#13 テスト設計・管理のAI自動化を現場から徹底検証!~UiPath Test Manager & Autopilot for Testers~
公開日:2026年4月
テスト工程にAIを取り入れる価値は、「作業を減らすこと」だけではありません。
UiPathが提供するテスト管理プラットフォーム「UiPath Test Manager」と、そのAI機能「Autopilot for Testers」を実際に触ってみて、テスト設計という“考える工程”をどこまでAIに任せられるのかを試しました。
本コラムでは、体験してわかったその実力と限界、そして現場で現実的に活かすための使いどころを、具体的な検証結果とともにご紹介します。
テスト工程自体を管理する「Test Manager」と、強力なアシスタント「Autopilot for Testers」を組み合わせることで、テスト設計を担う現場担当者が工程における思考の『下地作り』をAIに委ね、具体化を進める際にどのような支援として活用できるのかを示す一助となれば幸いです。
目次
1.テスト自動化における課題
テスト自動化・省力化という悲願
ソフトウェア開発の現場において、「テストの自動化」「省力化」「コスト削減」というテーマは長年求められ、繰り返し議論や挑戦が続けられてきた、いわば「古典的かつ永遠の課題」です。
しかし、多くの現場で直面している現実はどうでしょうか。
「自動化ツールを導入したものの、スクリプトを書く工数が膨大で結局手動の方が早い」「画面のUIが少し変わるたびに自動テストが壊れ、その修正(メンテナンス)に追われる」等々、日々の業務に影響する課題が多く発生しています。
結果として、自動化の恩恵を十分に受ける前に準備段階の負担やメンテナンスの課題で挫折してしまうケースが後を絶ちません。
これまでの自動化は、主に「決まった手順を機械に実行させる(テスト実行の自動化)」ことに主眼が置かれてきました。RPA開発の観点から見ても、「同じ手順を繰り返す」テスト実行は一見すると導入効果が高そうに見えます。
しかし実際には、バグが発見されるたびに画面仕様や手順の変更が発生、その都度自動化シナリオの修正を余儀なくされるなど、一筋縄ではいかないケースも多々見受けられるのが実情です。
課題があるのは「テスト実行」だけではない
ここで少し立ち止まって考えてみたいのは、現場が本当に苦労しているのは「実行」フェーズだけなのか、という点です。
その手前にある「テスト設計」もまた、負担が大きい工程ではないでしょうか。
例えば、以下のような要素を考慮するだけでも、膨大なエネルギーを消費します。
- テスト観点の抽出: そもそも、仕様に対してテストの抜け漏れがないか?
- 網羅性を担保したケース作成: 最小限のケース数でいかに効率よく網羅するか? 観点をどう具体的なステップに落とし込むか?
- 手順の文書化と期待値の設定: 非正常系や境界値など、複雑なパターンに対して適切な期待値を設定し、「設計者以外」でも迷わず実行できるレベルまでドキュメント化できているか?
これらは多岐にわたる考慮が必要な、まさに「人間が頭を悩ませる上流工程」です。
今回ご紹介する「UiPath Test Manager」および「Autopilot for Testers」は、実は「テスト実行」以上に、こうした『テスト設計のフォロー』に真価を発揮するツールと言っても過言ではありません。
(※もちろん、自動テストの実行はUiPath Test Managerの主要機能の一つですが、本記事ではあえて設計側のポテンシャルに光を当てます。)
2.「UiPath Test Manager」と「Autopilot for Testers」での検証
「UiPath」という名前を聞くと、多くの人は「業務を自動化するRPAツール」を思い浮かべるかもしれません。しかし、今回紹介する「UiPath Test Manager」は、単なるRPAの実行環境ではなく、「テスト工程全体を一元管理するテスト管理プラットフォーム」です。「要件」「テストケース」「実行結果」「欠陥(バグ)」を集約管理することでテスト工程全体の状況を把握しやすくなります。
そのなかでも特に注目したいのが、AI機能「UiPath Autopilot™」です。
UiPath Autopilotとは、UiPath Platform™ for agentic automationに搭載されたAIによる自動化支援機能です。 現場から経営層まで、ユーザーごとに「専属のAIアシスタント」として機能します。
現場の開発者向けには、AIが自然言語指示からワークフローを自動生成したり、既存コードを即座に解析して属人化を排除します。また、一般ユーザーはチャット形式で簡単に業務自動化やデータ収集が可能です。
今回紹介する「Autopilot for Testers」はテスト領域で機能するものを指しており、AIが要件からテストケースを提案し、結果分析やレポート作成を自動化します。これにより、テスト担当者は修正箇所特定やリリース判断など高度な業務に集中でき、テスト工程の品質と速度が飛躍的に向上します。
また、経営層やアナリストもAutopilot利用により、業務データの自然言語による分析をAIに依頼し、迅速かつ根拠ある意思決定が可能になります。Autopilotは全社的な自動化循環を加速し、教育コスト削減から経営判断まで幅広く貢献します。
