私は前職時代に、EC事業における顧客アンケートを実施する機会がありました。そこで印象的だったのが、これほどECが一般化している時代にも関わらず、「ECではサイズや質感がつかめないから、お店で買う」、「お店で確認してから、ECで買う」という、店舗訪問を前提とした回答が多かったことです。
それが2020年のコロナ禍で、消費者は半ば強制的に、ECでしかモノを買えない状況に直面しました。これを契機として、それまで及び腰だった人が「ECで問題なく買えるじゃないか」と、快適さを知ることに。お店に出かける代わりにECで買う傾向に、ますます拍車がかかったと考えられます。
しかし、事業者にとってECさえあればリアル店舗が不要かと言えばそうではなく、EC化率の向上に注力した企業の中で、コロナ禍以前の数字までトータルの売上を回復できたケースはあまり多くありません。
将来的にも、すべての物販がECへ移行する可能性は小さいと考えます。おしゃれな服を買いたい人は、原宿や渋谷のお店で流行を体感したいでしょうし、化粧品を選ぶ時は、百貨店の美容部員から直接レクチャーしてもらったり、香水の香りをテスティングしたい人も多いはず。五感を使った買い物体験は、スマホの画面の中ではできませんから、今後、リアル店舗とECは、足りない部分を補完しあって共存していくだろうと予想します。