#12 作業の自動化から業務全体の自動化へ~UiPath Maestroの概要と便利機能のご紹介~
公開日:2026年4月
みなさま、こんにちは。TISの松瀬です。
現在(2026年3月現在)、多くの企業で定型作業のRPA化がすでに広く浸透している状況です。
一方で、「次にどの業務を自動化すべきか迷っている」「ロボットやAIエージェントを試してみたが、本格展開に至らない」といった悩みを抱える企業も少なくありません。そのため、次のステップとして、ロボットやAIエージェント、そして人が協調しながら業務を進める、より高度な業務自動化への取り組みが検討され始めています。
こうした流れの中、2025年4月にUiPath社より「UiPath Maestro」(以下、Maestro)の一般提供が開始されました。UiPath社主催のイベントや各種Webサイトでも、Maestroの機能や使い方、活用事例紹介などの情報が徐々に増えています。
本コラムでは、Maestroを活用してより高度な業務自動化を実現するため、
- Maestroを利用する目的
- Maestroの概要
- Maestroの機能紹介
について解説していきます。
1.なぜMaestroが必要なのか?
業務を円滑に進めるためにはさまざまな作業が存在しますが、データの取得や入力、照合作業など、作業量が多く、同じ手順を繰り返す「定型作業」については、多くの企業でRPAによる自動化が進んでいます。
依然として業務効率化やコスト削減、業務の高度化を目指した施策は必要ですが、RPAによって大きな効率化が可能な定型作業は、すでに多くが自動化され、徐々にその数が減少している状況です。(*1)
(*2)
その結果、次の効率化対象として、パイロット段階文章の作成や要約、複数のデータをもとにした評価・意思決定など、人にしかできなかった「非定型作業」を生成AIやAIエージェントによって効率化する取り組みが始まっています。これにより、定型作業をRPA(ロボット)が、非定型作業をAIが担い、最終確認や業務全体の指揮は人間が行うことで、業務全体の効率化が可能となってきています。
しかし、生成AIやAIエージェントを活用したプロジェクトのなかには、投資利益率(ROI)が得られないなどの理由から、パイロット段階(※本格運用前に、限定的な範囲で効果や課題を検証する試行段階)で停滞・中止される事例も少なくありません。
停滞の要因は企業ごとに異なります。私が業務を支援するなかで特に多く感じているのは、使用するロボットやAIに加え、クラウドサービスや社内システム、社内ドキュメントなどが業務内に混在して、運用が複雑化していることが、取り組みの停滞につながっているという点です。
Maestroを活用することで、「どこで各アプリケーションが利用されているか」「現在どのプロセスまで進行しているか」など、業務の全体像の可視化が可能となります(図1)。これにより、運用の複雑化という課題への有効な解決策の一つになります。
業務プロセスや業務フローは資料管理だけで十分か?
上述した課題への解決策として、「業務プロセスや業務フロー、使用しているロボットやAIなど、業務の全体像を資料等にまとめて管理すればよいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。確かに業務全体を可視化するだけが目的であれば、Maestroを使う必要がない場合もあります。
しかし、Maestroは単なる業務全体の可視化ツールではありません。業務の実行指示や案件ごとの状況監視、実績データに基づくプロセスの分析なども含めて、一元的な管理が可能です(図2)。
これは単なる「見える化」にとどまらず、業務を継続的に改善していくための基盤となります。
(*1)本コラムでは、「業務」と「作業」を、以下のように定義しています。
「業務」・・・組織や部門として責任を持つ、複数の作業で構成される活動
「作業」・・・業務の目的を達成するための具体的な手順や動作
(*2)本コラムでは、ロボット、AIエージェント、人の役割の違いを、以下のように定義しています。
| 要素 | 特徴 |
|---|---|
| ロボット | PC上の作業を自動化する。ルール化された作業(定型作業)を大量に遂行するのが得意だが、例外対応は弱い。 |
| AIエージェント | ルール化が難しい作業(非定型作業)の自動化に適用可能。学習や推論ができ、「判断」などの自動化も実現。 |
| 人 | 自動化対象業務の最終責任者。ロボットやAIエージェントによるアウトプットを確認し、誤りがあれば是正する。 |
表1:ロボット・AIエージェント・人の役割
2.Maestroってどんなツール?