また、アップロードされた資産はガバナンス設定で保護され、外部へ流出しないように設定されているため、安心してご利用いただけます。
検証内容
今回の検証では、Autopilot for Testers によるテストケース生成の精度を人間が作成したテスト仕様書と比較する形で確認しました。
対象システム
TISが業務フローやシステム設計のノウハウを公開するサイト「Fintan」上で提供している、Spring Frameworkを利用した業務システム構築のモデルとなる設計・実装例「spring-sample-project」を題材にします。
(出典:https://github.com/Fintan-contents/spring-sample-project)
このプロジェクト内の「BA10601/期間内プロジェクト一覧出力バッチ」は指定された期間内のプロジェクト情報をプロジェクトテーブルから抽出し、期間内プロジェクト一覧(N21AA002)としてCSV出力する定期バッチ処理機能(例えば夜間に自動実行される一括処理)です。
現場でよく利用される、業務データの抽出およびCSVファイル出力を行うバッチ処理パターンを想定して設計されています。
本バッチの処理概要は下記の通りです。
- 入力:処理対象期間(開始日・終了日)、プロジェクトテーブル
- 処理:期間内に開始または終了したプロジェクトを抽出
- 出力:期間内プロジェクト一覧(N21AA002)としてCSV出力
- エラー時:エラーログ出力や異常終了となる場合もある
今回の検証では「BA10601/期間内プロジェクト一覧出力バッチ」の単体テスト仕様書を作成することを想定し、 Autopilot for Testers にテストケース作成を依頼します。
準備
Autopilot for Testers の参照資料として、以下を用意しました。
①単体テスト標準
②テスト観点カタログ(https://fintan.jp/page/1456/ PDF形式 1.6版)
③システム機能設計書(バッチ)_BA10601/期間内プロジェクト一覧出力バッチ.xlsx
横断的な資料(①②)はストレージバケットに格納し、インデックス化することでRAGとしてAutopilotが参照できるように設定しました。
個別案件の設計書(③)はTest Managerの要件タブにアップロードしています。
Autopilot for Testers にテストケースを生成させる
プロンプトの設定は極力シンプルにし、次の一文のみを指定しました。
「テスト ケースを 50 個以上作成してください。」
※本来はテスト観点などを明記して有益なテストケースのみが作成できるようにプロンプトを作りこんでおくことが望ましいですが、今回はテスト仕様書との比較を行うため、特定のテスト観点に沿ったテストケースに絞り込まずに横断的なテストケースを作成させることで、プロンプトに依存しなくてもある程度妥当な(テスト仕様書と一致する)レベルのテストケースが作成できる点を確認するため、極力シンプルなプロンプトを使用しています。
モデル(LLM)にはClaude 3.7 Sonnetを使用しました。
Autopilot for Testers によって生成されたテストケースは以下の単体テスト仕様書と比較し、粒度や観点の抜け漏れを確認しました。
単体テスト仕様書_リクエスト・取引単体(バッチ)_BA10601_期間内プロジェクト一覧出力バッチ.xlsx(④)
検証結果
「生成」ボタンを押下すると数分ほどで Autopilot for Testers がテストケースを生成します。内容を精査し、テストケースが作成・表示できるようになるまでに数分かかりますが、その間Test Managerや端末が占有されることはなく、他の作業を行うことが可能です。生成されたテストケースは50件で、手順も細かく記載されていました。コンテキストに設定したテスト観点カタログと一致する結果も確認できました。
テスト仕様書との比較
Autopilot for Testers が生成したテストケース50件のうち、17件がテスト仕様書と合致しました。つまり、およそ3割程度のケースが人間の設計と同等の観点で生成されたこととなります。また、共通して生成された内容としては以下のような基本的なテスト観点が確認できました。
- インプットパラメータ(業務日付)の有無および境界値に関する確認
- 出力ファイルの内容
一方で、いくつか差異も見られました。
テスト仕様書と比較して、Autopilot for Testersでは出力件数ごとの観点漏れが約3件発生していることを確認しています。 Autopilot for Testers では「正しく出力されていること」のような表現でまとめられる一方、テスト仕様書では1件/複数件/0件(空ファイル)の出力ごとに個別のテストケースを起票しています。
また、粒度の差として、テスト仕様書では「出力ファイルのフォーマット確認」(出力したファイルの値が取得元と一致することを確認する)が項目ごとに細かく分割されていたのに対し、 Autopilot for Testers の生成結果では1つのテストケースとして統合されていました。件数ベースで比較すると13:1に圧縮されており、観点として触れてはいるものの、成果物としての品質に差がある状態です。
