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いまを読み解く

ビーコンを組み合わせた次世代型決済基盤で来店行動データに基づくOMOを実現

BtoCビジネスを手がけるマーケターにとって、ECサイトかリアル店舗かを問わず、ユーザーのあらゆる購買行動を取得・分析できる仕組みの構築が喫緊の課題となっている。その一つの鍵となるのが、ポイントシステム(vol.1参照)の活用だが、さらにビーコンを組み合わせることで、取得できる情報の質は大きく向上する。今回、ビーコンのビジネスの草分け的存在であるTangerine社の平井社長を迎え、次世代型の決済基盤のあり方について展望する。

【写真左】
TIS株式会社 サービス事業統括本部
デジタルトランスフォーメーション営業企画ユニット
デジタルトランスフォーメーション企画部 フェロー
岡部 耕一郎

【写真右】
Tangerine株式会社
代表取締役

平井 清人

注目を集めるリアル店舗の購買行動データ


岡部この数年、小売業・サービス業は、ECサイトの閲覧・購買履歴に基づいて「個客」に最適化したレコメンドを行う仕組みづくりを急ぎ、TISでもこれをお手伝いしてきました。しかし、ここに来て、リアル店舗における購買行動、つまりオフラインのデータへの関心が急速に高まっていますね。

平井これまで、オンラインの購買行動はつかめていても、リアル店舗で分析対象にできるソースはPOSデータ程度しかないというケースが多く見られました。来店者一人ひとりにあった接客・販促を行うには、これまで取得してこなかった「これまでに、いつ、何回来店したのか」、「どの売り場に何分滞在したのか」といったオフラインの購買行動データが必須と言えます。

岡部オフラインの購買行動データの価値が高まっている背景として、スマートフォンの普及があると思います。スマートフォンを利用すれば、オフラインデータの分析結果に基づき、来店中のお客さんに対して、タイムリーにOne to Oneのマーケティングを実施できますね。

平井スマホ時代を迎えた今、消費者の来店行動をデータ化する有力な手段の一つがビーコンです。カメラとAIによる顔認識で来店客を識別する仕組みも出てきていますが、スマートフォンを介して店舗側からユーザーへコンタクトできる点は、ビーコンの大きな優位性だと思います。

小売店舗で存在感を高めるビーコンとは


岡部平井社長は、7年前にTangerine社を創業して以来、ビーコンに特化したビジネスを手がけられていますね。

平井ビーコンの予備知識がない方へ、まず簡単に説明を。これは、店舗内に設置した複数台のビーコン端末と、来店客のスマートフォンの間の数メートルを、Bluetoothで無線通信する仕組みです。来店情報や、ユーザーが今どこの売場にいるかの情報を取得したり、Bluetoothで店舗側からユーザーへクーポンやメッセージを送ることができます。

岡部最近では、専用のビーコン端末以外に、LED照明や自動ドアセンサーにチップを組み込んだ一体型ビーコンも出てきていますね。

平井はい。店舗にとって、ビーコンを非常に導入しやすい状況になっていると言えます。またBluetooth機能を常にONにしているユーザーが増えたことも追い風です。7年前はわずか数%でしたが、最近はBluetooth対応のイヤホンやスマートウォッチなどが急速に普及したことで、常時ONにしている人が大多数を占めるまでになっています。

岡部ビーコンは例えると、屋内版のGPSのような存在だと思います。衛星電波が届かない屋内や地下であっても、ビーコンなら利用できると。

平井米国のある大手小売店では、1つの大型店舗に数千個のビーコン端末を配置して、ユーザーの位置情報を集めている例もあります。ちなみに、ビーコンで位置情報を取得するには、ユーザーの許諾を得る必要がありますが、よく用いられるのが、ビーコン機能を組み込んだ店舗・ブランドの公式アプリをインストールする際、オプトインしてもらう方法です。これにより、以降は特別な操作をしなくても、店舗訪問時に自動的にビーコン端末とスマートフォンの間で通信が行われます。

来店者のさまざまな購買行動を販促のチャンスに変える


岡部TISは現在、「クラウド型ECサイト基盤+ポイントシステム」を利用して、オンライン/オフラインの購買行動データを同じ会員IDに紐付けて管理できる仕組みを提案しています。これにビーコンを加えることで、さらに決済基盤として機能が向上すると見ています。

平井ビーコンを加えることによる分かりやすいメリットは、マーケターが分析できるデータの種類が増える点でしょう。これまで取得してきた、ECサイトの購入・閲覧履歴や、お気に入りに登録した商品の情報に、リアル店舗の購買行動データが加わることで、一人ひとりの嗜好やニーズをより高精度で判断できることになります。

岡部ポイントシステムとビーコンの相乗効果として、どのような使い方があると思いますか?

平井店舗を訪問したタイミングで、公式アプリ上でポイントを付与することで、「お店に行く楽しみ」を提供できるようになります。また、店舗内の特定の売り場へ移動した際や、一定の距離を移動した際、特典のポイントを付与することで、売場内の回遊の促進につながります。従来のポイントシステムは、購入金額に応じてポイントが付与されましたが、ビーコンを組み合わせることで「行動」に対してポイントを付与するという新たな仕組みを設けることがでます。

オフラインの購買行動データとECサイト基盤の連携がもたらす効果


岡部ビーコンで取得したオフライン情報をECサイト側と共有することで、どのようなオンライン施策が考えられますか?

平井例えば、あるユーザーが来店時によく足を運ぶ売り場や、試着室に滞在した時間などの情報をECサイト基盤に渡すことで、ECを利用した際、それらの購買行動から導き出した商品をレコメンドすることで、売上増が期待できるのではないでしょうか。

岡部その逆に、ECサイトの閲覧・購買履歴を店舗における接客に活用することもできそうですね。

平井過去にECサイトで閲覧した商品や、カートに入れて購買に至らなかった商品の情報に基づき、本人が店舗を訪れたタイミングでメッセージやコンテンツを送出する使い方も有効でしょう。スマートフォンで公式アプリを開くと、お目当ての商品がどの売り場にあるのかを表示して案内したり、その商品の割引クーポンを送り、購買の意思決定につなげる使い方も効果的だと思います。


ビーコンやポイントシステムを利用して、オンライン/オフラインをシームレスに連携させることで、販売チャネルを問わず、消費者に上質な購買体験を提供できるようになります。TISでは、クラウド型ECサイト基盤をはじめ、容易に組み込める独自のSaaS型ポイントシステム、そしてビーコンを組み合わせたOMO時代に適したシステム構築をワンストップでお手伝いします。また、ビーコンで取得した購買行動データやECサイトの閲覧・購買履歴など、さまざまなチャネルで得た顧客データを蓄積するプラットフォームも提供可能です。どうぞお気軽にご相談ください。


ビーコンで、メーカーから消費者へダイレクトで販促を実現

消費財メーカーのように、量販店やドラッグストアに商品を卸して販売する業態の場合、消費者との直接の接点がありません。このような業態でのビーコン活用例として、小売店を訪問している消費者のうち、自社商品の『棚前』にいる人にだけ、販促を実施することができます。
Tangerineが手がけた実例として、ある飲料メーカーが小売店の飲料売り場にビーコンを設置し、そこにいる人にメッセージングアプリのビーコン機能(LINEビーコン)を通じてクーポンを送る販促施策を実施しました。飲料売り場にいる人のほとんどは飲料購入が目的なので、無作為にクーポンを配布する場合よりも格段に高いコンバージョン率を達成しました。


※社名、製品名、ロゴは各社の商標または登録商標です。
※本記事の情報は2020年9月15日現在のものです。

 
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