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#8 TISエンジニアが解説!RPA運用品質の考え方と実践ガイド

公開日:2025年12月

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務自動化は、多くの企業で導入が進み、業務効率化の推進役となっています。一方で、導入時の品質に関する事例は豊富ですが、運用フェーズに入ってからの品質維持や安定運用に関する課題は、あまり語られていないのが現状です。本コラムでは、運用時のRPA品質改善に焦点を当て、TISエンジニアによる現場での取り組みや事例を交えながら、実際に直面する課題とその解決策をご紹介します。

1.運用フェーズにおけるRPA品質とは

RPAは定型業務の自動化を得意とし、導入段階では「開発標準」や「テスト」による品質確保が一般的です。プログラムの可読性や保守性、再利用性を担保するための開発標準、業務要件を満たすかどうかを検証するシナリオテストなどが、UiPath公式の情報をもとに広く実践されています。しかし、運用フェーズに入ると、これらの初期品質に加えて「安定性」が求められるようになります。安定性を高めるためには、「成功率」「処理可能な業務量」「変化への適応力」の3つを重視することがポイントです。次章でそれぞれ詳しくご紹介します。

図1:RPA品質のイメージ

2.安定性を担保する鍵

運用フェーズで特に重要となる3つの観点について解説します。

●成功率

RPAが期待通りに処理を実行できているか評価する指標です。運用フェーズでは特に「RPAが業務処理を完了させた件数」に注目しましょう。システムエラーは当然のこと、業務エラーを除いた件数を測定するためには設計段階での工夫が必要です。一般的には、成功率90%以上(クリティカルな業務であれば99%)を指標に設定される事例が多いです。

●処理可能な業務量

RPAが稼働当初と同じ処理量を維持できているかを検証します。業務量の変化やロボット端末の経年変化(OSアップデートなど)による影響を定期的にチェックし、必要があればロボット数の増強や端末交換などの対応を実施します。

●変化への適応力

クラウドサービスの仕様変更やOSのアップデートなど、外的要因の変化にいかに柔軟に対応できるかどうかが運用品質を左右する重要なポイントです。これらの変化をいち早く検知し、必要な改修を迅速に実施できる体制や変更管理の仕組みを整備することが不可欠です。

観点 目的 アクション例
成功率 正確な業務完了 ログ分析
ヒアリング
処理可能な業務量 大量データや変化する業務負荷への対応 環境チェック
分散処理の検討
変化への適応力 業務システムや環境変化への対応 通知管理
運用監視の体系化
外部パラメータ管理 など

表1:運用時の品質観点について

次章では、「変化への適応力」について具体的な取り組みを紹介します。

3.変化への適応力を高める具体策

3-1 通知管理

ネットワークやクラウド障害の際、エラー通知やリトライ処理を設計段階で盛り込むことで業務への影響を最小化します。
実際の現場でもエラー検知の仕組みが即時対応に役立っています。特にWebhookを利用したMicrosoft Teams連携など、即時対応に適した運用が活用されています。

図2:Microsoft Teamsに連携したエラー情報

3-2 運用・監視の体系化

クラウドサービスのメンテナンスやアップデート情報を能動的に収集し、事前・事後に影響を把握することで、改修のタイミングを逃さず対応できます。UiPathの場合は、非推奨化タイムラインやリリースノートを定期的に確認することが有効です。
実際のプロジェクトでも非推奨化のタイムラインを3か月に1回、リリースノートを毎月確認する運用を取り入れることで検知漏れを防いでいます。また、システム連携を行う事例では、対向システムの変更管理フローの中に「RPAへの影響有無チェック」を追加してもらうことで事前検知ができます。
<参考URL>

3-3 開発~運用サイクルを早く回す仕組み・体制

開発ルールやバージョン管理、リリース手順を整備し、ステータス管理やレビュー工程の自動化を図ることで、サービス変更への迅速な対応が可能となります。
弊社では開発・構成管理・リリース手順とルールを整備した上で、ステータス管理ツールの導入やレビューの自動化を行った例があります。

図3:ステータス管理自動化の例(PowerAppsとPowerAutomateを利用)

3-4 業務担当者との連携

RPA開発者と業務担当者が密にコミュニケーションを取り、変更時は内容を精査しながら迅速な対応方針を決定します。特にクラウドサービスの利用は変更される可能性があること、RPAはその変更に対応していく必要があることを事前にしっかり説明し理解を得ておくことが大切です。

3-5 最新ソリューションの適用

利用するクラウドサービスの変化にRPAをキャッチアップさせることも1案です。例えば、RPAはこれまで予期しない状況での対応に弱いという課題がありました。対応が予期できるものはイレギュラーケースとして実装できましたが、それでも対応できないケースはエラーとして処理するしか打ち手がなく業務成功率に影響が出ざるをえない状況でした。これに対してUiPathの最新技術の1つである「Healing Agent」は有効な解決策になりえます。この機能を利用することで改善案の提案を受けることや、RPA実行中にロボットが自動で改善処理を行ったりすることが可能になります。新機能のため、技術検証の時間は必要となりますが、活用できれば大きな改善の手立てとなります。
クラウドサービスの変化に気づくだけではなく、能動的に新しい機能も使いこなすことが今後は求められるのではないでしょうか。

※Healing Agentについては別コラムで紹介していますので、詳細は こちら をご確認ください。

4.まとめ

本コラムでは、UiPath運用における品質改善のポイントについてご紹介しました。RPAは業務現場に密着した技術であり、運用フェーズでの品質維持が安定稼働の鍵となります。品質向上の取り組みは、安定運用の課題解決に直結します。クラウドサービスやシステムの変化に振り回されない運用体制をぜひ検討してみてください。

さいごに

TISでは、UiPathの導入から運用後の課題解決まで、現場に寄り添ったサポートを行っています。今回ご紹介した内容以外にも、実際の現場で得られた知見が多数ございますので、ご関心があればぜひご相談ください。

執筆者:今井 杏紀

※本コラムはTISエンジニアの実体験・知見に基づく内容を記載していますが、記載された情報や手順が全ての環境で同様に動作することを保証するものではありません。万が一、本コラム内容を参考にしたことによる損害等が生じた場合、当社は責任を負いかねますのでご了承ください。また、記載されている情報はコラム公開時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
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更新日時:2025年12月15日 15時7分