しかしながら、このような粒度の違いやケース数の差異は、必ずしもAutopilot for Testers自体の実力不足によるものとはいえないと考えられます。今回はプロンプトを「テストケースを50個以上作成してください」と非常に抽象的な指示に留めていたため、「どの観点をどの粒度で網羅するか」といった具体的な要件がAIに十分伝わっていないことが結果に影響しているためです。
加えて、資料不足による観点漏れも確認されました。テスト仕様書では各出力項目の最大長/最小長ごとのテストデータが網羅されていたことで26件分の差異が発生しました。但し、このテストケースを作成するための「出力項目の最大長/最小長」などの情報は今回アップロードしたシステム設計書に記述がなく、別の「外部インターフェース設計書」が必要でした。そのため、これらの観点が生成されなかった点は、むしろ自然な結果と言えるでしょう。
結論として、テスト仕様書の方が正常系にこだわり、より詳細なテストケースを作成できていると感じられました。一方で、Autopilot for Testersの生成結果は粒度が粗いものの、異常系にもケース数が割り振られ、より様々なエラーパターンを試しているといった点で網羅性の面で評価できる部分もあると考えています。プロンプトの指定がシンプルすぎたため、曖昧な情報から粒度の低いケースが生成された可能性も考慮すべきでしょう。
3.まとめ
今回の検証では、 Autopilot for Testers が生成したテストケースは異常系にやや偏る傾向が見られました。追加検証として、プロンプトを「正常系のテストケースを50個以上作成してください」と変更したところ、各項目値を確認するようなより詳細なケースが生成されることも確認できました。
この結果から、簡単すぎるプロンプトでは一度で完全な網羅ができない可能性もあるため、プロンプトをより具体的に作りこんで実行する、あるいは生成結果を確認しながら不足している観点を追加指示して再生成するという使い方が、現実的なアプローチであると感じます。
またUiPathにはプロンプトライブラリが用意されており、これらを参考にすることでより細かな条件指定も可能です。
Autopilot for TestersはTest Managerの利用があれば追加費用なしで利用できるため、現場として積極的に試してみる価値のある機能と言えるでしょう。
一方で、実運用を考えるとUI面では改善の余地も感じられました。
- 差異比較の難しさ:生成されたテストケース同士の手順レベルでの比較が難しい
- Excelエクスポート:機能は存在するが、概要項目(ケース名や説明等)に留まるため、手順を含めた横並びの精査には不向き
- 検索性:チャット形式での検索が可能だが、一覧画面からの検索はラベル設定や概要項目による絞り込みが主となる。膨大なケースの中から目的のものを瞬時に見つけ出すには、少し慣れが必要な印象
特にテストケースの詳細比較については、現時点ではExcelの方がレビューしやすいと感じる場面もありそうです。
さいごに
テスト仕様書の作成は、これまで既存資料や要件定義書を参照しながらコピー&ペーストと調整を繰り返す、地道な作業でした。
しかし今回の検証結果から Autopilot for Testers を「ドラフト作成者」として活用するアプローチは、実現可能性と効率向上の両立という点で十分に検討する価値があると感じました。まずTest Managerに関連資料を集約し、 Autopilot for Testers にテストケースを生成させる。そして生成されたドラフトを人間がレビューし、必要な修正を加える。このような手順に切り替えるだけでも、テスト設計にかかる負荷を減らせる可能性があります。
もちろん、AIが生成したテストケースをそのまま採用するのは現実的ではありません。しかし「たたき台」を作る役割としては非常に有効であり、人間の思考の出発点を前倒ししてくれる存在と言えるでしょう。
今回はテストケース生成に焦点を当てましたが、UiPathのAI活用はこれだけではありません。生成された手順をもとに自動化ワークフローを作成する開発工程、AIによる一次分析レポート出力など工程の全体でAIとの協働が進みつつあります。
自動化とAIが発展の渦中にある今こそ、お手元の作業をAIと共に変革していく絶好のタイミングです。「この作業、もっと楽にならないか?」という現場の小さな疑問を解決する有力な選択肢として、UiPathによる自動化・効率化をご検討いただければ幸いです。
TISでは、UiPathの導入から運用後の課題解決まで、現場に寄り添ったサポートを行っています。今回ご紹介した内容以外にも、実際の現場で得られた知見が多数ございますので、ご関心があればぜひご相談ください。
執筆者:上野 詩織
※本コラムはTISエンジニアの実体験・知見に基づく内容を記載していますが、記載された情報や手順が全ての環境で同様に動作することを保証するものではありません。万が一、本コラム内容を参考にしたことによる損害等が生じた場合、当社は責任を負いかねますのでご了承ください。また、記載されている情報はコラム公開時点のものであり、予告なく変更される場合があります。
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