本コラムでは、Maestroの機能や特徴について概略をご紹介します。
Maestroの概要
UiPathが提供するMaestroは、ロボット、AIエージェント、人が協調して業務を進める仕組みを構築するための業務オーケストレーションツールです。
Maestroでは、業務全体を可視化する手法として、BPMN(業務プロセスモデリング表記法)という国際標準の記法を採用しています。BPMNに則って要素を配置することで、業務フローを誰でも理解しやすい表現で簡単に作成することができます。
業務フローとして並べた各要素には、UiPathが提供するさまざまな製品機能と連携する設定が可能です。たとえば、作成済みのロボットやAIエージェント、結果を確認する画面(Apps)などを、各プロセスに組み合わせることで、業務全体の効率化を図ることができます。
また、業務フローは一度作成したら終わりではなく、人事異動や社内ルールの変更など、さまざまな理由で見直しや変更が発生しやすいです。そんな時でもMaestroを活用することで、要素の追加・変更・削除が柔軟に行え、ビジネスニーズの変化にも迅速に対応することができます。
参考:Maestro ユーザー ガイド(概要)
https://docs.uipath.com/ja/maestro/automation-cloud/latest/user-guide/overview
3.自然言語による業務フローの作成
Maestroの基本機能については、UiPath社の公式ドキュメントや各種Webサイトで幅広く紹介されています。ここでは、実際に私がエンジニアとして業務支援を行うなかで最も重要な機能だと感じた、“自然言語(人間が日常的に利用する言葉) により業務フローが作成できる機能”に焦点を当てて説明します。
Maestroで業務フローや各要素の設定を一から作成する場合、操作方法の習熟が必要となり、作業には多くの手間が発生します。そこで、UiPathが提供するAutopilotを利用すると、自然言語による指示や業務フローが記載されたドキュメントのアップロードによって業務フローを自動作成できるため、作業負担の軽減につながります。
*Autopilotについては、以下コラムにて詳しくご紹介しています。
#3 どうやって使う?「UiPath Autopilot for Everyone」
自然言語による業務フロー作成指示
ここでは、図1に示した、多くの企業で課題を持つ「問い合わせ対応業務」の各作業や業務フローを自然言語で指示し、業務フローの作成を行います。まず、以下の①~③の手順に従い、Maestro上でAutopilotへの指示画面へ移動します。
①Automation Cloudへサインイン後、ページ左のメニューから「Studio」をクリックします。
②「新規作成」横の「▼」を押し、「エージェンティックプロセス」をクリックします。
③画面右側にある「Autopilotを開く」をクリックし入力画面を表示します。
次に、Autopilotへ業務フロー作成の指示を行います。
④Autopilotでは、以下の内容を指示として入力し、「送信」ボタンを押します。
***指示例***
問い合わせ対応業務の業務フローを作成してください。
問い合わせ対応業務には、以下の作業が存在し、番号の小さい順から大きい順へ業務が流れます。
1.受付
2.回答作成
3.回答承認
4.回答修正
5.回答送信
6.FAQ更新
各作業の目的は、以下の通りです。
1.受付:ロボットタスク
問い合わせメールを受信し、管理台帳へ起票します。
2.回答作成:AIエージェントタスク
問い合わせ内容を参照し、調査を行い、回答案を作成します。
作成した回答案は、承認者へ承認依頼を行います。
3.回答承認:人のタスク
問い合わせ内容とAIエージェントが作成した回答案を確認します。
または、「回答修正」により修正された回答案を確認します。
回答案に満足しない場合は、担当者へ「回答修正」の依頼を行います。
回答案に満足した場合は、承認を行います。
4.回答修正:人のタスク
問い合わせ内容と回答案を確認し、回答案を修正します。
修正後、承認者へ承認依頼を行います。
5.回答送信:ロボットタスク
問い合わせ元に対して、問い合わせ内容と回答をメールで送信します。
