RPA導入企業でAIエージェント活用はどこまで進んだ?実態調査で見えた期待と導入課題
公開日:2026年6月
はじめに
RPA(Robotic Process Automation:以下RPA)の普及により、バックオフィスを中心とした業務自動化は着実な成果を上げてきました。しかし、定型業務の自動化が一巡した現在、多くの企業が「判断を伴う非定型業務には対応しにくい」「システム変更のたびに運用負荷が増える」といった課題も感じ始めています。こうした中、次の一手として注目されているのが、次世代の自動化技術として期待される「AIエージェント」です。
今回は、RPAをすでに導入している企業において、プロジェクトを牽引・管理するリーダー層である「推進担当者(以下推進側)」と、導入から保守・運用までを担う「現場担当者(以下現場側)」を対象に調査を実施しました。AIエージェントに対する認知度や活用実態を明らかにするとともに、導入によって得られるメリットに加え、導入を阻む技術的・心理的な課題を整理することを目的としています。
目次
調査概要
- 調査期間:2026年2月5日~2月12日
- 調査方法:インターネット調査(Fastaskを使用)
- 調査対象:全国20歳~69歳の男女、従業員1,000名以上かつRPA導入済みの企業に所属し、情報システム・IT部門、DX推進・デジタル戦略部門、経営企画・事業企画・業務改革部門、営業推進・営業企画部門のいずれかに所属する
本調査では、回答者の約7割は推進担当者で、現場担当者も24.5%を占めており、全社視点と現場視点の双方が反映された結果となっています。
1.RPA活用はバックオフィス全般に拡大、ただし限界も顕在化
情報システム業務を中心に幅広い部門へ浸透
現在RPAで自動化されている領域を見ると、「情報システム業務」が53.0%で最も高く、「人事業務」が47.3%、「営業事務」が41.9%、「経理・財務業務」が40.1%と続きました。
推進側・現場側の両者が持つ、RPAの導入効果
推進側でRPA導入・展開によって組織全体として得られた主な効果として、最も多く挙げられたのは「全社的な生産性の向上(余力リソースの創出)」で59.1%でした。次いで「業務プロセスの標準化・可視化の進展」が47.1%、「内部統制・ガバナンスの強化(作業ミスの防止、操作ログの可視化)」が23.9%と続いています。
現場側でも、RPAの効果としては「業務スピードの向上」が58.2%、次いで「作業ミスの根絶によるやり直しや確認時間の解消」が37.4%となり、業務効率化や生産性向上といった実務上の改善効果が多くの現場担当者に認識されていることが分かります。
これらの結果から、RPAはすでに特定部門だけの活用ではなく、バックオフィス全体に広がっている実態がうかがえます。
現場側・推進側の双方で運用負荷や手動対応が課題に
一方で、RPAを運用するにあたり、課題も出ています。まず現場側から見たRPAの効果と限界を確認します。
現場側では、自社でコントロールできない「接続先システム変更に伴う頻繁なロボット修正作業の発生(47.3%)」が最も多い回答となりました。また「例外処理の手動残存(39.6%)」や「エラー時の手動リカバリー負担(35.2%)」といった、人力でしかできないイレギュラー事例の対応も上位を占めており、日常的に現場のスタッフに臨機応変な対処が求められている様子が見て取れます。
このように、活用範囲が広がるほど、従来型の自動化だけでは対応しきれない課題も浮き彫りになってきています。
特に推進側では適用領域の限界や運用負荷が、現場側では手動対応の残存や例外処理の負担が意識されており、RPAの次の打ち手としてAIエージェントへの関心が高まる背景になっていると考えられます。
2.AIエージェントはすでに「認知」から「実務活用」の段階へ
AIエージェントについて内容まで理解している層が多数を占める
AIエージェントの認知・活用状況を見ると、「内容まで詳しく知っている」と回答した層は合計87.1%に達しました。そのうち44.9%は、すでに「業務で活用している」と回答しています。
AIエージェントの導入・活用意向は、組織全体で非常に高い水準に
※「「AIエージェント」という概念・技術について、あなたの認識に最も近いものをお選びください。」で「内容まで詳しく知っており、すでに業務で活用している」と回答した方を除く
AIエージェントをすでに活用している層を除いた回答者に今後の自社への導入意向を伺うと、「既に導入・活用している」「1年以内に具体的に導入したい」を合わせて65%を超え、「時期未定だが前向きに検討したい」まで含めると導入に前向きな回答が約9割に達しました。
AIエージェントをすでに業務活用している企業も一定数あり、未導入企業でも前向きな導入意向が広がっている結果を受け、 「一部企業に限った先進的な取り組み」ではなく、「機能や活用イメージを伴った現実的な導入テーマ」として、多くの企業が具体的な検討段階に入っていることが示されました。「認知」の段階を超え、実務における具体的な活用検討・導入が進みつつある状況が確認されました。
3.AIエージェント導入は新規構築より既存基盤との接続を重視する傾向
導入検討製品は大手RPAベンダーやMicrosoft系が上位
※「今後、あなたの会社または部署で「AIエージェント」を導入・活用していきたいと思いますか?」で「現時点では導入するつもりはない」「自分の一存では決められない/わからない」と回答した方を除く
導入検討中の製品では、「Automation Anywhere」が53.1%、「Power Automate」が49.5%で上位となりました。さらに「UiPath AI Agent」が34.0%、「Blue Prism」が25.2%と続いています。検討対象が大手RPAベンダーやMicrosoft系製品に集まっていることから、企業はまったく新しい環境をゼロから構築するというより、既存のRPA基盤やMicrosoft 365環境の延長線上でAIエージェントを取り込もうとしていると考えられます。
