowsレガシ移行を、以下の流れで進めました。(表4)
| # | フェーズ | 作業 |
|---|---|---|
| 1 | 事前調査 | ①Windowsレガシ移行における既知の事象について、UiPath社のドキュメントポータルを調査する。 |
| 2 | 移行対応 | ①[Studio]:一部のWindowsレガシプロジェクトをWindowsプロジェクトへ移行 ②[Studio]:移行時に発生したエラーがあれば、その都度修正 ③[Studio]:Studio上でRPAが問題なく稼働するか、動作確認を実施 |
| 3 | 本番稼働 | ①[UR]:本番環境(UR)において、動作確認を実施 |
表4:Windowsレガシ移行のフェーズ別作業
苦労した点①でも述べたように、移行対象のWindowsレガシプロジェクトではフェーズ2(移行対応)まで実施し、課題を洗い出せば効率的に進められると考えていました。
しかし、フェーズ3(本番稼働)に進むと初めて発生するエラーや手戻りが生じ、移行スケジュールや対応工数に影響が出ました。
■対策
この経験を踏まえ、現在はプロジェクトごとにフェーズ3(本番稼働)まで一貫して実施し、URでの稼働確認まで含めてエラーを洗い出す運用に変更しています。これにより、ほとんどのエラーと対処法を事前に把握でき、移行を効率的に進められるようになりました。
また、フェーズ1(事前調査)に時間をかけすぎず、早期にフェーズ3(本番稼働)まで進めて問題を洗い出す方が、結果的に効率的だと考えています。
ただし、この方法では移行初期の段階でフェーズ3(本番稼働)にてエラーが頻発する可能性があります。そのため、まずは本番稼働時にエラーが発生しても影響の小さいプロジェクトから着手することをおすすめします。
5. まとめ
本コラムでは、Windowsレガシ移行について、Windowsレガシプロジェクトの概要や移行の手順、移行時に発生しやすいエラーの種類、そして弊社がWindowsレガシ移行を行った際に苦労した点についてご紹介いたしました。
UiPath社サポートの期限が延長されたこともあり、Windowsレガシ移行の優先度がそれほど高くない現場も多いかと思います。しかし、本コラムでも述べた通り、現場でWindowsレガシ移行を行った際にどのようなエラーが発生するかを早期に把握し、ナレッジとして蓄積しておくことで、今後の移行作業がより円滑に進む可能性があります。ぜひ一度、移行について検討してみることをおすすめします。
最後までご覧いただきありがとうございました。
本コラムが、皆様のWindowsレガシ移行の一助となれば幸いです。
さいごに
TISでは、UiPathの導入から運用後の課題解決まで、現場に寄り添ったサポートを行っています。今回ご紹介した内容以外にも、実際の現場で得られた知見が多数ございますので、ご関心があればぜひご相談ください。
執筆者:松瀬 高志
※本コラムはTISエンジニアの実体験・知見に基づく内容を記載していますが、記載された情報や手順が全ての環境で同様に動作することを保証するものではありません。万が一、本コラム内容を参考にしたことによる損害等が生じた場合、当社は責任を負いかねますのでご了承ください。また、記載されている情報はコラム公開時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
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