6.FAQ更新:ロボットタスク
問い合わせ内容と回答内容を管理台帳に記録します。
*********
指示内容を送信後、Autopilotによって作成された業務フローが図9です。
※AIによる業務フローの作成のため、同じ指示を行っても結果は変わる可能性があります。
おおむね図1と同じフローになっており、今回は、この業務フローをベースに進めることとします。
⑤「確定」を押します。
業務フローを確定後、図1と同様に「回答送信」と「FAQ更新」を並列タスクに変更するよう指示します。
⑥以下の指示を入力し、再度「送信」ボタンを押します。
***指示例***
「回答送信」と「FAQ更新」は並列タスクに変更してください。
*********
Autopilotによって変更された業務フローが図10です。
(上段が最初に作成した業務フロー、下段が変更後の業務フローです)
⑦変更後の業務フローを受け入れ、「確定」ボタンを押します。
最終的に作成された業務フローが図11です。
業務フロー内の各要素については、まだ詳細な設定は行っていませんが、自然言語のみで目的とする業務フローを作成することができました。
ドキュメントのアップロードによる業務フロー作成指示
自然言語による指示で業務フローを作成できることは確認ができました。しかし、業務の中に作業が多数発生する場合や、流れが複雑な場合は、自然言語だけで表現するのは手間がかかります。
そこで今回は、図1の業務フロー図(画像)をアップロードして、業務フローを作成してみます。
※アップロード時は、図1の左下に存在する黄色の吹き出しは除去しています。
まずは、「自然言語による業務フローの作成指示 」内の手順①~③と同じ手順を実施します。
①Autopilotの入力欄に図1の画像ファイルをドラッグ&ドロップで添付し、「送信」を押します。
※Autopilot内の「ファイルを添付」からのアップロードも可能です。
※添付後、自動で「これをBPMNダイアグラムに変換してください」と入力されます。
Autopilotによって作成された業務フローが図13です。
全体としては、図1で示した業務フローとほぼ同じ内容が自動作成されています。一部、エラーや業務フローが接続されていない箇所も見受けられますが、この点については、「自然言語による業務フローの作成指示 」で紹介した通り、自然言語による変更指示により、目的の業務フローへ修正することが可能です。組織内に業務フローが整理された資料などが充実していれば、自然言語による指示が不要となり、ドキュメントのアップロードのみで業務フローを作成することもできます。そのため、Maestro導入のハードルも下げることができます。
4.まとめ
今回は、UiPath社が提供するMaestroの目的や概要、自然言語等による業務フローの作成機能についてご紹介しました。
現時点では、AIを業務にどのように活用するか模索している企業が多い印象です。
しかし、AIの性能が向上することで、業務へのAI活用が一層進む可能性が高いと考えられます。AI活用が停滞する要因はいくつかありますが、特に「運用の複雑化」は大きな課題のひとつです。この課題を解消する手段として、Maestroの導入・活用を検討するのも選択肢の一つではないでしょうか。
本コラムでMaestroに興味関心を持った方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
さいごに
TISでは、UiPathの導入から運用後の課題解決まで、現場に寄り添ったサポートを行っています。今回ご紹介した内容以外にも、実際の現場で得られた知見が多数ございますので、ご関心があればぜひご相談ください。
執筆者:松瀬 高志
※本コラムはTISエンジニアの実体験・知見に基づく内容を記載していますが、記載された情報や手順が全ての環境で同様に動作することを保証するものではありません。万が一、本コラム内容を参考にしたことによる損害等が生じた場合、当社は責任を負いかねますのでご了承ください。また、記載されている情報はコラム公開時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
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