既存の業務環境に組み込む形での活用が主流
※「今後、あなたの会社または部署で「AIエージェント」を導入・活用していきたいと思いますか?」で「現時点では導入するつもりはない」「自分の一存では決められない/わからない」と回答した方を除く
導入領域でも、「Salesforce Agentforce」が47.2%、「Microsoft Copilot Studio」が43.7%と高く、普段使っている業務アプリケーションと親和性が高いAIエージェントから着手する傾向が見られました。
以上より、AIエージェントは単体導入よりも、既存のRPA基盤や業務アプリケーションに“どう組み込むか”が重視されていることが分かります。また、AIエージェントは単体で新規導入するものではなく、既存のRPA基盤や業務アプリケーションと連携させて活用されるケースが主流となっていることが読み取れます。
4.期待は高いが、最大の壁は「コスト管理」と「AI出力の不確実性」
AIエージェントに対する期待が高い一方で、推進側は導入・運用にあたって現実的な難しさも強く意識しています。特に大きいのは、費用の見通しが立てにくいことと、AI出力の不確実性を前提にした運用設計の難しさです。単にツールをつなげば活用できるわけではなく、継続運用まで含めて制御可能な仕組みをどう作るかが重要な論点になっています。
コスト管理の難しさが導入判断と継続運用の壁に
導入にあたっての懸念を見ると、推進側では「コスト管理の難解さ」が60.8%で最多となりました。費用の見通しにくさは、導入判断だけでなく、継続運用の意思決定にも影響する大きな壁になっているようです。期待効果がある一方で、費用対効果をどう管理するかは依然として大きな課題です。
技術面では精度検証・修正フローの構築が最大課題
技術面では、「AIが出力した結果の精度検証・修正フローの構築」が67.2%で最も高く、「エラー発生時のリカバリー処理」が53.8%、「AIに渡すデータの加工・整形」が48.4%と続きました。課題の中心は単なる接続ではなく、AIの出力には不確実性があることを前提に、確認、修正、例外対応まで含めて業務プロセスとして成立させる設計にあると考えられます。
5.現場側ではスキルの空洞化への不安と実務支援への期待が併存している
現場側の受け止め方には、期待と不安の両方が存在しています。AIエージェントを日々の業務を支える存在として前向きに捉え、個別業務に合った支援や必要情報への即時アクセスが期待されています。一方で、AIに依存しすぎることで現場の判断力や業務知識が維持されにくくなるのではないかという不安も強く、導入後の業務設計や人材育成のあり方まで含めて考える必要があることが見えてきます。
最大の不安は専門スキルの空洞化
現場側に、AIエージェント導入に伴う心理的・実務的不安を聞いたところ、最も多かったのは「専門スキルの空洞化」で51.6%でした。AIへの依存が進むことで、現場で蓄積されてきた判断力や業務知識が維持されにくくなるのではないか、という一定程度の懸念が示されています。
個人業務のパーソナライズ化や即時支援への期待も高い
現場側が期待する効果として最も高かったのは、「個人の業務のパーソナライズ化」で48.4%、次いで「社内ナレッジの即時活用」が40.6%でした。現場では、大きな業務改革よりも、担当者ごとの業務に合わせた支援や、必要な情報をその場で引き出せることなど、日常業務を直接支援する効果が重視されているようです。
6.外部パートナーには事例紹介より安全に使うための実践支援が求められる
外部パートナーに期待する支援として最も多かったのは、「セキュリティ・ガバナンスルールの策定」で55.7%でした。加えて、関連設問では「AI活用のための基礎リテラシー研修」が61.1%、「プロンプトエンジニアリング研修」が58.9%、「ユースケースの共有」が57.3%と高く、導入にあたっては実践的な知識やルール整備を求める声が強いことがわかります。
本調査結果からは「他社の先進的な事例の情報提供」が相対的に強いニーズとして前面に出ていない点が明らかとなりました。企業が求めているのは、単なる成功事例の紹介ではなく、自社の業務や体制に合わせて安全かつ実装可能な形に落とし込むための伴走支援だといえるでしょう。
7.まとめ AIエージェント導入の成否を分けるのは“技術”より“設計”
今回の調査から見えてきたのは、AIエージェントに対する期待がかなり高い水準にある一方で、その期待は「何でも自動化してくれる万能ツール」への幻想ではないということです。企業は、RPAで自動化しきれなかった非定型業務への対応や、保守・運用負荷の軽減、現場業務の個別最適化といった、かなり具体的な効果を見据えています。
その一方で、コスト管理の難しさ、AI出力の検証・修正フロー、スキルの空洞化といった課題も明確です。AIエージェント導入を成果につなげるには、単に技術を実装するだけでなく、既存基盤との接続、運用プロセスの整備、ガバナンス設計、人材育成まで含めて総合的に進める必要があります。
AIエージェントは、単なるRPAの次に来る流行語ではなく、業務自動化を次の段階に進めるための「設計」を問うテーマです。重要なのは、「導入するかどうか」ではなく、「どの業務に、どの形で、どの運用体制で組み込むか」を具体化し、継続運用まで見据えて判断することが、導入効果を最大化するうえで重要だといえるでしょう。
AIエージェント導入を検討する際には、この調査結果を参考データとしてぜひご活用ください。
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さいごに
TISでは、UiPathの導入から運用後の課題解決まで、現場に寄り添ったサポートを行っています。実際の現場で得られた知見が多数ございますので、ご関心があればぜひご相談ください。
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